ラブライブ~そのまんま美女と野獣~   作:濁酒三十六

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ラブライブを観直し中、海未ちゃんかわええわ。


町の噂とμ'sたち

 絢瀬絵里はスクールアイドルのダンス練習を終え、帰路を一人で歩いていた。他のメンバー達は秋葉原へ寄り道をして行くのだが、今日は買い物をして妹の亜里沙と一緒にボルシチを夕食に作る約束をしており、買い物を済ませて真っ直ぐに自宅を目指していた。

 途中の信号のない横断歩道に着き、絵里は足を止める。…と、横に並んだ腰を曲げて買い物を詰め込んだキャリーカーを持ったお婆さんが困りげに右左に過ぎ去る車を見ていた。

 絵里はお婆さんが気にかかり、キャリーカーを持って一緒に渡ろうと声をかけようとしたその時、向かい横から男性がお婆さんに声をかけて来た。

 

「婆さん、荷物持ってやるから一緒に渡ろうぜ?」

 

 絵里は向かい横に目を向け、その瞬間、全身が凍りついた。2m近くガッチリとした体躯に顔面を走る三本の傷跡、そして獅子をも射殺すかと思える鋭い目付きのその男性に絵里はかつてない戦慄を感じてしまった。

 

(マッ、マフィア関係者にしか見えない!!)

 

 相手の外見に恐怖する絵里を余所にお婆さんはニコニコしながら怖面の男性に感謝をした。

 

「あら、ありがとうね…。

年取っちゃうと車の速さが目で追えなくなっちゃってねぇ~。」

「なに、困ったらお互い様だよ。」

 

 絵里を脇に二人はにこやかに話をして男性がキャリーカーに手を伸ばす。…が、それを絵里は即座にお婆さんに声をかけて阻止をした。

「お婆さん、お荷物は私が持ちますわ。」

「おやおや、女の子もいたのかい。ありがとうね~。」

 

 絵里はお婆さんからキャリーカーを預かり、怖面の男性を睨んだ。

 

(こんな小さな年寄りをマフィア関係者みたいな人には任せられないわ!)

 

 奇妙な正義感に動かされる絵里を怖面の男性は伸ばした右手を引っ込め、絵里に笑顔を見せた。

 

「悪いな、ネエちゃん。んじゃ俺は婆さんしょうわ。」

「えっ!?」

 

 男性はしゃがみ込み、お婆さんにおぶさる様に施すと…さすがにお婆さんは悩むが、「年には勝てないわね~。」と呟いて男性の背中におぶさり、それを確認して男性は立ち上がった。絵里はその姿に静かな感動を覚えてしまった。

 そして絵里がキャリーカーを引きながら車に停まってくれるよう手を上げて渡り彼女の後をお婆さんを背負った怖面の男性が付いて渡った。

 横断歩道を渡り終えた少し先で怖面の男性はお婆さんを降ろし、絵里がキャリーカーを渡すとお婆さんは感謝を告げて行ってしまい、絵里と怖面の男性が残された。

 

「悪かったな、面倒かけちまって。」

 

 男性にそう言われ、絵里は少し胸が痛んだ。

 

「いえ、私そんなつもりでは…」

 

 怖い訳でもなく男性の顔を見る事が出来ない絵里。彼のお婆さんへの厚意を外見のみで疑い割って入ってしまった自分が恥ずかしく…彼に対して罪悪感を感じてしまっていたのである。

 そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、怖面の男性は笑みを浮かべたまま後ろを向いて手をひらひらさせ、「じゃあな。」と言って去って行く。絵里はそんな男性の背中を見つめ、先程までお婆さんを背負っていた力強さと背中の大きさに魅入ってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、国立音乃木坂学院園アイドル研究部…スクールアイドルであるμ'sは屋上でダンス練習をして切りのいい所で休憩を取っていた。

 

「え~りちゃん。」

 

 ポニーテールをかき上げてタオルで汗を拭き、スポーツドリンクを飲んでいた絵里にμ'sのリーダーである高坂穂乃果が話しかけてきた。

 

「な~に、穂乃果?」

「うん、ちょっとね…最近溜め息が多いなって思って。」

 

 そう聞かれて絵里は苦笑し、穂乃果の隣に希も来て話に入った。

 

「ウチも何となく気付いてた。

何かあったの、エリチ?」

 

 二人に尋ねられ、絵里は笑いながら数日前の出来事を話した。穂乃果は男性の怖い顔に興味津々で聞き、希は…何か思い当たる節があるかの様な素振りをしていた。

 

「エリチ、その男の人…、こう顔に傷跡が三本なかった?」

 

 希は自分の顔の左側を三回なぞると絵里はウンウンと頷いて同意した。

 

「あった!

だから最初マフィアかと思っちゃったわ!」

「絵里ちゃん、日本ではヤクザ屋さんて言うんだよ。」

「…そうなの?」

 

 絵里の確認に穂乃果と希は頷く。

 

「取り敢えず其れは置いといて、ウチも10月くらいに神田明神で…」

「貴女達も出会したのね、あの“893”にっ!?」

 

 希の話を遮り、割って入ったのは希と絵里と同じ三年生…セミロングのツインテールで年齢と対比して中学生に見られがちな矢澤にこである。

 

「にこ、貴女も会ったの!?」

「会ったも何も、通り過ぎ様に目が合った妹達が急に泣き出しちゃって大変だったわよ!

お陰で泣き止ます為に板チョコを一人一枚買う羽目になったわ!!」

 

 何とも浅い恨み言かと呆れる絵里と希だが、更に一年生組の小泉花陽、星空凛、西木野真姫が入り聞き捨てならない話をしてくれた。

 

「それだけじゃないんです、実はこの町に“ヤクザ”の事務所が出来るかも知れないって噂が立ってるんです!」

「しかも顔面に切り傷のある幹部の人が事務所を置く場所の下見に町に出没しているとか言ってるにゃ!」

「そして行く行くは事務所どころか組長の本家が此処に引っ越してくる事になってるらしいわよ!」

 

 彼女達の知らない場所でとんでもない噂話が流れおり、その中心点にいるのはどう考えてもあの顔に傷のある大柄の男性であるのは明白であった。絵里はあの男性の大きな背中を思い出し、何故か彼がヤクザと言われているのが少し悔しくなる。

 

「三人共、あまり見知らぬ人をそんな風に言うのは感心しないわ。

その人がヤクザじゃない可能性の方が断然に高いんだから、もうそんな話絶対しないで。」

 

 少しキツメに言い聞かせる絵里に希と穂乃果も同意して続いた。

 

「エリチの言う通りやね、折角引っ越しして来た町でヤクザと勘違いされて白い目で見られちゃうのは可哀想よね…。」

「うん、私もそう思う。だからにこちゃん、板チョコの恨みは忘れてあげて?」

 

 にこやかに肩をポンと叩く穂乃果をにこはジメリと睨んだ。

 

「何で板チョコ程度で私が恨まなきゃならないのよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 練習を終え、穂乃果は園田海未と南ことりと一緒に自分の家の帰路に着いていた。

 

「ん~、怖面の人ってそんなに怖い顔なのかな~?」

「さあ、見たと言っているのは希と絵里に…にこだけですから何とも言えませんが、私個人で言えば…会いたくはないです。」

「海未ちゃん怖い人嫌いだものね。」

「いや、怖い人が好きな人なんていませんから。」

「分っかんないよ、いるかも…」

「いませんから!!」

 

 海未は穂乃果の言葉を遮って否定と拒絶を露わにした。穂乃果はことりと目を見合わせて苦笑いをし、そんな会話をしている内に穂乃果の家である“和菓子屋穂むら”に着いた。

 いつもの通り、お店の出入り口から入ろうとすると店の奥から何故か女性…穂乃果の母親の裏返った挨拶が聴こえた。

 

「あっ、ありがとうございました~!?」

 

 そして同時にお店の出入り口から大きな影が現れ、穂乃果…海未…ことりは背筋に冷たいものを感じ、見上げる。

 そしてその小さくも鋭くつり上がった目と視線が合って三人共硬直、口端をピクピクと痙攣させ、思考が停止した。

 その大きな影はまさしく先程まで噂していた怖面の男性であった。2m近い背丈に服の上からも分かるガッチリした体躯、坊主に近い短髪のゴツい顔は薄く細い眉毛に小さくつり上がった目、分厚い唇をしており、何より眉間の右側から左頬まで一本、左目下から鼻筋を跨いで右頬まで一本、そして左のモミアゲから顎下に向けて計三本の切り傷が噂通りに付いていた。

 

「ヒクッ!?」

 

 ヒャックリの様な悲鳴を洩らした海未に怖面の男性の視線が移り、その視線と“一対一”で見合ってしまった海未の瞳は点となり、けたたましい悲鳴が轟いた。

 

「NOOOOOOOOOOOOOOOOッ!!!!!!」

 

 そして海未の頭がフラッと揺らぎ、彼女の視界はブラックアウトしたのだった。

 




早くことりちゃんにQPの本名を教えてやりたいぜ!
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