あれから絢瀬亜里沙と高坂雪穂は駆けつけた警察に保護され…、石田小鳥は暴行障害行為の現行犯として連行された。しかし亜里沙と雪穂の必至の訴えと被害者の身元…野次馬達皆が目撃者としてしてくれた証言、何より相手が先に警棒で殴りつけた事実から小鳥は無罪放免となった。
取り調べを終え、警棒でやられた頭の傷にガーゼと包帯を巻いたた小鳥が目にしたのは先に帰された亜里沙と雪穂、娘を迎えに来た雪穂の父親と母親に同じく心配で駆けつけた雪穂の姉にしてμ'sのリーダーである高坂穂乃果、そして亜里沙を迎えに駆けつけた絢瀬絵里…、仕事中に警察沙汰を起こしてしまった小鳥の身元保証人として呼ばれたガソリンスタンドの店長が集まった光景であった。小鳥は皆の前に立ち、深々と頭を下げた。
「申し訳御座いません、仕事を放ったらかしにして亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんを危険に晒してしまいました。
皆さんに大変御迷惑を掛けてしまった事、深く御詫び致します…。」
それを聞くや、亜里沙はブンブンと首を横に振って小鳥に謝罪の言葉を投げかけ…雪穂も後に続いた。
「小鳥さんは悪くない!!
わたしが…、私が後先考えずに……、ごめんなさい!」
「私も、亜里沙と同じ気持ちだったから…っ、ごめんなさい!」
二人は腰を直角まで折り曲げて小鳥よりも深く頭を下げた。そんな二人の頭を小鳥は腰を落とし、そっと撫でてやる。
「ホントにな、偶然でもあの場所に居合わせる事が出来て良かったぜ。
お前等にも何もなくて本当に良かった。」
ニカッと小鳥は怖面を破顔させて笑顔になると、亜里沙と雪穂は涙を滲ませながら頷いた。
そして小鳥はもう一度、ガソリンスタンドの店長に頭を下げて謝罪をする。…が、彼は怒らず…小鳥の行為を賛美した。
「暴力そのものは褒められたものじゃないが…、ワタシは君を尊敬するよ。
こんな女の子を見捨てては男が廃るよ。」
そう言って小鳥に対してペナルティは一切与えず、“今後も頼むよ”と言い残しスタンドへ戻って行った。
そして皆が帰ろうとした時、小鳥が皆にとんでもない話をし始めた。
「絵里、お祭娘、落ち着いて聞いてくれ。
取り調べの時に警官から聞いたんだが…、今日二人が絡まれた奴等…、もしかしたら“ヤクザ”と繋がってる可能性があるらしい。」
それはあまりにも唐突でまるで直ぐ側にずる賢い獣が臭い息を吐きながら此方を標的にしたイメージを思わせた。
「石田君、それって、その人達はまた雪穂や…亜里沙ちゃんを襲うかも知れないって事なの!?」
高坂姉妹の母親が小鳥に詰め寄ると、小鳥ははぐらかす事なく首を縦に振った。此には父親の方も歯を喰い縛って何かの決意をするかの様に握り拳を作る。其処で小鳥はある相談をしてみた。
「おやっさん、おばさん、もし良ければ…絵里と亜里沙の二人をほとぼりが冷めるまで其方で泊めてやってはあげられませんか?」
絵里と亜里沙は予想しなかった小鳥の提案に困惑してしまう。
「小鳥さん、何も其処までしなくても…穂乃果だけでなく御家族にまで迷惑…」
「チンピラやヤクザをなめんな!」
一際強い声に絵里はビクリと肩を弾ませた。小鳥は真剣そのもので今一度、穂乃果の両親と向き合う。
「絵里達は姉妹二人だけです。ヤクザなんかが狙うには格好の獲物だ。
あのチーマー共の仲間が来るかも知れない状況で二人のままには出来ねえ、…かと言って俺がずっと見ている訳にもいかねえ。
お祭娘の妹も同じだ、学校の帰りや寄り道なんて待ち伏せするのに良い時間帯だ。…警察の巡回だけじゃあ全然足りねぇ。
今は俺達がこの娘達を守ってやらなきゃならねえ、だから力を貸してはくれませんか!?」
「そうね、良い考えだと思うわ、ねえアナタ?」
「私も良いと思う、絵里ちゃんと亜里沙ちゃんと一緒に暮らすなんてたっのしみ~♪」
高坂母親は即座に小鳥の提案を理解し、穂乃果も賛同。雪穂もウンウンと首を縦に振って父親は小鳥の肩をバシッと音を立てて手を置き、もう片方で“グッ”と親指を立てて見せた。絵里と亜里沙が置いてけぼりのままで高坂家で絢瀬姉妹を預かる話は決定し、二人は今晩から和菓子屋穂むらに居候する身となるのであった。
新宿歌舞伎町のとあるキャバクラのVIPルームで、今日何者かに手非道くやられた上…警察で身元を割られてしまったあのチーマー三人組が坊主頭にサングラス…金糸の高級な背広姿をした男の前で同じくチーマースタイルの男達に囲まれて正座をさせられていた。
「そんで何~、ワンパンマンに一発KOされてサツに厄介になって…、ムザムザ帰って来た訳だ…お前等…。」
金糸の背広を来たサングラスの男は三人のリーダー格の前に座り、吸っていた煙草の煙をリーダー格に吹きつけた。
「ゲホッ、ゲホッ!?」
「お前よ~、“この世界”ナメられたら終わりなんだよ。解ってんの~?
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テメエ等がナメられたら俺ん所もナメられんだよ、理解してんのかチンカス共があっ!!」
いきなりサングラスの男がリーダー格の額に火が付いたままの煙草を押し付けた。リーダー格の男は悲鳴を上げて後ろへ転げ、他の二人はリーダーの姿を見て脅え、金糸の背広男に自分達を殴り倒した男の情報を更に伝えた。
「あっ、彼奴の仕事場は分かってるんです!
だから今度は人数を揃えてぶっ殺してやります、“金城”さん!!」
それを聞いた金糸の背広男…金城は左手の…フック型の義手を三下の男の鼻っ面に押し付けながら男から話を聞き出す。
「ほう、そういやお前等ボコッた奴がどんなのか聞いていなかったな、言ってみろ?」
チーマーの一人が自分達を負かした男が秋葉原のガソリンスタンドに働いている事とそして外見の特徴を話すと…、金城の表情が強張り、ペシッと坊主頭を叩いて含み笑いを始めた。
「あっっ、そ~~、そ~かい、あの野郎秋葉原にいんのか~。
クヒヒヒヒ……、“我妻涼”がいなくても俺の邪魔するってか…、なあ~キュウウウウゥピイイイイッ!!!!」
金城の形相が鬼の様に歪み、彼の舎弟達は彼が何を考えているのかを手に取る様に理解する。
かつて不良時代に“QP”と呼ばれ恐れられた石田小鳥とかつて彼の親友…我妻涼の舎弟であった金城勝利の衝突は避けられないものになろうとしていた。