ラブライブ~そのまんま美女と野獣~   作:濁酒三十六

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小説更新、自分で言うのも何だが海未ちゃんの扱い悪いな~。
いや、決して嫌いではありません。むしろ大好きです。


想いとは、自由に出来ない心の腫れ物

「そう、そんな事あったんや…。それは絵里から謝らんとね?」

 

 今朝の話を絵里から聞いた希は笑顔で親友を励ます。正直に云うなら希はμ'sの中でこの様な事態が起きるのを予想が付いていた。女子校で同性同士の付き合いしかしていない女の子が怖面とは反対に気は優しくて力持ちを自で行く好漢に出会えば興味が湧かない訳がない。彼女自身、彼に初めて会った際はかなり好感度は高かった。秀虎に出会っていなければそれなりに踏み込んだ付き合いをしていたかも知れない。希はあの時の出会いを思い出して少しだけ微笑むが…何処か自傷的な笑みだった。

 

(“五円玉”の効力、効き過ぎたかな…?)

 

 其処へ絵里のスマホにメールが届いたので確認すると、穂乃果からのメールであった。

 

“小鳥さんから聞いた。絵里ちゃんが怒るのも仕方ないよね、本当にごめんね。”

 

 絵里は胸が苦しくなる。…今朝、何も言わずにいきなり穂乃果の頬を叩いて家を出てしまった事を後悔していた。自分を追って来た小鳥の言う通りで穂乃果が寝呆けていなければ居間に寝ている小鳥の布団に入ったりなどしなかっただろう、あの時せめて話だけでも交わしていれば穂乃果の頬を叩くなどと云う愚行はしなかった筈であった。絵里は直ぐ様メールを打ち返し、自分の今の気持ちをそのままメールに乗せた。

 

“穂乃果は悪くなんかないよ、短気を起こした私が悪いの。

だからごめんなさい、放課後に部室でもう一度謝るね。”

 

 メールを打ち終えると絵里は机にふさぎ込み、自己嫌悪に陥った。

 

「私、馬鹿だよね…。」

 

 ふさぎ込んで顔を見せずに呟いた。希はその言葉を何処か自分にも重ねた様で、それを認めた様に返した。

 

「誰かを好きになっちゃった女の子って、みんなおバカさんになっちゃうのかもね…。」

 

 因みに石田小鳥が仕事に出た後に警察署にいる高坂夫婦から連絡があり、お昼頃には帰れるそうだ。そして一段落ついたかの様に一時限目のチャイムが鳴り、絵里は放課後までの間…穂乃果へのすまない気持ちや小鳥への未だ曖昧な好意を整理するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰りのホームルームも終わり絵里と希は部室へ向かうが、其処へメールが一通届いた。…南ことりからである。

 

“ごめん絵里ちゃん、弓道部道場まで来て!

海未ちゃんが大変なの!”

 

「希…!」

「うん、行こう!」

 

 メールを読み終えた絵里と希は只事ではないとして弓道部道場へと向かった。学校の弓道部道場の玄関口では穂乃果とことりだけではなく、弓道部の面々も慌てふためき、海未の名を呼んでいた。

 

「海未ちゃーーーん、出て来てよーーー、海未ちゃんが思ってる様な事は全然なかったんだからーーーっ!」

 

 穂乃果が名前を大きな声で呼ぶものの道場の中からはうんともすんとも音沙汰がない。絵里と希は穂乃果とことりに駆け寄り、非常時なので朝の件は脇に置いておき事情を聞いた。

 

「そっか…、二人に話したんだ。」

「うん、海未ちゃんとことりちゃんには黙っていられなくて…。」

「別に構わないわ、私も希に話したから。

でもそれでどうして海未が此処に立て隠っちゃったの?」

 

 この質問には穂乃果もことりも首を横に振る。

 

「海未ちゃん…、穂乃果ちゃんから話を聞いた時から様子が変になって…、放課後になったら真っ先に席を立って私達の部室じゃなく弓道部道場に走ってっちゃったの。」

 

 そして道場を占拠し、現在に至るそうだ。

 

「もう、コレじゃあ弓道の練習出来ないじゃない!

何とか海未を説得しなさいよ、絵里に穂乃果ちゃん!!」

 

 元弓道部部長から怒られ四人は考え込む…が、打開策が一切思い付かなかった。園田海未は頑固である、頑固者であり…恥ずかしがり屋である。そんな彼女の説得など…、穂乃果が呼んでも出て来ない彼女をどうやって道場から連れ出せると云うのだろうか。四人は思考に思考し、四人共ある決断に至った。絵里、希、穂乃果、ことり(何故か苦笑している)はシンクロしたかの様にお互いを見合わせて決断を下す。

 

『“部室行こうか”。』

『ちょおおっと待てえええっ!!?』

 

 踵を返すμ's達に弓道部全員が大声で呼び止めた。絵里達は“やっぱり”と呟いて苦笑いをするが弓道部前部長は“責任を取れ!!”とこめかみに青筋を立ててまくし立てた。…と、その時道場の引き戸が“バタンッ”と勢いつけて開け放たれ、園田海未が出て来た。しかしその姿を見たμ's四人と弓道部一同は青醒め、金縛りとなった。園田海未は弓道の袴に胸当てをし、右手に弓、左手に矢を五本握り締め…、その頭には懐中電灯を両頭脇に鉢巻で巻き縛った何時ぞやの“八つ墓スタイル”をしていたのだ。そして弓道部前部長がぼそりと呟いた。

 

「“あの格好まだやってたのね”。」

 

 それを希は聴き逃さず、疑念の眼差しを送る。

 

「あの格好をあの娘に教えたのって…、まさか!?」

 

 前部長はハッとし、口を噤んで冷や汗を垂らした。海未は完全にすわった目で正面を見据え、口をへの字にして道場から離れると、弓道部一同は元弓道部部長の掛け声と同時に海未と入れ替わる様に駆け出して道場出入り口へと入り込み“バタンッ”と勢い良く引き戸を閉めた。

 

『あっ!?』

 

 呆気に取られた絵里達は弓道部が逃げるとは予想していなかった上、あの海未の格好が弓道部の前部長が面白可笑しく教えたのだと理解し頭を抱えた。

 

「やられてもうたね…。」

「仕方ないわ、やる事は変わらないんだから。」

 

 絵里と希に穂乃果とことりは海未の前に立ち塞がり、睨み合いとなった。

 

「海未、またそんな格好して何処へ行くつもり!?」

 

 絵里の問いに海未は答える。

 

「絵里と…、穂乃果の“カタキ”を取りに石田小鳥の元へ行きます!」

 

 何とも無駄に堅い決意を露わにした海未だが、絵里と穂乃果にはどうして小鳥がカタキなのか解らなかった。

 

「海未ちゃん、何で小鳥さんが私達のカタキなの?」

「あの人は……、

あの男は………、

あの色欲魔人は貴女達をたぶらかして毒牙にかけました!!

絶対に…絶っ対に…絶っっ対に許さないのです!!」

 

 それを聴いた絵里は赤い顔であんぐりと開いた口がふさがらなかった。海未の言い方はまるで自分と穂乃果が石田小鳥と“〇〇〇〇”を持ってしまった風であったからだ。…しかし穂乃果はキョトンとした表情で頭の上に幾つも“?”を浮かび上がらせていた。

 

「海未ちゃん…、“毒牙”って…、なに?」

 

 絵里と希とことりはとても素直にそれを尋ねた穂乃果が輝いて見えた。

 

「くっ、眩しいよ穂乃果ちゃん!?」

 

 希がふざけて両手で顔を隠す。…そんな彼女に絵里がコツンッと軽くチョップをし、希は“ニャンッ”とちっちゃな悲鳴をもらした。その傍らで穂乃果から質問を受けた海未が顔を赤らめて答えられずに固まっていた。そんな彼女に穂乃果は追い討ちをかける。

 

「う~ん、もしかして…私と絵里ちゃんが小鳥さんに何かされた…とか?」

「そっ、それはですね…、こっ、小鳥さんが…二人に…」

 

 もう真っ赤な顔の海未がしどろもどろになって来たのを狙い、少し冷えた絵里が更に追い込んだ。

 

「私達が小鳥さんに一体“何”をされたって言うつもりかしら、海未…?」

 

 絵里からも攻撃を受けた海未は打ちのめされた様でペタリと座り込みそのまま横たわり、やはり半ベソをかき出した。

 

「それは私の口からは言えません!!

穂乃果が“自分が小鳥さんと寝て絵里を怒らせた”って言うから、私ぃ~!」

 

 海未は地べたに寝そべりうつ伏せになりエンエンと泣き出してしまい、絵里と希は穂乃果を“ジトリ”と見つめた。

 

「ヤダな~、絵里ちゃん希ちゃん顔が怖いよ?」

「全く~、結局穂乃果の言葉足らずな説明が原因なのね…。」

 

 絵里は大きく溜め息を吐きはしたが、穂乃果に笑みを見せ彼女を抱き締めた。

 

「えっ、絵里ちゃん!?」

「穂乃果、朝は貴女の頬を叩いてしまってごめんね。

私、貴女が寝坊けて小鳥さんの布団に入り込んだ事自体に嫉妬してしまったの。貴女がワザとじゃないとちょっと考えれば解るのに…、自分のその時の感情を抑えようとしなかった。…本当にごめんなさい。」

 

 耳元でそう話す絵里。穂乃果の目尻に少しだけ涙が溜まり、絵里の背中に両手を回す。

 

「絵里ちゃんは悪くない、私が不用心だったの!

寝坊けてたなんて理由にならないから、小鳥さんを好きな絵里ちゃんが怒って当たり前~…ぇええ!?」

 

 二人共謝って良い雰囲気かと思われたが、穂乃果が絵里の小鳥に対する気持ちを口に出してしまい、絵里から“梅干し”を食らう羽目となった。絵里は微笑みのまま眉をつり上げて彼女のこめかみ両方を拳で万力の如くグリグリと絞め上げた。

 

「穂乃果ぁ~、貴女ちょっと慎んだ言葉を選んで口にした方が良いと思うわよ~?」

「いたいたい、絵里ちゃんごめ~~ん、めんごして~~~!?」

 

 結局は穂乃果が謝り、絵里達は海未の暴走を未然に阻止する事が出来たのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私…、あまり良い扱いをされていない気がします!」

 

 生徒会室で副会長の海未がボヤキ、書記のことりと生徒会長である穂乃果が苦笑いを浮かべながら聞いていた。因みに今日は絵里は穂乃果が生徒会の仕事で遅くなるので希と一緒に亜里沙と雪穂を迎えに行くのであった。

 

「だって海未ちゃん…、最近直ぐスイッチ入っちゃうから……ハハ。」

 

 ことりはもう笑うしかないと思い、申し訳なさそうに小さな笑いをして見せた。

 

「ことり…、何か傷付きます…。」

「えっ、海未ちゃんごめんなさい!?」

 

 ドンヨリと沈む海未と彼女をなだめることり。そして穂乃果はと云うと…書類の上にうつ伏せになって何故か海未以上に沈んでいた。ことりは取り敢えず海未は置いておきうつ伏せて溜め息を吐く穂乃果に寄り添った。

 

「どうしたの、穂乃果ちゃん?」

「ん~、ことりちゃん、私厭な娘かも知れない。」

 

 穂乃果の気になる言葉にことりが聞き返す。

 

「何で嫌な娘なのかな?」

「私ね、朝…寝坊けて小鳥さんの布団に潜り込んじゃった事…、実はあまり反省してない。…したくないとも思ってる。

絵里ちゃんと仲直り出来たのは嬉しいけど…、反対にまた、小鳥さんの腕の中で寝たいな~なんて思ってる自分が心の中にいるの。」

 

 海未とことりは穂乃果の本心を聞いて戸惑い…返す言葉がなかった。彼女の話はまるで…、まるで石田小鳥を好きになってしまったのだと云う事と同じなのだから…。

 ことりはふと窓から外を見ると、絵里と希が校門を出る所であった。彼女は不安を感じながら此方に気付いていない二人を静かに見送り、うつ伏せのままでいる穂乃果に向き直り…無言のまま、彼女の肩に手を優しく添えた。この時、ことりは絵里と希を見送った際に見落としていたものがあった。二人の後を付ける怪しい二つの人影をことりは気付く事が出来なかったのであった。




海未「園田海未です。
次回なのですが…、絵里がチンピラさん達にゲッツされるお話です。
…ゲッツ、ゲッツ。




八つ墓村なんか知りませんから!」
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