ラブライブ~そのまんま美女と野獣~   作:濁酒三十六

28 / 35
ラブライブ更新、本作ラストバトル開始です!


獣達が吼える夜

 石田小鳥と上田秀虎が絢瀬絵里の救出に向かい、高坂穂乃果達μ'sメンバーは病院側におおまかな話をして受付場所に居させてもらえるよう頼み込んだ。この病院が西木野真姫の実家で経営しているのもあり、寸なりと聞いてもらえた。受付場所の長イスに座り…皆口を閉ざして小鳥と秀虎の頼み事を頭の中でリピートさせる。

 二人の頼みとは…、金城が指定した時間から更に一時間後に警察へ通報する事であった。即ち小鳥と秀虎が出てから二時間後に矢澤にこが警察へ通報する手筈になっていた。時間内に助ける事が出来れば小鳥が穂乃果の携帯に連絡するのだがこの場合も警察へ通報する。しかし連絡がなく二時間経った時でも通報をする。前者は絢瀬絵里と云う拉致被害者の救出と云う大義名分で多少の免罪は認められるかも知れない。だが後者は幾つもの悪い状況しか想像出来ない。μ's達はその肩背中に背負わされた重く辛い責任感により今にも潰されてしまいそうな気持ちでいた。

 

「何で…、わたし…私が警察に通報する役目なのよ……っ!

怖いよぉ…!?」

 

 震えた小さな声を振り絞り、小さな肩も震わせるにこ、普段強気なのが取り柄で仲間の前でも見栄を張り、我が道を真っ直ぐに行く娘が皆がいるにも関わらず弱音を吐いていた。真姫は彼女の隣に座り、そっと肩を抱いて寄り添う。真姫達は知っている、矢澤にこと云う少女がプレッシャーにあまり強くない少女であると…。小鳥と秀虎は小鳥が絵里以外のメンバーで穂乃果の携帯番号しか知らず、秀虎は希の番号しか知らないので小鳥から連絡を受けるのは穂乃果で警察に通報する役目を三年生であるにこに任せたのである。しかしにこは弱音は吐くが他のメンバーに変わってくれとは言わなかった。プレッシャーに弱い反面責任感はとても強い。頼られる事も嫌いではない、こう見えても矢澤にこは矢澤家長女…お姉ちゃんなのだから…。

 

「真姫、今何時!?」

「夜の〇〇時〇〇分よ。」

 

 十分が過ぎ…。

 

「真姫、今時!?」

「まだ〇〇分。」

 

 十五分が過ぎ…。

 

「……真姫、今…」

「まだ全然経ってないわよ!」

 

 二十分経過…。

 

「………真姫、今何時よ!?」

「今、オヤジ…。」

 

 いい加減にしろと言わんばかりに真姫が投げやり応えると凛と花陽にことり…海未までドッと笑い声を上げた。

 

「アハハハハッ、真姫ちゃんがオヤジ、オヤジだって!」

「真姫ちゃんもフヒッ、にこちゃんもヒヒッ、こんな時に笑わさないでよおっ、ヒハハハッ!?」

「ごめんね、二人とも。…でもね、二人が悪いと思うよ、アハハハハッ!」

「ハハハハ、にこも真姫も漫才師になれますよ、きっと♪♪」

 

 最初は笑われてムスッとしていたにこと真姫も皆があまりに楽しそうに笑うので自分も可笑しくなり、声を出して笑った。さっきまで沈みきっていたμ'sの面々は何かを振り切ったかの様に笑い、一緒に笑っていた穂乃果はふと思った。皆が一緒に居てくれて本当に良かった…と。

 

(私とにこちゃんだけだったら、気持ちが堪えられなかったかも知れない。みんなが絵里ちゃんと希ちゃんの為に此処にいるんだ…。

だからお願い…、絵里ちゃんが無事でありますように…。

…小鳥さん!)

 

 穂乃果は心の中で石田小鳥を思い浮かべ、先日に完成したラブライブ地区予選に歌う曲を口ずさんでいた。

 

「“不思議だね、その気持ち…、空から降ってきたみたい…”」

「穂乃果、その歌…」

 

 海未に穂乃果は頷き、他のメンバーも穂乃果に注目する。穂乃果は何も言わず、また歌を口ずさんだ。海未も静かに微笑んで穂乃果に続き口ずさみ、ことり…にこ…、真姫…花陽、そして凛と集まって歌を歌う。通り過ぎる看護士はその歌声を聴いて彼女達に視線を向けるが特に注意する事なく…心なしか歩く速度を落として通り過ぎた。

 穂乃果達は小さな声ではあったが、ハッキリとした発声でハモり、二人いない中で皆で同じ様にパート関係なく歌いその想いを歌にのせた。自分達の心を落ち着かせ、希が安らいで眠れるように、小鳥と秀虎…そして絵里が無事に戻って来れるようにと、強く祈った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃工場の敷地内に五~六台の車両が光々とライトを付けて無造作に駐車していた。車両には小鳥の働くガソリンスタンドに乗り込んで来た物…そして絢瀬絵里を攫った黒いミニバンもあり、周囲には何人かのガラの悪い若者達がビール等で酒盛りをしており、車の中でも同じく酒盛りをしていた。黒のクラウンの車内でも運転席~助手席に座った男二人がビールをグビグビと飲んでおり、その後部座席にはこのチーマー集団の金城勝利がたの手下共とは違いウィスキーを飲んでおり、その隣に拉致された絢瀬絵里が悔しげな顔をして座っていた。着ていたロングコートは脱がされ、先程までされていたボールギャグと足の拘束は解かれたが両手は未だ繋がれ、右頬が赤く腫れており口端も少しだけ血が滲んでいた。酒盛りが始まった際に金城に酒を注ぐように言われたが断固として拒否したので右頬を叩かれたのであった。

 

「絵里ちゃんよ~、あんま調子くれんなよ?

取り敢えず今は何もしねえがよ~、QPぶっ殺した後でオメエには俺等の相手をた~っぷりしてもらってその後は何処ぞのSMクラブか売春宿にでもうっぱらう予定でいるから覚悟決めとけや。」

 

 金城の汚い言葉に絵里は顔を背けて無言を通した。

 

(頬が痛い、地区予選までに治るかな?

みんな心配してるだろうな、私がいなくちゃ練習が疎かになっちゃうかも知れない。

ラブライブ、高校最後のチャンス…、絶対に出たい!みんなで頑張って来たんだもん、絶対に優勝したい!!)

 

 ラブライブやμ'sの皆の顔が頭の中をよぎり、亜里沙…、祖母、そして小鳥の顔が脳裏を浮かんだ。

 

「小鳥さん…、助けて、小鳥さん…。」

 

 絵里は顔を隠し、小鳥の名を呼びながら啜り泣く。その哀れな姿を見ながら金城と二人の手下が上機嫌に笑い出した。

 

「おいお前等、絵里ちゃん泣いちったぞ!

誰か笑わせてやれや!」

 

 悪党達の悪ふざけが始まる…、かと思われた時に前方からハイビームでライトを照らす車両があった。…と同時に金城側のドアがコンコンと叩かれ、舎弟の一人が知らせに来た。

 

「兄貴、“QP”が来やした!」

 

 其れを聞くや金城はパワーウィンドウを開けて舎弟の髪の毛を引っ張った。

 

「来たじゃねえだろがあ、何で誰も気付かねーんだよボケがあっ!!

女を車から降ろせ!」

 

 金城は髪の毛を放して黒いクラウンから降り、絵里もクラウンから引っ張り出された。腕を掴まれ不快感が全身を走り、腰砕けに膝が折れた絵里だが、ライトを後ろに立つ二つの影を見て茫然とする。目が慣れて影からうっすらと顔が浮かび上がり、絵里は未だ繋がれたままの両手を口元まで上げ…心の底から会いたかった男の姿にまた涙が溢れてしまった。

 

「小鳥さん…、コトリさん……!」

 

 もう一番信頼を寄せていた男性が助けに来てくれた事実に絵里は歓喜が堪えきれずに声も出ず、その場に泣き崩れる。小鳥はその姿を見、彼女の名前を叫んだ。

 

「エリイイイ、無事かああっ!?」

 

 嗚咽が止まらず、声を出せずにいた絵里だが、小鳥に分かる様にポニーテールが振り上がる程に大きく頭を縦に振った。小鳥も共に来た秀虎も少し安堵し、敵の大将とも云える金城に視線を向けた。

 

「金城、随分と絵里を泣かせたみたいじゃねえか…?」

 

 小鳥の目が鋭い眼光で金城を睨み、金城はサングラス越しに小鳥を睨む。

 

「だからどうした、女の泣きっ面なんか飽きる程見てきたぜ。

しかしその中でも絵里ちゃんのは上位に入るわな~。

もう“小鳥さん、小鳥さん助けて”ってよ~、もう大爆笑、その場で処女奪ってやろうと思っちまったぜ~っ!」

 

 金城の下劣な挑発に対し、小鳥はまるで熱が冷めるかの様に無表情になっていく。…が、その瞳は金城を逃さずに映し出し、指をコキコキと鳴らして臨戦態勢を取った。

 

「そうか、テメエそんなに死にてえか。

絵里、明日にはゆっくりと休めるからな。もう少しだけ我慢していてくれ。」

 

 絵里は小鳥の言葉を信じて頷く。その二人のやり取りを見た金城はいきなりフック型の義手を付けた左腕を蛇の様に絵里の腰に回し自分の側に引き寄せた。

 

「QPよ~、お前絵里ちゃんが人質だって事忘れてねえか?

少しでも俺の子分共に手を出してみな、この雌餓鬼の頭吹っ飛ばすぜ?」

 

 そう言って絵里のこめかみに拳銃の銃口をくっ付けた。絵里は全身を強ばらせ、自分に突き付けられている凶器を横目に見た。まるで刑事ドラマか映画の様なシチュエーションだが、今“ソレ”が現実に自分の身に降り懸かっているのだ。絵里は額に脂汗を滲まみ、腰が抜けそうになるのを力の限り我慢した。しかし小鳥は焦る訳でもなく金城から目を離さず、表情も崩さずに話した。

 

「お前こそ忘れてねえよな、絵里に指一本でも触れた時は…一生病院の天井しか見れない体にしてやるってな!

俺は約束を守るぞ…、キンジョウ…!」

 

 その凄みは傍らにいる秀虎も息を呑む程で、金城は堪えてはいるが他の手下共は完全に怯んでいた。金城はそれに気付き、小鳥の足下に銃を一発撃ち放った。パンッと云う音に絵里は戦慄き、舎弟達も目を見開いて金城を見た。

 

「ビビるんじゃねえ、ビビッたら終わりだぞテメエ等!

こっちには人質がいる、奴は絶対に手を出したりは出来ねーんだ!

…お前等、QウPイイイをブチ殺せえええっ!!!」

 

 金城の号令で五人のチンピラが金属バットや鉄パイプを振り上げて石田小鳥に駆け走った。そして一人が小鳥に鉄パイプを振り上げた時、何と待ちかまえていたかの様に小鳥の右ストレートが顔面に迫り炸裂した。手下の一人は鼻血を糸引きながら2m以上は確実に宙を飛び、落ちた場所から起き上がれずにそのまま気絶した。襲いかかろうとした四人は足に急ブレーキをかけてその場にいた…金城、秀虎、そして絵里を含めた全員が総毛立った。特に彼の実力をその身に刻んだ事のある秀虎は身震いすらしていた。

 

(ハハ…、よくあんなパンチを幾つも喰らって死ななかったよな…高三の俺!)

 

 

 そして…最も恐怖を感じていたのは紛れもなく金城であった。数年前、石田小鳥を“私刑”にかけようとしたが返り討ちに遭い仲間の二人が病院送りとなり、自身は小鳥の威圧に負けて惨めな敗走をした。その後直ぐに我妻涼と対立して左手を潰され破門となったのだ。金城にとって恐ろしくも忌々しい男はチンピラの集団を前にして威風堂々と仁王立ちとなった。

 

「俺にとって、人質はお前等全員の“五体”だ!!

腕の一本や二本程度は情けだと思えや!!!」

 

 今、石田小鳥&上田秀虎VS金城勝利率いるチンピラ集団の火蓋が切って落とされたのであった。

 




小鳥「石田小鳥です。」

金城「金城勝利です。」

小鳥&金城『二人揃って、クズです。』

金城「つうか何で俺がテメエと揃わなきゃなんねーんだショッカー野郎!」

小鳥「うるせえ、黙れハゲ。」

金城「んだとコラ、テメエだってハゲじゃねえか、このハゲ!!」

小鳥「バカめ、俺のは丸刈りっつうんだ学のないハゲめ。」

金城「ぶっ殺すぞ、このブサイクハゲ!!」

小鳥「ブサイクハゲだと~、このサングラスハゲ!!」

金城「デカ物ハゲ!!」

小鳥「目立ちたがり屋ハゲ!!」

金城「たい焼きハゲ!!」

小鳥「ちん毛ハゲ!!」

金城「尻毛ハゲ!!」

小鳥&金城『ハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲハゲ…!!!!!!!!!!!』

絵里「ハゲハゲうるっさいです、丸刈り兄弟!!」

小鳥&金城『ハイ、申し訳御座いません…。』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。