ラブライブ~そのまんま美女と野獣~   作:濁酒三十六

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前半悪ふざけで後半とっても真面目です。


これはきっとアナタの危機?

 翌日、アイドル研究部部室ではちょっとした騒ぎとなっていた。昨日の穂乃果の家の前で遭遇事件を穂乃果とことりがメンバーのみんなに話し、更に彼女達の怖面の男性に対する色々な意味での興味が強まってしまったのである。まして穂乃果の実家…“和菓子屋穂むら”に寄っていたなら其処で遭遇する可能性も高くなり、にこや凛は張り込みをしようなどとも言い出していた。

 

「…で、海未は大丈夫だったの?

今部室にいないけど…。」

 

 真姫がことりに尋ねる。

 

「海未ちゃん、昨日気絶した後ずっと黙り込んじゃって…。

今日の朝も私と穂乃果ちゃんが挨拶しても上の空、授業中もずっと思い詰めた顔をしていたわ。」

「流石に…心配なんだけどね…。」

 

 ことりと穂乃果が深い溜め息を吐くと、部室の扉のガラスに人影が映りガラリと開け放たれ、その向こうに立った人物を見て一同は一気に青醒めた。

 開け放たれた出入り口には弓道の袴姿、右手弓を握り締め、そして…頭に懐中電灯を鉢巻で括り付けた園田海未が眉を吊り上げ、すわった目付きで皆を一睨みした。

 

「帝都に危機が迫っています!」

『…ハイッ!?』

 

 メンバーが一緒に聞き返して暫し沈黙…。

 

「帝都に危機が迫っています!!」

“何故二度繰り返した!!”

 

 穂乃果達は突然某名探偵シリーズのホラースタイルで意味不明な言動を口にする海未を本気で心配になって来た。絵里は恐る恐る近付き、そっと肩に手を添えて聞いた。

 

「海未…、どうしてそんな格好をしているのかしら…?」

「…絵里、希、貴女達の言う通り…あの人物はヤクザなどではありませんでした。

…そう、そんな生易しいモノではなかったのです!

…あれは、あれは帝都東京、果ては日本国を滅ぼさんとする“魔人”なのです!!

さあ皆さん、私と一緒に魔人を倒しましょう!!」

 

 海未の高らかな口上は空しく部室に響き、また沈黙…。言葉がないとはこの事である。しかし、にこは呆れ顔を海未に向けると敢えて冷静を保ち、海未に言い聞かせた。

 

「海未…、アンタねぇ…。今私達はラブライブに出場出来るか否かの瀬戸際にいるの。

こんな結滞なお遊びをしている暇があるならレッスンを優先するべきではなくって!?」

「スゴいにゃ~、にこちゃんがマトモに見えるにゃ~!」

 

 独特の口調で凛がにこを誉める(誉めたつもり)と、にこは凛の両のホッペをつねくった。

 

「何、いつもの私はマトモじゃないとでも言うの!?」

「にっ、にほひゃんひはいよ~!!」

 

 凛の横やりでにこの正論は無視され、海未は弓を窓側に置いて希の前に立ちガシッと両肩を掴んだ。

 

「えっと…海未…ちゃん…?」

「希、私に“破魔矢”を百本程譲って下さい!」

 

 …重症であった。それだけあの怖面の人物の顔に衝撃を受けたのであろうか。ことりは穂乃果の腕に顔を埋めて泣き出し、穂乃果は彼女の肩を抱いてあやす。

 

「もう、海未ちゃんコッチ戻って来てよ~!」

 

 希は数秒…無言を通し、ジッと海未の目を見据えた。海未は…恥ずかしげに目を反らす。

 

「海未ちゃん、破魔矢は年始にならんと買えませんっ!」

 

 ガーーーーーンッ!!

 海未はその一言で頭を殴られた様な衝撃を覚え、希から離れ後ろへたじろぐ。両膝を付いて四つん這いになってガクリと頭を落とした。

 …が、急に頭を上げて叫んだ。

 

「“将門の巫女”がそんな事でどおしますかっ!?」

「私はアルバイトの巫女や、いい加減戻りなさいっ!!」

 

 ビターーーーンッ、と希は海未の両頬を挟み込む様にビンタを叩き込んだ。

 挟み叩かれた両頬の痛みは海未を正気に戻し、泣きながらも直ぐに皆に土下座をして謝った。しかし絵里はあの怖面の男性の影がこんなにもμ'sに影響を与えるとは正直思いもせず、後で希と穂乃果で相談をして何とかしようと決めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰り道、穂乃果と希の三人で今回の問題人物となる怖面の人物には一度会って正体を確かめる必要があると結論し、明日以降出会した人が彼を捕まえて皆に会わせる役目を負うと決めた。話し合いには差程時間は取らなかったが、その前の園田海未乱心の解決にかなり時間が経ったせいで外は暗くなってしまっていた。

 絵里は暗い場所は得意ではない。電灯の真下を出来るだけ歩き、いつも通る横断歩道まで来た。自宅のマンションまで後少しと云う所なので足早に渡ろうとすると向かい側から五~六歳程の男の子が走って来、同時に車道からアクセルを踏んだエンジン音が聴こえた。絵里は横目で車道を見るとかなりのスピードで2tトラックが無灯火で走って来ており、男の子は全くトラックに気付かずにいた。

 

「危ない!!」

 

 咄嗟に絵里は鞄を投げ捨てて男の子を助けようとしたその時、長く太い腕が伸びて彼女を遮り、大きな背中が視界を塞がれ足を止めた。絵里はその背中に見覚えがあり、目の前を走り男の子を抱き込むあの男性の後ろ姿を見た。そして次の瞬間、トラックは男の子を抱き込んだ男性と激突、男性は大きく跳ばされながらも男の子を離さずに背中からアスファルトへと叩きつけられた。絵里は頭の中が真っ白になりそうになるが向かいから男の子の母親か、泣き叫ぶ女性が見えて我に返り携帯を取り出して警察へ連絡して救急車を要請した。

 暗い空は更に暗くなり、倒れた男性の腕の中で男の子の鳴き声が聴こえて絵里と母親が駆け寄ると男の子は元気で掠り傷程度しかなかったが、絵里は倒れ伏した男性を見て声にならない悲鳴を洩らす。男性はまるで動かず、頭に裂傷を負って傷口から流れた血は地面に静かに広がっていた。

 




絵里ちゃんの膝枕で介抱されたいっす!!
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