ラブライブ~そのまんま美女と野獣~   作:濁酒三十六

5 / 35
五話目更新です。


彼女はランパブを知らないらしい?

「ええっ、本当なの絵里ちゃん!?」

 

 驚きを隠せずに立ち上がった穂乃果は周りの視線に気付いて恥ずかしげに座り直した。今、絵里と希…穂乃果はファミレスに三人でおり、絵里に“事故”の時の話を聞いて穂乃果がビックリした所である。

 

「えぇ、このメモを信じるなら…。」

 

 絵里の席の前には石田小鳥本人がくれたメモ用紙が置いてあり、穂乃果と希はマジマジとそのメモ用紙に視線を落としていた。

 

「あの“人”の名前が石田小鳥…、小鳥、小鳥さん、小鳥君、…ことりちゃん?」

 

 途端、穂乃果と希は両頬をぷくぅっと膨らませて“プフ~ッ”と吹き出しそうになり、二人共テーブルに突っ伏した。

 

「んぷぷぷぷ…、あのこわ顔で“小鳥ちゃん”、はっ、反則過ぎる~!?」

「あっ、あかん穂乃果ちゃんウチ今それ駄目、笑わせんといて!?」

「将門の巫女よ、我は魔人…石田小鳥なり!」

「プやっ、だから、ウチは違っ、ププフ~、ウプププ!!」

「…この前、海未も言ってたけどソレ何のネタなのよ?

それにいくら何でもそんなに笑うのは石田さんにも、ことりにも失礼よ!」

 

 絵里に叱られて二人はおふざけを止め、対応策を考えた。問題とするのは怖面の人物の名前が石田小鳥で絵里達の友達である南ことりと同じ名前である事。もしそれをことりが知ってしまったなら…、園田海未以上に奇天烈な行動を取るやも知れない。…それは既に“伝説のメイドさん騒動”で実証済みである。穂乃果はふと、思った事を口にする。

 

「もし、小鳥さんとことりちゃんが出会って恋をして結婚したら…石田小鳥さんが二人になってしまう!?」

 

 其処で穂乃果と希はまたしても突っ伏、最早顔も上げられない程になってしまった。絵里はこんなにも友達に蔑ろにされる南ことりに心底同情した。

 

「解りました、もう埒が開かないから今この場に“本人”を呼んで話をしましょう!!」

 

『へっ!?』

 

 二人は絵里を驚き顔を上げるが、既に絵里は携帯を左耳にあてており携帯端末からは小さく呼び出し音が聴こえていた。

 

《おいすぅ、俺の名前は~石田あ小鳥~だ~。》

 

 ふと以前話した時と声が違う様な気がしたが、電話越しではよくある事と取り話し始めた。

 

「あっ、私、あの事故の時に一緒だった絢瀬絵里と申し…」

《只今小鳥はランパブ“エリチカ”でえろ~い事しております。ぐははははっ!!》

 

 それを聞いた絵里の脳髄がビシイッと電気が走ったかの様に麻痺し、無言で携帯より流れる“ランチキ”騒ぎを聞き流す。

 

《あっ、てめえ“ツネ”、何人の携帯いじってんだコラッ!?》

《ぐははははっ、お前の留守電は俺様が支配してやったぜブサイク野郎!石田あ小鳥は恋人ビシューン!!》

《ひはははははっ、もっとやったれツネ!》

《クラ、幸三、ツネ煽ってんじゃねえぞ、殺すぞこの野郎!!》

《いいじゃねえか小鳥、兎に角飲め飲め!》

《木場テメエは寛ぎ過ぎだ馬鹿、此処は俺んちだボケ!!》

《テメエ誰が馬鹿でボケだコラアッ!?》

《やるかコラア、表出ろクラアッ!》

 

 …と、留守電は其処で途切れた。あまりの怒鳴り声の連続で耳から携帯を離して聴いていたが、留守電の声はとんでもなく大きく穂乃果や希だけでなく周りのお客にも聴こえてしまっていた。

 どうやらふざけて録音した留守電の応対音らしかったのだが、女子高生が聴くにはあまりにも粗野で乱暴な怒鳴り声であった。穂乃果…希…絵里は黙りこくってしまい、神妙な空気が漂う。

 

「絵里ちゃん、希ちゃん…。」

 

 先に口を開いたのは穂乃果であった。希は彼女に反応して返事を返す。

 

「なに…穂乃果ちゃん?」

「今のって…、どちらが勝ったんだろ?」

 

 希は首を傾げ苦笑した。

 

「あれ、気にする所其処?」

 

 穂乃果の質問は取り敢えず置いておき、希は携帯より聴こえた“ランパブ”と云う単語が気になり…絵里の様子を伺う。

 

「エリ…チ、大丈夫…?」

「えっ、えぇ、大丈夫よ希。

…それより…、ランパブって、何?

エッチな事…する所なの!?」

 

 コレは厳しい質問だと希は思った。ハッキリ言って絵里は御嬢様気質であり、妹もいてその娘もまた御嬢様気質で俗世に疎い。そんな彼女にランパブなどと云う風俗飲酒店の名前と彼女が慕う祖母が付けてくれた“愛称”が同じ呼び名などと知ったら卒倒してしまいそうだ。

 そして何より穂乃果から裏切りに等しい一言が飛び出した。

 

「私も知らない、希ちゃんは知ってるの?」

 

 その時、希は苦笑の裏側で穂乃果を往復ビンタをする妄想に取り憑かれていた。

 

(こっ、こん娘は~、かまととぶってコッチに話を振りおってからに~!?)

 

 しかし絵里と穂乃果は希なら知っているかもジッと見つめ、確かに知ってはいる希だったが此処で答えたら花も恥じらう乙女として大切な何かを失ってしまう気がし、その答えをゴクリと呑み込んだ。

 

「うっ、ウチも分からないかな~、ランパブ?」

 

 少々落胆気味に絵里と穂乃果は視線を落とし、小さな溜め息を吐いた。

 

「そっか、希ちゃんにも知らない事はあるんだね。」

 

 今日に限っては少々穂乃果の無邪気な一言にカチンと来てしまった希であった。そして今日はこれまでとしてお店を出る三人。絵里は穂乃果と希にもう一度電話をしてみると伝えた。

 

「希、穂乃果、名前の一件は今夜また私が石田さんに電話をかけてお話ししておくわ。

今日はありがとうね。」

 

 絵里は二人と別れ、自宅マンションへ戻ると…、玄関には小さなローファー靴が一束丁寧に置かれていた。妹の亜里沙が帰っている様だ。

 

「あっ、お姉ちゃんお帰りなさい♪」

 

 居間に行くと姉である絵里と同じ金髪でロングヘア、大きな碧の眼をした幼さの残る美少女…絢瀬亜里沙が制服エプロン姿で迎えてくれた。どうやら夕飯の支度をしてくれていた様だ。

 

「只今、亜里沙。」

 

 絵里は亜里沙と二人だけの夕食を楽しみ、妹が先にお風呂に入っている間に自分の部屋でもう一度石田小鳥に電話をしてみた。ベッドに座りながら鳴り続ける呼び出し音に耳をすまし、絵里は緊張感を滲ませて彼が出てくれるのを待った。

 そして呼び出し音が鳴り終わり、男性の声が聴こえた。

 

《もしもし、誰?》

 

 粗野な物言いではあったが、聞き覚えのあるその声に安堵して絵里は応えた。

 

「もしもし、この前の事故で会った…絢瀬絵里です。その、本日は……」

 

 何やら反応が薄い気がし、絵里はまたもや変な応対音なのではと勘ぐるが、いきなり石田小鳥の大きな声が飛んで来た。

 

「お~おお~お、あん時の“JK”か。

何だ、あの事故で何かあったのか!?」

 

 ふと石田小鳥の口から出たJKと言う聞き慣れない言葉が気になったが、其れは取り敢えず置いておく事にした。

 

「いえ、そうではなく、お話ししておきたい事がありまして…」

 

 絵里は先ず自分が彼と会う約束をした高坂穂乃果の友達である事を話し、今度会うグループの中で彼と同じ名前の女の子がいる事を伝えた。

 

《…んんん…、そりゃあ難儀だな~、うん。》

 

 言葉的には考えてはくれている様だが、口調としてはやはり人事であった。絵里も彼の反応を感じて少し冷静に考えてみた。…男と女が名前が同じなんて事はよくある事象だ。いくら“小鳥”と“ことり”が珍しいとはいえ、同じ名前の男女が身近にいるなんて云うのは別に珍しくもない。

 しかし、南ことりは一度石田小鳥と出会している。もし彼女が彼と同じ名前と知った時、やはり相応の騒ぎが予想される。そしてそれは東條希と高坂穂乃果も意見は一致、更に言えば穂乃果は海未と三人ことりとは幼馴染みの関係である。そんな彼女のお墨付きである以上は確率は格段に跳ね上がった。

 

《まぁ、その場では下の名前は言わねえ様にするさ。

俺は頭は悪いが物分かりは良い方だぜ。》

 

 石田小鳥のちょっとした冗談に絵里はクスッと小さく笑う。

 

「ありがとうございます、みんなには私から伝えておきますね。」

《…しかしな…、何で俺なんかと話がしてえのか、さっぱり解らねえな?》

 

 石田小鳥は自嘲気味にそう言い、絵里も何故かと思う。彼女は近所の横断歩道で出会い、皆から噂などを聞いて無視出来ない存在だと判断した。しかし何気に考えると、何て事はないかも知れない。興味が湧いて話をしたくなっただけなのだろう。

 怖面で体は大きくもお年寄りを敬える優しい男性である彼と電話をして、絵里は素直にそう思った。穂乃果達別のメンバーは分からないが…口では兎も角、内心では差程危険な人物とは感じていないからこそ会ってみたいと思ったのだと信じたい。

 

「今週の日曜日、楽しみにしていますね、石田さん。」

《俺は既に胃がキリキリと痛いぜ。》

 

「胃が痛い程、九人の女子高生に囲まれるのが楽しみですか?」

 

 冗談でちょっとした意地悪を言ったつもりの絵里だったが、向こうから突然叫び声が轟いた。

 

「きっ、きゅうにんだあああっ!?!?

……無理だ、日曜日はナシだ無し!!

あの和菓子屋の娘にも言っといてくれ!」

 

 プツリと通話は途切れてしまった。絵里は携帯画面を呆然と見つめ、ゆっくりと約束を断られてしまったのを理解した。

 

「…そう…よね、九人の女子高生の中に男性が一人と云うのも、違和感あり過ぎかもね…。」

 

 そう呟いてベッドに寝っ転がる絵里。

ふと思ったが、彼が来なければことりとまた顔を合わせる必要もなく、一度は考えた二人を会わせない方法が成立しただけであった。…しかし…。

 

「釈然としない…。」

 

 何故かは解らないのだが、あれだけ悩んだ挙げ句が相手のキャンセルで片が付いてしまうのはどうにも納得が出来ない彼女で…それこそ周りにも振り回されてあれやこれやと悩んだ結果がコレでは正に不完全燃焼である。

 そして…絵里自身がもう一度、石田小鳥に会いたいと思っていた。

 

(何で…なのかしら…?)

 

 父親以外の異性と個人的に関わってしまったのが理由なのだろうか、しかし彼女にだって好みはある。やはり顔立ちの整った所謂イケメンと云われる存在に憧れてはいる。彼…石田小鳥は外見だけで言うならNGである。なのにあの大きな背中と怖面ながらも子供みたいな笑顔が絵里の脳裏に映し出されていた。…少し、胸が苦しくなった。

 

「本当になんで…?」

 

 其処へ部屋のドアがノックされ、亜里沙の声が向こう側より聴こえた。

 

「お姉ちゃん、お風呂終わったよ。」

「うん、分かった。」

 

 お風呂の用意をして部屋のドアを開けると、其処にバスタオル一枚を体に巻いた亜里沙が寒そうにして立っていた。

 

「何て格好してるのよ、風邪引くわよ!」

「ゴメン、何かお姉ちゃん…思い詰めた顔してたから心配になっちゃって。」

 

 それでも下着くらい着れば良いだろうと妹を窘める絵里だが、彼女同様で妹も少し抜けた所がある様である。絵里は亜里沙を背中から抱き寄せる。亜里沙は背中より伝わる姉の温もりに顔を緩ませる。

 

「私は大丈夫よ。ほら、部屋まで送ってあげる。」

「うん。」

 

 絵里は亜里沙を部屋に入れてバスルームに入る。今日は石田小鳥の事を考えるのは止し、湯船に体を沈めた。

 




予定になかった絢瀬姉妹のお風呂シーンを書いてしまった!
亜里沙のバスタオル姿を妄想してみんなで悶えよう!

後エリチのランジェリー姿も妄想して血の海に沈もうぜ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。