ありそうでなさそう   作:壬生咲夜

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こんな86はちょっとイヤだ 2

 

この時ほど、フレデリカは己の異能に後悔したことはない。

 

共和国から流れ着いた86の少年少女らと同居することになり、そこそこの関係を築き上げてきた頃の事だ。

 

ふと、自身の異能“見知った相手の過去と現在を覗き見る”が発動。

対象は保護した86らの隊長であるシンエイであった。

 

 

申し訳ないと思いつつも、彼ら彼女らの深い信頼関係を羨み、その根本となる旅路(戦歴)を知りたいと思ってそのまま覗き見ることにした。

 

 

幼馴染からの罵倒と決裂。

 

突如、家から連れ出され、知らない場所(施設)での生活。

 

出て行ったまま帰ってこない両親。

 

怒りに染まって首を絞めつけてくる兄。

 

戦場で一人だけ生き残り、「なぜお前だけと」罵声を浴びせる整備士

 

“死神”と恐れられる自分に生き残って(着いてきて)くれたライデン。

 

戦友(仲間)たちとの何気ない日常。

 

侮蔑した白豚のお姫様(レーナ)を少しずつ認めていく日々。

 

一人、また一人と欠けていく戦友(仲間)たち。

 

 

そのあまりの過酷な過去にフレデリカの胸は締め付けられる想いでいっぱいだった。

 

 

 

次のシーンに移るまでは

 

 

 

≪フレデリカちゃまぁぁぁああああっ!!!≫

 

「んん?」

 

フレデリカの眼は点になった。

 

なんか、すごく聞き覚えのある声が自分を呼んでいたような気がするが、きっと聞き間違いだ。そうに決まっている。

 

 

もう一度、過去を覗き見てみた。

 

 

≪フレデリカちゃまぁぁぁああああっ!!!≫

 

 

「聞き間違いじゃなかったぁぁぁああああっ!!!」

 

どうした。 何があったのじゃ我が騎士よ!!

 

 

 

種明かし(ネタバレ)をしよう!

別にキリヤ・ノウゼンは変態ロリコン野郎ではない。

では、どうして幼女の名前を叫び続ける様になったかというと、単純にタイミングが悪かった。

 

本来は(原作では)『小さな王族のマントが血塗られた上に槍の穂先に刺さっている』のを見て、反乱軍によって幼き我が主が殺されたと勘違いをし、元帝国の民に対して【殺してやる】という恨みの声を叫びながらレギオンに取り込まれたのだが、この世界では銃剣の穂先に刺さった主の衣服をみたキリヤは

 

 

「フレデリカちゃ(・・)まぁぁああ!!!???」

 

“噛んだ”

 

度重なる戦闘による疲労と動揺によって噛んでしまったのだ。

しかも間の悪い事に、その直後にレギオンに殺されて取り込まれてしまったために本人は噛んだことを全く持って自覚していない。

 

 

よって、戦場で幼女の名を叫び続ける変体の出来上がり☆

 

 

試し打ちでクロトら4人が殺された時も

 

≪フレデリカちゃまぁぁぁああああっ!!!≫

 

レギオンに囲まれたシンエイを狙い撃ちしたときも

 

≪フレデリカちゃまぁぁぁああああっ!!!≫

 

今後、某共和国の壁を破壊するときも

 

≪フレデリカちゃまぁぁぁああああっ!!!≫

 

前線基地におびき寄せた三国の兵を皆殺しにするときも

 

≪フレデリカちゃまぁぁぁああああっ!!!≫

 

どんなにシンが頑張ってシリアスを演じても

 

≪フレデリカちゃまっ!!!≫≪フレデリカちゃまっ!!!≫≪フレデリカちゃまっ!!!≫

 

≪フレデリカちゃまぁぁぁああああっ!!!≫

 

フレデリカの眼は死んだ。

 

 

 

後日、再び戦地に戻る事を養父に告げたシンエイらにフレデリカは

 

「どうか、どうか我が“元部下”を討ってほしいのじゃ」

 

土下座。

圧倒的なまでの土下座である。

 

慌てたライデンらはとりあえず椅子に座らせて事情を聞いて、心の底からフレデリカに同情した。

信頼していた部下(知人)がレギオンに取り込まれて変態化し、戦場を転々と移動しながら自分の名を叫び続けるとか死にたくなる。

 

 

これに了承したシンエイたちは、エルンストから条件をクリアするために軍学校へ入学。

そして、フレデリカも頼むだけでなく「自身の異能を使ってほしい」と共に戦地へと赴くことになった。

 

 

なお、シンエイら旧スピアヘッド戦隊の面々(レーナも含む)の間で電磁加速砲型(モルフォ)の事を『フレデリカちゃま砲』と呼んでいたのは黙っておいてあげることにした。

 

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