スタンドの村   作:野々村あこう

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諸事情によりRPの文章が読めなくなりました、今後は聞いた話とキャラクターを掛け合わせて、脳内で勝手に動くさまを描いていきます、関係者様更新が遅れたこと申し訳ございません。


裏切りと同盟

覇理了(ハリリョウ)が目を覚ましたのは、あの戦いを終えてから一日を跨いだ四日目の昼だった。

天を仰げば煌々と照る太陽が眼球を突き刺す。

 

催眠ガスを大量に吸い込みゴツゴツした地面で眠りこけていたためか、体中が痛く、ひどい頭痛に吐き気を覚える。

 

「うぅ……どうなったんだ」

 

少し離れたところから女性の声が聞こえ、しばらくたってからそれが逢坂紬(オウサカツムギ)のものであることに気が付く。

 

「お、逢坂さん!」

 

了は慌てて立ち上がろうとし、のどや腕に響く激痛で思わず顔を顰めた。

 

「だ、大丈夫か?」

 

そんな了を逆に心配した彼女が、体に鞭を打って駆け寄ってくる。その姿を目の当たりにして、彼は情けない気持ちでいっぱいになった。

 

「いったい何があったんだ……気が付けば私は敵の味方をしていたような気がする。もし私が原因で敗北したというなら……本当に申し訳ない」

 

逢坂の悔やみきれない表情に、了はいたたまれない気持ちとなった。何をされたのかわからないが、確かに逢坂紬は捕虜の神霊煉を逃がし、敵に加担した。しかしそれでも彼女は強い反省の色を示しているのだ。だから彼女に謝られると、どうしようもなく申し訳が立たなくなる。

 

「なにがあったんですか……」

 

「簡単よ、私が操ったんだから」

 

了は一瞬のうちにいったいなぜ裏切ったのか、どうしても知りたいと思った。そんな疑問に答えを開示したのは意外な人物だった。

 

「赤の王、荒川美鈴よ。簡単に説明すると、私のスタンドは命中した相手を5分間意のままに操ることができるの。納得したかしら」

 

そういいつつ笑う彼女の手元には、相変わらず派手に装飾されたコルト銃が握られていた。

 

「これがスタンド、なのか?」

 

了が信じられないといった表情を浮かべると、少女は少し愉快そうに笑って見せる。

 

「意外でしょ?でも私も驚いたわ。まさか自分のスタンドを操れない人がいるなんて」

 

そのあからさまに他人を馬鹿にする態度が無性に腹立たしいが、ここは堪えるしかないだろう。現時点周囲を見渡して分かったのが、この三人以外未だに目を覚ましていないということだからだ。

今挑発してしまえば、無防備に眠っている青谷さんや影山蛭谷(カゲヤマヒルタニ)さんを操られかねない。

 

「あれ、影山さんは?」

 

そこまで思考を張り巡らせて、ふと了は我に返った。

影山蛭谷の姿がどこにもないのだ。強いて言うのなら、ワイヤーアクションをして見せたあの青葉悠(アオバユウ)と名乗る人物の姿もない。

 

赤の王を名乗る少女もそれに気が付いたらしく、慌てて周囲を見渡し始めた。

お互いのチームの、おそらく攻撃の要となる人物が姿を消してしまっている。この由々しき事態に、逢坂紬を含めた三人の脳裏から争うことが消えた。

 

「あ、青谷さん!西園寺さん!起きてください!」

 

「ラブ&トゥルース!神霊連!今すぐ起きろ!」

 

覇理了が西園寺をゆすり、荒川美鈴は味方に弾丸を当てて無理やり起こす。

 

「青谷芳樹さん、指輪は?」

 

逢坂紬も慌てて青の王のもとへ駆け寄り、揺り起こし、指輪の安否を確かめる。

 

「逢坂さん……?どうしました?指輪ならここに」

 

状況がつかめていないといった様子で目を覚ました青の王の指には、確かに指輪がされていた。しかし。

 

「か、影山さんは?わっちの指輪は!?」

 

目を覚ました西園寺麗華の指輪を、責任をもって受け取ったはずの影山蛭谷の姿はない。西園寺麗華の緑色の輝きを持った宝石は、もうすでにどこかへと消えてしまっていたのだ。

 

「お姉ちゃん!指輪が!」

 

さらに、神霊煉を無理やり起こす騒音に目を覚ましたミシェルが荒川美鈴の指元を見て叫ぶ。

 

「な、ない!?」

 

そこで初めて彼女は自分の指輪がどこかへ消えてしまったことに気が付いた。

 

「う、嘘……確かにここに」

 

そのとき全員が気づいた。昨夜の一件で、指輪が奪われてしまったということに。

 

「いったい誰が奪ったっていうの!?」

 

荒川美鈴は金切り声に近い悲鳴を上げ、やるせない気持ちをあらわにする。そんな彼女の肩を西園寺麗華がそっと叩いて声をかけた。

 

「まだ奪われたとは決まっていないわ。もしかしたら、催眠ガスに眠らされなかった二人が安全な場所まで逃げたのかもしれない。可能性はまだ残ってる」

 

「やれやれ、おばさんは気楽でいいね。でももしそうなら安全な場所まで逃げた後、仲間の保護や安否確認をするもんでしょ。でもここに戻ってきた形跡はないし、なにより覇理了君だっけ?彼の手やのどを見たら分かる。止血すらされてない。若くてよかったね少年、自力でかさぶた貼れてさ~」

 

目を覚まし、荒川美鈴の催眠から解けた神霊煉は、辛辣な言葉を平気で口にした。その態度からは、全てをあきらめたような、やる気を見失った表情が見える。

 

「そ、そうかもしれないがそうじゃない可能性も」

 

「諦めなよ、どうせ無理だって。確かにおばさんは自分の指輪が帰ってきて欲しいのかもしれないけどさ、そんな安易な考えじゃ絶対に返ってこない。裏切られたんなら奪い返すつもりじゃなきゃ」

 

その言葉に、なぜか荒川美鈴が背中を押されたように立ち上がった。

 

「そうね、あの二人がもし裏切ったんだとしたら、とっ捕まえて奪い返すしかないわ」

 

しかしそんな彼女の決意すら、神霊はあざ笑う。

 

「まぁ?もし裏切ったんだとしたら、確実にこの村からは出ていくよね。みんなが命を懸けて奪い合うほどの宝石なんだし、売れば高値で売買されるかもだし」

 

「いいや、それはない。青葉悠と影山蛭谷はまだこの村にいる。そして僕らをまた攻撃しに来る」

 

そんな少年の発言を、ようやく口を開いた青谷が否定する。

 

「なんでそんなこと言い切れるのさ」

 

「ここに指輪が残っているからさ」

 

その発言に、その場にいたスタンド使いの表情が少しばかり明るくなる。

 

「そういえばそうね、青の指輪が奪われていないのなら、彼らはきっと奪いに来る」

 

美鈴が頷き、神霊は押し黙る。覇理了はその雰囲気がどことなく嬉しく感じて、みんなに聞こえる大声で今後の提案をしてみる。

 

「それじゃあさ、赤と青の共同戦と行こうよ。裏切者から指輪を取り返すまで」

 

「わっちとしては申し訳ない気持ちが勝ってしまうのですが」

 

「西園寺さん、僕が望むのは平和ですから、僕としてはみんなが手を組むのは賛成なんですよ?」

 

西園寺の悲しそうな表情に、青谷は笑顔で手を差し伸べる。

 

「んで、赤の王は共同作業なんかでいいのかい?古き良き伝統に敵と共闘せよなんてあったっけ?」

 

神霊煉の興味なさげな声に、美鈴はやんわりと返事をする。

 

「だって今の私は指輪がないから一般人だし」

 

「なるほどね」

 

そういうことで、赤と青が同盟を組むこととなった。

昨日の夜まで争い一旦だったその場の空気はようやく落ち着きを取り戻した。

 

しかしただ一人、覇理了だけは珍しく浮かない顔をしていた。

彼の考えることはただ一つ。裏切者のことだ。

なぜ裏切ったのか、どうやって結託したのか、どこから二人は繋がっていたのか。

そして、いったいどうして青の宝石だけ奪っていかなかったのか。

 

もしやと思うふしは確かにある。最初は指輪が二つだけだと思っていたが、実際は西園寺さんが三つ目の指輪を持っていた。ということは、別の誰かが第五第六の指輪を持っていて、二人はその別勢力と戦っていたのだとしたら。

 

その可能性は、低くはないだろう。そして、この数日間で起こったありとあらゆる出来事が、あり得ないという言葉そのものを覇理了の脳裏から消し去ってしまうのだった。

 

今後起こり得る事象は、全てが起こり得るのだと、このとき彼はそう覚悟した。

 




青い宝石:サファイア

集中力・思考・深い海・第六感・尊厳・崇高・豊かな感受性

の意味を持ち、その色から純粋さをうかがわせる。
青い宝石に選ばれた青谷芳樹もまた、味方に信頼され、その経験と優れた勘から、戦場をかいくぐってきた。
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