教官になる前、つまりトワたちと過ごしていた時にはたまに見る不可解な夢が教官になった今頻繁に見るようになった。それは重々しくもどこかで聞いたことがあるようなないような・・・いつも同じ台詞が心の奥に響いていた。
――汝、力を求むカ――
前なら望まなかったかもしれない。跳ね除けて『いらない!』と言ったかもしれないが、その台詞とともにトワら四人で行った街が炎に包まれるのを視た。力なく泣き叫ぶ子供達、家を失って愕然とする大人達の姿を夢でありながらも鮮明に視てしまった時の僕には力が無くただただ呆然とするしか出来なかった。
いつしか次、夢を見たらその声に応えようと思った。そして入学式が始まる前に約束した教頭と飲んで送った帰りのことだ。
「ほら、教頭。着きましたよ。まったく弱いくせに飲むんだから・・・」
「・・・・・・おおぅ、すまん。ユーノ君」
教頭と飲んだあと肩を貸しながら歩くこと数分、教頭が住んでいる住居までたどり着いた。やせ型の体型もあってここまでなんの苦労もなく運ぶことができた。
家まで着くと教頭に水を飲ませてソファーに転がす。いつものことだ。
「ちゃんとしてくださいね」
「おぅ・・・」
小さく返事をしてくれたので、それで家を後にした。出てくるまでは普通だった。トリスタの町並みがあって夜でありながら町民の声がしていた。が、異変が生じたのはすぐのことだった。教頭の家を出たのを夢の声が待っていたかのようだった。
――汝、力を求むカ――
「っ!!」
その声に辺りを見渡す。が、僕の横を通りかかっている人には勿論聞こえていないらしくバッと後ずさった僕を見て訝しんだ。
(求める。僕はその力を望む!!)
その瞬間、彼の姿は消えた。しかしそれに気づいた人は誰もいなかった。微量の
ユーノは地面の感覚が無くなり、どこかに跳ばされたことに気づいたが対応できずにギュッと体をこわばらせていたがそれも数秒の間だった。気づくと真っ暗で目を凝らしてやっとほんのりのした明るさが判別できるぐらいのとても広い空間にいた。
「ここは・・・?」
『やっと、声に答えてくれましたね?』
その方向を見ると核のような物がふわふわと浮いていた。信じられないことにそこから声がしているようだ。まぁリンカーコアを大きくしたようなものだと、ユーノはあまり驚かなかった。
『驚いてはくれないのですね』
機械的な、それでいて拗ねたような声がする。
「ハハハ、ごめんね。僕もそれなりに
『昔はありました。しかし失われて久しいのでそれすら忘れてしまいました。今の現状についての詳しいことはもう一人探してもらうついでに話します』
「ん?分かった。ところでここはどのぐらいの広さがあるんだ?」
ようやく目が暗いのに慣れたので左右に視線をやるが空間の終わりが見えない。
『ここを造った彼女によるとゼムリア大陸ぐらいありますね・・・』
「どうしてそんなことに?」
聞こえてくる声曰く、ここを造ったのは魔女と言われる存在で歴代の魔女の中でも力を持っていることで孤独を感じ引きこもったようだ。そして声をかけて応えてくれたのはユーノでもうすぐ四桁に届くことなどを教えてくれた。
声には反応できても彼女の存在を探すことができずに、愕然とし空間を広くしていくうちに途方もない広さへと成長させてしまった。それは本人すら認識していなかったかもしれない。
「この場にいて一番思うことなんだけど・・・」
『はい?』
「外との時間のずれってあるの?」
『いいえ、ありません。この場では彼女を見つけるか死ぬかのどちらかに決定するまで続きますが、この空間にどれだけいても外ではほんの数秒のことでしょう。そしてこの場では創造の力が働きますのでほとんどのことを実現させることもできます。それが騎神の土台にもなるかと・・・』
「ふむ・・・。騎神とな?」
一つ考えて探すのは“あれ簡単?”とか思っちゃったりしていた。マルチタスクでサーチ使ったらすぐ見つかるかも、とかアーツを超えた魔法を使ったら騎神とやらも強化出来るとか思った。
『何か考えることでもおありですか?』
黙りこくったユーノに恐る恐る尋ねる
「君の声が段々とはっきりしてきたような気がするのだけれども?」
思っていたことを告げる。やや沈黙があって答えを出した。
『私も彼女と共にずっとこの空間にいましたから。男なのか女なのか私がどんな姿をしていたのかすらも忘れていました。しかし声だけで終わっていた過去の人たちとは違い貴方は彼女を見つけようと躍起になっている。私も思い出してきたというわけです。そして私は核そのものではなく使い魔だったようです。いいえ、ようではなく使い魔です』
「へぇ~」
アルフやザフィーラのような存在を見ていたのであまり驚かなかったが、また拗ねた様子を見せる。
『もぅ。あなたにびっくりしてもらうには何をしたらいいんですかっ?』
「いや、十分驚いているよ」
『まぁいいです。これからあなたが彼女を見つけるまで私に出来ることは何もありません。ですからさっさと見つけて彼女を驚かせてください』
ふてくされた口調が返ってくる。こちらを警戒しているのか、それとも早く彼女を見つけて欲しいのか分からないが無機質な声質だった。
「よしっ!!」
パンパンと自分の頬を叩き、活を入れてから魔法を展開する準備を始める。使う魔法はサーチだが、この空間では創造の力が働いていると聞いたのでデバイスを想像し手にあるかのように、親友から餞別だと言って貰ったデュランダルの形状を脳裏に思い浮かべる。横から息を呑んだ音が聞こえてくるが、今は無視することにした。
「サーチ!!」
その声とともに翡翠色の球体が数百個出てくる。そして次の瞬間にはとてつもない速さで彼方へと消えていった。
マルチタスクで見つけたとき用に転移する準備も忘れない。数分後、空間の九割方を網羅し終わった。しかし彼女らしき存在は見当たらなかった。焦りや不安などは無かったが、それでも早く見つけてあげたいという気持ちはあった。
数十分後、ようやくそれらしき存在を発見することができてた。ここで会った使い魔同様いじけているのか空間に隠れるようにして存在していた。・・・これって根気よく探さないと見つけられないんじゃないか、なんて思ったのは心に秘めておこう。
「ふぅ、やっと見つけたよ。君も一緒に行くかい?」
『ええ、勿論』
球体を軽く握って転移する。転移した場所も相変わらず光などなくただの暗い空間だったが、耳を澄ませると微かにしゃくり上げる声が聞こえる。見つけてから声をかけているが空耳だと思って反応してくれないので、空間の穴に腕を突っ込んで引っ張り上げる。
「へっ!?あにゃー」
ほっぺたをむにむにギュッギュッギュと伸ばしたり、縮めたりを繰り返すと自分が見ているのが本物であることを悟った。瞬く間に目に涙が浮かびそしてボロボロと大粒の雫がこぼれ落ちる。そしてユーノに抱きつき思いっきり大声で泣き叫んだ。
「ふぇ~~~~ん!!」
「よしよし、僕はここにいるよ。君が使い魔の言ってた魔女・・・でいいんだね?」
「うんっ(コクコク)」
多分、年齢は僕より上だろうか・・・いや考えるのは止めておこうかな。ずっと一人でいたから幼児退行しているようで外見もトワより少し小さめ、精神的にも弱体化しているみたいだ。
『
感慨深そうに使い魔が見ている。
「うん?君ってそんなに猫っぽかったっけ?」
『あぁ、これ?彼女とパスが繋がったから本来の姿に戻ったんだよ。昔と同じだけど君はこれ気に入らない?』
猫のくせに器用に腰を動かしてポーズを取る。
「いいや、やっと目を見て話せるなと思ってさ」
『そ、そうか。いやぁ嬉しいな』
今まで無機質な声だったが、その声が今は感情がこもっていて聞きやすかった。
「むぅ~」
くいっくいっと服が引っ張られる感覚に下を見ると、頬を膨らませてこちらを睨む少女の姿があった。ヤキモチ焼きなのか?
「・・・外に出てみないか、使い魔も君も・・・?」
「「あっ・・・」」
二人顔を見合わせてから・・・。
「「うんっ、出るっ」」
満面の笑顔ではっきりと言った。これからどうなるのかなんて気にもしないユーノだったが、ユーノの生活が彩りあるものになりそれでいて波乱万丈になること間違いなしだった。
これは前にも後にも類例のないほど強力な魔女と使い魔が、使命を忘れるほど楽しく過ごすことができたきっかけを与えた一人の男性の物語である。
さて今回の話に出てきた彼女たちですが、ユーノにとっての導き手と使い魔と言うポジションになります。さまよい続けた彼女らがいた空間はユーノが引っ張り出したおかげで人知れず消滅しました。最初はここで修行したらユーノが人外になるかもーでやめました。
閃の軌跡ラストでCとトリスタで会うのはほぼ決定なんですが、生身で騎神と引き分けるとかアリなのかな。