閃の軌跡~ユーノ教官~   作:泡泡

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4話

 

 A班とB班を見送った日の夜、ユーノの仕事がひと段落したので彼らの様子を見に行くことにした。先に行ったのはA班のほうだった。月に照らされた街道が、ほのかに光り輝いているのを見ながらケルディックの街に入ろうとしていた時だった。誰かから見られているような気配を察知してそちらを見た。

 

 「誰です?」

 

 「ほう・・・」

 

 感心したような声が聞こえてきて朧げだった気配も強くなってきた。そこには目の部分を隠す仮面をつけた男性らしき人が立っていた。

 

 「オリビエと同じ、へんt・・・いや」

 

 「美の伝道師だよ、私は」

 

 質問していないのに自分のことを美の伝道師などと言う。あぁオリビエと同じ(たぐい)の人種だ。

 

 「それで僕に何か用ですか?」

 

 「いいや、面白い雰囲気を纏った君がいたから声をかけただけさ」

 

 「はぁ・・・。あなたは?」

 

 「私はブルブランと言う。一応爵位持ちだがブルブランとでも呼びたまえ」

 

 少し離れたところにいる仮面をつけた男性はブルブランと言うらしい。その名前はどこかで聞いたことがあるような、ないような。

 

 「声をかけた理由は分かりましたが、それ以外の用は無いということですね?見に行かねばならない他の理由があるのでこれで失礼したいのですが・・・」

 

 「それは失礼。また会う機会もあろう。これにて去ることにしよう」

 

 仰々しくお辞儀をして段々と薄くなる気配。いや、その存在ごと消えてなくなった。

 

 「ホントなんだったんだろ・・・。まぁ気にしすぎても仕方のないこと。再会するのやだな」

 

 ユーノの切実な願いは願いであって再会する日は近い。先ほど会った男性の事は脇に追いやりA班が泊まっている宿場の近くまで来た。するとそこから見たことのある、見慣れた姿が出てきた。彼女は今年度入学してきた中でも最強の部類に入るラウラだった。いつもより弱々しさをどことなく感じる姿に何かあったと確信し近づいていく。

 

 「ラウラ?」

 

 「っ!きょ、教官・・・でしたか。私に何か用ですか?」

 

 「うん、自分の仕事が終わったからA班とB班の様子をひと目見ようと思ってね。先にA班の様子を見に来たんだけども、そこにラウラの姿を発見したから声かけたんだ」

 

 「そうでしたか・・・」

 

 呟くぐらいの声量で答えてから沈黙。やはりラウラらしくない。オリエンテーリングやそれ以外の会う機会を含めても数回だが、ラウラの覇気がなかった。何かに期待していたがそれが期待外れだったかのような。

 

 「どうかした?力になれないかもしれないけど、聞くぐらいならできるよ?」

 

 「・・・聞いてください」

 

 「勿論」

 

 教会のそばにベンチがあったのでそこに座ってラウラが口を開くのを待つ。ヒンヤリとした風が心地よい雰囲気を出す。数分後ラウラが話しだした。

 

 「八葉一刀流と言う流派をご存知ですか?」

 

 「八葉・・・あぁ、知っている。ユン・カーファイが創設者で帝国内外を問わず多くの弟子を持つと聞いている。クロスベルのアリオス・マクレインやリベールのカシウス・ブライトなどは剣聖と呼ばれるぐらい強い・・・とか」

 

 「お詳しいんですね。リィンが八葉一刀流の初伝であることもご存知ですね」

 

 「プロフィールだけ把握しているがな。それと関係しているのだな?」

 

 膝の上で握り締められた拳に力が入る。ラウラは、武士道を重んじるゆえに何かすれ違いでも生じたのかもしれない。ここは最後まで聞いておこう。

 

 「なぜ本気を出さぬ?と聞いた。リィンの返事はこれが限界だと・・・そういった。アルゼイド流と八葉が出会うことも父から聞いていた・・・。それでもっ、それでも・・・・・・」

 

 「ラウラ、君はリィンが剣の道を軽んじた言い方に腹が立ったんじゃないか?」

 

 「あっ・・・・・・。そうかもしれない。もう少し時間をください。・・・素振りでもしてきます」

 

 フラリと立つと街道の方へ向かおうとした。が、弱々しい振る舞いが気になったので声をかけた。

 

 「待った。少し立ち会おう。相手をしてくれ」

 

 「えっ・・・」

 

 「手加減・・・と言ったらラウラは怒るかもしれないが模擬戦のような感じだ。怪我なんかしたら明日に響くだろうし、さぁ!!」

 

 ユーノの手にはいつの間にか大太刀のような得物が握られていた。月光に照らされて刀の輪郭が光っているようにも見える。ラウラも戸惑いながら自分の大剣を握りユーノと相対する。

 

 「う、うむ・・・ではっ」

 

 両手で握る剣をユーノが片手剣でいなす。遊ばれているような感じはするがそれでもラウラの想いがこもった剣筋を受け、時には流してその場から一歩も動くことなどない。

 

 「さすが教官。最初はなよなよしているとは思いましたが今ではその第一印象は違ったと後悔しております」

 

 「まぁ弱く見えるのは昔からだよ。ラウラとの模擬戦も楽しいけれどA班には明日もあるのだからこれが最後にしようか?ラウラ、君の最大の技で来なさい。出し惜しみは無しだよ。こちらもそれに答えるから、ねっ?」

 

 「はいっ。では行きます。」

 

 ――開眼――

 

 その時ラウラの心奥(しんおう)から力が漲るのを理解した。そして次の瞬間・・・。

 

 「奥義・洸刃乱舞(こうじんらんぶ)!!」

 

 実家で教わっていたが今までは出来なかったのにようやくできた奥義だった。大剣に巨大なエネルギーをまとわせた状態で連続で斬りつける。ラウラの感じとしては多少なりともダメージを与えたはずだった。それもユーノが砂煙の中から無傷で出てくるまでは。

 

 「いやぁその年でそこまでできるとは、ね?びっくりして一つ奥の手使っちゃったよ」

 

 「きょ、教官。なぜ無傷なのですか?それに奥の手とは・・・」

 

 パンパンと服に付いた埃を払い落とすと、やはり体には傷らしい傷などどこにも存在していなかった。

 

 「タネ明かしはこれ。見えるかなー?」

 

 ユーノの手に持っていた剣が最初は淡い光を放っていたのが今ではもう少し強い光を放っていた。

 

 「まさか、全ての力を吸収した・・・とかですか?」

 

 「まぁそんな感じ。で、躱すか防御してくれよ。単純にラウラの攻撃の二倍ぐらいにはなってるはずだから」

 

 そう言うと両手で剣を持ち上段に掲げる。正面ではラウラが防御の姿勢に入った。生半可なものでは防ぎきれないと思ったのだろう、その表情は真剣そのものだった。だが放った一撃はラウラの防御を貫き街道の端に吹き飛ばされて動かなくなった。慌てて腕から心拍数を確かめる。うん、気絶しただけだ。ホッとするが彼女をどうやって宿場まで運ぶか迷った。だからアリサに連絡を取ることにした。

 

 「はい、アリサ・ライン・・・Rです」

 

 「やぁ夜分にすまないね。ユーノ・スクライアだ。今いいか?」

 

 「ユーノ教官ですか?珍しいですね、サラ教官に用事ですか?」

 

 「用事があるなら直接話すさ。それよりもラウラを運ぶのを手伝ってくれないか?」

 

 途端に怪訝そうな声になる。

 

 「・・・ラウラに何かしたんですか?」

 

 「ワケはあとで話す。西ケルディック街道の方に来てくれ」

 

 「・・・分かりました。ちゃんと理由を聞かせてくださいね」

 

 少し待っていると小走りでこちらにやってくるアリサの姿を見つけた。こちらに来てラウラの様子でも確認しているのだろうか、少し外見を見てから第一声。

 

 「汚れてる。もしかして模擬戦でもやったんですか?」

 

 「うん、迷っているようだったから、体でも動かしたらラウラみたいな子は迷いがなくなるかと思ってね。なんだがどうやらやりすぎてしまったようだ。緊張と疲れがたまっていたみたいで、いつ起きるか分からないから手伝ってもらいたいんだ」 

 

 「ええ、了解しました。それと私の名前なんですが・・・」

 

 「アリサの名前を隠している件だね。大丈夫、皆のプロフィールには目を通しているしそれなりに事情を知っているつもりだから・・・」

 

 「(ホッ)そうですか、それなら良いのですが・・・。っとラウラを運ぶのを手伝う件でしたね」

 

 「僕が背負うからアリサには先導してもらいたいんだ。一人でラウラを運んでいるのを見られて誤解されるとどうしようもないからね」

 

 ラウラを背負うとアリサの役目を言う。アリサは納得したように頷く。街道を歩き街へと移動したが、二人の間には会話らしい会話など無くA班が泊まっている宿場に何事もなくたどり着いた。

 

 サラの気配が一階からする。あとの二人は二階のほうから動いていないことを察するにレポートでも纏めているのかもしれない。

 

 「開けてくれるか?」

 

 「はい」

 

 ギイーと言う音を立てて宿場の扉が開く。中にいたのはサラ教官と店の人だけ。サラ教官は机にうつ伏せになっていることと、強いお酒の匂いを漂わせていることから単に眠っているだけと判断した。お店の人もこちらをチラリと見たがアリサの姿をみて警戒を解いた。

 

 「こっちです」

 

 「はいよー」

 

 ラウラを揺らさないようにしながら二階へと足を進める。一つの扉の前に行くとアリサが小さくノックする。するとエリオットの声が聞こえてきてアリサが扉を開けた。

 

 「あれ、ユーノ教官。それに・・・」

 

 「ラウラ?」

 

 エリオット、リィンの順に声を上げた。

 

 「詳細は後。ラウラのベッドは?」

 

 「あぁ、はいこっちです」

 

 アリサに先導されるまま、ラウラがケルディックにいる間使うであろうベッドに横たえる。フゥと息を漏らすと凝視されているのに気づいてそちらを向く。アリサがジト目で見、エリオットが戸惑いリィンも視線を下に向けながらも事情を知りたそうにしている。

 

 「A班の様子を見に来たら街道にいるラウラを発見。迷いを払拭するために模擬戦をやったら、ちょいとばかり力が入っちゃってラウラにいいのが入ったってワケ。・・・まぁサラ教官から比べたら弱く見えるかもしれないが、それなりに修羅場を潜ってきてるんだわ。だからもし迷っていたら僕んところに相談に来てね」

 

 「「「・・・・・・」」」

 

 理由と自分が副教官として何をやっていけるかを示したところで、それを納得してくれるかは分からないがリィンが“重心”であるならⅦ組はやっていけるだろうと思っていた。

 

 「さぁ僕はこれで失礼するよ。君たちもレポート片付けなきゃならないだろうし、明日もハードな一日になるかもしれないからね」

 

 軽い感じで締めたつもりだったが、三人の様子にはさほど変わったところは見受けられなかった。ラウラが身じろぎして彼らの意識がそちらに向いた時を見計らって部屋を後にした。

 

 下に降りると今まで寝ていたはずのサラ教官が起きていてこちらを見ていた。

 

 「さっき外で感じた気配はユーノだったわけ?」

 

 「・・・・・・」

 

 「まっ、アタシには関係ないけどさ。猫かぶってるのもいい加減にしたら?」

 

 痛いところを突いてくる。学院に来てからユーノは一度も本気を出していなかった。サラと力試しをした時もあったが、引き分けに持ち込んで終わらせた。

 

 「彼らの成長に合わせて力だしますよ。猫かぶっているわけではないんで・・・。サラ教官と試合した時も本調子じゃなかっただけで、機会あればいつでも・・・」

 

 「そう?分かったわ」

 

 それだけ言うとクルリと向きを変えてまた地ビールを飲みだした。やはり食えない人だ。過去は少しばかり聞いているが幼少時代から大変な思いをしているみたいだ。

 

 「僕はサラが導くのを支え、そして彼らが道を間違えそうな時に矯正することだけを考えよう」

 

 きた時と同じように扉を静かに開け、そして外に出る。夜のケルディックは街灯もあまりないので星が綺麗に(またた)いていた。





 ラウラのSクラは最初から使えたと思いますが違ったら教えてください。開眼して使えるようになった・・・ということにしておこうかな。

 ユーノの武器はシグナムが持っていたような武器です。剣と蛇腹剣と弓に変化する予定です。
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