閃の軌跡~ユーノ教官~   作:泡泡

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 この話には独自解釈等が含まれます。もしくは登場人物の性格が変わる恐れもありますのでそれが読みたくない方は即座に戻ってください。


5話:道化師と氷の乙女

 

  リィンたちがケルディックの郊外にある自然公園で何やら巻き込まれたらしいので、現場に向かう途中どことなくブルブランと同列な人物に出会った。彼?っぽい青年は、ニコニコしながら挨拶をして初対面なのに親友のように振舞ってきた。そのやりとりをあらわすならこうなるかもしれない。

 

 

 「やあ!!」

 

 ケルディックを出ようとしていると大市のほうから青年がこちらに向かってきた。今までいたはずの市民の姿が一人もいないことから強い認識阻害を使ったようだ。だから警戒を強くして彼を見る。

 

 「何かな?」

 

 「やだなぁ。ちょっと話をしたいだけなんだよ」

 

 「これから用事。だから君?と話せない」

 

 「んー、じゃあそこまで行く間話せないかな?」

 

 後で聞くと幻術を使って二人きりになりたかったそうで、どうして近づいてきたのかを知りたかったゆえ要望を聞くことにした。一応、精神汚染は効かない性質なので大丈夫と思ってのことだった。

 

 「いいよ。ただし僕や周囲の人物に危害を及ぼそうとしたらその瞬間に敵対するつもりだし、それで良い?」

 

 「いーよそれで。僕の名前はカンパネルラ。君はユーノ・スクライアだね?ブルブランから聞いてるよ」

 

 訂正・・・。青年は危険人物だった。無害だと思った数分前の自分を責めたいところだ。

 

 「さてと、君がなぜ僕に接触したのか聞かせてもらおうか?」

 

 「うん、君がいまいるトールズ士官学院だけども最初保護されたとき僕も見ていたんだ。その時の僕は将来有望な人材をひとりでも多く集めている最中で、君も・・・と思ったんだけどもタッチの差で士官学院に行っちゃったってわけ・・・」

 

 「ふぅん。まぁもしも君が最初に声をかけてくれたら恩義を感じて君の誘いを受けていたかもしれないな。多分、だけどね」

 

 遅くはないが、散歩するぐらいの速さで二人で歩きながらもしも・・・の話をする。うんうんと頷きながら興味深そうに聞き入っていたカンパネルラだったが、ふと気づいたように視線を前に向ける。ユーノも釣られてそちらを向いた。眼前には自然公園が広がっており目的地が近いことを意味していた。

 

 「ここが君の目的地だね?」

 

 パチンと指を鳴らすと認識阻害が解かれ、自然な静けさが戻る。近くに農家があるのか家畜の鳴き声なども聴こえてくる。

 

 「こんな話でよかったのか?」

 

 「本当のところは君をスカウトしたかったんだけど、教官・・・楽しんでいるんでしょ?だったら横から奪い取るなんて邪推な事したくないからね。ここらで消えるよ。またね(・・・)?」

 

 炎に包まれながら消えていった。転移したものと思われるがカンパネルラと呼ばれる青年がいたと思われる痕跡はどこにもなかった。

 

 「またね(・・・)か。僕としてはあまり会いたくないんだけどもなぁ。生徒が危険に遭うなら身を張ってでも守りたい。おや、笛の音?」

 

 かすかに公園の奥の方から聞こえてくる笛のような音を耳が拾った。そして公園に入ろうとしていると帯刀した領邦軍が数人駆けてきた。

 

 気づかれないようにしながら様子を伺うが彼らの様子はどうも変だった。異変が起きてそこに急行するのではなく、何やら画策しているかのように入念に打ち合わせをしてから園内に入っていった。それでもユーノは急いでリィンの元に駆けつけるようなことはなかった。

 

 「サラに言われていたしね。彼らを導くのは最小限って」

 

 次にユーノの視界に現れたのは鉄道憲兵隊。凛々しい女性を先頭に駆け足で進んでいく。どうやら呼び出された公園の(ぬし)を倒したところで自分たちの正義を疑わない領邦軍と揉めそうになったがそこに介入したのが、鉄道憲兵隊のようだ。

 

 ユーノが公園に入ってもいないのにそれほどまで詳しいかと問われると()ているからだ。忘れられた魔女を発見後、使い魔たちも増え五感を補助してくれるようになった。それでユーノが目をつぶっていてもA班の様子やかなり遠かったが、B班の様子なども視ることができた。委員長(エマ)に気づかれそうになってとても驚いたが。

 

 「さてと、保護してくれたお礼に鉄道憲兵隊の皆さんに挨拶に行きましょうか。私の代わりに視てくださりありがとう。―――と―――?」

 

 使い魔らに感謝すると、脳裏にはしっぽをブンブンと振り回し嬉しさをアピールしてきた二匹の使い魔。数分歩くと公園の奥でA班と一緒にいた犯人と思わしき数人の男性。それと鉄道が引かれているところにはどこでも介入するので領邦軍には疎まれている鉄道憲兵隊の皆さんがいた。

 

 「あ、教官」

 

 「やぁリィン。災難だったね。皆さんに怪我はないですか?」

 

 声をかけてきたリィンに返事し、A班の様子を聞いてみた。外見から判断するにどこにも異常はなさそうだ。

 

 「あなたは・・・?」

 

 「初めまして。僕はⅦ組の副教官を勤めていますユーノ・スクライアと申します。鉄道憲兵隊の方たちですね?お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

 「失礼しました。クレア・リーヴェルトと申します。鉄道憲兵隊を指揮している者です。ユーノさんとおっしゃいましたね。どうしてこうなったかの経緯を聞きますか?」

 

 簡単な経緯を聞きたいところではあったがサラ教官もこちらに向かっているようなので、ケルディックに戻ったほうがいいのではないかと提案してみるとそれに同意してくれた。だがエリオットの表情が暗いままだった。

 

 「エリオット、どうかした?」

 

 「ユーノ教官。実は・・・僕。少し前に笛の音を聞いたんです。それからすぐに公園の(ぬし)が現れたような気がして・・・」

 

 「エリオットにはその笛の音が何か引っかかるというわけだね?」

 

 「はい。憶測で動くわけにはいかないのでどうしようかと思っていました」

 

 周囲の状況に動揺することもなく怪しい箇所に鋭く反応することに驚きながら、自分がどう動くか迷っていた。ここで自分も聞いたのだからエリオットの言葉を信じた形で更に奥に行ったとしたら疑惑の目で見られるかもしれない。しかし、エリオットの話を無視することもできない。それで取った行動は。

 

 「クレアさん、少しの時間一緒について来てもらっても構わないでしょうか?他の方たちには先にケルディックのほうに戻っていてもらって。多分、僕の確認もそれほどの時間はかからないと思いますし。いかがでしょう?」

 

 「どうして私を?」

 

 訝しむような表情を浮かべるクレアさん。自分が来てから視線を外さなかった油断なき様子に一対一で話せるようにしただけ。当たり障りのない返事を返した。

 

 「鉄道憲兵隊の皆さんの活躍はトリスタまで届いています。それで機会があればお話したいと思っていました。それではダメですか?」

 

 数秒考える仕草をする。それからてきぱきと部隊に指示を出してから了承した。それでリィンたちにこちらも指示を出す。

 

 「これから僕はエリオットが感じた異変を探索してくる。専用のアーツもあるし、すぐにリィンたちに追いつけると思うよ。鉄道憲兵隊の皆さんが行なって下さる調書にはちゃんと受け答えをするんだよ?」

 

 「ええ、了解しました」

 

 リィンの返事を聞いてからクレアさんのほうに向き直る。そして彼らを見送ってから自然公園の奥へと向かう。クレアさんは腰から軍用拳銃を取り出して警戒態勢へと移る。僕も魔導杖を構える。そして紡ぐはサーチのアーツ(魔法)

 

 「それは・・・?」

 

 見たことのないアーツに、驚きと戸惑いを乗せたクレアさんの声が横から聞こえてくる。

 

 「これは独自に開発したサーチと言うアーツの一種です。そう思っていただければ幸いです」

 

 「そうですか」

 

 少し残念そうな声が聞こえてくる。魔法とアーツの違いなど説明できるものでもないだろうし、どうしてこの世界に来てからも殆どの魔法が使えるのかも分からないことだらけだった。

 

 「クレアさん、サーチに集中したいので数分の間警戒していただけますか?」

 

 「えっ、分かりました。こちらは任せてください」

 

 デュランダルを起動、それからガコンと言う音を立ててカートリッジが送り込まれてくる。その音にビクッと反応するクレアさんだったが、今はいちいち説明する時ではない。後で聞かれたらサラッと流すぐらいだろう。

 

 と思いつつ、目をつぶる。途端にサーチした結果と使い魔からの情報がユーノに伝わってくる。どこで笛を吹き、リィンらに相対させたのか・・・すぐにでも知りたい情報があった。そして数十秒後、痕跡を知ることができた。目を開けると周囲を警戒しつつも心配そうな表情を浮かべるクレアさんが視界に入ってきた。

 

 「ユーノ教官、どうでしたか?」

 

 「ふぅ、大丈夫です。ようやく痕跡を見つけることができました。こちらです」

 

 クレアさんの表情が幾分かこわばる。そしてユーノに数歩離れて従ってくれた。

 

 「見えにくいかもしれませんがこの木の根元の部分、ええそこになります。草花が折れてちょうど人の両足の形になってますね。そこにいたものと推測できます。クレアさんが信じるかどうかは別としてこれで私が知りたかった事は終わります。クレアさんのほうはいかがですか?」

 

 「確かに踏みつけたような痕跡がありますね。多分下手人はこの辺にいたものと思います。それにしてもサーチですか・・・。応用が効くようで犯罪に使われたらと思うと恐ろしいですね・・・」

 

 色々なことに応用できそうでできないのがこのサーチである。ユーノは軽くそのデメリットをクレアさんに伝えることにした。

 

 「さきほど音が出たと思います。この魔導杖デュランダルにカートリッジが一個送り込まれた音です。圧縮された魔力を用いて爆発的な力を取り入れる・・・そのように思っていただければいいです。私自身としても説明が難しいので・・・」

 

 「そうですか・・・」

 

 納得したようなそうでないような曖昧な表情を浮かべるクレア大尉。魔法とアーツの仕様が違うことを説明したところで錯綜が生じてしまうのは目に見えているので曖昧なままで終わらせようとし、形だけ納得という状況に持ち込んだ。

 

 「では、ケルディックに戻りましょうか?クレアさん、僕の手もしくは服を掴んでいただけますか?」

 

 「えっ?ええ、では服を」

 

 戸惑いつつも服を掴んでくれる。有無を言わさずそのまま転移のシークエンスに移る。慌てたようなクレアさんを横目で見つつ、現在リィンがいるであろう痕跡を辿ってケルディックに跳ぶ。数秒後には驚いたような表情を浮かべるリィン達と、目を回して足元に倒れかけているクレアさんの姿があった。

 

 「ユーノ教官?」

 

 「よっ、リィンたちもちょうどケルディックに戻ってきたようだな。転移・・・、見たことはあると思うけれども?」

 

 「えっと、確かオリエンテーリングの時ですね?あの時はサラ教官の横に現れましたっけ。今回は違うみたいですがこの地点をどう確定したのです?」

 

 「別に大したことはしてないさ。ケルディックを大まかな地点にしてリィンのいる場所を頼りに向かっただけさ。リィンたちはこれから調書か?」

 

 真面目なリィンに説明するのも面倒くさくなったので分かりやすいが話題を変えてみた。

 

 「えぇ、これからです。それよりもクレア大尉の具合が悪そうですが?」

 

 ユーノの横に本当なら立っているはずのクレアがくずおれているので心配になって聞いてきた。

 

 「だ、大丈夫です・・・」

 

 「多分だが転移酔いだな。初めてだから慣れないことに付き合わせちゃったから酔ったんだろ。しばらくしたら元通りになるだろうし、それほど心配するほどでもなさそうだよ。って言ってるそばからクレアさんの具合良くなったみたいだし・・・」

 

 「え、えぇ。心配かけてしまって申し訳ありません。ではリィンさんたちの調書を取りたいのでこちらの詰所まで来ていただけますか?ユーノ教官には少々お待ちいただく形になるかもしれませんが」

 

 「はい、大丈夫です。僕はケルディックの街中にいますので何かあれば連絡ください」

 

 そう言ってリィンたちと別れる。ケルディックの喧騒は何処吹く風で、町民は普通の生活に戻っていた。自然公園で起きた出来事など関係者でなければ知ることもないだろう。

 

 「でももしも(・・・)ですか。カンパネルラと言う青年が先に見つけて恩義を感じていたのならば彼らと一緒の道を進んでいたかもしれないんですね。今更ですがトワが見つけてくれて、ほかの人たちが訝しむ中保護し世話してくれたことに感謝ですね」 





 この話の続きですが閑話として『もしもユーノが違う世界観に行ったら・・・』を予定しています。
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