閃の軌跡~ユーノ教官~   作:泡泡

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 最初の実地実習が終わったぐらいの幕間


6話

 

 Ⅶ組の評価を付けている最中に部屋の外からノックの音が聞こえてきた。

 

 「教官ー、今少しいいですか?」

 

 いつもは軽口を叩く彼なのに今回は妙に畏まっていた。なので少しばかり何かしらの予感のようなものを感じていたのだろうか。

 

 「いいですよ。入ってくてください」

 

 「お邪魔しまーす。あぁ評価を付けていたところですか・・・」

 

 「君が敬語を使っていると何だかおかしなことでも頼まれそうですね。何かありましたか?」

 

 「いや、アハハハ。・・・聞きたいこととお願いしたいことがあります。だからいつもは軽口を叩いてますが、今回ばかりは真剣にもなります」

 

 扉に背を向けていたが、彼の神妙な声色を聞いてこれは・・・と思い自分が行なっている評価付けを一時止めることにした。

 

 「・・・っとここで止めておきましょうか。それで君が聞きたいことは何かな?クロウ・アームブラスト君?」

 

 「・・・教官はあの時どのくらい力をセーブしていましたか?一年前のARCUS試験運用最後の手合わせの時ですよ。いつもは剣を使っているのに、あの時は魔導杖のようなものを使ってましたよね。俺のお願いの前にユーノ・スクライア教官の力具合を聞きたいんですよ」

 

 「なるほどなるほど。それは良い着目点ですね。助けられて監視の意味も含めて君たち四人と一緒に行動することになりましたね。ARCUS運用に自分が関わってもいいのか不安な点はありましたが今となっては良い思い出の一つです。・・・さて力を抜いていたことに関して『どうして』や『なぜ?』と言う感情はないのですね?」

 

 「ええ、勿論」

 

 力強く頷く。自分が力をセーブして挑んだのは彼らを過小評価していたわけではないからだ。

 

 「率直に言うと、どれだけ通用するかを見極めたかったのですよ。僕が免許皆伝をもらった流派は対人に特化した流派ですので、当たり所が悪いとそのままポックリ逝くこともあるはずです。加えてアーツで身体強化などすると人外レベルになること間違いなし・・・。なので君たちと手合わせした時には自分にリミッターをかけた上でどうできるかというのを見極めていました。これでクロウが聞きたかったことに簡単ですが答えましたがどうですか?」

 

 「・・・合点がいきました。あの時技と技の間には隙がありましたし、いつもの身のこなしが少したどたどしかったので・・・」

 

 クロウの答えにうんうんと頷く。ちゃらんぽらんな性格をしていたが、ふと鋭い視線を送る時もあったので戦闘能力に長けていると想定していた。

 

 「それでお願いというのはなんです?」

 

 「士官学院に通っている間に考えてきました。将来は軍事に関係する職に就くのではないだろうか・・・と。それでもし、俺がしn・・・」

 

 「クロウッ!!」

 

 聞きたくない言葉が聞こえそうだったので遮る。そして俯き気味だったクロウがユーノと視線を合わせる。その表情は辛そうでありながら何かを決意した表情だった。

 

 「俺が死んだらその時は誰の目にも触れられないところに俺を埋葬して欲しいんです。敵やその他の勢力の手から俺を救って・・・それから・・・・・・誰にも荒らされる心配のない場所に葬ってもらいたいんですっ!!」

 

 魂の慟哭(どうこく)とも言えるきっぱりとした口調だった。ユーノが遮ったがそれでもクロウ自身の要望を伝え切った。目を見ていると動揺しているようでもないし、本当に信頼しきっている眼差しだった。

 

 「デモナゼ・・・。士官学院とは言え卒業したあとの将来まで決まるわけではない。それにクロウの親族関係は・・・(いない)。なるほど」

 

 一つの仮説にたどり着いた。だが仮説は仮説でしかないし現段階では確定するだけの要素が足りなさ過ぎたので考えるのをやめた。

 

 「先ほどの返事だが、保留ってところでどうかな?まだ君が何を考えてそのような保険をかけるのか分からないし、君もそれ以上理由を言うことはないだろう」

 

 「あぁ・・・。現段階では言うつもりはさらさら()ぇ」

 

 「だからの保留だよ。君のことをもっと知り、そして僕がもしそのような場所を見つけるか創るかして要求に応じられることが確かなものとなればその時君に返事をするよ。それでいい?」

 

 肯定するだろうと思っていたが最後に聞いてみる。頷きが返ってきた。

 

 「しっかし教官っていう仕事も大変だねぇ」

 

 いつものクロウ口調が戻ってきた。らしくない願いはこれで終わりらしい。だからこちらも少し軽めに話し始める。

 

 「でしょー変わってもらえれば嬉しいけれども・・・。貴族とそれ以外のクラスメイトとの関係なんて政治問題が関係していないとはいえ頭が痛くなる問題だよ。それが原因で彼らのチームはギリギリな合格点を上げるしかできないんだからさ」

 

 「マキアス・レーグニッツは帝都知事の息子でなぜが貴族を毛嫌いしているし、ユーシス・アルバレアは四大名門の一角の息子。まぁお兄さんはいるみたいだけれども四大名門って他にもいるしな」

 

 腕を組み考えるのは他の四大名門の2人だろう。アンゼリカ・ログナーは、クロウたちと試験運用を手伝ってくれた貴族っぽくない貴族。サバサバしていて可愛い子には目がない女性だ。もう一人はこれまた貴族と言う括りにとらわれているパトリック・T・ハイアームズ。傲慢(ごうまん)が服着て歩いているようなものだ。

 

 「あれから約一年。ARCUSを試験的に使い続けた結果特科クラスというものが出来上がった。理事長の望み通りのクラスが・・・」

 

 「そうっすね。じゃあ俺はこれで。教官にはまだまだ仕事が残っていそうだし。今度ブレードの相手お願いしますね?」

 

 ニカッと笑い去り際に懐から数枚のカードを見せる。ブレードと呼ばれるカードゲームらしく、Ⅱももう少ししたらできるなんていうことを言っていた。

 

 「あぁ、そのときはお手柔らかに頼むよ」

 

 扉はパタリと言う軽い音とともに閉じ部屋の中が一気に静かになる。そして考えるのは特別実習の結果についてとクロウが持ち込んだやや込み入った話のことだ。いつもの癖でマルチタスクを使って考える。

 

 「エリオットがあの時音に気づいたのに加点をしよう。それに彼らの戦闘の技術も現段階で扱えるARCUSをフルに使用し、グルノージャに勝つことができた。ARCUSが機能しチームとして動けた事が勝利へと至った結果だな。・・・だが」

 

 サラ教官に聞いたところによるともう一方のチームは最低限のことしかできなかったと聞いた。よく纏められたエマのレポートを読んだがユーシスとマキアスのいざこざが多々あったと・・・。エマ、フィー、ガイウスはそれぞれARCUSの相手を変えて戦闘が円滑に行くようにしたがそれでも全ての戦闘が楽な勝利とはいかなかった。

 

 「これから二人は歩み寄ることができるのかな?・・・いやまてよ。オリエンテーリングを終えた夜、サラ教官と飲んでいたときリィンと話していたんだっけ。中心ではなく重心的な存在になるような・・・そんな何かを。リィンなら解決してくれるとそう思ってしまうな」

 

 評価を付け終わりリィンの班は評価高めにエマらの班は申し訳ないけど評価を低めに付けさせてもらった。これで歩み寄ってくれればそれでいいんだが。出口の見えないトンネルに入った思考だったが、サラからの連絡でそれは一時停止する。

 

 「もしもしユーノ?」

 

 「ええ、サラ教官。・・・もしかして酔ってます?」

 

 やや陽気な声がARCUSから聞こえてくる。と同時にゴキュゴキュとノドを鳴らして豪快に飲み干す音も聞こえてくる。

 

 「ふふ~ん。あったり~!!ユーノも彼らの評価を付け終わったぐらいだと思ってね。ユーノがどう感じたかも知りたいから資料持ってキルシェに来て。じゃっ・・・」

 

 言いたいこと言って返事も聞かずにARCUSは切れた。

 

 「まぁ終わったからいいか」

 

 レポート用紙にまとめた評価表を肩掛けカバンにしまいこんで自室を出る。そして外に出て星空を見上げる。

 

 「・・・はは。この空だけはどこに行っても変わらないんだね?ねぇあの時トワたちに助けられて何の因果かわからないが、ここで教官っぽいことをしているけど僕は元気ですよ」

 

 

 





 伏線っぽいことを最後に書いてみたり回収しようかしまいか・・・。
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