閃の軌跡~ユーノ教官~   作:泡泡

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7話

 

 キルシェに着いた僕はサラ教官を探す。まぁ、広くもない空間なのですぐに見つかった。ジョッキに注がれた麦酒を何杯目かは分からないが、一気飲みしているのがサラ教官だ。

 

 「教官、何杯目ですか?」

 

 「ングッングッ!!プハ~~。あぁユーノか。あんたもさっさと座って飲む飲む。マスター、彼に麦酒を一杯。ついでに私にも」

 

 まだ酔っ払っておらず、つまみと一緒にアルコールを摂取する。そしてこちらを少し見つめる。

 

 「あぁ、レポートでしたね。これになります。と言うか貴族様と平民の(いさか)いってどうかなりませんか?あれじゃあクラス全体が暗くなってどうしようもありませんよ」

 

 「・・・・・・」

 

 レポートを見る目だけは教官らしい目だ。いつものおちゃらけた姿や飲んで酔っ払った姿ではない。まぁそれと戦闘中は教官らしい姿を見せてはくれたが・・・。

 

 「上出来じゃない?うんうん、ユーノに頼んで正解だったわ。さぁこっち来て一緒に飲みましょうよ」

 

 「それ、纏めるのに結構苦労しましたよ。なぜ問題となる連中を一つの班にするのかとか、イマイチわかりませんでしたから・・・」

 

 ユーノもサラの横に座ってマスターに酒を頼む。最初に飲むのはさっぱりとした味わいが特徴の麦酒だ。だが量がサラよりうわばみ級だった。

 

 「マスター、麦酒を樽で」

 

 「それ、飲むのユーノさんぐらいですよ。サラさんだって飲みはしませんからね。もう慣れましたけれど・・・」

 

 最初頼んだ時は体を心配してくれたが、今では諦めたかのような表情を浮かべながら出してくれる。樽と言っても普通の樽ではなく、せいぜい10㍑入りそうな特注の樽だった。そして炭酸が抜けないように二重構造になっているのもユーノが提案して試作品ではあるが、造る事ができた。

 

 「呆れたわ。ユーノがのんべだって聞いたときは耳を疑ったけど・・・」

 

 「日々のストレスから飲みたい時だってあるんですよ。例えば今日みたいな日とかね。まぁ体には残りませんからいいですけど・・・。サラさんも何か体にたまるもの頼んだらどうです?お酒だけだと栄養いきませんよ」

 

 「ん、そうね。じゃあ・・・」

 

 マスターに適当に頼むサラさんを見ながら少しは教官同士仲良くなれたのかなと思いつつ樽から注いで飲んでいた。やはり仕事とプライベートをわけるのはお互いの為にいいのかもしれない。仕事の時はサラ教官、ユーノ君と呼び合いプライベートはあんたやユーノと呼び捨て。ユーノは教官のことをサラさんと呼ぶように言われた。

 

 うまくいっているのは彼らだけであって、Ⅶ組メンバーにはそれぞれしこりのようなものを残していた。だから背中を預けて戦えるまではまだ時間がかかりそうだった。貴族を嫌うマキアスと、それに食って掛かるユーシス。リィンが重心になるとは言っていたがそれもサラさんの勘のようなものであって、どこまで考えているか今のところわからない。

 

 「ちょっとユーノ。あんたも何か頼みなさいね?上の空で何考えているの?今は仕事のことなんて考えないでつかの間の楽しみを味わいましょ!!」

 

 頬にひんやりとした麦酒のコップを当てられて驚いて横を見ると少し不機嫌になったサラさんの姿があった。酔いのせいか少し顔が赤い。あれ、サラさんもお酒に強いはずなのになんで・・・?とか思っていた。

 

 「(よ、横顔が少しダンディだなんて・・・。酒に酔ったのかしら・・・?)ほ、ほら飲むわよ」

 

 「はぁ・・・。ま、飲みますけど」

 

 前の世界での事のせいかもしれないが、女性の気持ちに少し鈍感になっていたユーノだった。と言うかどう接したら良いか分からなくなっているだけかもしれない。その夜、サラは浴びるように飲み、ユーノはユーノで2樽を飲んだが普段通りでサラのほうが酔いつぶれてしまいⅦ組が使っている寮へ肩を貸しつつ移動するのだった。

 

 「玄関まで一緒に来ましたけど、ここからどうするんです?」

 

 「ん~、一緒に来る?」

 

 酔いのせいで思考が定まっていないのだろうか。いつもだったら言わないことまで口走るようになったサラだった。あとからあの時のことを聞いてみると半分本気、半分冗談のつもりだったようだ。だが、直球で言われないと分からないユーノは冗談と取ったようだ。

 

 「冗談はやめてください。同じ階の誰かを呼ぶとかしたらどうです?誰かこの時間まで起きてる人いないんですか?」

 

 「・・・エマとかかな」

 

 あぁ委員長キャラな子か、と思い出す。何を考えているかわからず、気が付くと何かを探るような視線を向けてくる子だった。黒猫にもよく見られているので何かしらの関係はあるのかと思うようになったのは最近だった。

 

 「じゃあ、エマに連絡してください」

 

 へべれけになりながらエニグマを取り出しエマに連絡しているようだ。ロビーにいるから来てとか聞こえてくる。そして数分後、特科クラスの制服に身を包んだエマがやってきて僕を見て少し驚いた表情を浮かべた。

 

 「ユーノ副教官も一緒だったんですね?」

 

 「あぁ、一緒に飲んでいたからね。それでサラさんのほうが酔いつぶれてしまったのでサラさんの部屋まで案内してもらえないだろうか。このまま酔いが醒めるまで置いておいたら風邪をひいてしまうかもしれないからね。どうだろう・・・?」

 

 「え、えぇ構いません。どうぞこちらです」

 

 エマが先を行き案内してくれる。男子の階層は二階で、女子の階層がその上らしい。酔って足元がおぼつかないサラさんをぶつけないように肩を貸しつつ丁寧に運ぶ。その度にエマが手伝いましょうかと言ってきたが、歩く距離が長くないことを理由に断った。

 

 「ここがサラ教官の部屋になっています。今明かりをつけますね。あっ・・・」

 

 先にサラさんの部屋に入ったエマが絶句する。数秒後、明かりが点いた部屋の中に見えてきたのは酒箱が数個ずつ重なっていた。

 

 「サラさんらしいや・・・。ほら、サラさん着きましたよ。ちゃんと服を着替えて寝るんですよー。聞いてます?」

 

 大丈夫と言うように肩を叩かれたので、ベッドに横たえる。女性らしい匂いはするが、部屋をどうにかしたほうが良いと切実に思った。

 

 「ふぅ、これでヨシっと。エマを手間を掛けたね。じゃあ僕は行くよ」

 

 サラの部屋から出てこちらの話を話半分で聞き、何かを考えているエマを横目に寮を出ようとしていると背後から声をかけられた。

 

 「あの、聞きたいことがあります。・・・お時間よろしいでしょうか?」

 

 「ん、今がいいかい?それとも時間を取り分けてのほうがいい?僕はどっちでもいいよ」

 

 「それでしたら今・・・でしょうか」

 

 少し考えてからキルシェに行くことにした。マスターから離れて話したら聞こえないだろうし、何より相手は女性だ。二人きりで会って話をしたらどんな噂話が持ち上がるか分からない。さてどんな事を聞かれるだろうか。まぁ、大体の予想は着くが・・・。

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