話の相手が同性であれば何ら問題はなく個室を選ぶのだが、今回は相手が女性だ。年齢的に離れているとはいえ部屋に入ることは倫理的に考えてありえない。と言う事で一番離れているところを選んで座ることにした。
「エマは夜、紅茶を飲んでも大丈夫?」
注文を聞きに来たマスターに注文するためにエマの好みを聞く。
「ええ、大丈夫です」
「じゃあマスター紅茶セット一つ。僕はさっき浴びるほどに飲んだから紅茶を。あとは生徒の話を聞くからこっちに来ないでもらえると助かります」
「オッケー」
マスターはユーノとエマが教官と生徒の関係であることを知っているので、それだけで分かるようだ。
「で、初めての実習はどうだった?紅茶が来るまでその事を話さないか?」
「そうですね…。水と油のような性格の二人でしたので大変でした。個人的なスキルは高いと思いますが貴族と平民と言う括りで考えるなら団体戦がちょっと…」
「あぁそうだね…。エマには伝えておくけど君たちの個人的な戦力は本当に高いものだよ。少し訓練したら戦場に出られるぐらいには…。だけど団体戦となると話は別だ。今のままだったらユーシスやマキアスは
「そうですか…。面と向かって言われると少し落ち込みますね…」
「お待ちどう様。紅茶セットと紅茶ね。あとはユーノさんから呼ばれない限り近づかないようにするよ。ごゆっくり…」
マスターが来て紅茶などを置き立ち去る。
「さて…、エマが聞きたいことは何?実習の事ではなさそうだね」
「…はい」
さっきまでは少し温かみがある表情をしていたが、こちらから切り出すとそれを無くして真剣な表情になる。
「おおっと、
瞬時に眼が違った、いいや眼の色が変わった。
「っ…!!」
「それを使わないで話してもらいたかったね…。警告は一度限りだ、聞きたいことをそのまま質問して構わないのに…。まだ信用されていないのか、いや時間が足りないのか…。尻尾にリボンした黒猫も連れてくるか?」
「……いいえ、ごめんなさい。本当の事を言ってもらうために使おうとしました。でも使わなくても本当の事を言ってもらえそうですね。あなたは魔女を知っていますね?」
「ああ、知っている」
「…騎神と言う言葉は?」
「うん、知ってる」
「二つ…じゃないですね。最後に私たちの敵…ですか?」
「少なくとも途中で
「そうですか…、分かりました」
エマから少し緊張が解けたように思えた。聞きたいことを聞けて良かったのだろうか。もう少し核心を突いて来るかと思ったが、肩透かしを食らった気分だ。やや落ち込んだ様子なのがエマにも分かったのかオロオロと視線があちらこちらへと移っているのが見えた。
「すまんなぁ。ちょっと聞かれるだろうなと思っていた事と、エマが実際に聞いてきたことが違っていてな」
「そ、そうですか…」
「ちなみに今晩はこれ以上答えることはしないぞ」
と言って紅茶を一口飲む。あぁ駄目だ…、
「…はい」
「エマ、今晩のところはそのまま寮へ戻ると良い」
「はい?」
「悪いな、急用ってもんじゃないが…まぁ近いうちにこの話の続きでもしようか?」
「ええ、そうですね」
要領を得ないユーノの言い方に戸惑いを感じつつもキルシェを後にするエマだった。