絶対絶望馬鹿   作:閻魔刀

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第1章 世界の中心で愛を叫ぶバカ
第1話


 吉井明久は塔和シティの上空から、街の様子を観察していたのだが……

 

 

 

「ちょっ! これってどうなってるの!? なんでモノクマがこの街に大量にいるわけ!?」

 

 モノクマの軍団が大暴れし、街中がパニックに陥っていた。

 その中には明久が持っているものと同じハッキング銃を片手に逃げる女子高生の姿もあった……

 

「なっ、なんであの娘が未来機関の新兵器を持っているの!? と、とにかく急いで街に降りよう」

 

 近くにあった運動場の中央にヘリを止め、急いで女子高生を見かけた場所に向かう。

 

「ヴェヘヘヘヘヘ」

 

 道中で襲いかかってくるモノクマの相手をしている余裕は無い為に適当に躱し、ついた場所は女子高生を見かけた場所の近くにあるファミレスであった。

 モノクマが突入して大暴れしたのだろう。 中にいたオトナ達は無残にも全員殺されてしまっている。

 

「この野郎…… 『壊レロ』!!」

 

 どうにか中に侵入していたモノクマを全滅させた明久。

 だが、予想以上に数が多く、予想以上にコトダマを消費させてしまった……

 

「そ… そのバカっぽい声は吉井さんか……」

 

 モノクマの残骸の中から這いずるように出てきたのは未来機関の制服を着用した男性だった。

 確か、この人は十神君のチームの人だったはずだと思った明久は、一度彼を適当な場所で安静にさせる。

 

「ちょっと、これって一体どうなっているの? 一体、この街に何があったって言うんだ!?」

「未来機関に匿名の通報があったんです。『要救助民』がこの街のマンションに監禁されていると……」

「まさか…… その救援に向かった直後に……」

「ええ、まさに絶妙なタイミングでしたよ。 本当に都合よく見計らったかの様に大量のモノクマがこの街に出没して……(ゴホゴホッ……!!)」

「無理するな、今急いで救助を呼んで……」

「待って下さい!!」

 

 ハッキング銃を構え、急いで近くにいる未来機関の人を呼びに行こうとした明久だったが、男に呼び止められてしまう。

 

「もう私の事はいいです。 それよりも裏口から出た要救助民の娘を助けに行ってやってください!!」

「な、何を言っているんだ!?」

「その娘を我々のチームが待機している公園の場所を教えて逃した後に…… 自分が囮になったんです」

 

 男の言葉を聞いて驚く明久。

 

「だからお願いします。 またモノクマが迫ってきています。 この先、道なりに真っ直ぐに進んでいったと所の公園に我々の仲間が待機しています。 そこにいるみんなと合流して助けてください!」

 

 男は既にフラフラになっているにも関わらず、震える足を無理矢理引きずり、先程逃したという女子高生が通った裏口への扉を開ける。

 

「君を助けられなくて本当にごめん…… 君に変わって僕が必ず、その娘の助けになってくるから…… ここの事を頼んだよ!」

 

 あまりにも無力な自分に腹が立った明久。 その悔しさに唇を痛いほどに噛み締めてしまう。

 しかし、身を挺してまで道を切り開いてくれた男の思いを無駄にしないためにも、明久は涙を堪えて全力でその公園に向かう。 まだ、その少女が生き延びているかもしれないという希望を抱いて……

 

《オトナなんて、い~らない。 シタイ……》

「これって、歌声? ……まさか!!」

 

 

 

 しかし、そんな淡い希望も簡単に打ち砕かれる。

 必死になって走る明久の目の前に映った光景は、完全に野獣と化したモノクマの集団によって蹂躙され嬲り殺しにされていく機関の仲間とその光景を眺めて楽しむ『モノクマフェイスを被ったコドモ達』だった……

 

 

「……は? 何……? 何これ?? ……何がどうなっているの???」

 

 あまりにも絶望的すぎる状況に明久の頭はその容量をオーバーさせてしまった……

 その光景が夢であってほしいと思い始めてすらいて、その先の記憶は彼には殆ど残っていなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 ???side

 

「おいおい、あいつすげえなぁ。 モノクマ相手に素手でも戦ってやがるぜ……」

 

 そう言った彼の目の前に映っているのは、狂気で狂った様に戦い続ける吉井明久だった……

 あれから何分立ったのだろうか? 明久の手には既にハッキング銃は握られておらず、あたりにはその残骸しか残されていなかった。

 それでも明久は、怒り狂った状態のままでモノクマの左目を的確に殴り飛ばし、一体ずつ確実に壊し続けている。

 そして、残ったモノクマが三匹を切った頃にはモノクマを指揮していた子供達が逃げ出し、指揮系統を失ったモノクマはなすすべも無いまま完全に破壊され尽くしてしまった……

 

「みんなごめん…… 助けてあげられなかった……」

 

 だが、そんな無茶を繰り返した明久の体が無事であるはずも無く、虚脱状態になる寸前で気絶してしまったまま地面に倒れてしまった。

 

「はっ、あんな無茶繰り返せばいくら超高校級でも倒れてしまうのも無理ないか…… 仲間が殺されているからって流石にバカにも程があるだろ?」

「いやいやいや、僕はああいう一途な男の子って大好きですよ! ええ、それはもういろんな意味で……(ジュル……)」

「気持ちわるいんだよこの変態! ぶっ殺すぞ!!」

「いやぁああああ~ん!♡♡」

「ひぇぇぇ…… この人、怒鳴られて喜んでいますよぉ~……」

 

 怒鳴られているにも関わらず、むしろ快感すら感じてしまっている変態相手におびえている女性……

 

「若、しかしあれは放置しておいても良いのですか?」

「おめぇはあの状態をどう見るよ?」

「あの状態ですと我々が放置しますと、あの男の生命力しだいではギリギリ生きていられるでしょうが、あの時ほどの動きをするのはもう不可能かと思われます。 我々が普通に助ければ、むしろ超回復して急激な力の上昇が期待できるでしょうが……」

 

 若と呼ばれた男子からの質問に、剣道家のような女性が答える。

 その背中には日本刀やハンマーなどが背負われており、日本刀の方に至っては鞘に収められた状態からでも一級品の名刀であることがはっきりと伺えるほどだ。

 

「なんだよ、歯切れが悪いな。 言いたい事があるならはっきり言えっての。 俺にはひとりの人間としてのお前が必要なんだって、前から言っているだろ?」

「失礼いたしました。 ただ、我々の事情を考えますと、彼を助ける意味があるのかと思いまして…… この後は『飼育士』『写真家』を迎えに行かないといけないですし…… そして、もうこちらに来る気はないでしょうが『幸運』の方にも声をかけないといけないことを考えますと……」

 

 どうやら、彼らには彼らなりの事情があるようで、明久を助けるとなるとその都合に間に合わなくなる可能性を危惧しているようだった。

 

「私は出来ることならあの子を助けてあげたいです…… 嘗て『保健委員』だった私はあそこで傷ついている子を見捨てたくはないです」

 

 保健委員と名乗った女性は、彼を助けたいと思っている様だ。

 その後ろで震えながら言ってもあまり説得力が無い気もするが……

 

「おっ? こいつがさっきまで使っていた武器、マジですげぇな! 『メカニック』の俺でも見たことのねえ部品やシステムがふんだんに使われてやがるぜ!!」

「おい、だったらどうだってんだ? 別にそれだけが欲しいなら別にかっぱらっても問題ねぇ…(ピリリピリリ)まったく、誰だよ……って『カムクラ』のヤローからかよ! ……一体何だ?」

 

 若と呼ばれた男子は悪態を付きながらケータイに出る。

 

「意外と早く出てきてくれましたね『極道』さん。 もうみんなそちらに到着していますか?」

「あと『マネージャー』と『新体操部』が遅れて来るって言ってやがったぜ。 それと『日本舞踊家』がブチギレてやがったぞ。「もっと早く連絡しろよこのゲロブタァ!!」ってな」

「えぇ! 私のせいじゃ無いですよぉぉ……」

「やれやれ、相変わらず二人の相性は最悪なままなんですね…… 本当にツマラナイ二人ですよ」

 

呆れたような声でカムクラが言う。

 

「若、先程『軽音部』の方から、新メンバーが入りそうだから、今日は厳しいと……」

「約束をすっぽかしてねぇで早く来いと伝えろよ! 大事な同窓会だって言ってんだろうが!!」

 

『軽音部』からの伝言に激怒して電話を奪い取って大声で説教を始める『極道』。

「貴方も相変わらずですね。 カルシウムはキチンと取っているんですか?」

「カムクラァ!! テメェ、また俺の身長のことを遠回しにバカにしやがったな!? 今度という今度は許さねぇ……」

「確か、先日とある場所で『超高校級のバカ』を見かけたので、焚き付けてそちらに送り込んだのですが、貴方達は見かけていませんか? 丁度良いので、画像を今から送ります。 たまたまでいいので見つけたら適当にいじめ倒して貰えませんか?」

「話聞けよ!テメェ(ツー…ツー…ツー……)って、勝手に切るんじゃネェェェェ!!」

 

頭の血管が切れそうになって、携帯を握り潰しそうになっている『極道』だったが、『剣道家』の説得もあり、ケータイの破壊だけは阻止できたようである。

カムクラから届いた画像には、今すぐ近くで倒れている少年と全く同一人物であった事に驚く『極道』と『剣道家』。

 

「おい三人共、こいつを適当な場所に運ぶぞ…って『料理人』、あの二人はどうした?」

「『保健委員』はあの男の子を≪ひん剥いて弄り倒す≫的な事を言ってヨダレを垂らしながら何処かに運んで、『メカニック』の方は彼が使っていた銃の部品を全部回収して『保健委員』に着いて行ったよ」

「あいつらもやりたい放題かよ!? 急いであのバカ二人を追い掛けるぞ。 3回くらいしばき倒してやる!!」

 

こうしていつの間にか明久は彼らの手で回収され、少し離れた病院に運ばれる事となってしまった……

 

 

 

 ???side end

 

 

 

 

「う…… ここは、一体?」

 

 吉井明久は目を覚ました。 だが、その場所は先程までいた公園では無い事にすぐに気が付く。

 

「僕は確か、あの公園でモノクマと戦って、それから…… って、こんな所で寝てる場合じゃない! ここはどこだ? 急いで、あの公園に戻らないと!」

 

 公園でおきていた事を思い出した明久は急いで起き上がり、部屋から出ていった。

 

「だけど、ここは本当にどこだろ? 病院みたいだな…… まるで誰かが助けてくれたみたいな……」

 

 この建物から出ていこうとする前に武器になる物を確保しようと病院内を捜索する明久。

 だが、この病院内もかなり荒れており、なかなか思うように搜索が出来ていない……

 

「あれ? この扉の先から人の声がするけど、だれかいるのかな? とりあえず入ってみようっと!」

 

 途中で女性の声が聞こえる扉を見つけた明久は、今の現状がどうなっているのかを聞き出そうと思い、ノックもせずに扉の中に入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そう、『地獄への扉』を 

 扉の鍵が《バキン!!》とか言いながら壊れたにも関わらず、明久はそれに気が付かつくことは無かった……

 

 

 

 

 

 

「「「キャアアアアアアアアアアアア!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

「おい、あいつらまだ準備が終わらねえのか? いくらなんでも遅すぎだろ」

「ふっ、焦りすぎだ。 奴らは邪神召喚の儀式を終え、朱に染まりし霊装を解いているのだろう? ならば無闇に焦らせる必要はない。 手順を間違えてしまう事による術式後の呪い返しが来ることがないように、おとなしく待って……」

 

 謎の男子の集団は別の部屋で誰かを待っているようだったのだが……

 

 

「「待てぇぇぇぇい!!!」」

「ごめんなさ~~い!!」

 

「「「……なにやってんだアイツ等!?」」」

 

 先日保護した少年がいくつもの武器を構えながら追い掛けてくる女性陣から逃げてきた。

 彼が部屋の中に乱入して来たことで部屋は大混乱に陥り、阿鼻叫喚の地獄絵図と化してしまいそうになる……

 

「若、その少年をこちらに渡してください! ヘタを打つと若ごと斬ってしまう危険があります!」

「ふざけんな!! なんで俺まで斬られそうにならなきゃいけねえんだよ? ぶっ殺すならこいつだけにしろよ!!」

「ええ! 僕の命をなんだと思ってるの!?」

「どうでもいいと思っているに決まってんだろ!!」

「そんな、ヒドイ!!」

 

 あまりにも薄情な態度を取る『極道』の言葉にショックを受ける明久。

 

「おいおい『剣道家』、一度落ち着けって。 上司の前でそんなカリカリした態度取るなよ…」

「黙れ『メカニック』。まずはこいつにトドメを刺してからだ!」

「だから、誤解ですって! 僕はただ普通に部屋に入ろうとしただけで……」

「言い訳と謝罪は生首にしてからたっぷりと聞いてやるから、ありがたく思え!!」

「意味わかんないよ!?」

「わかるように言った覚えも無い!」

「何があったかのかは知らんが、とりあえず一度落ち着かんかい……」

「「『マネージャー』は黙っていろ(黙っていて下さい)!!」」

 

 

 『マネージャー』と呼ばれた筋骨隆々な大男の仲裁も虚しく、どんどんヒートアップしていく女性陣。

 

「(すぅ~~っ!!)お・ま・え・ら、いい加減にしろォォ!!」

 

 ここ数日続くストレスに耐え切れなくなってきた『極道』がとうとうキレて激怒する。

 

 そのおかげもあってどうにかみんな落ち着いたが、女性陣からの痛い視線を浴びせられ続けている明久は完全に小動物の様に縮こまってしまっている……

 

「で? 状況から察してお前が何かやらかしたんだろ、ボウズ?」

「え? ボウズって君の方が年下じゃ……」

「てめぇ、ぶっ殺すぞ?」

「心の底からスミマセン」

 

 事情を聞こうとした『極道』相手にチビ呼ばわりしようとした明久。

 ドスの効いた声とともに匕首で脅迫され、条件反射級の速度で土下座する。

 

「やらかしたって…… 僕は別にあの人たちのいる部屋に普通に入ろうとして……」

「女子の着替え部屋だと知っておきながら普通に入ってくるなんて、既にデリカシーが無いって言うレベルじゃないんだけど?」

「ひぇ~…… 馬鹿でスケベ面で節操無しって感じだとは思ったけど、まさか覗きまでするとは思わなかったっす!」

「あの~『軽音部』さん…… 本当に馬鹿でスケベで節操なしだったら、覗きくらいしてもおかしくないと思うんですけど……」

 

 カメラを持った『写真家』らしき女性と非常にハイテンションな女性の言葉に、『保健委員』と呼ばれた女性がツッコミを入れる。

 

「うぷぷ、それにしてもこんな極限状況下で覗き行為をしたいだなんてそんなに盛ってんのかな? この童貞君は」

「だから僕はお姉さん達の裸を覗きたくてドアを開けたわけじゃないんですって!! それに、僕は普通にお姉さん達より美人できれいな彼女と何回もヤって……《カッ!》←ナイフが飛んできた音

 ……ありもしないことを言ってごめんなさい。 普通の彼女しかいないです…… 清らかなお子ちゃまの遠距離恋愛しかしていません……」

 

 誇大妄想も甚だしく、またもデリカシーの欠如したような発言をしようとした明久の本日2度目の土下座である。

 一応許してもらえた様で、ナイフを投げた女性はそのまま何処かに行ってしまう……

 

「で? 一応申し開きはあるか?」

「ちょっと『極道』! こいつにこんな権利なんて……」

「だから落ち着け『舞踊家』。 とりあえず、話は公平に聞いておかねえといけねえだろ? 《足から一本ずつ銃でぶち抜く》か《斬首》で瞬殺するかは話を聞いてからきちんと決めておきたいだろ?」

「どっちにしても僕が殺されちゃうじゃないか!!」

「それはお前の話次第だ。 一体どう言う流れでアイツ等をここまで怒らせたんだ?」

 

 一度落ち着いた所で追い掛け回されるまでの事情を『極道』に説明していく明久。

 

「ぷっ! それで私たちの美声を聞いて欲情した末に覗き行為なんて目論んだっていう訳なんだぁ?」

「なんでそこでそう言う話に繋げようとするんですか? いくら和服の似合う美人さんだからって言っていいことと悪いことがあるでしょう!!」

「最後まで話を聞けって…… ぶっ殺すのはそれからでも遅くはねえだろ?」

 

 「本当に殺されるの前提かよ…」と思った明久だったが、どうにか許してもらえるように説明を続けていく……

 

「……それで中を捜索していたら声が聞こえてきて、『僕を助けてくれた人かな?』と思って、話を聞こうとドアを開けてしまったら、お姉さん達が着替えている光景で後は見ての通りです」

 

 半分呆れ顔の『極道』は、一度明久を罵倒し続けていた女性の方に振り向いて一つの疑問を投げかける。

 

「おい『舞踊家』、更衣室のドアの鍵は閉めたのか?」

「え? ああいう扉の鍵って勝手に締まるもんじゃないの?」

「「はい?」」

 

 『舞踊家』のありえない言葉に、全員唖然としてしまう。

 

「あ、あの~? 『舞踊家』さんのお家の鍵は本当に昔のもので、勢いよく扉を閉めてしまうとその衝撃で鍵も勝手に落ちてしまうって話を彼女の家の人に聞いた事があります」

「なんでそんな話を聞いているのよ『保健委員』ちゃん……」

「あ、あれ? てっきり私は家の下僕達が気を使ってそういう工夫がされていると思っていたんだけど……」

「それならいっそ近代的なオートロックシステムを使うわよ普通……」

 

 『写真家』のお姉さんの言葉に膝を付いて落ち込む『舞踊家』。

 

「ま、まあ今回の件は元々ボロボロになっていた扉を乱暴な扱いをした『舞踊家』のせいって事で、このガキの覗きの件は不問にしとこうじゃねえか。 『舞踊家』も今後は物を優しく扱ってやれよ?」

 

 どうにか話が落ち着いた事で、ようやく本題に入る『極道』。

 

「さっきはすまなかったな。 って言うかお前すげえな。 俺たちが保護した時は瀕死だった癖に、そこの『保健委員』の治療を受けた後とは言え、もう普通に走っていられるんだからよ……」

「え? 瀕死って、どゆこと??」

「あなた、本当に危なかったんですよ? 先程まで生死を彷徨うような重症を負っていまして、普通の人ならいくら私の治療を受けた後でもあんなに走り回るなんて事は不可能なはずだったんですからね?」

「具体的に言うと、モノクマ相手に狂った様にボロボロになりながら戦い続けた末にぶっ倒れたって言う所だけどな」

 

 『保健委員』と『メカニック』の言葉に顔が真っ青になる明久。

 

「本当に凄かったぜ。 一体何があればあんなふうになるんだって言う位にはよ……」

「そんなあなたを放ってはおけなくて、そのまま私の独断でこの病院のベッドで治療したんで……」

「お前はこのガキを《ひん剥いて弄り倒す》とか言いながら嬉々とした表情でヨダレ垂らしまくってここに運んでいったんじゃねえのか?」

 

 『極道』の言葉を聞いて軽く引き始めている明久。

 

「若、『メカニック』回収した彼の荷物をお持ちしました。 全てこのアタッシュケースの中に入れてあります。 ただ……」

「おいどうした?」

 

 先程、明久相手にナイフを投げつけた女性が気まずそうにしながらアタッシュケースを持ってきた。

 

「私の確認ミスで無ければですが…… 食料関係が、乾パンよりも砂糖と塩の方が圧倒的に多いのですが、これで本当に大丈夫なのでしょうか?」

「ああ、それでしたら大丈夫ですよ。 その砂糖と塩は僕の非常食の一つですから」

「「はい?」」

 

 明久の一言にその場にいた全員の思考がフリーズしてしまう。

 

「あ、あの? ……もう一度言って貰ってもいいですか?」

「あの砂糖と塩は僕の非常食ですよ、保健委員のお姉さん?」

「……砂糖と塩がですか?」

「うん! 僕に取って贅沢な食料だよ?」

 

 あっけらかんとした態度で言う明久だった……

 そんな明久を見て何かを恐るように『極道』と『剣道家』以外の全員が後ずさる……

 

「……ふざけないでください! あなたいきなり何を言っているんですか!? 確かに砂糖と塩は人体に必要な栄養素もありますが、結局はただの調味料なんですよ!」

 

 明久の言葉に驚いた保健委員のお姉さんは、堰を切った様に喋りだす。

 その時の気迫は、先程まで彼女の事を罵倒していた『舞踊家』ですらが本気でビビり始めている程だ……

 

「もっと自分の体を大切にしないとダメです! こんなに絶望的な状況ではなかなか食料を手にする事が難しい状況なのはわかりますけど、だからってそれが当たり前のようなことであるような風に言わないでください!!

 あなたがどれだけ強い人かは知らないですけど、どれだけ強くたってあなたの体そのものはそれについていけるほど強いものじゃないんです!!」

「僕の体が……強くない? まさかぁ~? 日常的に関節外されたりしていた時期とかあって、それでも自分で簡単に治したりとかして……」

「本当に冗談じゃないんですよ!! 外れた関節をはめ治すのはかなりの痛みを伴うのが普通なんです。 それを毎日当たり前の様にしているなんて、もはや痛覚が殆どなくなってしまっている領域です!! 痛覚という『安全装置』を外さないと日常生活を維持できないような日々を過ごさないといけないなんて…… 本来あるべきバイタルサインが機能しなくなるくらいにボロボロになってしまっているくらいに『弱っている』あなたの体を少しは気遣ってください!!」

 

 そう言って明久の手を取る彼女の手は若干だが震えていた。 滅多に怒るような性格では無いからか、一度激怒下時には溢れ出す感情が止められないのだろう……

 

「ご、ごめんなさい…… 今はこんな状況ですから厳しいでしょうけど、一度安全な場所に避難できましたら、ゆっくり静養を取って下さい。 あなたの回復力なら、きちんと栄養を取って休めば一週間くらいで良くなると思いますから」

「いえ、ありがとうございます、保健委員さん。 こんなふうに注意してくれる人なんてこんな世界になってからは全然いませんでしたから……」 

 

 流石に申し訳なくなってきた明久は素直に謝る。

 保健委員のお姉さんもわかってくれた事が嬉しかったのか、優しく頭を撫でて許してくれた。

 

「ま、まあこんな世界じゃあまともな食料にありつくのも難しいからな! お前みたいに砂糖と塩が贅沢品だなんて言いだす奴がいても仕方がないよな」

 

 「文月学園にいた頃からこんな食生活です」とは言えない明久は、メカニックの男性とその場で笑いながらごまかすことにした……

 

「あ、あと悪いんだけど…… お前が使っていたメガホンみたいな銃についてなんだが……」

「あのハッキング銃がどうかしたんですか?」

「悪い! あの銃、完全にぶっ壊されていて元には戻せなかったわ!!」

「そ、そんな気にしないでください。 あれが無くなってしまったのは残念ですけど、どうにか頑張って……」

「その代わりと言ってはなんだけど、あの武器のメモリーのいくつかは無事だったから、おまえが眠っている間に勝手に別の武器に組み込んで改造させてもらったわ」

「何してくれてんですか!?」

 

 へらへらと笑うメカニックの勝手な行動に怒りたくなってくる明久だったが、助けてもらった手前を考えると怒るに怒れなかった……

 

「お詫びと言ってはなんだけどよ、そのお前の銃のメモリーを使って俺が直々に作り上げた装備品があるんだけど、よかったら貰って行くか?」

「装備品?」

「ああ、いま剣道家が持ってきたのがそうなんけどな……」

 

 剣道家の女性がアタッシュケースの中から幾つもの機械や武器を取り出す。

 その中には日本刀やスレッジハンマーと言った武器、スピードガンのような解析機や、マントのような防具もある。

 

「貴様が使っていたハッキング銃のメモリーをそこのメカニックが解析してデータを取り出し、この装備品の中に取り付けられた機械のメモリーに移した物だ。 そのケースの中に説明書も同封しておくからここを出る前にでも読んでおいてくれ」

「あ、ありがと…… ってもう行っちゃった」

 

 説明を終えた剣道家は、明久に押しのけるように渡す。

 彼女としてもあまり彼とは話したくはないのだろう。

 『料理人』の方を手伝ってくると言ってまた出て行ってしまった。

 

「ああ、お前にあげたその装備品、武器の方は剣道家が隠し持っていた武器をいくつか勝手に使っているんだよ……

 それで機嫌を損ねてしまって、未だ怒っているんだよ……」

 

 そこに追加で明久の覗き行為である。

 普通に考えて不機嫌にならない人はいないだろう……

 

「おーいみんなー、ご飯ができたよ。 おっ、キミも起きられたんだね? よかったらキミも僕のご飯を食べていきなよ」

 

 気さくな料理人の言葉に甘えて、食事に同伴させて貰う明久。

 未来機関の施設を出てからは乾パンと砂糖・塩しか摂って無かった明久にとって手作りの料理というものがとても美味しく感じて、出された分(約6人前)をぺろりと平らげてしまった。

 

「す…… すごく美味しかったです。 ありがとうございます……」

「ちょっ! どれだけ嬉しかったの!? とりあえず深呼吸でもして落ち着こうよ! そうでなかったらボクの下半身でも見て……(ギャアアアアアアアア)」

 

 感極まりすぎて涙が溢れてきた明久をどうにかなだめようとするが、変態的な発言で落ち着かせようとする料理人を女性陣が連行していってしまった……

 

「ご馳走までしてくれて、本当にありがとうございます! この恩は決して忘れません」

「その武器をただの道具だと思わず大切に、そしてその性能をフルに使いこなしてやってくれよ!」

「また覗きをして捕まるんじゃないわよ~!」

「ふっ! 貴様の因果線がどこに繋がっていくのかはわからんが、その複雑に絡み合う悲劇の運命に負けぬよう我が破壊神暗黒四天王とともに……」

「心配してくれてありがとう『飼育員』さん!」

 

 助けてくれたみんなの声援を背中に明久は再び塔和シティの中へと突入して行った。

 この街で助けを求めているだろう、嘗ての仲間達を見つける為に、彼らが授けてくれた新武装と共に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???side

 

 

 

 

 

「ふっ! 行ったな……」

「ええ、行きましたね……」

 

 明久達を見送った彼らの笑みは先程まで明久に向けていた優しいものとは全く違っていた。

 まるで、先程まで明久に向けていた顔はただの仮面であったかのように……

 

「しかしよぉ、なんであんなポンポンと簡単に人を信じちまうのかねぇあのバカは」

「仕方ないじゃないですか、『極道』さん。 彼はなんて言ったって『超高校級のバカ』なんですから簡単に騙せちゃうんですよ」

「なるほどねぇ、あのカムクラおにぃが送りつけた理由がわかる気がするよ。 こういう正義バカ程利用しやすいカモはいないって事だよね〜?」

「ふっ、だがメカニックよ? 実際あの武器って役に立つのか?」

「ああ、そこに関しては間違いないぜ。 なんと言ってもあのハッキング銃からコトダマの力を流用させてるんだからな。 後はあいつが使いこなせるかどうかだろ」

「う~ん、ボクとしてはあの子のお尻をなで……」

「この変態、ちょっと黙ってなさい!」

「つーか剣道家、おまえが持っていた武器を勝手に使われていたけど大丈夫か?」

「問題ありませんよ若。 あの武器達は私が持っている武器のほんの一部に過ぎませんから……」

 

 そう言った剣道家の服の中からは大量の武器・暗器が飛び出してくる。

 その中には大量の日本刀や大太刀、槍7本に加えて薙刀8本・ナイフ・手裏剣・ダイナマイト40本・スレッジハンマー5本・鎖鎌4本・大型拳銃20丁・ショットガン2丁・対物ライフル・対戦車用ロケット砲3本・ガトリングガン2艇(弾数5000発分)など、中には暗器とは呼べないものも多数含まれていた。

 その異常な武器の品揃えには全員唖然としてしまっている……

 

「お、おい、そろそろ移動するぞ! 遅れて来た『王女』と『詐欺師』と『体操部』が到着したらしいから、さっさと迎えに行かねえとな」

「よーし、歓迎のオープニングソングは私にまかせるっす…」

「「「やめて!!」」」

 

絶望side end

 

 

 

そして此処から彼にとって、とても長い様で短い地獄の様な日々が始まった……

バカと少女と絶望が交差する時、物語が始まる!

 

 

 

 

 

 

 




上げてから落とす。
それがこのSSの絶望ですwww

感想待っていま~す!
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