絶対絶望馬鹿   作:閻魔刀

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ここからはダブル主人公で行きたいと思います。
今回は誰が出るのでしょうか?


第2話

 こまるside

 

 私の名前は苗木こまる。

 モノクマたちから追いかけまわされる至って普通の女子高生だ。

 なのに、いきなり白と黒のクマの様な覆面を被った謎の人物達に捕まって、2LDKのマンションに監禁されて、せっかく未来機関から来たって言う十神さんに助けて貰えたかと思ったら、今度は希望の戦士という子達からゲームのターゲットにされて……

 落ちた建物の屋上では大量のモノクマに囲まれてて、とっさにパラシュートの中に隠れたけど……

 

「助けて下さい、助けて下さい、助けて下さい、助けて下さい、助けて下さい・・・・・・」

 

 もうダメ… 本当にもう死んじゃうんだと思っていました……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バキン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……へっ?」

 

 

 

 鋼鉄にヒビが入ったような音が聞こえて来て、どうにか頑張ってパラシュートの布の中から外の様子を見てみました。

 そこには……

 

 

 

 

 

 

「フハハハハハッ!? 無駄無駄無駄ァッッ!!」

「こんなのヤっても萌えねぇぇぇ~! ギャハハハハハハハ!!」

 

 

 

 モノクマを相手に一方的に殴り飛ばすライオンのような風貌の赤い髪をした大きな男の人と、鋏を両手に笑いながらモノクマを切り刻む女の人がいました……

 

 

「ん~? み~っけ」

 

 

 モノクマを切り刻んでいた女の人は呆然としていた私の事を見たかと思ったら、一瞬で詰め寄ってきます!

 

 

「ねぇあんた、『苗木こまる』って言うんでしょ? ね? そ~でしょ?そ~でしょ?? 違うなら違うって言えよ。 バラして、道端の野菜販売所で並べてやっからよぉ」

 

 キャアアアアアアアアア! 鋏! 鋏が私の首筋に…… 何なのこの人怖いいいいい!! 

 うえぇぇぇん! 助けてよぉ~お兄ちゃん!!

 

「そ、そうです! 苗木こまるです!!」

 

 私は素直に答える事にしました。 だって本当に怖いんだもんこの人!

 

「おい、マジでしつこいな! おいジェノサイダー、下から大量にモノクマがやってきてやがる! その子が苗木こまるだって言うなら一度どこかに避難させた方がいいぞ!」

「あ~ん?」

「さ、さっきより多い……」

「あ~、メンドクセェな! ……オラァ!!」

 

 さっきの大きい男の人が女の人が使っていた鋏の一本をモノクマに投げつけました!!

 って、ジェノサイダーって呼ばれていた女の人が物凄く不機嫌です! 視線だけで人を殺せそうなくらいに怖いぃぃぃ!!

 

「ラァァァァァァァァァァァァンデブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 でもそのおかげで少しだけ隙が出来ました。 その瞬間にジェノサイダーさんが私の手を取ってその辺の物陰に隠れてくれました。

 ……って、さっきまで人をにらみつけていたのに急に笑い出すんですか!?

 さっきから情緒不安定と言うか、笑いの沸点が低すぎですよ!!

 でも助かったぁ~~~…… この人たちが助けてくれなかったら本当に殺されている所だったよ……

 

 

 

 

「ふーん、あのモノクマって自動操縦型ロボットなんだ」

「それは間違いねぇ。 あのモノクマ共はこれまでと違って行動パターンが単純すぎるんだ。

『上から爪を振り下ろす』か『少し離れた所から噛みつく』の2択しか攻撃パターンが無かった。 その場合で考えられるのは『自動操縦型で単純な行動しかプログラムされていない』か『コントローラーが単純すぎる作りになっていて、簡単な操作しか出来ない』の二つに絞られるんだ」

「そーかいそーかい。 ……で? それでなんで手動で操っているという線を消した訳?」

「あのモノクマ共は周りに俺らだっていたにも関わらず常に苗木をターゲットにしていやがった。 その攻撃のタイミングも常に一定のパターンから攻撃を仕掛けていたんだよ。 手動操作でモノクマを操っているのならあんな機械的な攻撃はしてこねえもんだ」

「なるほどなるほど…… どーりで前の奴よりザコいと思った! ま、今のテクノロジーじゃあんなもんか!

 だってこれってSFじゃないもんね。 ギリでSFじゃないもんね?」

 

 ハイテンションでゲラゲラゲラと爆笑し続けるジェノサイダーさん。

 何が楽しいのかが分からないですけど、そんなに大声出したらモノクマに見つかっちゃうよぉ……

 

「あ、あの……」

「はい、ご用件は何でしょう?」

「もしかして、助けてくれたんですか?」

 

 と、とにかく私の事を助けに来てくれた人なのかどうか確認しないと……

 って、いつの間にか鋏を向けられています! この人本当に沸点低いよね!?  

 

「……おい、デコマルっつったな?」

「こまるです! 苗木こまるっ!!」

「白夜様の居場所どこー? もちろん知ってるんでしょ?」

「え?」

「だーって、デコマルの持っている銃から白夜様のにおいがプンプンするもーん」

「に、臭いするの?」

「おい、隠して、無駄に生存率下げるような真似するんじゃねーぞ!」

「か、隠してなんか……」

「10,9、8、7……」

「な、何っ!?」

「0までに吐かなかったらブチブチブチって、餅みたいに千切って千切ってぶち殺すの」

 

 いやああああああ、本当に知らないのにこのお姉さん全く話を聞いてくれない……

 こうなったらあのお兄さんに助けて貰って ……って完全に向こうを向いて見なかった事にしようとしてる!

 「俺も無駄に生存率は下げたくねーんだよ」とか小声で言われても困りますよ!?

 

「4,3,2……」

 

 カウントが速くなってる! どうにかこの状況を打破しないと……

 

 

1.周りにはモノクマ(敵)だらけ……

2.まともな人間は赤髪のお兄さんだけだけど頼りにはできそうにもない

3.目の前には鋏を突き付けて来る殺人鬼のお姉さん

 

 だめ、もう詰んでる……

 あのお兄さん、意外と当てに出来そうにないや……

 

「…い……ち……… あ、あんた達誰よ!」

 

 ……え? な、何? 一体どう言う事なの?? 急に人が変わった?

 髪の赤いお兄さんも驚いてるし…… この二人って仲間じゃないのかな……?

 

「あっ、さては! アンタ…苗木こまるねっ! どうなの…図星でしょう!?」

「さっきそう言っていただろ? つーかいきなり何寝言ほざいてんだ? チョキでしばくぞ、このメガネブス」

 

 さっきまでそっぽ向いていた赤髪のお兄さんがいきなり酷い事を言ってきました。

 この人にとっては普通なのかなぁ……

 

「し、仕方ないじゃないの! あたしは”あいつ”と記憶を共有できないんだから!」

「あいつ…? 記憶…?」

「まさか多重人格者って奴か? だったら俺らにとって味方なのかどうかはっきりしないじゃねえか。 もう一人のお前がジェノの奴と真逆の考えだったら、一転して俺らの敵になる事だってあり得るんだからよ」

「そ、そりゃあ…味方よ。」

「だったらこんなことしてる場合じゃなくて逃げようよ! 早くしないと襲われちゃうって!!」

「それなら心配いらなさそうだぞ?」

「…え?」

「あのモノクマ共はまだオレ達の居場所が特定出来てねぇ…… それに、俺らだったらあの程度のモノクマ共なら十分に撃退できる」

 

 赤髪のお兄さんは妙に自信満々に言い切りますけど、私はまだ怖くてまだ動けそうにないです……

 その隣では「大丈夫よ…あたしならやれる… だって…あの人と約束したんだもの……」 とか言いながら変に体をくねくねさせて妄想の世界に入ってしまったけど……

 本当に大丈夫なのかなぁ…… って、赤髪のお兄さんが首筋に手刀を叩き込みました!

 そのおかげであのお姉さんが元に戻って来たけど、なんだか物凄く不機嫌です!!

 

「ここで…全部仕留めるわよ……! 追って来ないように…バラバラにしてやるわっ!」

 

 お姉さんがスタンガンを持って前に出てきます…… あれで戦うのかなぁ?

 

「とりあえず”一体につき10発”で十分だろ……」

 

 指をパキポキならしながら不穏なことを言っているけど、拳で戦う気だよね?

 ロボットを直接殴るってあの人の拳、大丈夫かなぁ………

 

「い、行くわよ…! えっと……苗木おまると……」

「おまるっ!?」

「……”文月の悪鬼羅刹”、坂本雄二だ」

 

 

 

 

 

 

 こまるside end

 

 

 

 

 

 

 

 大量のモノクマがスタンガンを構える少女? に目掛けて飛び掛かってきた時だった……

 少女は手に持っていたスタンガンを起動させ、その電流を頭に付きつける!

 

「呼ばれて飛び出てジェノサイダー! ギャハハハハハハハ!!」

 

 いきなり先程までのジェノサイダーと呼ばれていた人格に立ち戻った少女は、回転しながら大量の鋏を投げつける。

 囲むように追い詰めていたつもりになっていたモノクマたちはなすすべも無く刺し壊されていく。

 

「キャアアアアアアアアア!!」

「おっと、あぶねぇ!」

 

 ただし、周りにいるこまる達に対して一切配慮していなかった為、とっさに坂本がこまるを庇う形で強引に伏せさせる。

 

「もっと萌える男の子を切り刻みたいわね!」

 

 一度、全滅したと思ったモノクマが増援を呼んでいたのか、また周りのビルから大量のモノクマが乱入してくる。

 

「大変だ!大変だ!!」

「ヴェへへへへ!!」

 

 次々と襲い掛かって来るモノクマの大群。

 そして、そのモノクマの大群は、こまると坂本の方に目掛けて襲い掛かってくる。

 

「コラッ!!」

 

 モノクマが上から爪を構え、大きく振りかぶって来た!

 

 

「……オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」

 

 

 ……が、何の問題も無かったかの様に殴り返す坂本。

 あの感じだと一体につき12・3発は殴っているだろうか……

 そして、すべてのモノクマが宙に浮いて、一か所に集まって来た瞬間に……

 

「アタシに元気を分けてくれェェェェ!!!!」

 

 ジェノサイダーが謎のエネルギーが収束された超巨大玉を投げつける。

 それをモロに喰らったモノクマ達はなすすべもなく細かく切断されて、原型を留めないほどに切り刻まれた状態になったまま大爆発を起こした。

 

 

「モノクマちゃーん。 さよぉ~ならぁ~」

 

 

 少し気分がすっきりしたのか、ゲラゲラと笑いこけた末にジェノサイダーはそのまま眠るように気絶し、元の人格に戻って行った。

 

 

 

「い、今ので……全部よね……?」

「…凄い! 凄いよ! ねぇ、今のって何だったの!? なんか別人みたいになってなかった!?

 坂本さんもあのモノクマ達を相手に一気に何十発も殴りつけるなんていったいどうやったらそんな事が出来るんですか?」

「…………タメ口」

「…え?」

「タ、タメ口…きいてんじゃないわよ… あたしが年上なんだから…”さん”付けで呼びなさいよ。

 なんであの男だけさん付けで呼んでんのよ……」

「あ、でも…お姉さんの方だけ名前聞いてない…んですけど」

「そう言えばそうだったな。 名前なんて言うんだ?」

「フン… どうせ…あたしの名前なんて、すぐに忘れるでしょうけど… 『腐川冬子(ふかわとうこ)』よ」

「腐川冬子…さん…」

「さ、さえない名前で悪かったわね… どうせ、ブスにお似合いの名前とか思ってんでしょ?」

 

 超卑屈な態度で自虐的な発言をする腐川。

 若干坂本も引き気味である……

 

「そんな風には思ってない…ですけど」

「それよりも、さっきの人格が変わったのって何だったんだ? 俺はてっきり、さっきのジェノサイダーって言うのが主人格だと思っていたんだが……」

「あんなのが主人格なわけないでしょ!? あんなのが主人格だったら男の子の大半は貼り付けにされた死体になってると思うわよ!?」

「さらりと凄い事をいいましたね…… って、思う?」

「お、覚えていないのよ…さっきもあんた達に言ったでしょ? あたし達は記憶を共有できないって」

「あの…行ってる意味が……」

「いい加減気付けこのバカ、こいつは二重人格なんだよ。 要は主人格はこの腐川冬子で、暴れ回ったのは”ジェノサイダー翔”って言うもう一人の人格の方って事なんだよ」

「……………あ、はい。 って、私バカじゃないもん!」

 

 こまるは坂本の発言に、ハムスターの様に顔を膨らませてプリプリと怒りだす。

 

「し、信じてないわね! あたしを…妄想にまみれた小汚い女って思ってるのね! ななな、なんで豚がしゃべるのか…不思議で不思議でしょうがないって思ってるのねっ!!」

「そこまでは思ってないですって、本当にっ!

 ただ…その『ジェノサイダー翔』って名前、どっかで聞いたことあるんですよね…」

 

 ジェノサイダー翔の名前で何か引っかかるのか急に考え込むこまるだが……

 

「まぁ、今となっては隠す意味無いから言うけど… かなり前にワイドショーを騒がせたらしいわね」

「ワイドショーって…あっ、……いや、違うか。 正体不明の連続殺人鬼がどうとかってニュースで似た名前を聞いた気がしたんですけど・・・まさかね。 ……なんて」

「……それよ」

「「えええっ!?」」

 

 腐川の発言に驚いた二人は驚愕の声を上げてしまう。

 

「け、けど…殺人鬼だったのは昔の話よ。 いまのあいつは・・・完全にあたしに飼い慣らされているわ…」

 

 『いろいろ試してみた結果スタンガンの電気ショックで人格を変えられる』事などを恍惚とした顔で説明していく腐川。

 反応に困った二人は、冷や汗を掻きながら、困り顔で目をそらしてしまう。 

 とは言っても、何度も使ってしまうと脳が沸騰してしまう為、連続使用は出来ないらしいが……

 

 

「それで… あんたと白夜様の関係は?

 なんで…白夜様の拡声器型銃をあんたが持ってんのよ?」

「わ、わたしはただ十神さんに助けて貰っただけで…

 この機会もその時に渡されて…」

「た、助けた…!? 白夜様が…あんたをっ!?」

 

 こまるの言葉にショックを受けた腐川はまたしても妄想の世界に引きずり込まれてしまう。

 今度はあまりにもショックが大きすぎたのか、若干白目を向き気味でかなり怖い……

 

「調子に乗ってんじゃないわよぉ! ちょっとかわいいブスってレベルのクセにぃ!」

「「なんで怒ってるんだ(ですか)!?」」

「い、言っておくけど… あたしと白夜様の恋路は誰にも邪魔させないわよ…!

 あたしが白夜様をパーフェクトに助け出して、その勢いのまま結ばれてやるんだからぁ!!」

「え、助け出すって?」

「ちょ、ちょっと待って! もしかして、十神さんって捕まっちゃったの!?」

「フン、今更何言ってんのよ… じゃなきゃ…あたしがこんな街に残る訳ないじゃない。

きっと…油断したところで不意を突かれたのよ… 決して…白夜様の能力に問題があった訳じゃないわ…」

「そ、そうだったんだ… 十神さん…捕まっちゃったんだ…」

「だったら、急いで救出に行った方が良いだろ? いちどここを出ようぜ。 こんな所に長居してもモノクマ共の格好の的になるだけだ」

 

 坂本の指示で一度外に出る為に建物内の中に入る3人。

 出入口の近くにあるおまるをみたこまるが『あ、意外と落ち着くかも…』と言いながらまたがり始めた為、女子高生としての矜持を守らせる為に、坂本が大慌てでこまるをおまるから引きはがして、大急ぎで階下に降りて行った。

 

 

「な、なんなのよ、こいつ… なんで…あたしがこんなウジウジしたヤツを…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明久side

 

 一方、吉井明久は”塔和図書館”の周辺まで来ており、たまたま立ち寄ったこの場所で何かしらの手掛かりを探し出そうとしていた所だった。

 だが、図書館の周りには誰かを探し出そうとする動きをしている大量のモノクマと無残に殺されたオトナ達ばかり……

 使いなれていない武器で何十体ものモノクマは相手にしていられないと判断した明久は、捜査網が薄いと思われる場所に移動。

 

「なになに? 確か説明書にはこの日本刀が一番扱いやすいって書いてあったような…… 切り裂け、『姫丸』!!」

 

 ここで一番使い勝手が良く、一番シンプルで使い方を覚えやすい日本刀『姫丸』でモノクマに切り掛かる為に姫丸を強く握りしめて構える。

 すると、それに反応するように刀身が青白い光を纏いだした。

 この光は元々は『言弾(コトダマ)』と呼ばれているハッキング弾だったのだが、謎のメカニックによって近接武器用に調整された『言刃(コトノハ)』と言うプログラムに変わっているらしく、技術的な問題で遠距離に打ち出すことは出来ない。

 だが、攻撃の際にタイミングを合わせて使用すると、物理的な攻撃力を爆発的に上げる事まで可能な程強力なものになっており、使いこなす事が出来ればハッキング銃よりもかなり強い新武器となるだろう。

 流石に「機械が相手だとなかなか切れないのでは?」と思っていた明久だったが、予想に反して鋼鉄のモノクマをスポンジケーキの様に簡単に切り裂いていく。

 

「うわぁ~…… 凄い切れ味。 刃こぼれ一つないや…… 一体どんな作り方をしたらこんな切れ味の日本刀が出来上がるんだ?」

 

 ここまで切れ味が良すぎると鞘が切れてしまわないかが心配になっていたが、それは杞憂に終わり姫丸はきちんと鞘に納まった。

 図書館の中に潜入した明久は、姫路達文月学園生の生き残りが居ないかを確認することにした。

 

「う~ん、あれだけモノクマが多いからもしかしたら生存者がいると思っていたんだけど……

 誰もいないんだったら長く居ても外のモノクマがなだれ込んでくるだけだし、さっさとここを出て……」

「くたばりなさい! この豚野郎!!」

「うわああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 アテが外れたと思った明久がそのまま図書館から脱出しようとした時だった。

 いきなりスタンガンを片手に襲い掛かる謎の人物。

 

「いきなり何をするんだ! って、清水さん!?」

「ちっ、本当に生命力だけは高い豚ですね」

「清水さん、何やってんすか!! その人仲間じゃないんっすか!?」

 

 襲い掛かって来た人物が清水である事にも驚いた明久だが、それよりも驚いたのは彼女の後ろから続くように現れた人物が「暮威慈畏大亜紋土(クレイジーダイアモンド)」と刻まれた特攻服を着こなした小柄の男の子だという事である。

 その男の子も清水の行動に驚いているが、当の彼女は全く意にも介しておらず、スタンガンを明久に付きつけようと攻撃を繰り返している。

 とは言ってもその攻撃は全く当たっておらず、逆にスタンガンを奪われて一方的に気絶させられてしまっていたが……

 

「あ、あのもしかしてアンタ、”吉井明久”さんですか!?」

「え? あ、うん。 そうだけど?」

「やっぱり吉井さんでしたか! あ、あの覚えていませんか? 暮威慈畏大亜紋土の新鋭隊長『雪丸竹道』っすよ!」

 

 暫く考え込んでいた明久だったが、彼が来ている特攻服を見てようやく気が付いた様だった……

 

「あ、ああ… うん、覚えてるよ? うん……」

「絶対さっきまで忘れていましたよね!?」

「仕方ないですわね、なにせこいつは超高校級のバカですもの」

「そんな!? ひどい!!」 

 

 絶対に年下であるはずの雪丸から指摘され、尋常じゃない早さで目を覚ました清水から罵倒された事にショックを受ける明久。

 

 

「そう言えば、総長はどこですか? 明久さんがここにいるって事は総長もここにいるはずっすよね? オレ実は、この街に放り出される前に変な場所に監禁されていて、外に出られたと思ったらずっとここであの変なクマに追いかけ回されて……」

「……っ!!」

「…………あ、あの……吉井さん?」

 

 期待するようなキラキラと光るまなざしを向けて来る雪丸からつい目をそらしてしまう……

 あのコロシアイ学園生活が全国放送されていたとはいえ、その放送を見る事が出来ていないのでは知りようもない。

 正直、彼の隠していた漢の約束とその約束を守ろうとし続けた末の末路を知っている明久には気が重すぎるのだ。

 だが、伝え無いという選択肢を入れる訳にもいかず、しどろもどろになった末に正直に話す事にした……

 

「そんな、総長が……総長がそんな簡単に死ぬタマかよ! あの殺しても死ななさそうな総長が! しかも先代との約束を守る為だからと言って無抵抗の弱い奴を相手に不意打ちで殴り殺すような真似なんてするはずが……」

「ごめん……紋土を止められなくて本当にごめん……」

「なんで謝るんだ! 何で!? 

 なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!なぜだ!? なんでそんな事で平気で人を殺す事が出来たんだよ!! うちの総長はよォォォォォ!!!」

 

 明久の口から告げられた事実に絶望し、血の涙まで流してしまう雪丸。

 もしも、この殺しがお互いの命を懸けた決闘などだったら心の整理をして折り合いを付けることくらいは出来ただろう。

 少なくとも総長としてのプレッシャーを一人で背負い続けた大和田の苦悩くらいは分かってやれたはず。

 だが、明久から告げられた”事実”は雪丸の心を押し潰していく……

 

「……美春からしてみれば、その殺された不二崎さんも悪いとしか言いようがないですけど」

「な…… 清水さん、なんてことを言うんだ!! 不二崎君は弱かった自分を変えようと必死になって努力して、死んでしまってもあの時の僕らにアルターエゴと言う大きな希望を残して力になってくれたくれた僕らの大切な仲間……」

「美春が言いたいことはそんな事じゃありません。 それ以前の問題です」

「それってどういう……」

 

 不二崎の事を侮辱されて激怒する明久だが、それに臆する事なく清水は明久の言葉を一刀両断してしまう……

 

「”弱い自分を変える心の強さを持っている””強い自分に生まれ変わる””死してなお皆への希望を残した”などと言えば聞こえは良いですが、結局の所で最後にやらかしたのは”自分の価値観を押し付けて一人の人間を追い込んだ”だけではありませんか」

 

 結果論で言えばそうかもしれないが、それでも彼らと仲が良かった明久にとって、清水の言葉はあまりにも聞き捨てならない物だ。

 そんな明久の怒りにも気が付かない清水は、とどめを刺しにかかってしまう。

 

「それ以前に、自分が弱いからと言ってその逃げ道が”女になり切って女装する”?

 ふざけないで下さい。 そんな女と言う存在を馬鹿にしたような考え方を聞かされて、正直美春は不二崎さんには失望しました。 女には何かを生み出す男には真似出来ないような強さがあるんです。 そんな事も分からないようなバカな人間が最後まで生き残れると…… きゃあっ!!」

 

 あまりにも激怒しすぎてブチ切れてしまった明久は、我を忘れてつい清水の胸倉をつかみ壁に押し付けてしまう。

 事態に気が付いた雪丸が驚きながらも強引に明久を引き剥がす。

 明久も自分が何をしたのか分からないというように驚いており、どうにか清水と雪丸に謝る事にした……

 

「……ごめん」

「いえ、美春も無神経すぎました…… あの二人の死を悲しんでいるのは貴方達ですのに…………」

 

 あんな喧嘩の後だからか、空気が重すぎる……

 

 

「と、とにかく。 他の皆も気になるけど、一度この街から脱出しよう。 この島から少し離れた所に未来機関の人達がいる場所があるから、そこで救援を要請すればこの事件もあっという間に……」

 

 明久の提案でこの場を脱出して外の未来機関の人間に助けて貰おうという話になり、図書館から移動しようとした時だった……

 

『いいっすか? やっちゃってもいいっすか?』 

『イヤッホー!』

『ふぁざなどぅ!』

『オマエ、オシオキだよ!!』

 

 これまで外にいたモノクマが一気に突撃してくる。

 まるで、こちらの体制が整うのを待っているかのような絶妙すぎるタイミングで……

 

「くっ、この豚野郎になんかかまっていたから!」

「そんな事を言ってる場合っすか!? やつらが来ますよ!」

 

 清水は明久から返してもらったスタンガンを構え、雪丸も堅い拳を持ってモノクマを殴りつけているが、多勢に無勢。

 徐々に劣勢に追い込まれていく。

 

「二人とも伏せて! 壊せ、姫丸!」

 

 姫丸を構えた明久は、言刃を無駄にしないようにする為に、一振りで数体を同時に切り伏せる。

 

「な、なんですの! あの刀は!? あのモノクマを同時に切り落とした!」

「まるで、魔法でも使ったみたいだ……」

 

 実際には無駄の無い動きと速さを生かしただけなのだが、普通の人間には魔法か何かと勘違いしても仕方がないだろう……

 

「飛天〇剣……」

「「待ちなさい! それ以上はだめっす(ですわ)!!」」

 

 若干ふざけながらも、次々と襲い掛かってくるモノクマの集団を切り伏せて行く明久。

 あまりにもメタな発言にふたりのツッコミが同調してしまう……

 

「よし、突撃してきた分は全て倒しましたわ!」

「ならもうこんな所はすぐにでも出よう! いつモノクマが襲ってくるのかが分から……」

 

 そう言う明久の視線の向こうには、何やらスピーカーのようなものを背負った黄色いモノクマ……

 頭にパトカーのライトのようなものまで装備させている……

 

「うわっ、なんだあのモノクマ!?」

 

 つい大声を上げてしまった雪丸の声に気が付いた謎のモノクマ。

 

『タイヘンだ、タイヘンだ!  皆キテー!!!』

『なんだなんだ?』

『どうしたのー?』

 

 すると急に頭に付いている回転灯を起動させ、超大音量のサイレンを鳴らして先程の数倍のモノクマを呼び寄せて来た。

 やって来たのは普通のモノクマのみだがそれでも厄介である……

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、あんなモノクマまでいるのかよ!」

「ぼやいてる暇なんて無いです! さっさとあのうるさいクマをぶっ壊してやるので…………す?」

 

 サイレンモノクマを倒そうと前に飛び出そうとしていた清水は急に動きを止めてしまう。

 彼女の目の前には跳躍と共に上から思いっきり叩き付けるように振りかぶられるモノクマ達の爪が襲い掛かってきているのだから……

 

「くっ!」

 

 明久はとっさの判断で新しく取り出した武器を構え、清水を庇おうと前に出て来る……

 

「おらぁぁぁぁ!!」

「「!?」」

 

 だが、襲い掛かって来たモノクマの攻撃は明久に当たる事も無く横に飛ばされてしまう。

 怒り心頭の雪丸がモノクマの横っ腹を蹴り飛ばしたのである。

 

「吉井のアニキ、あのピポクマはオレがぶっ壊すっす!」

「いや、僕の持っている武器の中にあいつ相手に使えそうなのがあるんだ。 雪丸君は清水さんの事を……」

「そんな事を言われても困るっす! オレがぶち壊さねぇと気が済まねぇ……」

 

 

 怒りでこめかみを引き攣らせながら、拳を構える雪丸だったが……

 

 

「そうか…… だったら早い者勝ちだね!」

 

 そんな彼の言葉よりも早く一瞬でサイレンモノクマとの間合いを詰める明久。

 

『コノ!!』

 

 サイレンモノクマからの爪の一撃を横に回避し、次々と襲い掛かってくるモノクマの集団からの攻撃を避け続ける明久。

 大勢のモノクマが大暴れしすぎた為か、もはや図書館内は原型を留めておらず、飛び散った埃が砂煙の様に飛び散っている……

 モノクマ達はどうにか明久達を見つけ出そうとうろうろと探し回る。

 

「悪いけど、こんな程度ならFFF団の方が10倍危なかったよ?」

 

 「ましてや、心の無い機械程度が僕を相手に傷つけられると思うな」というセリフと共にモノクマの集団を腹から真っ二つにしてしまう……

 

「おお! すげぇ、吉井のアニキ真っ二つ!」

「って、さっきから滅多斬りでしたわね!? どんな○○無双ですか!?」

「まあ、これだけやればさすがのピポグマも増援を呼べないだろうけど……」

 

 大量のモノクマの残骸の中からサイレンモノクマの残骸を探し出そうとしている明久だったが……

 

「呼んだ?」

「イヤッホー!!」

 

 それは無駄に終わる。 サイレンモノクマは明久の攻撃から逃げ切っており、少し離れた柱の後ろに隠れていたのである……

 

「くそっ! 絶対にぶっ壊してやる!」

 

 明久は姫丸を構え、今度こそサイレンモノクマを壊すべく全力疾走でサイレンモノクマの元に走り出した。

 そんな明久を迎撃するべく、援軍としてやって来たモノクマ達は、まず1体目が軽くジャンプして爪を構える。

 そして、次にモノクマがとった作戦はジャンプしたモノクマをもう一体のモノクマが蹴り飛ばすという豪快な作戦だった!!

 豪速で突っ込んでくるモノクマを迎撃しようとした明久は横薙ぎに姫丸を振るが、その攻撃はモノクマの爪によってはじかれてしまう……

 

「コラッ!!」

 

 明久の攻撃で弾き飛ばされたモノクマの後ろから飛び込んで来たもう一体のモノクマは明久の姫丸を狙って大きく爪を振りかぶる。

 体制を崩してしまっていた明久は何とか攻撃は防いだものの、姫丸は明久の手元からはじき飛ばされてしまう……

 さらに!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「召喚魔法を発動する。 タスケテ、『グングニルの槍』!!」

 

 大量に呼び寄せられたモノクマの集団がどこからともなく取り出した槍を構え、明久に目掛けて四方八方から投げ飛ばした!!

 

 

「!! 豚野郎!」

「吉井のアニキィィィィィィ!!」

『ホッホッホ!!』

『エクストリーム!!』

『アドレナリンが染み渡るゥゥゥ!!!』

 

 槍を投げ飛ばされた明久を心配する雪丸と清水をよそに、モノクマ達は大喜びしながらダンスを踊り始め出す。

 

 『グングニルの槍』コロシアイ学園生活において、校則違反を犯した生徒に対する見せしめとしてのオシオキである。

 このオシオキは”超高校級の軍人”『戦場むくろ』でさえも回避しきれず、なす術も無いまま全身をめった刺しにされて処刑されてしまうほどに強烈なオシオキなのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このオシオキの事を知らない人物だったならばの話だが……

 

 

 

「うん、アドレナリンが染み渡るね?」

「「『ハァァ!?』」」

 

 

 なんと明久は全ての槍を最小限の攻撃のみで躱し切って見せたのである。

 とは言っても、着ていた未来機関の制服は完全に裂けてしまって着れたものではなく、当の明久は全裸になってしまっていたが……

 だが、今はそれが全く気にしている余裕が無い程に驚く事が起こっていた。

 槍を躱し、その槍の檻ををバラバラに切り捨てて脱出した明久の肉体には傷一つ付いて無い(・・・・・・・・)のだから……

 

 

『そんな……』

「おいおいおい、いくら超高校級でもあれで無傷ってのはないっしょ……」

 

 サイレンモノクマはおろか、味方であるはずの雪丸でさえ軽く引いているのだからどれだけ異常な光景かは察しが付くだろう……

 反応に困っている皆には目もくれず、明久はいつの間にか装備していたスレッジハンマーのようなものを装備していた。

 

『ま、まっ……』

「吹き飛ばせ!”南風(ミナミカゼ)”!!」

 

 モノクマの命乞いも虚しく明久がメカニックから渡された新装備の一つ、スレッジハンマーの”南風”を叩き付けられる。 その破壊力は図書館の床すら”ぐばんっ!”という破壊音と共に粉々にされ、サイレンモノクマの残骸は衝撃波と共に遥か先まで吹っ飛ばされてしまったほどである……

 

『イテェ~!!』

『ヤラレタカ!!』

『サヨオナラァ~~……』

 

 その衝撃波は後方から増援として駆けつけて来たモノクマをも巻き添えにし、図書館内のモノクマを殲滅してしまう……

 

「さらに八つ裂きにしたい所だけど、言刃がもったいないからやめておくことにしてあげるよ。 清水さんにとっては物足りないかもしれないけど?」

「いやいや酷いですよ!? 床が”ぐぱんっ!”とか言いながら砕けるほどに強力って、どんな一撃ですか!?」

「正直ガチでビビりましたっすからね!?」

 

 口をあんぐりとさせながらツッコミを入れてしまう二人。

 二人が刺した指先には、粉々になり原型を留めていないサイレンモノクマだった物である。

 

「でも実際助かったっすよ。 これで脱出できるっす」 

「もうここも安全ではありませんから、さっさとここから出ましょう。 さっきみたいなモノクマに見つかったら次こそはアウトですからね」

 

 もう図書館には一切の用が無くなった3人は、サイレンモノクマを特に警戒しながら扉を開け、図書館から出て行こうとする。

 ……が、ここで問題が一つ出て来た。

 

「「アニキ!(豚野郎!!)今後の服はどうする気ですの!?」」

「ヤバイ! すっかり忘れてた!!」

 

 先程完全に破けてしまって使い物にならなくなってしまった制服である。

 グングニルの槍を躱した代わりに全裸になっている今の明久は傍からしてみればただの露出狂の変態でしかないだろう……

 

「全く……あんまりいい気分ではありませんが、適当な死体から服を奪って来ましょうか?」

「あ、そう言えばさっき吉井のアニキにちょうど良さそうなサイズの服を奥のロッカーで見かけたっすよ?

 よかったら持って来るっすか?」

「ごめん、取り敢えずそのロッカーがある所まで案内してもらってもいいかな? ちょうどそこで着替えられるだろうし……」

「いいからさっさと着替えてきなさい! この変態!!」

「分かったけど、同性愛者の清水さんには言われたくないよ!?」

 

 とは言っても実際明久もこれ以上女子がいる前で全裸でいたくないのも事実な為、雪丸と共に大急ぎで着替えになりそうなものがあるというロッカールームへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吉井のアニキ、これっす! ちょうどこの服だけが都合よく残ってて。 もう時間が無いっす。 あのねーちゃんの事も心配ですし、急いでこの服に……」

「ねぇ雪丸君……」

 

 吉井明久は雪丸から渡された服を見ながら震えていた……

 

「何をためらっているっすか! アニキなら似合いますって! その姿の写真は俺ら”暮威慈畏大亜紋土”のメンバーの8割がコレクションしてるほどイカしてる服なんすから……」

「全くもう、後で何言われても知らないからね……」

 

 しぶしぶと言った感じで愚痴りながら渡された服に着替える明久。

 

「よし、これで完璧っす! 大急ぎで戻りましょう!」

 

 若干興奮気味で出て行く雪丸に対し、明久の気分はとても沈んでいた。

 この後、合流した清水に何を言われるかが怖いのである。

 下手を打てば、”全裸”よりも致命的なことは間違い無いのだから……

 




と言う訳で今回出て来たのはこまるsideは"坂本雄二"、明久sideは"清水美春"なのでした!

坂本君のの婚約者である霧島さんは、そして明久sideのメインヒロインである姫路さんは一体どこにいるのでしょうか?
雪丸君から明久君に渡された衣服の正体とは?
今後の展開が楽しみです。
って、私が作者でしょうが!!

……意外とギャグ要素入っちゃいましたね。
むしろ絶望要素がもっと多くなってしまうと思ったのに……

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