貧乳に愛を込めて   作:青野

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第11話 ティータイムは大事にしないとね

 

 

 昼休み、俺はダージリンを飲みながら屋上で一夏たちのやり取りを見ていた。一夏のモテっぷりは相変わらずであり、胸の有無を無視してもそれは男としては随分と羨ましいものである。

 

「隣、よろしいですか?」

 

 そう言いながら隣に座るのは英国淑女のセシリアであった。

 

「ダージリンでもいかが?」

 

 一つ空いているカップを置いて紅茶を注ぐ。

 彼女はカップを手に取り一口飲み。ふぅ、と深い息を吐く。

 

「紅茶のお礼という訳ではありませんが、お一つどうですか?」

 

 彼女はバスケットからサンドイッチを取り出してきた。

 ふむ、確かに先程食べたお握りのみでは流石に腹持ちが微妙だな。

 俺はセシリアに甘えて彼女の作って来たサンドイッチを食べる。

 ムシャムシャ・・・・っ!

 

「不味い」

 

「えっ!?」

 

「セシリア・・・はっきりと言おう!不味い!」

 

「ふぇぇぇぇ!!」

 

 何これ?一夏が食って顔を青ざめるのも分かるわ。ていうか、これは見た目の割には酷いな。ホントに。

 

「これ、何?」

 

「えっ、これは普通の卵サンドですが?」

 

「何処が普通の卵サンドなんだよ!辛いわ!痛いわ!」

 

 うえぇぇ、まだ舌がヒリヒリする。

 残った紅茶を一気に飲むが、それでも舌がヒリヒリして痛い。セシリアって料理出来ないのかよ・・・。

 貴族の娘は料理が出来ない。まぁ、普通だわな。

 

「セシリア、お前はもうちょっと料理の勉強をしろ。これじゃぁ、いつか死人が出るぞ」

 

「そ、そんな・・・わたくしの料理がマズイだなんて」

 

「ちょっと、千早。女の子の手料理の感想としては厳しいんじゃないのか?」

 

 一夏がそう言ったが、こういうのは自覚ができないのでちゃんと言ってやらねば意味がない。

 

「ちゃんと言わねーと、本人は気づかないぞ?俺はセシリアの為にと思って言ったんだ」

 

「す、すみません。明日はちゃんと美味しい物を作ってもってきますわね」

 

 そう言ってセシリアはペコリを頭を下げ、バスケットをその場から退出した。

 流石にこの反応を取らせてしまった俺が悪いようで、女性陣に睨まれたのは言うまでもない。

 

 程なくして放課後。俺はラファールに乗って射撃訓練をしていた。今日は新しく有澤から試作品として渡された対艦ライフルの精度を見るためだった。

 まぁ、俺自身があまり射撃を得意としないから、データとしては大したものを得られる訳ではないのだがな。

 

 このIS用対艦ライフルは火力重視の有澤が作りそうなものである。おかげで、火力と射程が長くなっている。が、その分弾数は少ないし、反動もない訳じゃない。

 だから、こうして地べたに寝転がって構えている訳なのだが。

 

 スコープの先には三百メートル離れた場所に一つ的がある。

 これがレーザーライフルであれば大した影響を受けないが、これが実弾となるとある程度の風や重力の影響を受けてくる。

 更にレーザーの場合は曲げることも可能である。ある意味ではライフルはレーザーライフルの方が向いているとも言えるだろう。

 

「・・・・・・ファイヤ」

 

 引き金を引いた。命中するかと思ったが、意外にも弾は大きく逸れて的の横に命中。反動と弾の性質上射撃はかなり難しい。

 

「むむ・・・対艦ライフルは隙が大きいし、難しいな」

 

 それに、機動砲撃戦を基本スタンスの俺にとっては運用しずらいな。確かに火力はいいが、扱えなければそれまで。こいつがダメな訳じゃないが、使いどころが難しいというのが俺の正直な感想であろう。

 使い捨て武器ということなら、なんとかなるかもしれんが、今は考える時じゃないな。

 

 思考中だった頭を一旦ストップして次の武器、アサルトカノンを呼び出した。

 

「あら、ライフルはもうおしまいなのですか?」

 

 振り返るとISを展開したセシリアがやって来た。妙に窶れているように見えてしまう。きっと、さっきまで猛烈な訓練をして、その疲れが表情に現れているのだろう。

 

「・・・まぁな。セシリア、今からお茶でもするか」

 

「えっ・・・いえ、わたくしは射撃の訓練をですね」

 

「あまり詰めすぎると逆に効率が悪くなる。それに、英国生まれのあいつも言っているだろう?ティータイムは大事しにしないとね」

 

 半分強引にセシリアを引っ張り今日の訓練を終えさせ、食堂で俺と優雅に紅茶を頂く。

 やはりダージリンは美味い。なんていうの、この深みのある味がなんとも言えないというが。

 

「千早さんの淹れるダージリンは落ち着きますわね」

 

「そう言ってくれるなら幸いだ」

 

 一旦間を置いてセシリアに言った。

 

「んで、何を一体悩んでいるんだ?セシリアよ」

 

 何故自分が重い悩んでいることに気がついているのか、セシリアは一瞬戸惑ったような表情になるが、直ぐにいつもどおりに戻って言った。

 

「べ、別に何も悩んでなどいませんわ」

 

 彼女は誤魔化すように紅茶をすする。

 

「嘘つけ。まぁ、別にセシリアが悩んでそうなことぐらい、大体想像がつくがな」

 

「・・・・・・」

 

「代表候補生としてのプレッシャー。まではいい。だが、素人の一夏へ対する不覚と才能。お前には自分自身が積み上げてきた強さというプライドがある。その一線を簡単に超えられてしまったかのような焦りと嫉妬。それに好きという感情もあれば、そりゃ混沌だよな」

 

「なっ・・・そ、そこまで。あなたは一体・・・・」

 

 その分析力にセシリアは驚く。

 おいおい、その反応は自らそうですよと、肯定しているのと同じ意味だぞ?

 

「その通りですわ。わたくしには代表候補生という肩書きがあります。だからこそ、強くあらねばなりません。だけど・・・未だビット兵器を自由自在には動かせず、レーザーも曲げることは出来ていないのです。悩む他、どうしろと・・・」

 

「まぁ、そりゃそうだよな」

 

 自分に課せられた立場というものは非常に厄介なものだ。

 特にISとなれば世界中が注目している。そして、国の代表候補。というものになれば凄まじいプレッシャーが自然と集まっていくものなのだろう。

 

「わたくしはあの時、完全に一夏さんに負けましたわ。勝ったのは偶然・・・わたくしは、弱い・・・」

 

 などと、セシリアは完全に自己嫌悪の塊へと変わってしまった。

 初日であんなに意気揚々と高飛車ぶっていた女とはとてもじゃないが思えない。だが、それにしてもセシリア、デュノア、ラウラといい、この学校にはワケありばかりが多い気がする。

 当然自分自身もその中に入ってくるのだが、俺のことと彼女らのことを比べればそれはスケールが違う。

 

 だけど、俺も覚悟してここに来たのだ。今更はい、無理でした。なんて言えるわけがない。

 

 だが、セシリアよ。お前は一つ勘違いをしている。大きな大きなミスを一つだけしている。

 

「なぁ、セシリア」

 

「はい・・・」

 

「俺はお前と一夏に負けた。そして、お前は俺と一夏に勝った。が、一夏には負けていたと思っているんだな?」

 

「ま、まぁ・・・そういうことになりますわ」

 

「そうか・・・・じゃぁ、俺が一夏に勝てると思うか?」

 

 数秒考えてからセシリアはいう。

 

「なんとも言えませんが、一夏さんが勝つのでは?」

 

「根拠は?」

 

「根拠と言われてましても・・・なんとなくとしかいいようが」

 

 なんとなくで俺は一夏に負けるのか。はは、それは随分と悲しい結果だな。

 

「確かに一夏は才能がある。勉強は出来なくともISを動かすという才能だけはある」

 

 才能という言葉にセシリアはピクッと動く。きっと、何か心当たりのあることでもあるのだろう。

 

「だけどさ、才能が最強とか誰が言ったんだよ?」

 

「し、しかし」

 

「しかしもクソもあるか。今度のタッグマッチトーナメント、見ておけ。一夏の才能とやらは確かにこちらの予測をはるかに上回り、計画を台無しにする。だが、戦術というものが如何に強いのか。教えてやるよ」

 

「で、ですが今のあなたに一夏さんが相手になるのですか!」

 

 ああもう、どうしてこの学園は一夏!一夏!とうるさいんだ?なんですか?一夏教でも開くんですか?

 ・・・・ヤバい、一夏ならできそうだ。

 

 って、そうじゃいそうじゃない。

 

「少なくとも、正面から戦えば俺は負ける。だけどな、戦い方っていうのは何も感覚だけの話じゃないんだよ。セシリア、お前なら分かると思うんだけど?お前は箒や鈴音とは違うだろ?」

 

 ティーセットを片付けて俺は歩き出した。

 そして、一度だけ振り返り、忘れていた台詞をセシリアに言った。大昔、俺が言われたように優しく、そして力強く。

 

「それとセシリア、悩むな。考えろ」

 

後ろにいるセシリアがどんな風に思っているのかそれは分からない。

 彼女には彼女なりの苦労と悩みがある。それを俺を語ることは出来ない。だけど、こうして助言をしたり、愚痴を聞く程度なら出来る。

 出来ないことをするのではなく、出来ることをして出来なかったことを出来るようにしていく。

 いきなり力は手に入らない。俺たちは一夏じゃないんだ。マイペースで、ちゃんと力をつけていけば、叶わないことはない。

 

「ったく、巨乳を応援するなんて・・・俺も甘くなったな」

 

 俺はラウラを愛でる為に長い廊下を歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人残されたセシリアは千早の言葉を頭の中でリフレインしていた。

 

「感覚だけではない・・・ですか」

 

 努力してこの座まで上り詰め、男など大したことないと思っていた彼女にとって一夏という存在は、男は大したことはない。やる時はやる。という好印象を与えた。

 だが、続くクラス対抗戦で鈴音を出し抜き、更には乱入してきた無人機まで有効打撃を与えた。

 しかも共同戦線という自分には不得意な部分でだ。

 たった数週間程度の訓練で彼は自分たちと同じようなラインまできたのだ。

 

 怖い。というのが正直な感想であろう。

 

 男性唯一のISパイロットにして、そのルックス、性格ともに優れている。一夏を好いている女の子は沢山いるのだろう。

 だけど、ISを使うということの本当の意味を彼は知っているのだろうか。誰かを傷つける覚悟を持ち合わせているのだろうか。

 

 それはやはり、努力して勉強してここまできた者にしか分からないのだろうか。感覚だけでISを動かしてしまった彼には理解できているのだろうか。

 

 セシリアは不意に千早が立ち去ったその場所を見ていた。そして、思い出したかのようにまたポツリと呟くのであった。

 

「強く・・・なりたい」

 

 

 

 

 

 

 




はい
今回はセシリアメインでした

次回は貧乳出せるかな?
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