「あら、鈴さんでしたか」
「あ、セシリア。あんたも訓練?」
「まぁ、そうですわね。わたくしも来るべき時へ向けて訓練ですわ」
「「・・・・・・」」
「この際、どっちが強いかはっきりさせとくも悪くないわね」
「・・いいでしょう。どちらが優雅で、かつ強いのか。この場で決着つけてあげますわ」
すると、鈴音は勝ち誇ったかのように言う。
「勿論、私が勝つのは分かっていることだけど」
「弱い犬ほどよく吠えるというけれど、本当ですね」
「どういうことよ」
「自分が強いって、わざわざいうことが典型的ですわ」
「っ!」
セシリアの挑発に鈴音に火をつけたのか、鈴音はISを展開した。それを同じくてセシリアもISを展開させる。
「手加減なんてしないんだからね!」
「それはこっちのセリフですわ!」
二人は軽く言い合うと武器を持って突撃した。が、次の瞬間、二人の間にキャノンが飛んできた。二人は停止して、キャノンがきた方向を凝視する。
すると、一人の銀髪の少女が黒のISを身に纏っていた。どうやら彼女は背部ユニットに装備してあるレールカノンを放ったようで、少し煙を立ち上っている。
「ドイツの第三世代機。シュバルツァ・レーゲン」
「ラウラ・・・・ボーデヴィッヒ」
二人がラウラの身に纏っているISのデータを見る。
「どういうつもり!いきなりぶっぱなすなんていい度胸してるじゃない!」
鈴音がいきなり撃ってきた理由を問うが、ラウラは無視して言った。
「中国の甲龍と、イギリスのブルー・ティアーズか。データで見た時のほうが、まだ強かったな」
「何?やるの?わざわざドイツから来てボコられたいなんて、大したマゾっぷりね。それとも、ジャガイモ農場でそういうのが流行ってるの?」
「・・・・・・・」
「ちょっと、セシリア。何かいってやりなさいよ」
黙っているセシリアに鈴音はラウラに何か言うように促すが、彼女は黙っていた。少し間を置いて一言言った。
「・・・臆病者ほどやたらと銃をふりまわしたがるものですよ?」
セシリアはラウラに向けてスターライトmkⅢを構えると躊躇なく引き金を引いた。あまりにも当然の攻撃にラウラは一瞬反応が遅れて正面から一撃受けて後退する。
「ぐっ・・・この!」
ラウラはレールカノンを構えてセシリアに向けて放つ。セシリアは射撃を止めて一旦回避行動に出る。
すると、背後から鈴音が衝撃砲をラウラに向けて放つが、鈴音の動きを読んでいたラウラは直ぐに反転して停止結界を発動させた。
彼女のシュバルツァ・レーゲンに装備されているAICは衝撃弾を停止させて目の前で爆発させた。
「ぐっ・・こんなにも相性が悪い相手だなんて」
鈴音が負け惜しみをするかのようにそう呟いた。
「ふぅ、今日も終わったねぇ。一夏は今からISの特訓でもするの?」
「ああ、そうだな。瞬時加速が上手く出来るようになったから、それの練習もしたいからな」
などと楽しそうな会話を一夏とデュノアが言う。ちなみにデュノアはまだ男子の制服だが、毎日織斑先生のところにいって何やら相談を行っているらしく、彼女の表情を見る限りでは良い方向に向かっているのではないかと俺は思う。
と、話していると周りにいる生徒が何故か突然走り出した。
「第三アリーナで代表候補生三人が模擬戦しているんだって!」
誰かがそういった。
「三人って、セシリア、鈴音。それと、ラウラぐらいしか・・・おい!行くぞ!」
俺は二人に走るように促して走り出した。
簪のISはまだ仕上がっていないし、三人の姿が見えない。ラウラは周りの生徒と仲が悪い、鈴音は喧嘩を売るのも買うもの速い。セシリアに至っては最近、情緒不安定だ。
頭に酸素を持ってきてその三人が集まった場合のことを考えると、三人が模擬戦をしていることは想像が出来た。
前に一度、ラウラのIS、シュバルツァ・レーゲンのデータを覗いたことがあるが、このままでは二人は負ける。
大きな怪我をする前に止めないと!
俺たちがアリーナに到達すると、同時に大きな土煙が周りを覆った。
見ればラウラの前にセシリアと、鈴音が膝をついていた。どちらも多少なりとダメージを負っているようなのだが、セシリアはダウンしてもすぐに立ち上がって旋回しながらラウラを射撃するも、AICによってその攻撃は防がれる。
『ふっ、イギリスは多少なりと根性があるようだが、所詮は無駄な攻撃だ!』
レールカノンがブルー・ティアーズの肩に直撃して、彼女は大きく機体を傾けさせてアリーナの壁に衝突する。
『ほら!ほら!どうした!』
ラウラはワイヤードランスを鈴音に向かって放つ。鈴音は大きく動いてそれを避けるが、ワイヤードランスが彼女の足に絡まった。
『ふんっ、この程度の仕上がりで第三世第型兵器とはな。笑わせてくれる』
と、勝ち誇ったように言うが、それをブルー・ティアーズが襲う。
『くだらん!』
が、停止結界の前に四基のビットは停止する。しかし、それを狙っていたかのようにセシリアはラウラに照準を合わせる。
『はっ!』
ラウラはライフルを構えたセシリアに向かって思いっきりワイヤードランスで捕まえていた鈴音をぶつけさせる。
『『キャァァッ!』』
二人の衝突によって彼女らは地面に叩きつけられた。
トドメを刺すべくラウラは二人の前に出てレールカノンを構えた。が、先に復帰した鈴音が衝撃砲を撃つ。
『甘いな、この状況でウェイトのある空間圧兵器を使うとは』
次の瞬間、レールカノンによって衝撃砲が破壊される。が、セシリアはそれを狙ってミサイルを二発正面から食らわせた。
爆発とともにラウラの姿が見えなくなる。
二人はその隙を突いて後方へと一旦下がる。ラウラはミサイルをまともに食らったので、それなりにダメージを負ったのだろう。
が、その爆煙の中にシュバルツァ・レーゲンのシルエットを確認した。
すげぇな、あの攻撃をまともに受けてまだあれだけ動けるとは。
次の瞬間、ラウラの背部ユニットから四本のワイヤードランスが飛んできた。ワイヤードランスは彼女ら二人の首に絡まり、二人はラウラに向かって引きずられる。
そこからはラウラからの一方的な暴力であった。彼女らの体に蹴りやパンチが決まっていく。装甲は破壊され、二人のダメージはかなりのものである。
『‐警告‐生命維持領域超過』
「酷い!あれじゃ、シールドエネルギーが持たないよ!」
隣のデュノアがそう叫んだ。彼女の言うとおりだ。
「もし、ダメージが蓄積されてISが強制解除されたら二人の命にかかわるぞ!」
箒がそう叫んだ。もしも、ISが強制解除されてしまえば文字通り二人の命にかかわる。しかも、ISで殴られれば軽傷どころではすまない。
更に二人の装甲が削られる。
「やめろ!ラウラ!やめろ!」
一夏がアリーナを叩く。それに気づいたラウラは自分の策通りにいったのが嬉しいのか、ほくそ笑む。
「っ!・・・・」
その反応に一夏は後ろに下がって白式を展開した。
「一夏!」
「悪い、見ていられないんだ」
そう言って雪片弐型を展開してアリーナのシールドを斬ってアリーナの中に無理矢理侵入した。
「「一夏!」」
箒とデュノアの声とは裏腹に一夏はそのままラウラに向かって斬りにいく。が、ラウラのAICによって一夏の動きが止まった。
「なっ!」
「感情的で直情的、絵に書いたような愚か者だな」
一夏は必死に体を動かそうとするが、AICの能力は想像以上のものであり、一夏は指一本も動かすことが出来ない。
「やはり敵ではないな。私とシュバルツァ・レーゲンの前では有象無象の一つでしかない!」
そうこう言っているうちに隣にいたデュノアも一夏の後を追うようにアリーナに入っていく。
「消えろ!」
レールカノンが一夏に向けられる。が、次の瞬間、ラウラに向かって弾丸が飛んで来る。AICはキャンセルされて、一夏はその隙を突いて離脱する。
「一夏!離れて!」
上空からデュノアはアサルトライフルを持って飛んで来る。デュノアのライフルがラウラを襲うが、彼女は綺麗に機体を横スライドして回避していく。
「ちっ、雑魚が」
そうこうしているうちに一夏はラウラから解放された鈴音を回収して逃げる。
「鈴音・・・・?」
いや、貧乳が助かるならそれに越したことはない。が、鈴音だけ?
胸のどうこうという話ではなく、何故鈴音だけが一夏に抱えられているのだろうか。そう、セシリアがそこにはいなかった。
「セシリア!」
見れば彼女はフラフラになりながらもラウラに向けてライフルを構えていた。既にブルー・ティアーズや、彼女自身も危険領域に達しているのに、それでも彼女はラウラに立ち向かった。
「わ、わたくしは、負けません・・・もう、これ以上負ける訳にはいかないのです!」
「ふんっ、そんなフラフラの体で何が出来る!」
「させないよ!」
ラウラがレールカノンをセシリアに向けるが、それに気づいたデュノアが上空から射撃してくる。
「邪魔をするなっ!」
ワイヤードランスがデュノアの腕を捉え、こちらに引き寄せる。抵抗するようにデュノアはサブマシンガンで応戦するが、それでもAICの前では全ての弾丸は彼女の目の前で停止する。
「ちっ!」
流石にヤバイと思った俺はISを展開してその場に急行した。ラウラがブレードを展開してデュノアに斬りかかろうとした時、俺は長刀を展開してラウラの一撃を受け止める。
「貴様!」
「ラウラ、この辺にしておけ。これ以上は流石に見ていられない」
流石は貧乳。今の一撃を受けるだけでビリビリと衝撃が伝わってくる。めちゃ痛い。
そんなドスの聞いた声が後ろから聞こえてくる。
「キサマら・・・一体何をしている?」
他の生徒の連絡を聞いたのか、織斑先生がやってきた。その手には葵が握られており、これ以上暴れようというのなら、いつもの出席簿とは比べ物にならないものに襲われるに違いない。
ラウラも流石に敬愛する織斑先生の乱入により、戦闘を中止せざるを得なかった。
「今後、一切無断な私闘を禁ずる。お前らも、この続きはタッグトーナメントにしろ。分かったな?」
ギラリとひと睨み。俺も一夏もうなづくしかなかった。
「おーい、セシリア。もうIS解除していくぞ」
未だにISを展開しているセシリアに俺と一夏は走っていくのだが、彼女の前にきてやっとISをまだ身に纏っている理由が分かった。
「・・・気絶してる」
彼女はISを展開したまま、意識を失っていた。それでもISを身に纏っているのは彼女の根性がそうさせたのか、それもISの意志なのか。それは分からないが、よく頑張ったな。
と、俺はそう思った。
セシリアと鈴音を保健室まで見送り、
「はぁ・・・・どうしたもんか」
俺は簪と一緒に整備室でISを弄っていた。簪はIS、打鉄弐式を調節しており、俺もラファール・リヴァイヴ・ロートを弄っていた。
相変わらず操作は難しく、スラスターの調整がイマイチだ。
簪の、打鉄弐式も微妙であり、上手くいっていない様子。
「どうだ、そっちは?」
「・・・ちょっと、イマイチ」
彼女は明らかに疲労が顔に出ており、割と辛そうである。簪は協力をあまり協力を頼まない。俺が手伝おうかと言っているのだが、固くなにそれを拒む。
姉は何でも出来そうな感じがするが、もしかして出来のいい姉がいるから、こんな内気少女になったんじゃないのか?
・・・だがそれがいい!
「うっし、今日はこの辺だな。変なのに巻き込まれたから・・・それじゃぁな、簪」
「あ・・うん。じゃぁね」
彼女に軽く手を振って俺は歩き出した。
簪のこと、布仏なら何か知ってるのかな。そう思いつつ、俺はラウラに今日のことについてちょうきょ・・・・げふんげふん。説教する為に寮へと戻るのであった。