貧乳に愛を込めて   作:青野

14 / 32
シリアス回?


第14話 Con tutta la forza

 

が、やっぱり鈴音とセシリアのお見舞いをすることにした。うん、一夏たちも行くって言ってたし。

 そうこう言っているうちに保健室の前では何やらガヤガヤと生徒たちが多数集まっている。

 

「何事だ?」

 

「ああ、森島君。実はタッグマッチトーナメントの相方を織斑君とデュノア君に頼んでいるのよ」

 

 鷹月がそう説明してくれた。最後まで言い終えると、彼女はハッとしたようにこちらを見て、言った。

 

「お願い!森島君、私と組んで!」

 

「うーむ・・・どうしたものか。別にいいんだが・・・」

 

 俺はチラリと鷹月の胸を見た。サイズは中。箒には劣るが、貧乳という訳ではない。美乳。Cカップぐらいだろうが。

 そんな俺たちに気づいたのか、他にもわんさかトーナメントの相方を頼んできた。

 

「・・・よし、こんなにも頼まれたら俺も決められないし、当日のランダムってことで頼むわ」

 

 全員にチャンスがあることに納得したのか、皆、頷いて立ち去っていった。まぁ、それまでの連携訓練できないんだけどな。

 それでもやるっきゃないだろう。

 

「入るぞ」

 

 生徒たちが散り、俺は静かになった保健室に入る。そこには一夏とデュノアがベットで寝ている鈴音と話している。セシリアは未だ目が覚めていないらしく、その瞳は閉じられたままである。

 鈴音の方はそれなりと元気で、体力的はまだ辛そうだが、それでも精神的には回復してきたらしい。

 が、彼女ら二人のISはダメージレベルCを超えており、当分ISの使用は出来ないらしい。おかげかタッグマッチトーナメントも出場出来ないらしく、鈴音はかなり落ち込んでいた。

 

 ・・・落ち込んでいる貧乳もいいな・・・っと、今は言ってる場合じゃないよな。

 

「うっし、それじゃぁ俺たちはそろそろ行くわ」

 

「そうだね。僕たちがいたら回復に専念出来ないからね」

 

「分かったわ。じゃぁね、一夏、シャルル。あんな奴に負けないでね」

 

「ああ、勿論だ!」

 

 そう二、三度会話を交わすと一夏とデュノアは立ち去っていく。

 

「それで、あんたは一緒に帰んないの?」

 

「まぁな。ドイツの軍人ちゃんに説教する前に、強がり女に一言言ってやらないと気がすまないからな」

 

「そう・・・あのさ、セシリアのことなんだけど」

 

「貧乳の言うことは全て理解している。こいつがなんで強さに拘るってことだろ?」

 

「っ・・・まぁ、もう慣れたからいっか。強くなることは何処の世界も普通のことだし、高みを目指したのは誰だって一緒だと思う。けど・・・今日のセシリアは違った。なんか焦りっていうか、いつも以上に凄い剣幕だったというか」

 

「言いたいことは分かる。彼女もまた、強さに囚われた一人の人間なんだよ。バカが、背負ってるものは俺たちも一緒だっつーのによ・・・・なんの為の友情なんだよ」

 

 これじゃぁ、偉そうにラウラに何も言えないじゃないか。

 

「それもそうよね。少しぐらい、私たち頼ってくれてもいいんだけど。まぁ、セシリアのことは任せるわ。私じゃ、口喧嘩になりそうだから」

 

「最初からそのつもりだ」

 

「・・・あんた、なんでそんなに必死になるの?」

 

 その言葉に体が一瞬止まるが、俺は鈴音に向き直って言った。

 

「巨乳、貧乳関係なしにさ。友達が傷つくのって、なんか嫌じゃん?」

 

「だったら、あんなドイツ娘と仲良くすることなんてないんじゃないの!」

 

 自分たちを、一夏を馬鹿にした女と何故お前は友達になろうとしているのか。

 俺がラウラに話しかけたりしているのは学年でもよく噂になっているが、誰も直接その真意を聞きには来ない。

 

「胸が小さいとか・・・理由にならないから」

 

 キッと彼女は俺を睨む。

 どうしたものか。俺はただ、ラウラと仲良くしたいだけなのに。確かに彼女が魅力的な胸の持ち主だから。というのもあるかもしれん。鈴音の言っていることはごもっともだ。

 何故、自分たちをボコボコにした相手と仲良くするのか。何故、一夏をバカにした奴と仲良くするのか。

 

「まぁ・・・それはみんな疑問に思っているから、今度にするよ。あっ、別に逃げるってわけじゃないからな」

 

「・・・分かった。今はそれで納得する」

 

 そうこうしているうちにセシリアが目を覚ました。それを確認した鈴音は、自分は邪魔だと感じたらしく保健室から出て行った。

 体を心配したが「ちょっとぐらい、歩かせて」と言って出て行った。

 

 セシリアは起きて目を何度か瞬きすると、気を失う直前のことを思い出したようでその表情は優れない。

 

「どうだ、気分は?」

 

「最悪ですわ」

 

 彼女は額に手を当てて言った。

 

「わ、わたくし・・は・・・強く・・なりたかった。守られる・のではなく・・・守りたい・・と」

 

 セシリアの経歴は調べさせてもらった。それはそれは壮絶な過去を持っている。両親が事故で死に、残った莫大な遺産を奪おうという大人から必死になって立ち向かい、両親が残したものを彼女は守った。

 

 だから、強くあらねばならない。何者にも負けず、守られる側ではなく守る側にいないと。

 

 俺は彼女の頭の上に置いて優しく撫でた。

 

「お前はバカだな」

 

「・・・・わたくしのこと、何も知らないくせに!」

 

 俺の手を払い除けてキッと睨む。こういういらぬ優しさは今の彼女にとって苦痛でしかないのだろう。

 

「知ったような口をきかないでください!わたくしは強くなければならない!例え相手が誰であろうとも!わたくしは・・・わたくしは!」

 

「あのなぁ・・・」

 

 それでも彼女は止まらない。

 

「汚い大人たちは父と母が死んだ途端、ハエのように群がってきましたわ!わたくしは両親の誇りを彼らから守らなければならない!」

 

 セシリアは涙を流し始める。

 

「そんな、わたくしを・・・あなたのような人が知ったように言わないで・・・」

 

 心の傷はいずれ時間が修復してくれる。セシリアも多分例外ではなく、少し時間が経てば普段の落ち着きを取り戻すであろう。

 そして、いつもの日常へと戻っていくのであろう。

 

 黙って扉を開け、俺は保健室から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 などという選択肢を放棄し、

 

「あなたじゃねぇ!俺の名前は千早だ!お前がそう呼ぶって言ったんじゃねぇか!」

 

 そう言ってセシリアの腕を掴んだ。

 

「ちっ、もうたくさんだ!一夏やデュノアの面倒を見たと思ったら、今度はお嬢さんのご機嫌取りか!ふざけんな!おい、こいつは一体何の冗談だ!?」

 

「なっ、ふ、ふざけないでください!」

 

「ふざける?舐めてんじゃねぇぞ!お前は一体なんだ?イギリスの代表候補生で、オルコット家の当主様じゃねーか!それがなんだ!口を開けば強くなりたい強くなりたい言いやがって!てめぇは周りの声が聞こえねぇのかよ!一人で抱え込むんじゃねぇ!」

 

「一人で抱え込む?バカを言わないでください!これはわたくしの問題!そんな世迷言なんて言わないでください!」

 

 セシリアはそう叫んだ。

 

「あなたに、あなたに一体わたくしの何が分かるというのですか!!どんな人生を生きて!どんなふうに生活してきたか!分からないくせに!」

 

 俺は少しドスのきいた声で言う。

 

「そうだよ、分かる訳がない。そんなの当然だろ?俺はセシリアじゃないんだ。だったらよ、お前は俺の・・・何を知っているんだよ?」

 

 セシリアの表情がこわばる。

 

「ISが登場して世界のバランスが変わっても、前と変わらずある程度の辛い目にあうもんだ。だけどよ、んなことも知らずに自分はやれ強くなればならない、やれ背負っているものが違うんだとか言いやがってよ。そのくせ、自分の問題だとか言って一人で抱え込む」

 

「それの・・・何がいけないと言うのですか!わたくしが強くなりたいのは皆さんには関係ありませんわ!誰かが助けてくれる、誰かが守ってくれる時代ではないんです!ここは白馬の王子様だって登場しない!」

 

 セシリアの拳が俺の胸を叩く。

 俺は彼女の手を掴んだ。荒々しく、優しい手だ。

 

「白馬の王子がいなけりゃ、白馬の王子になってやればいい。自己嫌悪して、悪循環してるよりかはそうやってバカやっている方がよっぽどいい!」

 

「・・・う、うるさいですわ・・・あなたには関係ありません!」

 

 セシリアは軋む体を無視して俺の頬をビンタした。バシンッと強い音が二人以外誰もいない夕方の保健室に響く。

 俺はそのビンタを避けることも、手で止めることもしなかった。ただただ、それを受けた。

 

 避けると想像していたのか、それにセシリアは少し驚く。

 

「セシリア、俺がここにいる理由。忘れた訳じゃないだろ?俺はISを使える男性操縦者であり、有澤のテストパイロットだ」

 

 俺はビンタしたセシリアの片手を掴む。

 

「勉強しろ、勉強しろと祖父はうるさく、好きだった剣道は辞めさせられた。点数が下がれば叱られ、毎日俺は体に傷を受けた。それでも、黙って竹刀が振れて、祖父のご機嫌さえ取れていれば満足していた・・・だけど」

 

 言葉を重ねるごとに力がこもる。

 

「そんな日常がどうでもよくなったんだ!俺はIS学園に誘われて、チャンスだと思った。そんなクソみたいな世界から抜け出せると」

 

 力がこもる。

 

「俺たちは一体何なんだ?ただのクラスメイトか?ただの学友か?違うだろ。共に背中を守り合う仲間じゃねーのかよ?」

 

「っ!」

 

「なのにその仲間が何も言わず一人で抱え込む姿を・・・一人で見ていられるほど俺は強くはない」

 

「何故、そこまでわたくしのことを・・・」

 

「信じているからだ」

 

「え?」

 

「セシリア・オルコット。お前を俺が信じているからだ。俺だけじゃない、一夏や箒、鈴音やデュノア・・他のクラスの連中だってお前を信じているから。信用しているから・・・だからここまで言うんだよ」

 

「・・・・・・・信用なんて」

 

 むっ、まだ言うかこいつは。まったく、仕方がないお嬢さんだな。

 

「見えないからと言って、そこに存在しない訳じゃないだろ?まっ、少しマシになった絆を今は信じてみようじゃないか?」

 

 最後に俺はそう言った。すると、セシリアは小さく。

 

「・・・ありがとう・・ありがとうございます」

 

 そう言った。

 これ以上は野暮というものだろうか。俺も少し怒鳴ったものだし、ここ最近のストレスが溜まっていたかもしれない。

 それに、セシリアはセシリアなりの答えを見つけたようだ。俺がこれ以上とやかく言う必要はない。

 あとは、初めに言ったように時間が解決してくれる。整理してくれる、時間が。

 

 

 

 俺はゆっくりドアに手をかける。

 背後にいたセシリアが一言。

 

「で、では・・・また、明日」

 

 それを聴いた俺はニヤリと笑い。「ああっ!」と力強く答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。