開幕と同時に一夏は瞬時加速を使って真正面から突撃してきた。それを読んでいたのか、ラウラがAICを発動させて一夏の動きを停止する。
「開幕直後の先制攻撃か。わかりやすいな」
「そりゃどうも。以心伝心で何よりだ」
ラウラと以心伝心だと!?一夏・・・許さんっ!
「ふっ」
レールカノンが一夏をロックオンする。が、ラウラよ。そいつは違うぜ。敵は一夏だけじゃないんだからな。
次の瞬間、一夏の後ろからデュノアが出現し、レールカノンを撃つ。砲身がズレて砲弾は一夏の横をとおり抜けて後方の壁に直撃した。
「っ!」
ラウラはレールカノンを下ろして一旦後方へと下がる。
「逃がさない!」
そう言ってデュノアはラウラに追い打ちをかけるようにサブマシンガン二丁を瞬時に呼び出す。
なるほど、あれが有名な高速切替。確かに速いな。
だが、甘い!こちらもラウラ一人という訳ではないのさ!
「はっ!」
呼び出したライフルをラウラとデュノアの間に入ってデュノアに向かって撃つ。それに一旦デュノアは下がる。
俺も撃つのを止めて一旦体制を整える。流石は銃撃戦の専門。回避行動もかなり上手い。それに下手に追撃せずに引き際をわきまえている。
デュノアの後ろには一夏。デュノアは後衛なら一旦下がって一夏と俺をぶつけてくるか?
それにデュノアのカスタムⅡもこちらの予想を上回るデータだ。これは、戦術通りには無理か。
あーあ・・織斑先生にあれだけ言っておいて、こんなんじゃ顔向けできねーな・・・だったら、せめて勝つことだけを考えるか。
「はぁっ!」
ライフルをデュノアに向けて撃つと、デュノアは一旦後方に下がって一夏が正面に突撃してくる。
「ふっ!」
一夏の見え見えの一撃をサイドターンで避けてアサルトライフルとショットガンを構えたデュノアに正面に出る。当然、一夏とデュノアは突然のことに驚いたが、そんな反応とは関係なしに俺は正面キックを食らわす。
「っ!」
一瞬、デュノアが怯み、後退したところにライフルを突き出して数発食らわす。すると、後ろから一夏が援護にくる。が、その前にラウラは立ち塞がる。
よし、いい感じに一対一に持ち込むことが出来た。
あとは、一人が一人倒せれば問題ない。
ラウラは一夏を。俺が・・・デュノアを!
「いくぞ!」
ライフルをしまって、代わりにアサルトカノンを呼び出す。機関銃のように連射はできないが、それでも一発一発は強力な弾丸だ。
ダンッ!ダンッ!ダンッ!
と、横スライドしているデュノアに向けて撃つ。三発目が彼女に直撃したが、直ぐに立て直してショットガン二丁を持ち替えて交互に撃ってくる。
っ!弾幕が厚い!
俺は一旦後方に下がるが、横からラウラを振り切って一夏がこちらにやって来た。
「っ!お前はラウラを相手にしてろ!」
「隙あらばってやつだよ!」
クソッ!
雪片弐型の斬撃を無理矢理体を捻って避けるが、それがいけなかった。補助スラスターが地面に押さえつけられ、二基あるうちの一つが破損して出力が上がらない。
「ちっ!」
普通であればそんなことはないのだが、運が悪かったか?
「これでおしまいだよ!」
次の瞬間、上空からデュノアがアサルトライフルを持って接近してくる。その精密射撃を受けながら俺は後退するが、スラスターが一基ダメになったせいで、先ほどのような俊敏な動きが出来ない。
もとよりデュノアよりかは三倍速いはずなのだが、運の悪さと微妙な反動速度に若干の動揺を感じて、弾丸を避けきることができないでいた。
「くっ!」
なんとかデュノアの弾幕から逃れることが出来たが、彼女は間髪入れずにサブマシンガンを持って突撃してくる。
なるほど、無理にでも俺をいち早く倒してふたりがかりラウラを倒す戦法か。いい案だ。
「ふっ!」
アサルトカノンでデュノアを撃つが、彼女はなんと盾を展開しながら一気に接近してくるという強攻策に出た。
逃げないと!
そう思った時には既に遅く、彼女のショットガンの銃口が俺の腹部にタッチしていた。
「いやぁ、冗談悪いぞ」
「ふふ」
デュノアは可愛らしく笑うと躊躇なくその引き金を引いた。
森島千早 ラファール・リヴァイヴ・ロート シールドエネルギー0
ぬぉぉぉぉぉ!嘘だろぉぉぉ!この俺が・・・こんなところで・・・あれだけ強く出たのにこんなとこで負けんのかよ。
俺も甘く見すぎたか。
理論を立てるのは悪くはない。だが、それを実行するのとは全く違う別物だ。
それを理解し、そして実行するだけの根性が俺にはまだ・・・。
「お待たせ、一夏」
「おう、千早は?」
「あそこにいるよ?」
一夏の視線には動かなくなったラファールに乗っている千早がいた。
「よし。なら、俺もそろそろ決めさせてもらう!」
すると、白式が光りだした。白式の単一能力。零落白夜。
一足先にラウラに向かってシャルロットが飛び出した。サブマシンガンを乱射するが、シュバルツァ・レーゲンのAICによってその攻撃は阻まれる。
が、同時に横から一夏が雪片弐型を振りかぶった。
その奇襲攻撃にラウラはAICを解除して、後方に飛ぶ。
「?もしかして!」
その行動を不思議に思った一夏は更にラウラに追撃を仕掛けてくる。ラウラはそれをワイヤードランスで応戦する。
一夏はワイヤードランスを切り抜けて再びラウラの前に飛び出るが、またAICによって阻まれる。
「無駄なことを」
ラウラはレールカノンを一夏に向けたのだが、それを見て一夏はニヤリと笑った。
「忘れているのか?俺たちは二人なんだぜ?」
「!」
次の瞬間、一夏の影からシャルロットがサブマシンガンを連射しながら飛び出してきた。その奇襲攻撃によってシュバルツァ・レーゲンのレールカノンが破壊され、煙を上げながらラウラは後退する。
「やっぱり。思ったとおりだ」
一夏のいうやっぱりとは、AICの致命的な弱点のことであった。
AICは対象物を完全に停止させる停止結界なのだが、あくまでそれは発動者自身が対象に対して集中していなければならないということ。
普通であればAICは一対一の勝負であればかなり有利に運ぶことが出来るが、あくまで今は二対二のタッグ戦。千早をいない者としていたラウラにとって今の状況はAICに頼ることは出来なくなった。
ここに来てラウラの孤立戦線がアダとなったのだ。
ガガガガガッ!
と、空中に逃げるラウラにシャルロットが追撃をして、一夏が斬りかかった。勝負はそれでおしまいに見えた。が、そのタイミングで零落白夜の発動が終了する。
「しまった!」
「限界までシールドエネルギーを消耗しては戦えまい!」
近接ブレードを展開して一夏に斬りかかるが、一夏はなんとかしてそれを回避する。
更に追撃をかけるラウラに向かってシャルロットが援護するが、それにイラッだったラウラはワイヤードランスをシャルロットに向けて放つ。
「邪魔だ!」
ワイヤードランスに吹き飛ばされ、一夏はラウラに一撃を正面から受け、地面に叩きつけられた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
一気に畳み掛けようとラウラは近接ブレードを振りかぶるが、そこを直ぐに起き上がってきたシャルロットが捨て身のタックルを食らわす。
タックルが見事に決まり、ラウラは地面にワンバウンドして後ろにぶっ飛ばされた。
「まだ終わってないよぉ!」
そう言ってシャルロットはサブマシンガンを持って瞬時加速をした。それに反応することが出来ず、回避が出来ない。
「グッ!瞬時加速だと!そんなのはデータになかったはずだ!」
「だって、今初めて使ったからね」
「なっ!」
瞬時加速はISの中でもポピュラーな技の一つでもあるが、素人がそう使える技でもない。だが、それでもシャルロットはそれを勘と今までの自分の技術を信じて使い、見事成功させた。
「この戦いで覚えたというのか!だが!私の停止結界の前では無力!」
と、片手を前に突き出して停止結界を発動させようとしたのだが、背中で爆発が起きる。
見れば得意げに一夏がシャルロットのアサルトライフルを持っているではないか。
更なる苛立ちにラウラはなんと目の前にいるシャルロットを無視してワイヤードランスを一夏に向ける。
「この死に損ないがぁぁぁ!」
伸びたワイヤードランスはそのまま一夏を直撃して、一夏を倒した。トドメを刺そうとラウラが動いた時、下からシャルロットが飛び出してきた。
「どこを見ているの?この距離なら外さない!」
次の瞬間、ラファールの大盾がパージされ、その下に装備されているパイルバンカーが出現した。
「シールドピアス!」
その名の通り、エネルギーシールドを破壊する為だけに開発されたパイルバンカー。威力はデュノア社のお墨付き。
距離的に避けることは出来ず、パイルバンカーがシュバルツァ・レーゲンの腹部に決まった。
「がぁぁぁぁっ!」
ラウラは悲鳴をあげてアリーナの壁に叩きつけられる。
しかし、シャルロットの攻撃はそこで終了せず、立ち上がったラウラに向かって高速で接近して何発もパイルバンカーを食らわした。
私は・・・負けられない!負けるわけにはいかない!
『遺伝子強化実験体C-0037。君の新しい識別番号だ。ラウラ・ボーデヴィッヒ』
私はただ戦いの為だけに生まれ、作られ、育てられ、鍛えられた。
おかげか軍が扱う全ての兵器を使いこなすことが出来た。銃、戦車、戦闘機、船、潜水艦、対人戦についてもどんなに体格が大きな大人であったとしても負けることはなかった。
私は優秀であった。最高レベルを維持し続けた。
しかし、それは世界最強の兵器、ISの登場までだった。
直ちにISの適正を上げるために肉眼へのナノマシン移植手術が行われた。
しかし、私の体はISには適応しきれず、その結果、出来損ないの烙印を押された。
そんな時、私は初めて彼女と出会った。彼女の訓練のおかげで私はIS専門の部隊で再び最強の座へと上り詰めた。
ある日のことであった。
私は彼女に聞いた。
「何故、そこまで強くなれるのですか?どうしたら強くなれるのですか?」
すると、彼女は優しそうな表情で言った。
「私には弟がいる」
違う・・・何故優しそうな顔をするのですか?
私の憧れているあなたは強く、気高く、凛々しかった。だから、許さなかった。教官をそんなふうに変えるものを。
そんなものを認める訳にはいかなかった。
強くなりたい。
願うか?汝、より強い力を欲するか?
ヨコセ、チカラヲ・・・ユルギナイ・・・サイキョウノチカラヲ!
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!」
突如、ラウラが叫び始めた。同時にシュバルツァ・レーゲンが形状変化する。いや、まだ形状変化と呼ばれるものならまだよかった。
あれは形状変化でもなんでもない。ただの支配であった。
シュバルツァ・レーゲンの装甲が突如ドロドロになっていき、ラウラ本人を飲み込んでいく。その悲痛な叫び声は全ての人の耳に聞こえ、そして、その全てを飲み込んだ。
そして、そこに出来上がったのは女性のような表面に打鉄に似ているものへとなった。
「はぁ・・・はぁ・・・あれは・・・俺がやる」
次の瞬間、その泥に向かって一夏が剣を構える。それに反応して泥人形は一瞬で一夏との距離を詰めて、一撃で一夏をIS強制解除までおいやった。
とんでもない反応速度と攻撃力である。
(あの剣技・・・俺が最初に千冬ねぇに教わった真剣の剣技だ)
(こいつ・・・千冬ねぇの真似しやがって!)
千冬、姉を尊敬し、溺愛している一夏によって姉の剣技を真似たことには侮辱にも等しい行為であった。
だからこそ、許せなかった。
一夏は一直線に泥人形へと向かっていく。が、それをシャルロットに止められる。
「一夏!流石にダメだよ!白式無しじゃ・・・・」
「でも・・・あれは・・・あれは・・・・」
一夏は悔しそうに千冬を模った泥人形を睨む。
という感じになってしまいました。
クライマックスへと近づいてきました
次回もよろしくお願いします!