新生活ということで、今後もこのように更新が少し遅れることがあると思いますが、みなさん何卒よろしくお願いします。
俺は考えることしかなかった。体力はあるものの、それもまぁ、平均より少し上というぐらいであり、結局のところは本物スポーツマンには負けてしまう。
だけど、それを補う為に工夫し、考え、策を講じた。それでも、俺は本物の天才と努力家に負けた。
今だってそうだ。
一夏とデュノアに負けた。
「お前は・・・・・」
「・・・森島千早か」
視線の先にラウラがいた。彼女の表情はいつもと違って、暗く後悔したような表情であった。
この現象を知っている。一度、本で読んだことがあるが、その詳細まではまだ把握出来ていない。
パイロットの気持ちとISのコアネットワークが関係しているだとか、なんやら。
「はは、笑ってくれ。私はこうして自分が傷つかないと、分からないんだ。自分がしてしまったことの重大さと、責任を」
「・・・・・笑える訳ないだろう」
「そ、それもそうだな・・・本当にすまなかった。今なら、分かる気がする。お前の好意も・・・教官の気持ちも」
「そうか。なら、良かったな」
俺はラウラの頭の上にそっと手を置いた。
「私は、強いのだろうか?私は、ダメなのだろうか?」
「お前は強い。ダメなんかじゃない・・・ただ、周りよりちょっと不器用なだけなんだよ」
「・・・そうか」
それでもラウラの表情は暗い。
「俺の祖父は厳しい人でな。何か出来ないと何度も俺の体を殴るんだ」
「・・・・・・」
「女尊男卑になってからは、女に舐められないようにもっと厳しくなった。その時に出来た古傷なんて多くてな・・・だから、俺は好きだった剣道を止めて勉強を選んだ」
「そう・・・なのか」
「まぁな。おかげで知識だけはある。そのおかげで今までうまくやってこれた。だけどな、ラウラ。俺たちはまだ十五歳の青二才なんだよ」
「だが、私は軍人だ」
「お前のその気持ちは理解出来ない訳じゃない。だけど、軍人である前にお前は女であって、まだ子供なんだ。子供に強さを求めるほど、世界は腐っちゃいないさ」
「・・・・・・・・・・・・そうか」
何か分かったようにラウラはそう呟いた。
「まだまだ、俺たちの可能性はここからなんだと思うぞ。だから、今はゆっくりと、一緒に歩いていかないか?」
「ゆっくりと、一緒にか・・・千早、今まで本当にすまなかった」
「なぁに」
「今までの私は、強さに固執していた。弱いと・・・また、捨てられるんじゃないかって。だけど、お前とこうして繋がって、色々と分かったことがある」
ラウラは一歩ずつ歩いて俺の前にやって来た。
「それを教えてくれたのは千早、お前だ。後悔してやっと分かるなんて・・・私もバカだな。だけど、自分がしたことの罪は自分で償う」
「お、おい・・・何を言って」
「自分で始めたことぐらい、自分で終わらせる。さよならだ」
そう言ってラウラは一筋の涙を流して消えた。
「ラウラ・・・一体どういう」
「様子がおかしいよ!一夏!」
「ああ・・・なんだか、あいつが・・・苦しんでいる?」
目が覚めると前にいる一夏とデュノアが目の前に泥人形に疑問を抱いていた。それも、彼らの目の前にいる泥人形が苦しみだしているのだ。
『ア・・アアァァァアァァ!』
ブンブンッと剣を振り回し、もがき、苦しんでいる。
ラウラ・・・やめろ。もう、やめろ。自分で自分を終わらせるな。
俺は・・・まだ、お前に言ってない言葉がある。たった数日だったけど、俺はまだお前に。
「ち、千早?」
デュノアが心配そうに俺の方を見た。
「デュノア、お前のラファールのエネルギー、俺に回してくれ」
「で、でも・・・」
デュノア的には一夏の白式にエネルギーを分けてやりたいのだろうが、今はそんなことは知らない。
「頼む・・・俺は、ラウラにまだ伝えていないことがあるんだ。一夏が譲れないっていうのなら、俺だって譲れない」
「千早っ!俺が、俺がやるんだ!」
一夏はまだそう言っている。見たところ、あの泥人形の太刀筋は前に見た織斑先生の太刀筋に似ている。
だから、か。大切な姉の剣技を真似た奴を許さない。っか?
「俺がやらなくちゃいけないんじゃない。俺がやりたいんだ!」
「そうか・・・なら、俺も譲れないよ。一夏」
俺は一夏の前に立ち塞がる。
「お前がそうしたように、俺もそうしたいんだ。例え、一夏の方が適任だとしても、これだけは譲れない」
「だ、だけど!」
「一夏!・・・千早に、やらせてあげようよ」
デュノアがそう言った。そう言われて一夏は一度考えた後、俺に向かって言った。
「なら、千早。絶対に勝てよ」
「・・・愚問だ。仲間を助けてこそ漢だろ?デュノア・・・頼んだ」
「分かった。繋げるね」
カスタムⅡからロートにエネルギーが流れ、俺はもう一度展開した。第二代型同士のエネルギー伝達なので、部分展開ではなく、完全に展開が出来た。
銃は不毛・・・一撃で終わらせるには。
俺の両手には長刀が握られていた。
「はぁぁっ!」
俺の攻撃に反応して泥人形が斬り返してくる。速度も威力もかなりのもので、あの織斑先生の太刀筋を完全にコピーしていた。
故に先生に勝てていない俺には苦戦を仕入れられる。
泥人形の右からの薙ぎ払いを、なんとか受け流すが、直ぐにターンして強烈な斬り返し。
思わず長刀が上にいくが、同時に横スライドして斬撃を回避する。
だが、防戦一方のこの状況では何も変わらない。
「ぐっ!」
落ち着け、落ち着いて対処するんだ。あそこにラウラの意志はない。あくまで、織斑先生を模倣したものだ・
そういえば、あの先生は俺の立ち位置がおかしいと。間合いが、取れていない?いや、そんなことはない。
「はぁ!」
一撃、正面から斬りにかかるが、泥人形も同時に踏み込んで正面から圧倒される。
「っ!」
一旦距離を取って長刀を構え直す。
ダメだ。一歩踏み込めばやられるイメージしか思い浮かばない。どうすれば・・・。
それにこの太刀筋、織斑先生の模倣と言ったがそれ以上かもしれない。無駄のなく、一切の甘さや情の欠片はそこにはない。
しかも間合いも似ているせいか、やはりなかなか踏み込めない。
流石は世界最強・・・そう簡単には斬り崩せないか。だが・・・。
一閃、上段から刀が振るわれるが、長刀を構えた状態から一歩後ろにいく。すると、泥人形の斬撃は地面を大きく破壊する。
織斑先生の剣筋は何度か見たことがある。落ち着け、落ち着いて対処すれば見切れないものではない!
「っ!」
横のなぎ払い、上段からの振り下ろし、からの斬り上げ。ようやく見えてきた。が、これではいつまで経っても反撃出来ない。
だが、反撃出来るだけの力を俺はまだ持ってはいない。
「ぐぅ!」
正面の一撃を受け止めるが、あまりにも重い一撃に俺は後ろに後ずさる。
こんなの助走なしで作れる力じゃない。いや、連結張力だ。全身をムチのように扱って、しなるように刀を振るう。だから、一撃一撃が重いんだ。
ISの近接格闘戦において小さく細かい動きほど難しいものはない。故にただの斬り合いというものがISの中では多い。
そうか。そこに織斑千冬は目をつけたんだ。ただの斬り合いになれば単純に力の強いものが勝つ。更にそこに剣技なんてものを持ち込めば、近接戦に置いて横に出る者はいなくなる。
なるほど・・・この泥人形もそれを見逃さずにそこに目をつけたんだ。
「ふぅ・・・・・」
『これは有名な侍の言葉なんだがな・・・・』
「切り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ」
長刀を上段に構える。
「踏み込みゆけば」
目の前の泥人形に向かって俺は思いっきり全力で飛ぶ。
「あとは極楽!!!」
当然、奴も上段からの振り下ろしてくる。普通であればここで受けるのだが、俺はその剣を受けそのまま後ろに流した。
今だ!
俺は受け流すのと同時に機体を強引にねじる。フレームが軋む嫌な音がする。だが、こんなところで止める訳にはいかない。
俺は長刀をそのまま横になぎ払った。それに応戦して泥人形も無理矢理反転して切り返してきたが、圧倒的にこちらの方が斬り返しが速かったので長刀はそのまま泥人形の首から上を吹き飛ばした。
勝負はその一瞬で決まった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
見れば泥人形が少しずつ塵へと変わっていく。
そして、その中から現れた銀色の髪の少女を俺はゆっくりと抱きしめた。
見上げた空はそんな俺たちを祝福してくれるような、そんな晴れた日の出来事であった。