「なぁ、千早」
「なんだ、ラウラ?」
IS合宿を間近となった日曜、俺とラウラは臨海学校へ向けて準備をしていた。すると、ラウラは不意に俺の名を呼んだ。
「そのだな・・・」
なんだ、妙にラウラがモジモジしている。何かこう恥じらっているというか、なんというか。
・・・・ふむ。なるほど。
「みなまで言うな。ラウラ。お前の思っていることぐらい、俺が分かっていない訳じゃないだろ?」
「いや、そこ私に聞かれても」
「まぁ、そこはどうでもいい」
「どうでもいいの!?」
「さぁ、それで言ってみな?ラウラたんは一体どうしたんだ?」
「そのラウラたんという発言に対して私はもうツッコマないからな」
などという楽しげな会話を繰り広げる。
あれからというもの、なんかラウラは少しだけ柔らかくなった。その根っからの軍人言葉は変わっていない。それでも、一人の少女として、生徒としては馴染むという意味では彼女は彼女らしくなってきたのではないかと思う。
一夏にもちゃんと謝罪したし、迷惑かけた者たちへも頭を下げてきた。おかげで、ラウラはこの学園の一人の生徒として今日も元気にしている。
それが、大変嬉しい。
いや、お父さんとかじゃないからな。娘がクラスからハブられてて、ちゃんと自分のしたことの意味を理解して、改めてクラスの皆に受け入れられてバンザーイ。よかったよかった。
と、影で見守るとかそういうのじゃないからね。
うん。大丈夫。俺は全然、おっさんじゃない。
それと、余談と言えば余談なのだがどうやらデュノアの方は親父殿と話がついたらしく、この前から女子の制服を着て登校している。朝から一夏が悲鳴をあげていたのだが何のことかは俺もよく覚えていない。
「そのだな、荷物で少々足りないものがあってな」
「・・・・・・水着?」
「っ!?何故わかったんだ!」
「何を言っているんだ!この俺がラウラの荷物チェックをしていないわけがなかろうが!」
「お前は一体なんなんだぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!」
はい、ということで久しぶりに街に繰り出してきました。俺とラウラはどちらも制服でショッピングエリアを二人で歩いていた。
ラウラは超絶美少女ということと、IS学園の制服を着ているということもあるのか、周辺の人々がこちらを先ほどからチラ見してくる。
いやぁ、ラウラは可愛いし、当たり前のことなんだがな。
「それで、一体ラウラはどんな水着がいいんだ?」
「あ・・・そのだな。実は学校指定の水着しか持っていなくてな」
「・・・・・・・・」
ラウラの学校水着・・・・。
・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。
。
「ぐはぁぁぁぁぁぁぁっ!」
俺は鼻から大量の血を放出しながら床に倒れる。
「なっ、千早何があったんだぁ!」
ラウラが咄嗟に介抱してくれるのだが、今の俺は大量に血を失ったことで力が出ない。
「す、すまない・・・」
「だから何があったんだぁ!」
それからラウラの介抱もあったおかげで数分で復活した俺はラウラが着るであろう水着を物色していた。
だが意外とこれが難しい。
一体何の水着がラウラに似合うのだろうかと何十回、何百回と考えているのだがどうにもどれがいいのか分からない。
「くそぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「お、お客様どうかなさいましたか!?」
一体、一体なにがダメなんだ。どれだけシュミレーションしても俺の中でまとまらないし、納得ができない。
床を叩いていると心配そうに店員が声をかけてくる。
「うぐ・・・えぐ・・・み、水着が・・・水着が・・・・」
「あいつは一体何をやっているんだ・・・やはり、水着は学校指定でいいな」
そう思って私、ラウラ・ボーデヴィッヒはアホな千早をほっておいて店から出ようとしたその時であった。
「しっかり気合いいれていかなくちゃねぇ」
「似合わない水着着て行っちゃったら彼氏に一発で嫌われちゃうもんねぇ」
その瞬間、何か銃弾のようなものが自分の胸に命中するのを感じた。
直ぐに携帯端末を取り出してドイツの我が部隊、シュヴァルツェ・ハーゼに連絡した。2コールで直ぐにクラリッサは通話に出る。
「クラリッサ、私だ。緊急事態発生」
『ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長、何かあったのですか?』
「う、うむ。例の森島千早のことなんだが」
『ああ、例の二人目の操縦者で、隊長が好意を寄せていて、彼のそのオープンな性格に対してツッコンでばかりで中々自分の嫁宣言が出来ない・・・彼のことでしたか』
「あ・・・ああ、そうだ。実は今度臨海学校というものに行くことになったのだが、その一緒に水着を買いに来たのだが・・・・・あの性格だからな。色々と・・・・」
『なるほど、話を聞いている限りでは容易に予想出来ます』
「ほっておいて帰ろうかと思ったのだが、似合わない水着だと異性に嫌われるらしくてな。そこで、クラリッサの指示を仰ごうかと思ったのだ」
『了解しました。この黒兎部隊は常に隊長とあります。ちなみに、現在隊長が所持しておられる装備はなんでしょうか?』
「学校指定の水着が一着だ」
『っ!何をバカなことを!』
いきなりの大声に一瞬ビックリしてしまったが、クラリッサにはクラリッサなりの考えがあるのだろうと思い、もう一度携帯に耳を傾ける。
『確か、IS学園は旧型のスクール水着ですね。それも悪くはないでしょう。だが・・・しかしそれでは!』
「それでは?」
『色ものの域を出ない!』
「・・・・な、ならばどうする?」
『私に、秘策があります』
それから私はクラリッサの言うとおりの水着を購入し、来るであろう臨海学校へ向けての入念な準備に入った。
「はい、落ち着きましたか?」
「うう、すみません。ありがとうございます、なんだか落ち着きました」
店員さんに慰めてもらいながらなんとか立ち直った俺は、ショート仕掛けた頭を一度冷やして考えを今一度改めることにした。
やはりここはラウラと一緒に彼女が好むものを買うべきか・・・うん、そうしよう!
「いや、私は既に水着は購入してしまったんだが」
「なっ!嘘だろ!そんな・・・・」
ガクッとその場に膝立ちになる。
「はぁ・・・まぁ、ここまで付き合ってもらったんだ。千早は何か必要なものはないのか?」
「・・・・・・・必要なもの・・・・・・・・・輸血パック?」
「・・・・・・・・・・先に帰っているから」
「うぇっ!ちょっ、へい!ラウラさん!へーーーーい!」
デートっぽいけど、全然デートじゃねぇ!!