海上を二機の赤いISが飛んでいた。互いに互いを補足し合いながら海岸沿いからある程度離れた場所で距離を取る。
互いに二百メートル程度距離を作り、武器を構えた。
『千早、全力で行かせてもらうぞ』
「ああ、こちらも容赦はしない」
目の前にある数字が0になり、GOサインが出る。
箒は自分が強力な力を得たことによって俺に勝てると思い込んでいるらしく、表情を見る限りでは少しだけニヤついていた。
確かに専用機持ちの中では俺は弱いかもしれないが、それでも打鉄に乗った箒に遅れを取るほどでもない。
だからこそかもしれない。
だからこそ、箒は俺を余裕を持った表情で攻撃してきた。まるで、勝敗を自分が操れるかのように。
正面から飛んできた赤い斬撃を海上スレスレを移動しながら避ける。幾らこちらを上回るスペックだとしても、実際のデータを計測しない限りではこちらとしてもどう対処していいか分からない。
今は逃げに専念して、紅椿に乗った箒が戦闘ではどんな動きをするのかある程度のデータが欲しい。
「っ!」
次の瞬間、一瞬にして紅椿が目の前にまで接近してきた。正面の斬撃を体を捻ってギリギリ回避する。
俺はそのまま距離を取ろうとするが、箒は俺にそのままくっついて距離を空けようとさせない。
「くっ!」
マシンガンを乱射して距離を取らせようとするが、それすらも問答無用で箒はその二本の刀を振り回しながら接近してきた。
って、予想遥かに上回る勢いだな。だが、箒の表情からは余裕しか感じない。それにしても、篠ノ之博士は一体何を考えているんだ・・・っと、集中集中。
紅椿の性能は先ほど見たものよりも遥かに上がって強くなっていた。
この短時間で箒が紅椿に慣れてきたということにして納得する。色々と情報を集めてみたいのだが、現段階で俺が箒に勝てる確率は厳しいと言うしかないだろう。
「どうした!攻撃してこないのか!」
箒が赤い斬撃と飛ばしてくる。その隙に大きく距離を空けて掠りもしない斬撃を見ながら俺は銃を構える。
驚異的だ。
速すぎて狙いも定まらない。
正攻法じゃ勝てないか。そう言えば、臨海学校に向けて色々と追加武装を入れておいたんだ。
「・・・・・・・いくぞ、箒」
一直線に突っ込んでくる箒の目の前に黒いボールのような物が出現した。それが、ハンドグレネードであることに箒が気づいた瞬間には盛大な爆発が紅椿を包む。
余裕から生まれた油断によって箒はまんまその攻撃受ける。流石にそれでは倒せる訳もなく、爆炎から箒が飛び出してきた。
休む暇を与えずにマシンガンを乱射しながら箒の足を止めない。彼女は若干構えを崩しながらもこちらに向かって突撃してくる。が、俺はそんな箒に向かってスモークグレネードを投げる。
黒い煙が箒の視界を阻害するも、箒は全力で煙から逃れる為にスピードを上げるも、煙から出たところに俺はいなかった。
「っ!」
次の瞬間、黒い煙の中から正確に箒に向かってライフルの弾が浴びせられる。
「姿を見せろ!卑怯だぞ!」
と言われて見せる奴がいるかよ。
そう思って射撃を繰り返していると、突如スモークが赤い斬撃によって晴れてしまった。
「げっ」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
一気に距離を詰めて箒は一直線にこちらに向かってきた。俺も腹を括って長刀を展開し、箒を迎え撃つ。
が、
『緊急事態ですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!』
その模擬戦はよく聴き慣れた声によって中止してしまったのは言うまでもない。
篠ノ之束は仕掛けが意外にも速く作動してしまったことに一瞬驚いたが、意外だったのは彼だったということに気づく。
彼女の作戦では自分の妹に少しばかり痛い目にあってもらう予定だったのだが、普通に持ちこたえ、なんと反撃してきたのだ。
自分の作ったISと妹に。
実に気に食わない。
「ふぅん・・・・・・」
調べれば少しばかり謎めいた男だということに気づく。彼の乗っているラファールはなんと女性に関して一切反応を示さなかったという。何故このようなことが起こったのかはわからない。
が、それもあのISをバラバラにして、彼を分解すればいいのではないかと思う。
「でもなぁ・・・それじゃぁ、ちーちゃんが許してくれないよねぇ」
まぁいい。
気に食わないが、興味の対象でもある。この銀の福音で、彼がどういう風に動くか。
「少しだけ、楽しみが増えたよ」
束は旅館に戻る、皆を。特に森島千早の背中を見ながら不敵に笑うのであった。
千早「なぁ、俺ってIS戦闘で勝ったことなくない?」
作者「・・・・・・」