冷たい。
最初に感じたのはそんな感覚だろうか。
ああ、そうだ。そう言えば福音に落とされたんだっけ?あの攻撃受けて生きてるって、どんだけだよ。
体を動かそうにも、体に張り付いている貧弱な装甲がそれを由としない。しかし、そのおかげで俺はこうして生きている。
ラファールが最後まで主である俺を守ってくれたのだ。
最後の最後まで、こいつには守られたな。
けど、悪いが俺ももう無理そうだ。体が動かないんだ。何をどう動かそうとしても、言うことを聞いてはくれないんだ。
冷たい深海へと体は引っ張られる。
「・・・・・・・・」
あー・・・・このまま消えてもいいか。いいじゃん・・・すげー名案。このまま闇の中に消えてしまえば、ひと思いに楽になれる。
十分俺は頑張ったんだから。
七年も頑張って、皆と出会って、十分支えてきたじゃないか。
そうなんだよ。
ここまでが俺の役目なんだよ。
「ねぇ、そんなので面白いの?」
はっ、と意識が戻ったと思えば俺は見知らぬの赤いドレスを着ている少女を視界に捉えて駅の改札口にいた。
少女は改札の向こう側でこちらを見ている。
「どういう意味だ?」
そう無意識のうちに出てしまった言葉を彼女は拾い、言い返した。
「君は強くない。それは、君自身が分かっている筈。だけど、君はこの数カ月間で何度も何度も周囲の人間を助けた」
彼女は続けて言う。
「意地っ張りで周りが見えていなかった、お嬢さん。幼馴染と再会したチャイナちゃん。最後は自分の意志に乗っ取った僕っコ。過去と戦いながら一つの答えを導き出した軍人。自分の責任と向き合ったポニ子ちゃん」
その言葉に皆の顔が浮かんでくる。
助けたと聞こえはいいが、俺はそんなものはしていない。結局皆、勝手に助かったのだ。いや、自分で答えを見つけ、己と向き合ったのだ。
俺がしたことはその支えだ。
人が人を救うなど、簡単なことではないのだから。
「まぁ、そういう考えの持ち主だっていうのは分かってたけどねぇ。けど、君は一つだけ分かっていないことがあるんだよ」
「分かっていない?」
「何でも知っているとは自分でも思ってないと思うけど、この状況から君は分かっていないことがあるんだよ」
「・・・・・・・」
俺が黙ると、少女は静かに右手を前にだし、その一指し指を俺に向けた。
「君自身だよ。唯一、君だけが報われていないのさ」
「報われる?バカ言うな。一体何を持って報われると言うんだ?」
「だって、これだけ努力したんだよ?あれだけ頑張ったんだよ?私がその頑張りを私は一番知っている」
「・・・・・・・」
確かに、彼女の言う通りだ。俺はこの数ヵ月努力してきた。一夏に負けないよう、皆に追いつけるよう頑張った。
だが、現実は一夏はその恵まれた才で専用機持ちと肩を並べ、俺は勉強は出来たがISを動かせても同時期に一緒に始まった一夏には劣っていた。
何故、俺の方が劣るのか。
一夏を見て疑問だった。
「才能の問題って・・・そんなことで納得が出来る訳がないだろう。誰だって、強くなりたいって思うだろう?」
あ・・・そうか。俺は強くなりたかったのか。
例え、這いつくばることになったとしても、何度屈辱の汗を流したとしても、俺は強くなりたかったんだ。
「そう・・・だからね、私も思ったんだ。私も頑張ろうって、成長しよって。けど、それには一つだけ足りないものがあるんだよね?」
「足りないもの?」
少女は「う~ん」とクルリとターンして、こっちを見て微笑む。
「ねぇ、君は恋、してる?」
「・・・・・・・・」
「まぁ、いつも一緒だから分かっているんだけどね」
「・・・あ・・う・・・そ、そうか」
「別に恥ずかしく思うことないよ。私はいいと思うし・・・」
少女は何故か嬉しそうに改札の向こうで揺ら揺らと揺れる。
「じゃぁ、行こうか。恋の話をすると、私もトキメイちゃうんだ」
俺は握られていた切符を通す。改札の向こう側まで歩く、再び切符を握り締めた。目の前には陽気な鼻歌を歌いながらトテトテと歩く少女。
力なんてものは幾らでも手に入る。どんな人間でも、女の場合はISになるけど、銃でもミサイルでも手にした者の力になる。
だけど、そこに本物はあるのだろうか?
戦う理由など不純でいい。そこにある熱意が強ければ、誰だって誠実を覆すことは出来る。
何にせよ結局の俺も一人の女の為に戦いたいとそう思えるのであれば、それはどんなことよりも尊いことなのではないのだろうか?
それを、俺は・・・・。
「証明してみせよう」
復活したぁぁぁぁぁぁぁぁ!!