「ぜぁぁぁぁぁっ!」
箒の竹刀が超高速で一夏の面へと直撃する。衝撃で一夏は情けなく道場の床に倒れる。
「ねぇねぇ、ちー君。おりむーって、弱いの?」
布仏本音。いつものほほんとしている女子であり、そのおおらかな雰囲気に誰もがおっとりとした空気になってしまう。
いや、癒されるの方があっているのか?まぁ、見ていて嫌ではない。
「まぁ、一夏の潜在能力は多分すごいんだろう」
「その根拠は?」
「男の勘?」
「ええ!?」
布仏が驚いている間にも状況は進んでいき、一夏が三年間帰宅部だということが発覚していた。運動部であれば多少なりと体力はあったのだろうが、今となっては遅い話だ。
俺はちなみにバスケ部だったので割と体力はある方だ。と、信じたい。
「さて、では次は千早の実力を見よう」
「えっ!俺もやんの!?」
「ではその身につけている防具と竹刀はなんなんだ?」
「・・・ふっ」
「おい、千早」
「箒、皆まで言うな。分かっている」
「いや、お前。この状況で一体何が分かったというのだ。私にはお前がわからんぞ」
箒は呆れながらそう返答する。
取り敢えず見よう見まねで竹刀を構える。目の前にいる箒の竹刀からは凄まじい殺気を感じ、その剣圧だけで足を引いてしまいそうだ。
だが、諦めるな。
「奥義・・・」
「なっ、千早!お前いつの間に奥義とか使えるようになってたんだよ!」
一夏が何か言っている。
「一夏、そう言えば貴様には何も言っていなかったな。修行に修行を積み重ねて遂に会得したこの奥義を!」
「なっ!」
一夏や周りの女子生徒たちが一斉に驚愕する。剣道において奥義といった部類をまず身近で見ていないからであろう。
更に一見好青年である俺が言ったのだからある程度の信ぴょう性がある。
「箒・・・本気でやらせてもらうぜ」
「・・・こい!」
箒は一歩前に出て竹刀を振り下ろしてくる。遅れて一歩引きながら箒の一撃を受け止める。
「っ!」
重いっ!
さ、流石は剣道の全国大会で優勝したことはある。その殺気から剣さばきは只者ではない。
剣の扱いは俺よりも十数倍は強い!
「どうした!その奥義とやらを見せてみろ!」
「っ!こいつには発動条件があってな」
「何!?」
「この奥義は実は相手が自分より弱い時には使えないんだ」
「どういうことなんだ?」
一夏が聞いた。
「箒は俺より強い。いいだろう、一夏。見せてやろう!刮目せよ!これが格上のみに、そして自分自身が相手より劣っていた場合に使える奥義!」
俺は竹刀を捨てて箒の前に飛び出る。そのまま膝をついて両手に地面につく。そして、そのまま頭を地面につける。
「DO★GE★ZAだ」
「あの、山田先生」
「はい、なんですか?」
「さっきの授業の・・・ここと、ここが・・・」
「それはですね・・こうで、こうなんですよ」
授業が終わり俺は山田先生に先ほどの授業に関して質問をしていた。
ISのことである。
インフィニット・ストラトス。通称ISは世界にそのコアを四六七個しか存在しない。それはISを作った篠ノ之束博士がそう決めたから。
ちなみにコア自体もブラックボックス化されており、コア自体に限りがあるので新型機体を作ろうと思うのなら既存のISを解体しなければならない。
めんどうだな。
「ありがとうございました」
「いえいえ、これでも先生なんですから。なんでも聞いてくださいね」
「はい。では、早速なんですが俺のルームメイトって一体誰なんですか?」
「あ・・ああ、そうですね。何と言いますか、ちょっと事情が事情で入学が遅れているんですよ。二組に入る予定の子なんですが」
「あー、一夏は前から入るのが分かっていただが、そこに予想外の二人目が入ってきて、なんやかんやで予想外の俺と色々と事情があるその子が同室になった訳ですね?」
「はい・・・なんか、ごめんなさい。でも、悪い子じゃないと思うので」
「まぁ、大丈夫だと思いますよ。それで、一体その子はいつ来るんですか?」
「えっと、確か来週になると思いますよ」
一週間後か。丁度、あの金髪ドリルとのクラス代表戦が終わったあとぐらいになってくるのか。
なら、それぐらいなら気を張らずにもう少しゆっくり過ごすとするか。
「あっ、そういえば俺はオルコットさんとの戦いは訓練機使うんですか?一夏には専用機があって」
そう言うとあからさまに山田先生は顔色を悪くする。
「あ・・・えっとですね。一応、ないこともないんですが・・・その・・あの・・・えっと・・・・」
「山田先生。大丈夫ですよ。どれだけ一夏と待遇が違っても何も不平不満は言いませんから」
すると、山田先生はパァと明るい表情になり、俺を連れて整備室の方へと歩き出した。IS学園はただえさえ多くの施設があり、途中で迷ってしまいそうになってが、その度に地図を出して何度も確認しながら奥へと進む。
そして、暗闇の中にポツンとある物置小屋の中へと山田先生は入っていった。
「先生、これは?」
奥に布が被さった何がある。大きさ的にはISなのだろうと推測するが、こんなところにホコリを被って・・・おいおい、どうしたんだ。
「これは先月運んできた新しいISのラファールなんですが、どうにもISのなかで唯一女性に反応しないISなんですよ」
「女性に反応しない?」
「はい、もしかしたら男性に反応するかもしれないということで、織斑先生が残していたんですが。これでもし反応を示せばこの機体を森島君の専用機にしようということになっているんです」
「なるほど・・・その場合のバックの企業は何処になるんですか?」
「有澤工業になっています。そこの社長が是非やらせてくれと。特に問題なさそうだったので、学園側としても承諾したんですが。森島君はそれでも大丈夫ですか?」
「有澤工業ですか・・・」
有澤工業。日本でそこそこ有名なIS企業であり、一夏の専用機を担当したいと願い出たのだが、元々倉持技研の白式が一夏の専用機となったので俺の方に来たのか。
「別にこのラファールでもなくても、有澤工業の機体も使えることになりますが、どうしますか?」
「えっ、ちなみにこいつは今後どうなるんですか?」
「そうですね・・・女性に扱えないISはあって無くても同じようなものなので、もしかしたらコアの初期化。恐らく解体することになっていくんじゃないかと思います」
コアの初期化か。確か、ISって自己進化するんだろ?戦闘経験によって常にコアは進化すると。
なら、初期化は人間でいう人格を消し去って新しく作り直すということになるのではないのか?
それって結構辛いよな。
「分かりました。こいつを使います」
「そうですか。良かったです。これで、この子もコアを初期化しなくて済みそうです」
山田先生も同じことを考えていたらしく、少し安心したそんなような表情になる。
「まぁ、全ては女性に反応しないISが男の俺に反応すればの話なんですがね」
そう言うと先生はクスッと笑いながら布を取り去る。そこには寂しそうなラファールが一機鎮座している。
俺は優しくこいつに触った。
「あれが・・・あいつの専用機か」
「データ通りだ。どうやら一夏のISには近接ブレードが一本。セオリー通りなら砲撃戦を避けて近接戦を仕掛けるところなのだが、恐らくそれはフェイクだ。一度、相手を接近させておいてこちらが不利と見せかけておいて何か有効打撃を考えているに違いない」
「お、おお・・そうなのか?」
「俺の推測だがな」
金髪ドリルが乗る青いISを確認しながら一夏の呟きにブルー・ティアーズの戦略を考える。
「だが、あいつが接近を許してからのことを考えていない訳がない。十分に気をつけろ」
「ああ、分かった」
そこまで話すと俺は一夏から離れる。だって、後ろに箒ちゃんがウズウズしながら待機しているんだもの。
さてと、俺は高みの見物といきますか。
そうして一夏VSセシリア・オルコットの決闘が始まった。
まぁ、傍観者の俺から言えば。会えて言おう。馬鹿であると。あの野郎、だから奴には隠し玉を持っていると言ったのに・・・まぁ、機体のおかげで助かったが。
だが、それでも機体性能を理解しなかった一夏の負け。当然の結果か。
一夏はガーンと明らかに落ち込んだ状態で戻ってくる。それを横目で俺は自身の準備を始める。
「こい・・・」
俺の体が紅いボディに包まれる。基本型はラファールである。色々と俺がカスタムしていいことになっており、有澤工業に装備の申請をすれば有澤製でならオーケーらしい。
今は時間がなかったのでただのラファールを紅いペイントしただけになっている。
「さてと・・・おい、一夏。いつまで落ち込んでいるつもりなんだ?」
「いや・・・だってよぉ。なんか、自分が情けなくて」
「・・・まぁ、いいけどよ。俺だってIS稼働時間がお前と一緒のようなものだ」
「そうなのか?なんか、色々と戦術的なことに慣れてそうな感じがしたんだが」
「そうか?俺は勝つためにならどうすればいいかと考えたとき、自然とそうなっただけなんだがな」
俺は機体をカタパルトに設置する。
「さぁ、そろそろ時間だ」
「おう、勝ってこい!男の意地を見せてやれ!」
「はっ、了解だ!」
誰が・・・誰が巨乳などに負けるものか!
勢いよくアリーナに飛び出す。既に向こうは戦闘態勢に入っており、遥か上空に待機していた。
『次のお相手はあなたでしたね・・・いきますわ!』
上空からレーザーの雨が降ってきた。ラファールは白式、打鉄のように近接戦闘ではなく高機動砲撃戦闘を前提に設計してある。
近接武器もナイフだけと心ともない。
「くっ!」
肩に一撃受けて大きくよろける。
流石にスターライトのエネルギーの出力は高いな。あんなものをまともに受けていては数発でお陀仏だ。
それにラファールは受けるよりかは避けるのに適している!
ビットが四基こちらに飛んで来る。一撃はレーザーライフルほど重くはなさそうだが、多方向からの同時射撃は厄介だな。
背中に一撃受ける。
「ちっ・・・そういや、ビットを操作している間は本体は動けないんだっけ?」
見ればブルー・ティアーズは撃ってくださいと言わんばかりに動きが鈍くなっていた。だが、まだ攻撃に移るのは速い。
こちとらお前と違ってかなり稼働時間は少ないんだ。ISの操作自体俺にとっては困難であって!
「ぬぉぉぉぉぉぉぉっ!」
俺はビット攻撃を情けなく避け続ける。それが例え無様であったとしてもこれがISへ対する慣れを生んでくれる。
慣れさえすればこっちのものだ!
戦闘開始から三十分後。
『三十分・・・まぁ、男にしては持ちこたえた方だと思いますわね』
そんな感じに余裕な笑みを作る。対する俺はぜいぜいと息を切らしながら攻撃を避け続けていた。
「くそ・・・まぁ、それでも割とISには慣れてきた」
いけるか?
『さぁ、美しく散りなさい!』
四基のビットがこちらに向かって来る。直ぐにアサルトライフルを展開してビットを一基落とす。同時に正面から二撃受けてしまう。
くそ、もっと速くだ。速く動け!
「ファイヤッ!」
二基目を撃墜するも、更に一撃受ける。
ダメダメだ。
もっと、もっと速く!速く動け!
全神経を速さに集中させ、更に加速し続けた。そうしていくうちに奴の射撃が当たらなくなった。
『っ!なんですの、速すぎて!』
速いと言っても超高速戦闘ほどでもないだろう。集中していけばついてこれるのは間違いない。
ラファール自体のエネルギーをPICに回しているので、その分動きにキレがある。初心者の俺が速さだけで上回ろうと思うなら、PIC自体をもっと過敏にしてやればいい。
だが、同時にラファールの防御は薄いし、武器もそんなに持っていない。
アリーナではそんな光景を見て誰かが口を開いた。
「ラファールって凄い動けるんだね・・・なんか、赤い彗星みたい」
赤い彗星・・・分かる人には分かると思います。