貧乳に愛を込めて   作:青野

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第31話 事後処理

 

 

 その後、旅館に帰ってきた俺たちは織斑先生からの熱い説教を受けたが、反省文程度済んだのも先生なりの配慮と感謝の形なのだろうと想い、皆その言葉を黙って聞いた。

 

 予定通りであればIS訓練が今日行われるはずだったのだが、状況が状況だったので取り敢えず全員待機というなのダラダラ遊びが開始された。

 

 が、専用機持ちたちはかなり疲労困憊だったので、皆それぞれ温泉でゆっくりと疲れを癒し、横になっていた。

 

 そこに例外はなく、俺は一夏の部屋にて布団を借りて寝転がっていた。

 

「いやぁ、ホントにどうなるかと思ったぜ。けど、最後は千早がトドメを刺してくれて安心したぜ」

 

「ああ、全くもってその通りだな。一夏があんなところで油断しなければ無駄な傷を負うこともなかったのにな」

 

「悪い悪い。許してくれ、今度飯奢るから」

 

「スイーツのコースで頼む」

 

「スイーツのコースって、どんなのだよ」

 

「お前、んなもん俺が知っている訳がないだろうが」

 

「知らねーのかよ!」

 

 と、そんなやり取りを俺たちは続けていた。まぁ、一日俺と一夏はずっと寝ていたので、夕方となる今はそれほど疲れている訳ではなかった。

 が、それでもやはり専用機持ちたちであろうか。

 俺たちとは違って午前の間に体を癒し、午後にはクラスメイトたちと談笑していたと先ほど先生から話を聞いた。

 

「あっ、そう言えばこの後箒と約束があるんだった」

 

「箒と?」

 

 時計を見た一夏は思い出したかのようにそう言った。立ち上がりゴソゴソと準備した後、部屋を出る。

 

「じゃぁ、また後でな」

 

「りょーかいだ」

 

 一夏の背中が消え、俺は不意に天井を見上げた。「ふぅ・・・」と、口から浅い溜息が出る。先ほどまで寝ていていたというのに再び睡魔が俺を襲い始めた。

 

 もう、いいや。寝よ・・・。

 

 そう想い、全てを睡魔に任せようとした瞬間、急に携帯端末が鳴った。ラウラからであった。

 

「ん?ラウラか、どした?」

 

『あっ、千早か。私だ。そのだな、少し外に出て話をしないか?』

 

「おっ、いいね。俺もラウラと話したかったんだ。もう外か?」

 

『ああ、ビーチにいる』

 

「分かった。直ぐに行くよ」

 

 その会話にバッチリと目が覚めた俺は再び浴衣をしっかり着直し、ゆったりした歩調で外に向かった。すると、玄関で織斑先生と出会う。

 恐らく、ついさっきまで誰かと外で話していたのだろうか。

 

「ああ、森島か」

 

「どうも、先生。ちょっと、夜風を浴びてきますね」

 

「そうか。あまり遅くならないようにな」

 

「はい」

 

 すれ違い、俺は玄関で下駄を履いた。

 

「なぁ、千早」

 

「なんですか?」

 

 旅館から出ようとした時、何故か織斑先生に呼び止められた。

 

「お前には今回の件で色々と世話になった。おかげで一人も欠けることがなかった。感謝している」

 

「いえ、俺は俺のやるべきことを果たしたまでです。例え、これがあの篠ノ之博士が作り出した状況だとしても」

 

「知っていたか」

 

「確証はありませんけどね。福音を無効化した後、セカンド・シフト状態のこいつでスキャンモードに切り替え、福音にアクセスしたんですよ」

 

「そんなことが今のお前のISには」

 

 ISはその存在自体が強力な兵器なので、そんじょそこらの電子防壁が組み込まれている訳ではない。それこそ、上級プログラウマー、俗に言うウィザードたちが集まって何ヶ月も作り上げるものである。

 そのISが軍部のものとなれば相当なものであろう。

 

「可能です。スキャンモード時で尚且つ直接アクセスした場合なんてISの電子防壁なんて紙くずと同然ですからね。兎に角、アクセスしたら、福音は暴走はしておらず、何者かに植えつけられたAIによって操作されていました」

 

「・・・・・・・」

 

 織斑先生は黙って俺の話を聞く。

 

「そして、そのAIを植え付ける時にハッキングしたパターンと、以前学園が襲撃された際にセキュリティをハッキングした時のパターンが酷似していたんですよ。こんな芸当が出来るの、博士しかいませんよね?独断で第四世代機なんて代物を作っちゃって、そしてそれを実の妹に譲渡する。それで、華々しい専用機持ちデビュー、なんてやりたかったんでしょうね」

 

 確証はない。証拠もない。だが、一連の事件を鑑みるにこれが俺の中で一番筋が通っている話なのだ。仮設でありながらも実証することが出来ないのが痛いが、もう今更どうでもよくなってきたのが本音である。

 

「まぁ、今となっちゃ別にどうでもいい話ですがね」

 

「お前は・・・」

 

「織斑先生。もし、これも博士の筋書き通りのシナリオであったなら、この世界に人間の意思なんてものは何処にもありませんよ。まぁ、こうやっている今こそ、まだ平和と言える証ですがね。本当に可哀想なのは博士の手の上で踊っている人間ではなく、博士自身なのかもしれません」

 

「・・・・・・」

 

「だからと言って、他人を傷つけることを正当化するのは、俺は間違っていると思います。長くなりました、それじゃぁ俺はラウラと約束があるんで。失礼します」

 

 俺は旅館から出て、玄関の扉をガラガラとしまう。すると、また織斑先生が俺を呼び止めた。

 

「そうだ、森島」

 

「なんですか?」

 

「ラウラをよろしくな。あいつは不器用で、人と接するのが下手でな」

 

 また、先ほどの話をされるのかと思ったら今度はラウラの話をされた。今から俺がラウラと出会うのを思って、言ってくれているのだろうか。

 まぁ、俺よりかは長い間時間を過ごしたのだから、割とラウラのことはお気に入りなのかもしれない。

 

「それくらい、知っていますよ」

 

「そうか、ならいいんだ。あいつには家族はいないんだ。軍の中でも割と孤立していてな。それでも、私が鍛えたら自然と人が寄り付くようになったが、今にして思えば周囲はラウラではなく、あいつの強さに惹かれた。だが、お前は違う。ラウラ自身と相対し正面から話し合った仲だ」

 

「・・・・・・・」

 

「私はあいつの家族になれなかった。だから、あれだけ私に固執していたのかもしれん。今になっては無意味な考えだがな。あいつは私を卒業し、自分の足でこれから歩むことになるだろう。もし、あいつがくじけそうになった時、どうか支えてやってくれないか?」

 

「それは、教師として?それとも、教官として?」

 

「どちらも違うな。あれだけお前たちに言って来たが、私にはお前たちの進む道に何かを言う権利も権限もない。だから、これは私個人としての、たった一つの願望に過ぎない」

 

 IS学園の教師としてではなく、ドイツ軍の教官としてでもなく、たった一人の人間としての願いを先生は俺に言った。

 

『彼女の支えになってくれないか』と。

 

 その願望について俺は数秒間頭の中でじっくりとこねくりまわした結果、俺は言った。

 

「答えるだけ、意味のないものですね。そんなこと、当たり前のことじゃないですが」

 

「森島・・・」

 

「俺は運命っていう言葉は嫌いです。だから、これは偶然でも、必然でもない。俺が選んだ選択なんです。どんな流れでもない」

 

 俺は真っ直ぐに織斑先生にそう伝えた。

 先生はその俺の言葉に答えた。

 

「なるほど、それがお前なりの答えか。そろそろ行け、森島。お前が成したことが何を生むのか。見たくなってきたさ」

 

「なら、最後まで見届けてください。この先、何が起こるか。ではでは~」

 

 そう言いながら俺は閉めた。その向こうにいる織斑先生の表情はそれなりと、笑っていたような気がした。

 

 外に出ると心地の良い夜風が体を包む。

 空を見上げればキラキラと輝く星が見えた。流石は夏と言ったところか。星の見え方は抜群である。

 

 さてと、それじゃぁちょっと行ってきますか。

 

 心を整理し直した俺は夜空の下で待っているはずのある銀髪の少女の元へとゆっくりと歩き出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回もよろしくお願いします!
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