「一夏、鈴音のIS。甲龍はお前と同じ近接格闘を主体としたISだ」
ピットで一夏と敵情報を確認していた。
鈴音を応援するという決意は揺らぐことはないが、一夏もまた応援せねばならん。やはり公平にするならそうした方がいいと思うから。
まぁ、その分一夏の白式の情報も少しは鈴音にリークしたんだがな。
「特に注意しなければならないのは龍砲と呼ばれる衝撃砲だ。こいつは空間自体に圧力をかけて砲身を作り、衝撃を砲弾として撃つことが出来る」
「ふむ、近接だけではなく中距離射撃も注意しろということか」
「ああ。だが、砲身だけでなく、砲弾も見えないのがめんどくさいな。それと、龍砲には拡散衝撃砲と貫通衝撃砲と二つの種類がある。つまり、連射と貫通の二つがあるということだな」
「了解した」
「だが、油断するな。甲龍は何も龍砲だけでなく、近接も出来るということを」
「分かった。じゃぁ、そろそろ行ってくる」
そう言って一夏はカタパルトにセッティングする。
「あっ、一夏」
「ん?」
「まぁ、その鈴音も色々とあると思う。たまには会話で相手の思いを汲み取るのも、必要じゃないか」
「・・・そうか。そうだな。千早、ありがとう。これが終わったらちゃんと鈴音と話してみるよ」
ニコッと一夏が笑うと彼はアリーナに向かって勢いよく飛び出した。それを見送ると、俺は今後の戦いを見るべくゆっくりと観客席に向かった。
「あー、ちー君おかえり~」
観客席に戻ると布仏、鷹月、相川が三人一緒に座っていた。この三人がセットで見るのはなんというか初めてなのだが、相川さんの胸を見た。
「くっ・・・」
分からない。小さいと言えば小さいのだが、鈴音ほどでもないだろう。むしろ、少しぐらい大きいと言えるかもしれん。
確かに貧乳というクラスには入るのだろうが・・・くっ!
俺は一番手前にいた布仏の横に腰を下ろして一夏たちを見る。何か二人は話しているようでそれまでは聞こえてこないが、話が終わったようで二人は武器を展開して構える。
ブザー音とともにクラス対抗戦が始まった。
試合は最初から激戦が繰り広げられていた。一夏の持つ雪片弐型と鈴音の持つ双天月下が激しく弾き合う。
一夏へ対する感情が抑えきれないのか、鈴音は敵意丸出しで一夏へ攻撃する。が、そこに衝動的、直情的な攻撃ではなく、しっかりとその一撃一撃を一夏を追い詰める一撃へとぶち込む。
と、次の瞬間甲龍から衝撃弾が発射されて白式に直撃する。体制を崩した一夏は地面にそのまま衝突した。
更にそれを追撃するように衝撃砲の嵐が一夏を襲う。
「あわわわ、どうしよう、おりむーがやられるよ。ちー君」
「まぁ・・・うん。あんだけ油断しろと言ったんだが、本人にとってはすげー難しいんだろうな」
「ふぅん・・・」
「だけど・・・一夏にはまだ秘策があるからな」
「秘策?」
「まぁ、見てろって」
突然一夏の動きが変わった。常に鈴音の射線から外れようと死角へと移動する。まだギコチない部分もあるが、少しその動きに戸惑う鈴音がついてこれていない。
そう、一夏は瞬時加速を使おうとしているのだ。更に零落白夜を使えば勝てない試合ではない。と、俺は判断した。
これで一撃決まれば。
と、一夏が瞬時加速を使おうとしたその瞬間、アリーナ上空のシールドを破壊して高熱源体が一夏たちの目の前に衝突した。
同時に防犯システムが作動して観客席がシャッターで閉じる。
「っ!」
更にシステムがダウンしたのか光が赤に変わって予備電源に切り替わる。観客席は突如、混乱と悲鳴が支配したが、流石はIS学園の生徒と言えるだろうか。
状況を確認したら直ぐに脱出口へと走り出した。
「いてっ」
「おい、布仏、大丈夫か?」
ドタバタによってこけてしまった布仏を起こして、鷹月、相川と一緒に俺たちも一時避難する為にドアへと向かうのだが、どうにも多くの生徒たちが扉の前で立ち止まって扉を叩いている。
「どうした!」
俺がそう聞くと生徒の一人が言った。
「森島君!どうやらさっきの衝撃で扉のロックが外れないの!」
「なっ!」
おいおい、ここは天下のIS学園だぞ?システムが乗っ取られるなんてありえることなのかよ。
そう思っていると何人かの生徒がPCから伸ばしたケーブルを扉に接続して何とか扉のロックを外そうとしているのだが、生徒程度に遅れを取るような作りにはなっていないだろう。
「あー・・・」
メインで操作している生徒も周りが混乱状態だったり、急かしてきたりなど集中出来ていないと見える。
どうしたものか。シャッターの向こうではどうせ一夏たちが時間稼ぎとかいって粘っているに違いない。
なんやかんやで倒してくれるに違いない。
観客席は脱出できないことから生まれる恐怖や混乱が満ちていた。
「いかなる不足の事態でも、己を見失うことは死と同義である」
落ち着け。俺。冷静に、クールにだ。落ち着いてやれば問題ない。
今一度俺は気合を入れるとPCを弄っている生徒の後ろに近づき、横から入ってきた。
「え!?森島君!」
生徒は驚いているが、俺は気にせずキーボードを打つ。
「悪いが、ちょっと俺にもやらせてもらうぞ」
「けど、一応は学園の警備システムだから、正直かなり難しいと思うの。こんな高校生がやれるとは・・・・」
そんなことを聞きながら俺はキーボードをカタカタと打つ。
よし、取り合えずシステムに侵入。あー、システムを乗っ取るまでに二十秒もかかっていない。どんだけ頭がいいんだよ。
いや、頭がいいだけではない。敵は恐らく最初からIS学園の警備システム自体の構造を把握していたのだろう。だから、こんなにも簡単に侵入を許した。
だがな、こちらとしても黙ってこのままって訳にもいかないんだよね。
そう思いながら、俺は再びキーボートに手を滑らせる。
「凄い・・・・」
そんな風に誰かが後ろで呟いた。それは周囲に広がっていき、落ち着きを取り戻しつつあった。
更に俺が集中しやすいように静かになる。
カタカタ・・・
たった数分であったが、俺にとっては長時間に感じた。全てのシステムを相手の手から取り返した。
ってのもどうも相手が途中から手を抜いてくれたらしく、簡単に取り返すことが出来た。
悔しいな・・・。
扉が開き、次々と生徒たちが解放されていく。そのうちの何人かは途中俺にお礼を言ったりしたりなど、悪い風には感じなかった。
最後の一人を見守ると俺は状況を確認する為に織斑先生たちの元へと走り出した。
と、その時だった。
ピットへ繋がる道を箒が走っていくのを確認したのだ。ピットには一機もISはないし、箒自身が専用機をもっているなど聞いたことなどない。
「あいつ・・・絶対しょうもないこと考えているだろ」
俺は気になってピットに出る箒の後について行った。
ピットから見えた一夏&鈴音VS黒いISはかなり激しく戦闘を繰り広げていたが、一夏がどうやら何か必殺技でも使うらしく、その為の準備をしていた。
が、
「一夏!そんなものぐらいに勝てなくてどうする!!!」
箒がそう言った。同時に一夏たちへ向けていた戦意がその場に現れた箒へと切り替わる。
腕部に搭載されているビームキャノンが箒の方に向いた。
「バカ野郎が!」
同時に一夏が前に飛び出すがそれでも放たれたビームは一直線に箒へと向かっていく。仮にここで一夏があのISを倒したとしても確実に箒は死ぬ。
ぬぉぉぉぉぉぉぉっ!
俺は走りながらラファールを展開して箒を回転しながら抱きしめる。ビームが背中に直撃し、背部ユニットが破壊され、破損部品が背中に突き刺さる。
「がぁぁぁっ!」
が・・つっ・・なんだって・・・・んだよ。
激しい爆発音とともに黒いISが爆散する。同時に俺は激痛によってその意識をブラックアウトした。
『くだらん、剣道に一体なんの意味があると言うのだ』
『勉強をしろ。勉強を。いい学校、そこにいけばいい。お前がするのはそれだけだ』
『女尊男卑の世界で生きていくには女より頭がよければいい』
『お前の父親もバカだ。剣道なんぞにうつつをのかして・・・』
もう一生会うことのない祖父の言葉がフラッシュバックする。七年。七年も苦しめられた。
ひたすら勉強のみを俺にさせた。大好きだった剣道もやめさせられた。
ただ祖父の言うとおり、勉強した。ずっと、ずっと・・・おかげか、俺の成績は常に学園トップ。めんどくさそうなISの勉強もした。特に情報の勉強については力を入れていた。
『さすれば、お前はなんでも出来る』
皮肉だ。
嫌いな勉強をしていたおかげで今の俺は上手くやれている。授業にも難なくついていけている。
だからこそ、剣道は影でひっそりとやるしかなかった。我流でひたすら振ることしかなかった。そこに剣技というものは存在せず、ただの体力作りと強要される毎日の勉強に対するストレス発散に過ぎなかった。
八つ当たりともいえる。
そんな苦い過去を持つ俺だがISを動かせるとなれば俺は何か変わるんじゃないか。だが、IS学園に来ても俺は大して変わらなかった。
相変わらずのその性格を活かして周囲と馴染み、殆ど強制的に入れられた知識でなんとか頑張ってきた。
この頭だけがこの学園で生きていける俺の唯一の拠り所であった。
幾ら考えようとも、知識を振り絞ろうとも、やはり一夏という天才に俺は勝つことは出来なかった。
それでも、俺は・・・・・・。
「くだんらん剣道か・・・」
男が力を持つことの何が悪いのか、今でも俺は分からない。それに、手にした以上は全てをかけてその責任と責務を果たす。
誰かを守れるぐらい強くなりたい。
あー、おっぱい揉みたい。よし、くよくよする俺ではダメだな。もっとしっかりしろ!
目を覚ませば独特な雰囲気が支配する保健室であった。夕日のオレンジの光が差し込んできて、まぁまぁ気持いい。
「あ・・・眠い。いっか、このまま寝よう」
そう思って俺は再び重くなった瞼を閉じた。その後、箒が謝りに来た。あまりにも軽率な行動を取ってしまった。すまない。と。
箒自身も無茶苦茶怒られたそうだったので、俺からは特に何も言うことはなかった。
それと余談になるのだが、鈴音がやってきてニカッと笑った。やはり彼女には元気な笑顔が一番と再度確信した。
へへ・・・ついに来てやったぜ
次回は主人公の変態?になります