クラス対抗戦が中止になって数日後。俺は久しぶりの休日を利用して有澤工業にやってきていた。
大きなビルを一度見上げ、ビル内部に入る。一応アポを取っているので受付から進み、客間に入る。
少しして一人の女性が入ってきた。
「初めましてになるかな?私がこの有澤工業の社長をしている第四十三代社長、有澤未羽です」
気品と自慢に満ちた女性であり、大人のオーラというものを感じる。黒髪ショートカットであり、なんとなくだが織斑先生に似ている雰囲気を感じる。
有澤工業。日系の重工業系総合企業。軍用の車両や炸薬に専門性を発揮し、ISが出てからはリリースするパーツは全て堅牢である。つまり、火力重視の企業に変わった。
有澤工業とは他に有澤重工と呼ばれる時もある。
この有澤未羽自身も高いIS適正がある為、パイロットとしても非常に優秀であると俺は聞いている。というか調べた。
「はい、自分は二人目のIS操縦者の森島千早といいます」
「うん、写真で見るよりも生の方がカッコイイね。それで、早速仕事の話になるんだけど」
そう言って彼女は俺が装備しているラファールの機体データの資料を見せてきた。
「君の言うラファールによる長期戦闘。おもしろいね。特に君がやった装備の一部を外して拡張領域を大きくしたのはいいアイデアね。防御は通常のラファールに劣るけど、これで武器だけでもかなりの数が収納出来るわ」
「はい、そうなんですが」
「うん、大丈夫。その拡張領域を武器にまわすんじゃなくて、補助スラスターとこの七四式長刀を装備することだよね?」
「ええ、七四式は基本的に両手持ちの長刀。打鉄の近接ブレードより少しだけ重心位置が手元にあるので、打撃力不足は補えませんが、それでもこの長刀は最も連撃に適した武器だと思うんですよ」
「なるほどね。けど、武器を多くしちゃえば別に長刀じゃなくても、長期戦闘は可能だと思うけど?」
「確かにそうですが、やはり決定力不足だと思うんですよ。こいつの近接武器はショートナイフだけなんで、パイルバンカーとか使おうかと思ったんですが、流石にパイルは無理そうだったので」
「パイルバンカーね・・・分かったわ。パイロットの意見はちゃんと聞かないと。会社の方針は火力だのみのゴリ推しだから、こういうのは少し新鮮でいいわね」
そう言って有澤未羽は色々とメモして立ち上がった。
「それじゃぁ、こんなもんかな。ちょっと、開発部によって色々と意見を聞くといいよ」
「分かりました。そっちにも顔出してきます」
ペコリと頭を下げて俺は開発部に顔を出した。
ラファール・リヴァイヴ・ロート
所属企業が有澤工業であるが、パイロットの意見を取り入れて長期戦闘を主目的と置いた装備になっている。
装備の一部を外して拡張領域を拡大している為、通常のラファールよりかは防御は少し低い。それを補う為にかの有名なフランスのカスタムⅡは盾を装備しているが、ロートの場合は補助スラスターを背部ユニットに装備してあり、その分ジェネレーターの出力とフレームが強化されている。
更にロートには高い情報収集機器であるバルザムを搭載しており、相手の展開している武装や情報を入手する偵察としても高い能力を持っている。が、スキャンモード中はFCSが機能せず、戦うことが出来ない。
ラファールは凡庸性、万能性、といった使いやすさを基本に置いているが、ロートは高い機動力の代わりに高度な操作技術が求められる。
特に七四式近接戦闘長刀はもともと打鉄の近接武器として日本政府がライセンス生産が開始したのだが、倉持技研が持ち出した近接ブレードの葵が採用され、七四式はその後破棄された。
そもそも、七四式は示現流を参考したものであり、初太刀から勝負の全てを掛けて斬りつける先手必勝の鋭い斬撃が特徴的である。『一の太刀を疑わず』『二の太刀要らず』とも言われているが、実際には初撃からの連続技が必須である。
だからこそ取り扱いが難しく、政府内でも製作時に意見が分かれた。
作ったのは武家の煌武院家であり、破棄されたにも関わらず斯衛軍専用IS、武御雷に正式採用されている。
IS専用近接ブレード、葵は正直に言えば刀をただ一回り大きくしただけに過ぎないものであるが、七四式は少し違い、その見た目上重心位置が手元にある。その為、葵よりも斬り返し、連撃性、耐久値においては引けを取らない。
Σ(-ω-*)フム
こんなものか。設計上は無理なこともないし、それにしても剣技か。難しいものだな。かの有名な織斑先生もかなりの使い手だと聞いている。今度、ちょっと聞いてみるのもいいな。
そんな感じにラファール・リヴァイヴ・ロートの基本運用は決まった。
寮に帰ってくると偶然山田先生と部屋の前で遭遇した。
「あっ、森島君。今帰りですか?」
「はい、丁度、有澤工業に顔を出してきたんですよ。こいつの基本運用が決まったんで、その話し合いですかね」
「へぇ、そうなんですか。私としてもラファールはとても愛着があるISなので、どんな風に変わっていくのかとても楽しみですっ」
「まぁ、ご期待に添えるようにはしたいですね。それじゃっ」
そう言って俺は部屋に戻る。が、そこで俺はとある違和感を感じた。鈴音がいない。まぁ、別にいないのはいいんだ。いつもいるとは限った話じゃないからな。
と、違和感は確信へと変わった。
鈴音がいない。荷物も。
は・・・これは一体・・・。
「あー・・・実はですね。お引越しということなんですよ」
そういう感じに山田先生が俺にそう言った。
お引越し?
「部屋の調整もちゃんとできたので」
「あー・・・はい」
分かってましたよ。うん。いつかこうなるとは。いや、けどさ。せめて、せめて別れの言葉ぐらいいってったらいいのに!
「それじゃぁ、俺は一夏と同じ部屋に?」
「あー、実は今度は転校生が二人いまして、織斑君はその子と同じなんですよ」
「はぁ・・・」
二人?いや、別に俺と一夏が一緒になれば別に済んでしまう話ではなくて?
「今言う訳にはいかないですよ。色々と事情が事情でして、けど明日には転校生が来るので、森島君はそのうちの一人と同じ部屋になることになります」
「もう一人ね・・・まぁ、誰もでいいけど」
悪い奴じゃなきゃね?
その後、軽く山田先生と雑談をしてその日はさっさと眠ってしまった。廊下では箒の怒った声が聞こえたのだが、それは幻聴だろう。
次の朝、俺は速く起きて整備室にいた。折角、ラファールの運用が決まったのだ。弄りたいに決まっている。
早速ラファールを展開してPCケーブルを接続して、機体情報を確認した。
うん、これなら白式よりか速く動ける。瞬時加速とか流石に厄介だから、あとは俺の反射能力によるか。
判断はオートじゃないからな。そこら辺は全てパイロットの俺か。
「さてと・・・取り敢えずはこんなもんか。武装の確認は放課後にでもするか」
そう思って俺は整備室から出る。と、角で女子生徒とブツかってしまった。朝のこの時間にまさか整備室にくる奴なんていないだろうと思って油断していた俺も悪いのだが。
俺は起き上がろうとした女子生徒に手を出した。が、女子生徒はいらんと言わんばかりそのまま立ち上がる。
水色の髪、ショートカット。タレ目でおっとりとしており、メガネをかけている。そして、ナイスな貧乳である。大きくなく、中くらいでもない・
俺が胸を凝視していると、女子生徒はそれに反応して自らの体を抱いて数歩後ずさる。
「っと、悪い悪い。初対面のレディの胸を凝視するものではないな」
おっと、反省反省(。・ ω<)ゞ
「別に・・・いい・・・」
「そう・・・か。まぁ、前見てない俺も悪かった。そういや、あんたも朝から整備室とは熱心だな?」
というと彼女はボソッと。
「簪・・・・」
「?」
「更識簪・・・」
「ああ、名前ね。簪だな。よし、覚えた」
ナイスなペチャパイだ。
すると、彼女は俺の首にある待機中のISを見た。
「ああ、こいつは俺の専用機だ。見るか?」
「いいの?」
「ひん・・・まぁ、いいぞ」
俺は簪にラファールの機体情報を見せた。
「あ・・・凄い考えられた作りになってる。これ、一人で考えたの?」
「まぁ、ラファールの基本運用は確かに自分で考えたが、他の人に色々と相談には乗ってもらったな」
「そう・・・」
そう言うと彼女は何故だか少し落ち込んだような表情になる。今の発言に対して何か思い当たることでもあるのだろう。
だが、敢えて聞かない。それが紳士だから!
そう、俺は貧乳好きである前に紳士だ!それを忘れてはならない!
「ありがとう、参考になった」
「どういたしまして。何かあれば言ってくれ」
「うん・・・それじゃぁ」
そう言って簪は歩いて行った。
ふむ、素敵な貧乳であった。ああ、今日は何か素晴らしいことでもあるのじゃないかなぁ。
そう思いながらルンルンと廊下を歩いていると、正面から何やら一人の生徒が歩いてきた。
なんだよ、朝から整備室は人気だな。やばいわ。尊敬するわ。
と、その生徒は俺の前までやってくると仁王立ちで止まった。
「・・・・・・・・あ、すみません」
そう言って俺は仁王立ちの生徒を避けて俺は歩き出した。
数秒してから
「えっ!?」
と、ダッシュで俺の前に戻ってきて先ほどと同じようなポーズを取る。しっかり見れば片手に生徒会長と書かれた扇を持っているではないか。
なるほど、この人は生徒会長なのか。なんて自己主張が激しい人なんだろう。
「なんか俺に用事ですか?」
「まぁ、別に用事という訳でもないけど、今さっきの子と何を話していたのかと」
「さっき?ああ、簪のことか」
「か、簪?」
と、会長の頭の怒りのマークが出現した。
ふむ、なるほど。よく見れば簪と似ている部分はある。髪の色とか・・・ごめん、他には特にない。
だが、確か生徒会長の名前って更識楯無だったよな?
あー、更識で、姉妹ということか。
「あー、更識楯無会長さんでしたか。妹さん、素敵な胸の持ち主ですね!」
「えっ!まさか、堂々と変態をカミングアウトするなんて」
「失礼ですね。俺は正直な感想を言っただけですよ」
「正直って、あなたあの子のことをいやらしい目で見ていたんでしょ!」
「はいっ!見ていました!」
「堂々すぎる!だったら、今あなたをここで粛清しないと」
あー、分かった。この人、シスコン変態野郎なのか。
だが、強い。全身からなんか強い奴が発してきているオーラ的なものを感じるから。
ていうか、そろそろ鐘鳴るから教室戻りたいんだけど。
「ふっ、粛清ですか。巨乳のあなたに出来ますか?」
「なっ!?」
何か恥ずかしかったのか、彼女は胸を隠しながら後退する。
「残念。俺は何を隠そう貧乳が好きだ!つまり、巨乳のあんたには万が一にも俺に勝てる要素は一つもない」
「なっ・・・しまった。そんな、私の巨乳がこんな時に・・・」
会長はそのまま地面に膝をつく。
わー、すごーい。この人超おもしろいんですけど。
「だけど、私は負けない!あの子のためにも・・・私は負けられない!」
「バカな・・・俺の言葉を聴いてなお立ち上がるだと!」
彼女の行動に驚愕しながらも俺は一旦足を引いた。
「さぁ!受けなさい!必殺!『キーンコーンカーン「あっ、やべ。鐘だ」』え?あっ、ちょっと!待ちなさいよ!まだ終わってない!」
そんな風に言う会長の言葉に俺は一旦立ち止まって振り向いた。その行動に少し安心感を持ったのか、彼女は穏やかな表情へと変わる。
グッ!
グッドマークを出し、俺は再び走り出した。後ろで「裏切りものーーーー!!」と聞こえたのだが、きっと幻聴だ。
あー、やばい。最近、超幻聴聞こえるじゃん。
「ということで、今日は転校生を紹介したいと思います」
一体何がということなのかサッパリ分からないが、ギリギリ間に合ったSHRにて山田先生はそんなことを言った。
さて、一体何故このような時期に転校なのだろうかと疑問に思うが、入学するのにも遅れて来る者がいるのだから別に何も気にすることでもないな。
そう思考し始めた頭を切り替えて入ってきた転校生を確認した。
第一話に続く
く、くそぉ、いけなかった・・・だが、次回こそ!
次回こそラウラだすぜぇぇぇぇぇぇぇ!!!
(;゚д゚)ゴクリ…