結論から言おう……ぼろ負けだった。俺は最初にいた暗い洞窟ではなく、神聖感漂う真っ白な建物の中にいた。そこには綺麗にカッティングされた宝石?が、ふよふよ浮かんでいた。
「おー、さっきとは打って変わってなかなか面白そうな場所じゃないか」
さてこの《ブレインバースト》というゲーム、綸から聞いた話によると対戦格闘ゲームらしいのだが、それも現実を舞台にした遭遇戦。開発者様は一体なにを考えて……こんなハイテクノロジーの塊である思考の加速なんてものを使ってやることは、何十年も前にすたれきった格ゲーだというのだから驚きだ。
「真下にあるこの水色の矢印の方向にお相手がいるのかー」
矢印はほぼ真下を指しているがどうするか、馬鹿正直に階段を下りて行っても敵に見つかるだけだ。俺は目の前ににある窓ガラスを壊し、外へと飛び出して――落ちた。
「いぃっやっっっゲボ!!」
地面がきれいに整備されているようで、砂埃も上がらず重力の偉大さを実感させられた。目の前にある(おそらくライフゲージ)がそこそこ減少し、空は光沢のある乳白色で浮かんでいる石以外は白で統一された世界だった。
「おお、初めて見るアバターだな」
「シルバーvsゴールドとはいい勝負するんじゃないか」
どこからか声が聞こえてきたと思ったらあちこちに人影が見えた。NPCではなさそうだからおそらくプレイヤーなのだろう、なるほど観戦もできるとはこのゲームなかなか奥が深い。
そうこうしているうちにさっきの建物の入り口から、銀色のアバターが姿を見せた。俺はそいつに距離を詰めようとダッシュで近づいた。何せこのアバター、パンチとキックしか技がないのである。(あと目立つ光のせいで不意打ちもできない)しかしあろうことか、そいつは飛びやがった。後ろにあるフィン?のような物を動かして。
「クリスタルを壊して必殺ゲージも満タン――いきます」
あとはそいつのワンサイドゲーム、俺は何十年前のゲームの配管工に踏まれる栗のごとく上から攻撃を受けまくった。
悔しかった。俺は何を勘違いしていたのだろう、アバターがいくらかっこよかったって勝てなければ意味がない。派手に、楽しく、かっこよくが俺のモットーだが、俺は派手ではあったかもしれないが楽しくもかっこよくもなかった。後で綸から聞いた話によると、俺の対戦したアバター《シルバー・クロウ》は、唯一の完全飛行型のアバターとしてつい最近現れた若手のホープらしい。レベル3と素人である俺が勝てる相手ではなかった。
だが俺はあいつに勝ちたい、何に縛られることもなく自由に空を飛ぶあいつに――かっこよかった、うらやましかった。
「だったらおいついてやる」
現実世界に戻った俺はまず、綸からブレインバーストについてのありとあらゆる情報(ステージやアバター、乱数補正など)について聞き、打倒シルバー・クロウ計画を進めた。
まず初めにあのシルバー・クロウの3Dの動きに対抗するため、あるゲームをインストールした。カンフー道場というゲームだ。これはひたすら上から人が降ってきて攻撃を仕掛けてくるゲームなのだが、最初は上級すら危うかったが今では老師級ですら片目でも勝てる。(変な癖がついてそうだがまあ良しとする)これを寝落ちするまでずっと続けた。寝落ちするとあの夢を見る確率がだいぶ下がるので一石二鳥である。
そんなこんなで3日後の12月31日俺はシルバー・クロウに再戦を申し込んだ。何でも病院でイチャイチャしていた太った男子がシルバー・クロウらしい、シルバー・クロウとアッシュ・ローラーはライバル同士でよく対戦するのだが、バスに乗っているとき毎回シルバー・クロウが現れる歩道橋に立ち止っている男子がそいつなのだとか、そしてそいつはほぼ毎日病院に来るらしい。
大晦日という特別な日、恋人と一緒にいたいというのが人の心というものだろう、だがそんなリア充には俺の良い年越しのため犠牲になってもらおう。俺はロビーに例のあいつがいることを確認し、やつから俺が見えない廊下まで移動しシルバー・クロウにリベンジを申し込んだ。
ステージは黄昏、ここはよく燃えすぐ壊れるのが特徴だ。後暗いので隠密には向かない。まずそこらにあった壁を壊し、あいつに向かって投擲する。
シルバー・クロウ対策必殺ゲージがたまる前の攻撃。あいつは必殺ゲージたまらないと空を飛べない、なのでその前に出来るだけ攻撃を叩き込んでおく。接近しパンチ、キックの応酬だが喧嘩慣れしていないのか接近戦では俺の方が有利なようだ。この状況を嫌ったのかシルバー・クロウは突如飛び上がり、建物の外へと。
「ちっっっ」
思わず舌打ちをしてしまう、このまま狭いところで戦ったほうが俺に有利だったのだが先ほどの接近戦は俺の方が分があったがHP的にはレベル差のせいだろうかあまり変わりがない。
外に出た俺はシルバー・クロウの猛攻を受ける最初はカンフー道場のおかげだろうか、攻撃を見切れていたのだが徐々にフェイントなどを入れられゴリゴリHPが削られていく。
「あーあ、もうおしまいか」
「あのアバター見かけだけなんじゃないの?」
ギャラリーは勝負が決してしまったかのような反応を見せている。
いやだ――胸の奥底から湧き出てくる重苦しい感情――いやだいやだいやだいやだいやだ――この感情はすぐる?――何をつかっても二度とあんな思いはイヤダーーーーーーーーー。
その瞬間目の前にウィンドウが現れた。『必殺の対価《コスト ブロウ》を習得しました』
「これで終わりだー」
シルバー・クロウが叫びながら突っ込んでくる。だが俺は自分の何かが削られているような、痛みもなく自分がとかされているような感覚、それに抗うためにおれは思いっきり叫んだ。
「必殺の対価《コスト ブロォォォォウ」
体についていたトゲトゲが十個外れ、右肩に集まりはじけた、そのエネルギーで手がすごいスピードでパンチを繰り出した。突然のことだったのでシルバー・クロウも回避が間に合わず、腹にこぶしが当たった。
シルバー・クロウの七割はあるHPを一撃で戦闘不能まで持っていき【You Win】の文字が表示されていた。
「なんだ、あれは」
「おい――あいつどこのレギオンだ」
「あいつレベル1だろう」
ギャラリーのそんな声を聞きながら俺は現実世界にかえっていった。
「なんですか……さっきの……は」
輪太の病室に来た俺は輪から問い詰められている。
「いやー隠されていた力ってやつ、アッハハハハハ」
「……笑い事じゃない、です……あきらかにゲームのルールを逸脱して……ます」
確かに、レベルが等しいとポテンシャルも等しいというブレインバーストのルールを外れている。もはやチートと言っても過言ではないレベルである。どういうことかとブレインバーストのアイコンをタッチしてみる。
「ナア、リン」
「……どうしたんですか、急に片言になって……」
「タシカクロウのレベル3……で俺にサンジュウポイントハイルンダヨナ」
「そのはず……です……けど」
そこに表示されていたのは、ゴールド・リッチ残BP70の文字だった。
戦闘描写がへたすぎてうんざりする。
計算ミスのようで最後のBP書き換えましたすみませんでした。