第二章 一話 リッチ
皆さんお久しぶり、いつもキラキラ輝く純金リッチこと由良 傑《ゆら スグル》です。さて前回は、シルバー・クロウをKOした後、輪と話をした所でなぜか減っていた。BP《バーストポイント》……。
ハイ、見間違いではなくやはり必殺の対価《コスト・ブロウ》の所為でした。あれから何度も他の相手とも戦い、今では中堅のレベル4までに成長しました。その過程で必殺の対価について俺がわかったことそれは……。
一つ、最低の単位が5(トゲトゲ1個)
二つ、追尾性がない(すごい勢いでこぶしを前に出す)
三つ、体についているトゲトゲが俺のBPの総量である(とても固い)
この三つだろうか、つまり何が言いたいのかというと……非っっっっ常に使い勝手が悪い。勝っても必ずポイントを使ってしまう俺のレベリングは遅々として進まなかった。
辛かった、特に最初のレベル1の時代など思い出したくもない。マジで用心棒《バウンサー》の《アクア・カレント》さんに助けてもらわなかったら早々にゲームオーバーになっていた。回数は五回以上(なぜか、三回目からよそよそしかった)を経て、ようやく波に乗ってきた4月。
春が訪れ桜が満開実に昼寝日和な3-5教室、窓際の席は太陽の光があたり実に暖かそうだ。だが残念ながら由良という名前は廊下側に来るしかなく、夏が来る前に必ずあそこへ行くという早くも席替えに思いをはせている今日この頃。
先ほど始業式で学校のグローバルネットで確認したところ、この学校でバーストリンカーなのは俺だけのようだ。まあ警戒すべきなのは今年になって入ってきた新一年生だけなので(年齢的にも)まず間違いないだろう。ましてここは金持ちが通うエリート高校、ブレインバーストなんていうゲームに現を抜かす奴は俺くらいといったことだろうか。
さて、話は変わるが俺こと由良 スグルは多重人格である。輪太が入院するまでは大体一週間に一回、俺が出てくる位のペースだった。だが輪太が寝込んでからは一週間に二回になり、五回になり、今では二週間に一回あいつが出てくればいい方である。つまり何が言いたいのかというと……。
「おーい由良、春休みの宿題の数学のここわからなかったのだけどここどうやってやるの?」
俺は文系だ。一番得意な科目は英語(それも傑よりちょっとだけ高いというレベル)わかるわけがない、というかベクトルってなに、微分係数の公式とか忘れた。(すぐるは数学がかなり得意)聞きに来られたって困るのだがばれることは避けなければならないので、必死に周りを見回すと担任が運よく数学の伊藤だった。
「伊藤先生にきいたら?」
「いやお前が教えてくれたらいいだろう」
不味いなぜ俺を選ぶ、俺は数学なんか数A時代に挫折したのにだが、しかし何としても数学の話題を避けなければならない。
「錬太郎は数学ピンチだったよねだったらこれはチャンスだ。まだ授業も始まってもいないのにわからない所を聞きにくる生徒、これは確実に内申点にプラスされるね」
「おーうなるほどだったら行ってくるわ」
そういうと錬太郎は先生のもとへ走って行った。だがあいつの宿題ほとんど空白だったのだが、大丈夫なのだろうか。 あ、やっぱり怒られた。
さてバーストリンカーになって一番よかったことはと聞かれたら、おそらくほとんどのバーストリンカーは《加速》と答えるだろう。原理はわからないが《バースト・リンク》と叫ぶだけで思考を一千倍に加速、一秒間を約十七分に加速してしまうのだからその恩恵は計り知れない。
たとえば野球ならボールが止まって見えるだろうし、勉強なら一秒間で16分40秒ぶんの問題を解くことができるのだからはかどること間違いなしだろう。だが俺は違う、俺はこのゲームが心の傷に作用するというのを綸から聞き最近めったに出てこなくなった。傑《すぐる》に何らかの変化が現れると思いこのゲームを始めた。だから……
「加速できなくても全然問題ないんじゃああああああ」
「ふむ、何を言っているのか全然わからないでござる」
俺は今胸に秘めた悲しみを糧に(やつあたりともいう)新宿で対戦しているのだが、あたった相手が悪かった。その相手とは青のレギオン《レオニーズ》所属《ターコイズ・ソード》すらりとしたボディに青緑色の装甲、手にはキラリと輝く刀が握られている。
「やかましい、毎回毎回新宿に来るたんびにお前と対戦してるんだからいい加減うんざりなんだよ」
「そうつれないことを申されるな、此度の勝ち星は拙者がいたただくでござるよ」
その言葉と同時にソードは、俺に向かって一直線に突っ込んできやがった。あいつの色はターコイズ接近の青と防御の緑が混ざった生粋の前衛タイプだ。よって近づかれないように戦うのがセオリーなのだが俺には悲しいことにレベル4になっても遠距離技を習得できなかった。だがこっちだって悪夢のレベル1時代を乗り越えてきたのだ。ステージは《魔都》まるでアメリカのスラムのような景観に辺り一面を濃霧が覆っている。周りにある街灯?には青白い炎が点っておりそれがいっそう不気味さを際立たせる。
「これでもくらえや」
周りにあった石壁を殴るとこぶし大程の煉瓦しか砕けなかったこのステージのオブジェクトは異常に硬いので仕方ないことなのだが俺のアビリティ《リユース》につかうのには不都合だ。このアビリティ二戦目のシルバークロウ戦の時にも使ったが、通常地形オブジェクトには破壊不能かそうでないものに分けられる、破壊可能なものは耐久値が限界を迎えると消えてしまうのだがアビリティ《リユース》は掴んだものの耐久値を全快するというものだ。よって壊したオブジェクトを投げてコストブロウでとどめというのが俺の基本スタイルなのだが、投げた煉瓦がスパスパ斬られれてまったく意味をなしていない。
「もらった」
斬りかかってくるあいつの攻撃を何とかとげにあててしのぐ――この距離では勝ち目はない。そう思った俺は奴の猛攻をしのぐために後ろに跳躍手じかにあった街灯らしきものパンチを繰り出すだが壊れる様子が全くない……仕方ないもったいないが――
「コストブロウ(5)」
街灯を殴り折った俺はそれを両腕でつかみ
「死ねやアアアアアアア」
叩き付けた。
街灯はぽっきりと折れてしまったが奴に大ダメージを与えただろ――
「浮枕《うきまくら》」
足元を揺れて向かってくる斬撃にとっさに後ろに下がるが右足に斬撃が当たる。左足だけでバックステップするもバランスを崩しこけてしまう。
「油断大敵でござる」
あいつはさっきの攻撃を直撃しているはずだがどういうことだ?街灯を見ると折れたと思った切断面がきれいすぎる。こいつ斬りやがったのか……体力バーを確認しても一割ほどしかけずれていない。コストブロウを使ってまで破壊したのに無駄どころか大損である。
「そろそろ本気を出さないと負けてしまうでござるよ
(確かにこのまま対戦すればあいつの勝ちだろう、だがこれ以上の出費は割に合わない。冷静に考えた結果このまま勝負を続けようとした……)成金殿」
この世界には二つ名と呼ばれるものがある。シルバー・クロウなら《銀の鴉》等が有名だが俺の二つ名は、《成金》、高給取りの仕事の従業者、いわゆる勝ち組調べたらこのような言葉が出てきた。数学の問題を必死に解いていた春休み、時折登録していたアバターの観戦を休憩がてら眺めていると周りのアバターが
「宿題おわった?」
「あんなの最終日に加速してチョチョイのチョイで終わらせればいいだろう」
なんて会話を聞きながら涙を飲んでいたこの俺が成金――フザケルナヨ。俺は冷静である。I am calm……冷静に後先考えずつぎ込むだけである。
「上等だゴラァァァァァァァァァァ」
対戦の後涙を流したのは言うまでもないことである。
成長スピード的に二巻介入は厳しいだろうと三巻から介入します。アクア・カレントさんと絡めたかったんだけど……絶対割り込ませてやる。最後までお読みいただきありがとうございました