はい言いわけですね。次回はもうちょっと早くあげれればいいなー(遠い目)
あなたはこんな目覚めをしたことがあるだろうか、なぜか自分が立っていて、後ろの骸骨マスク野郎に手を握られるというものだ。夢と思った人も多いと思うが夢ではなく、かといって現実でもない、ゲームの中の起床である。
「なに……」
「あれ、どこだここ?」
落ち着けよく思い出せこの年齢から健忘症というのはシャレにならない。昨日は綸との約束のため目覚ましを早めにセットして早々にベットにはいったはずだ。こんな夕焼けとどこの小麦畑ですかと言いたくなるような一面に金色の草の絨毯が敷かれているような場所に心当たりはない。
「何仲良く手をつないでいるんだ――このゴールド野郎」
これはいわゆる夢遊病というやつか、アイタタタ二重人格に加えて夢遊病まで発病するとかおれの痛さがピー――。
「――ぐゥゥゥゥゥッゥ」
突然後ろから衝撃を食らう。体が宙に浮き顔面から地面に激突する、それでも止まらず一瞬空が見えたかと思うと背中に摩擦による熱をしばらく感じるとやっと止まった。草の中から見る空は金色に見えた。
「なんで目覚めとともに体にダメージ食らわせられなくちゃないけねえんだよ!!」
ろくでもない目覚めばかり経験している俺だがこれほど体にダメージを受けさせられる起こし方は初めてだった。
「アン、なに寝ぼけたこと言ってんだこのゴールド野郎、仲良く手なんかつなぎやがってラブラブですか?俺様の怒りはフルスロットルだぜ、バイクで引き回しの旅三千里に連れて行ってやろうか――」
「ねぼける暇もなく突撃かましてきたんだろが、顔がスカルフェイスだと脳みそも詰まってねえんじゃねえの」
「お前言ってはならないことを口にしたな。このスカルフェイスは俺様のソウル、何人たりともこのマジでギガクールなフェイスを馬鹿にしたこと後悔しやがれ」
「You are an idiot. coolくらいきちんと発音しやがれ」
この後しばらく殴り合いが続き十分後……
アッシュとの喧嘩の後に得たものは、なぜかおれが輪と手をつないで同時にリンク(どうやら直結して会話していたよう)にぶちぎれたシスコンライダーの所為というものだ。
(つまり俺はまったく悪くない。)
それよりも傑は一体何をやっているんだ。輪と手をつないでなんてあの鈍感には後日制裁をくわえておかなければならないらしい。
「それで、その師匠っていうのはどこにいるんだ」
俺が輪と待ち合わせしてまでこの《無制限中立フィールド》に来た理由それは輪の親に呼び出されたからだ。親と言っても現実に綸を生んだ親じゃないこのブレインバーストを綸にインストールしたやつだ。このゲームプレーヤーを増やす方法は一つしかなく、すでにブレインバーストをインストールした人間からそうでない人間に直接インストールするしかない。しかもそれは一回しかできずおまけに全損(全バーストポイントを失うこと)したプレイヤーに再インストールもできない。かなりの博打である。これがこれほどハイテクノロジーなゲームが世に出ず約千人という人数に縛られている理由だ。
「師匠がいるのは……ほら、あそこだ」
そう言ってアッシュが指差した建物は草原にたたずむ石でできた塔、旧東京タワーだった。
俺たちが今いるフィールド《無限中立フィールド》ここは一般の対戦フィールドと違い移動制限ラインがない、さらに対戦フィールドでは表示されていた一八〇〇秒のカウントダウンもない。加えてここではエネミーと呼ばれる敵と戦うことも出来る。エネミーの種類は多岐にわたり小さい雑魚や常に定位置にいるボスみたいなやつ色々いる。しかもエネミーを倒すとわずかではあるがBP《バーストポイント》をもらうことができ、永遠にBP稼ぎにいそしむことも可能だ。ここが無限と呼ばれる所以がこれだ。
「暇になったらBPの補充をしようそう思ってた時期が俺にもありましたぁぁぁー」
真っ黒なバイクが放つエンジンの叫び声にかぶせるように俺の悲鳴がこだましたのは幹線道路を走っていた時のことだった。
「オイ――お前言ったよなこういう幹線道路には超大型しかしかこないって」
「イエス、いったな」
「――だったらなんで、こんなに追われているんだよ――」
俺たちの二人乗りドライブが上手くいっていたのは最初の五分間だけだった。ブルンブルンと振動しているエンジンと肩で風を斬る感覚にヒャッハーしていると後ろから何かが来ている音がした。振り返ってみてみると三頭ほどの未確認生物が後ろから走ってくる(サイズは馬くらい)。
「俺様に追いつけるんなら追いついてみやがれ、エネミーども」
「――いいぞアッシュとばせー」
小獣《レッサー》級と言われるブレインバーストでよく見かけられるらしいエネミーと遭遇したがアッシュのバイクがうなり声を上げるとあっと言う間に距離をあけ見えなくなっていった。しかしその瞬間上から羽が飛んできた。砂埃がまい視界をおおう。バイクが横転し体力ゲージが半分ほど減少する。
「いってーな、アッシュ大丈夫か」
「ホワットなんだーいったい」
声が聞こえるところを見ると大丈夫なようだ。上を見上げると、RPGお浪染みのハーピーと呼ばれる両手が羽で足がカギ爪の女が飛んでいた。
「ちっついてねーな今日は。アッシュ、こいつの相手は俺がするから早くバイクをおこせ」
俺はそういうと、アイテムストレージから剣を取り出す。この剣はレベル4で入手したアビリティ【錬金】《アルケミー》によって生み出したものだ。金と言われれば錬金術、レベルアップしたときに錬金術の文字を見つけた時俺は迷わずこのボタンを押した。効果は自分のBPと必殺技ゲージを消費することで、自分が望んだオブジェクトを作れる。これを知ったとき俺は涙を流しそうになった。これでやっと遠距離攻撃が出来ると、しかし現実は甘くなかった。最初銃を作ったのだが弾がなかった。(弾は別売りですか、そうですか)そしてこのアビリティ、どれだけBPを消費したかによって性能が大きく違う。ちなみに今俺が出した剣(形はファルシオン)の名前はオズマンサスお値段なんと二百BPナーリ。俺のメインウェポンだ。
上空から飛んでくる羽根を回避したり、剣ではじいているとかぎ爪が迫る。とっさに剣でガードするとあろうことか剣を持ちながら上昇しやがった。このままでは落下ダメージによるジ・エンドかといって放せば二百BPもした剣がさらわれる。
「冗談じゃない」
コストブロウ(5)による迎撃で着地した俺を待っていたのは……
「ぎゃーす」
「ブロアー」
「Goaaaa」
先ほど撒いた小獣級のエネミーたちだった。
「おいおい、援軍がほしいのはこっちなんですけど」
上にハーピー下にエネミーどこを見ても敵しかいない。ここで剣の特殊能力を使えば挽回できるかもしれないがかなりもったいない。なら、まずは厄介な方から潰す狙うはただ一点あそこだ。
「金の亡者《ウェルズ・パーシスター》(5)発動」
体のあったトゲの一つが乖離し、頭上ではじける。舞い落ちる金粉が体を包み込み自らが放つ光がより一層明るさを増す。
「――うおりゃー」
掛け声とともに目標であるハーピーに向かって全力で走る。ハーピーも迎撃の羽をこちらに撃ってくるだが、こちらも先ほどまでの俺ではない、上にいるハーピーまで思いっきりジャンプ――目線が並んだ。
「頭上から攻撃してくる鳥類は一人で十分なんだよ」
言葉と同時にオズマンサスで切り付ける。とっさのことで反応出来なかったであろうハーピーを置き去りにして落下を始めた体で着地をする。先ほどと同じくらいのダメージがバーに刻まれる。
「イヤー出迎えご苦労」
目の前に未確認生物(絶対肉食)の攻撃をオズマンサスのアッパー攻撃で無理やり閉じさせる。
「待たせたなーゴールド野郎」
「時は金なりだぞアッシュ」
アッシュが運転するバイクの後ろに座ると、排気ガスとともにマシンの轟音が響く。
「さっきのエネミーガールはどうした」
「風切羽を切ったから追いかけてはこれないだろ」
「じゃあもう安心だな」
その言葉とともに、周りから獣たちの雄叫びが上がって今に至る。
エネミー達との一方的な鬼ごっこをしながらようやく着いた旧東京タワー、草原ステージではまるでチェスのルークのようなそれを見ず後ろに目をやりながらアッシュに問う。
「着いたけどどうすんだよ。誰もいねえじゃねえか」
周りには人っ子一人いない、いやエネミーならいっぱいいるんですけどね。おそらくこの群れを見て逃げたのだろう俺も早く逃げたい。
「師匠がいるのは上だ」
「上?」
「上がるぜーホールド・ミー・タイト」
エネミーどもの鳴き声に負けないくらいの叫び声と同時に、バイクの前輪が持ち上がり壁に引っ付くと地面と垂直に走り出した。
「さようならー二度と会うことがありませんようにー」
エネミーに別れをつげ、俺たちは壁を走った。
「フライ・ハーーーーーーイ!」
「とうちゃーーーーーーーく」
旧東京タワーは半径メートル丸い円形状の場所だった。目の前には手入れが丁寧になされた芝生が広がり、真ん中には小さなため池がありそこにはなんと……
「脱出口《ポータブル》?」
頼りない青い光を放ちながら回転する楕円形の物体がそこにはあった。【無限中立フィールド】から唯一の帰還手段らしい。
「久しぶりににぎやかなお客さんね」
反対側から声がした。
明日も学校に行かなければならない。何故だ、私たちのゴールデンウイークはどこへ行ってしまったのだろうか。
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