振り向くと建物が見えた。家だ。なんでこんなところに家が?そんな疑問を考える間もなく、先ほど声を発したと思われる人物がまた声をかけてきた。
「初めましてゴールドリッチさん。いいえ成金さんと呼んだ方がいいのかしら?」
「その呼び方はやめてくれないか、不快だ。ゴールドでもリッチでも好きな方で呼んでくれ」
初対面の人にまでこの呼び方が広がっているとはもう手遅れ感がすさまじいが俺はあきらめない。いつか絶対違う二つ名を世の加速者達に広めこの不名誉な名前を忘れさせよう。決意を新たに俺はアッシュの親に目をやる。
女型のデュエルアバターだった。手は空のような透き通った青色の光沢をおび顔は昔ヨーロッパの仮面舞踏会で用いられそうな真っ白な顔に大きい目が二つ光を放っていた。その他の特徴は白色のボンネット帽をかぶり、同じ色のワンピースを身にまとい、丈夫そうな車いすに乗っているということだろうか。
「あらためて、初めまして私は《スカイレイカー》アッシュの親で二つ名は《鉄腕》や《ICBM》と呼ばれています」
「そっちは俺ことを知っているみたいだが、ゴールドリッチアッシュの子でレベルは4だ」
向こうは二つ名の紹介までしてきたがこっちは意地でも成金というのを認めない。
「そう、じゃあリッチさん単刀直入に聞きます、あなたその力《心意システム》【インカーネイトシステム】をどこで学んだのですか」
(………………は?)
「なんだそのインカーネイトシステムとかゆうのは?」
「とぼけないで、あなたが常に身にまとっている光《過剰光》【オーバーレイ】についてです。その力は危険なの少なくともそんな風に見せびらかすようなものではないわ」
「いやこれは俺のアビリティでオーラム・オーラというのだが」
「……………ゑ」
「師匠だから俺言いましたよね、こいつ最初っから光ってたって」
「じゃあ、エネミーに追われていたのは……」
「目立つんだろう」
この光の所為で今まで不意打ちが一回も成功したことがない。それどころか敵に発見される方が早くて不意打ちをされてばかりである。今の所この光が一体俺にどういう影響を与えているのかはなぞだ。
「じゃああの敵を一撃で倒す力はなんなのですか、レベルの差関係なくあんなことができるのは心意の力としか思えません」
どうする話すべきだろうか?正直はじめてあった相手に自分の情報をばらまきたくはない。だが彼女はアッシュの親で綸も信用しているようなので話してもいいような気がする。
「わかった説明しよう。俺のこの力はBPに依存している。」
「……どういうことですか」
「言葉そのままの意味だ、俺が放つ必殺技またはアビリティは必殺技ゲージと一緒にほぼすべてBPを消費する」
その言葉と同時に俺はアイテムストレージからオズマンサスを取り出す。
「この剣は俺がアビリティによって生み出したものだ。当然これにもBPがつかわれている」
「だからあれほどの勝率なのにいまだにレベル4なのですね」
そう俺の勝率はなかなかのものだ。今のところ七割はキープしているこれは中堅のバーストリンカーの中ではかなり上位に食い込んでいる。剣を置き、少し強気な態度で尋ねてみる。
「そっちの質問に答えたんだ、こっちの質問にも答えてくれるよな」
「ええかまいません」
「そのインカネイトシステムとやらは一体どんな力を持っているんだ、俺は今までかなり高レベルの奴と戦ったこともあるがそんな力を一度も見た覚えはないぞ」
「それはそうです。心意の力は秘匿されたものたとえつかえたとしても通常の対戦で使用したのなら他のプレイヤーから総攻撃を受けることになるでしょう」
えっ、それって俺かなり危ない橋わたってたんじゃ……。
「まあ、おめえの場合登場最初っからてのがでかいな、俺もうちのレギオンにはお前が俺の子だってことは言ってねえが最有力ルーキーとして何人も勧誘に行ったみたいだからな」
アッシュの所属しているレギオンはグレート・ウォール純色の七王と呼ばれるブレインバーストで最強の七人が率いているレギオンのうちの一つだ。
そういえばめっちゃ勧誘されたな高校の部員応募みたいな感じでみんなあれくらい来ているものかと思っていたが俺が特別多かったのか。それよりもアッシュだ自分の所属しているレギオンにもいっていないとは口が堅い奴なんだな――少し見直した。
「最初の質問ですが、実際に見てもらった方が早いでしょう――アッシュ!!」
「はいっ師匠」
レイカーの呼び声とともにアッシュのバイクがうなり声を上げて走り出す。これだけを見れば別になんてことはないいつもの光景なのだがアッシュを見るとなんと両方の手がハンドルを離れ自由になってこちらに手を振っている。何故こけない、自転車ならともかくアッシュのバイクではバランス感覚がどれほど良くてもこけることは必至だろう。
「あれが心意の力、事象の上書《オーバーライド》です。現実の世界では不可能なことでもここでは意思の力で可能にすることができるのです」
「――すげえ」
思わず口から感嘆の言葉が出た。だってそうだろう意思の力自分の力であれほど自由にバイクを動かしている。俺にもできるだろうか、あんな風に現実では不可能なことを
「頼みがある……俺にも心意の力を教えてくれないか」
「心意の力とイメージの力です。自らがイメージしたことを意思の力で強化し具現化《インカーネイション》する。おそらく長い時が必要となるでしょうあなたが想像しているよりも長い時が」
「覚悟の上だ」
「二度と元の自分に戻れないかもしれませんよ」
「今よりはずっとましさ」
綸が俺たちにこのゲームを勧めてきた理由が今わかった。それに今のすぐるが消えかけている状態この状態が長引けばいつかすぐるは完璧に消えてしまうだろう。そんなことは許せないならたとえ傷ついたとしてもボロボロになったとしても何か行動しなければならない。
「わかりました……(あの子との約束もありますしね)」
最後の言葉は聞こえなかったがこうして俺の修行がはじまったのだった。
「さてではどのような修行にしましょうか……
そういいながらレイカーが思案するように車椅子が動き出した。動き出したのである動力もなく手も使わずおそらくあれも心意の一つだろうが何も知らず目撃したなら軽くホラーだ。
修行が始まるのであれば俺もレイカーのことを師匠と呼んだ方がいいのだろうかレイカーに聞くとお好きにお呼びくださいとのことなので考える。
(やっぱり師匠と呼ぶべきなのだろうかいやアッシュとお揃いとかなんかいやだな――レイカーさんというのも他人行儀だし――ああそういえばアッシュと言えば)
「決めました。今は一旦休憩として」「おばあちゃん」「”え”」
そうだ俺はアッシュの子なのであるからその親であるレイカーの呼び方なんて一つしかない。他人行儀でもなくこれぞふさわしい。
「それでおばあちゃん今日の修行はきまりましたか」
「ええ、たった今」
そういうとレイカーは俺が地面に置いたオズマンサスを持ち近づいてきた。
「とりあえず死んでください」
その言葉とともにオズマンサスが空を切る音を立て俺をひもなしバンジー300mがはじまった。
二章二話少し修正しました。次は本気出す。最後までお読みいただきありがとうございました。