そういう世界観なので、提督を目指す者・艦娘を目指す者が、鎮守府・泊地に着任する前に適性診断を受けたり、面談を受ける場での物語です。
__十月。
夏の残滓を感じるこの季節。四月からの新生活を考え、人々は行動に移る。太平洋を臨むここにも、春から第一歩を踏み出すべく人々が門を叩きに来る。そのある一室から、この物語を始めよう。
…
木造品で整えられた一室では、学生服に身を包んだ少女と男性が机を挟んで座っている。進路相談に来た生徒と教師のそれにも見えるが、男の方は白い制服を纏っており、教師と言うには無理がある。更に言えば、机に並んだ資料も学校のパンフレットなどではなく、所々に軍事用語が載っているものだ。
「以上が私からの説明となります。この場で訊いておきたい点等が御座いましたら、お答えいたします」
一通りの説明を終えた男は、対面に座る少女にそう話を振った。資料を読み込む事に集中していた彼女は、不安そうに口を開いた。
『轟沈というのは、死んじゃうって事ですよね…』
今まで何度と聞いてきたその質問に、はいと男は答えた。
「艦娘になると言う事は、深海棲艦と戦うということです。私達も出来る限りのフォローはしておりますが、可能性をゼロにする事は出来ておりません」
『死んじゃったら…私もあんな風になっちゃうんですか?』
「轟沈した艦娘が深海棲艦になる、というお話ですね。申し訳御座いません。それにはお答えする事が出来ません。確証が御座いませんので」
『そうですよね…。変なこと訊いてすみません』
私の方は大丈夫です。と答えた少女の声が震えているのを見た男は、最後に彼女が受けていた適性テストの結果を伝えた。
「貴女の適性は戦艦型でした。詳細はこちらに記載しておりますので、後ほどご確認ください。では、本日はこれで終了とさせて頂きます。ありがとうございました」
…
少女を正面玄関まで見送り、部屋に戻ると、同僚が後片付けをしている最中だった。
『執務室を片さずに空けるのはいただけないな。それとノックくらいはしろ』
普段の二つ結いとは違い、髪留めで一纏めに上げて作業を続けながら小言を言う同僚に苦笑しつつ、男は彼女を手伝い始める。
「それは失礼いたしました。そしてありがとう。見送ってから片そうと思っていたんだ」
『大方そんなとこだろうと思ったさ。気にするな。後片付けも作戦の内だ』
相変わらずだなあと思いつつ、二人が一息ついた頃に彼女、大和型二番艦武蔵は先ほどの面談を訊いてきた。
『で、どうだった?』
「あの子も沈んだ時の事を気にかけてた。だけど適性結果は戦艦型。着任先の指揮に左右はされるけど、そう簡単に沈むような事はない筈」
『まあ、そうだな。着任後は教育期間だ。その間に少しは落ち着くだろうさ。それで、玄関までの間に何を話したんだ。写真だと男受けの良さそうな娘だったが』
…
『ここまでで大丈夫です。後は駅まで歩くだけなので』
「では、私はここで失礼いたします。それと最後に、お伝えしておきたい事が御座います」
帰路につこうとしていた少女は、きょとんとした顔で男を見た。
こういう事を言うと怒られるんだけど、と前置きしつつ彼は話し始める。
「こんなご時世、今日ここに来た理由があるにしても、君たちにはこの世界に入る以外の選択肢もある。やらなきゃいけないこともあるだろうけど、やりたいことを見つけてほしい。その上でまたここに来てくれれば僕は嬉しい。その時は全力でサポートさせてもらうよ」
…
「あわよくばお近づきにと思ったんだけど、フラれちゃったよ」
『提督、私は雑務が残っていたことを思い出した。仕事に戻るとする』
「前線復帰願いは、本人の記入が無いと認められないよ」
『問題ない。秘書艦願いとして提出する』
「カステラ買ってきます」
『ハンバーガーもだ。もちろん提督の財布から』
「承りました」
…
電車の中で、少女は別れ際の言葉を思い返していた。
(告白されるかもと思ってしまったのは、自意識過剰だっかな…)
今日足を運んだ場所で貰った物は、封筒に纏めてもらっている。その封筒に小さく記載されていた名前に目がいった。
「鎮守府、協力本部」
名前に出すと、彼の言葉がまた蘇る。
(私、頑張ります!)
Fin.
皆様、初めまして。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。脳内妄想を書き起こした話ですが、被っていたら申し訳ありません。誤字・脱字、文法や文体がおかしな事になっている場合はご指摘頂ければと思います。
こういう作品を見つける事が出来なかったので、(少ないのかな?なら書くか。あ、楽しいぞこれ?)という感じで勢いで書きました。シリーズで書ければな良いなとは思うのですが、一先ずは短編という形で。