五河士道には、チートな彼女が"いた" (旧題:デート・ア・マニアックス)   作:エター

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 テストが丁度30分前に終わったので、大急ぎで書き上げて投稿

 今回の話は、奏がいかに頭のおかしい魔術師だったのか、という話です。四糸乃の出番は次か次の次のどちらかになります。


四糸乃スティーラー
一章 奏の記録


イギリス、デウス・エクス・マキナ インダストリー本社

 

「アイク。例の物が届きました」

「例の物? ああ、もしかしてアレの映像かい?」

「ええ、日本のASTで保管されていたものです」

「そうか、では早速見よう。エレンも興味があるだろう? 例えそれが極東の片田舎でのことだとしても、君を差し置いて最強と呼ばれる魔術師のことを」

 

 

     ◇

 

 

〈ラタトスク〉、天宮市某所

 

「………ようやく手に入ったわね」

「随分と疲れているようだけれど、何かあったのかい?」

「コレについて色々と連中に文句言われたからよ。自分達が何かしたわけでもないのに、随分と叫ぶものだわ」

「無理もないさ。〈プリエステス〉の戦闘映像は、自衛隊関係者の中で厳重に秘匿されてきていたんだろう」

「まあ、そうだとはわかっているのよ。いるから強く言わないの。

 まぁいいわ、とりあえず見てみましょう」

 

 

     ◇

 

 

 

天宮市、市街近辺

 

「悪いわね。急に呼び出して」

「いえ、今日は特に用事も無かったので」

 

 四月二十八日、十香とのいざこざが解決して一週間が過ぎた頃、俺は目の前の女性に誘われ、一軒家の一室に来ていた。

 

 部屋は綺麗に片づけられており、きっちりと整理整頓されているそれは、彼女の性格を如実に表しているようにも見える。

 

 ………まあ、キッチンに積まれていた缶ビールの空き缶を見るに、そもそも仕事が忙しくて家で何かをしないだけのようにも見えるが。

 

「ちょっと待っててね、お菓子とか持ってくるから」

 

 そう言って、彼女―――日下部さんは席を立つ。

 

「いえ、お構いなく」

「いいのよ、まだ高校生なんだから少しぐらい甘えなさい」

 

 別にわざわざもてなしてくれなくともいいと思ったが、笑顔で返されてしまった。

 

 日下部さんは、ASTで隊長をしている魔術師だ。

 奏のような凄腕魔術師ではないものの、折紙が言うには日本でも有数の実力者らしい。それこそ、シミュレータの〈プリエステス〉なら倒せるほどの実力を持つらしい。

 顕現装置への適性がもう少し高ければ、一地方の部隊長などという地位に甘んじることもなかっであろう程の人のようだ。

 

 日下部さんとのつきあいは、1年くらい前だろうか。奏と付き合い始めてしばらくした頃、奏の近所のお姉さんとして初めて会った。

 あまり会うことは多くはないけれど、ASTでの訓練でも奏と俺と遊びに行ったりできるように便宜を図ってくれたりと、色々とお世話になっている。

 

 

 日下部さんがいれてきてくれた紅茶で一息つきつつ、折紙の学校での様子や最近の空間震のことなど、何気ない日常のことで色々と話した。

 

 

 

「ところで、俺にどんな用があったんですか?」

「あー、すっかり忘れてたわ。

 ちょっと待ってなさい、今から取ってくるから」

 

 日下部さんが、奥の部屋に消えてゆく。一瞬だけ、隙間から見えた扉の向こうには、物凄く厳ついデスクトップパソコンがあった気がした。

 

 

 

 

 

 日下部さんは、三分もしないうちに戻ってきた。

 

「これを、見てほしかったの」

 

 そういって渡されたのは、一枚のDVD。表面は白く、市販されている無地のDVDだった。

 唯一違うのは、表面に書かれている『奏.LN』という文字だけ。

 

「これは?」

「これは………見てもらった方が早いわね。

 ただ、あなたにとってこの映像は辛いものになるかもしれないけれど」

 

 日下部さんは、DVDを俺の手から取りテレビ台に備え付けられていたDVDプレイヤーに入れた。

 

「いい、私がこれを持っていることは絶対に秘密にして。

 これは、本当は私が持っていてはいけないものなの。もし持っているのがばれたら、除隊じゃすまないものなんだから」

「は、はい。わかりました」

「ならいいわ。

 これはあの子の、三笠 奏の最後の記録よ」

 

 ―――それって、〈プリエステス〉との……

 

 頭の中に、折紙の姿が浮かぶ。

 

 

『奏は、三笠奏は、精霊と相打ちになって死んだ』

 

 

 テレビに、光が灯った。

 

 

 

 

      ◇

 

 

 

 

 

 

『こんにちは、〈プリエステス〉』

『ええ、元気そうで何よりだわ』

 

 天宮市の廃ビル街、そこに二人はいた。

 

 白いローブを身に纏い、仮面を被った女性は〈プリエステス〉。

 それに対峙する、ワイヤリングスーツを纏った少女は三笠 奏。

 

 二人の周りには、多くの倒れ臥す魔術師達の姿があった。

 

 

『悪いのだけれど、今日この日、ここで貴方には死んでもらうわ』

 

 奏はそう言いつつ右手にレイザーブレイド、左手に銃を構える。

 

『貴女みたいなただの魔術師に、私が殺せるとでも?』

『ええ、殺せるわ。今の私なら貴方を確実に殺せる』

 

 奏のその言葉に、〈プリエステス〉は呆れたように溜め息をついた。

 

『いったい何時から、貴女はそんな事を言えるほどに強くなったのよ。私が貴女を伸してから2日、その間に少し訓練した程度で私を殺せるだなんて頭でも打ったの?

 不用意な発言は、馬鹿に見え―――』

『別に嘘なんてついてないわよ。

 ()()()()()()()()()()()?』

 

 ―――〈プリエステス〉は、動きを止めた。

 

『………へぇ、成る程。今度は楽しめそうね』

『ほざきなさい。貴方に楽しむ余裕なんてあげないわ!!』

 

 奏の身体がぶれる。

 その直後、奏は巨大なレイザーブレイドを振りおろしてた。

 

『ほざいているのは貴女よ』

 

 正面からの奇襲という異常事態。しかし、それは彼女には無意味だった。

 〈プリエステス〉の周りに張られた透明のバリアが刃と接触し火花を上げる。レイザーブレイドは、そのバリアを2秒という短時間で突破したものの、その時間のせいか、刃が〈プリエステス〉に触れるよりも速く、〈プリエステス〉は奏の背後に瞬間移動していた。

 

『なめんなっ!』

 

 しか、奏はその動きにも対応する。

 再び奏の身体がぶれ、次の瞬間には魔力で蒼く輝く巨大な銃、いや砲を手に持ち砲口を後ろに向けていた。

 

『っ!?』

 

 咄嗟に、〈プリエステス〉は氷の盾を大量に生み出す。

 奏の手が引き金を引き、砲が魔力の弾丸を射出する。放たれた弾丸は、全ての盾を瞬く間に突き破り〈プリエステス〉の身体を蹂躙しようと迫る。

 しかしそれは、〈プリエステス〉が蒼く輝く剣で弾丸を切り捨てたために叶わなかった。

 

 奏は、随意領域を使用して自身を弾き飛ばすことで距離を取りつつ、左手の大砲を連射する。

 〈プリエステス〉は、それを斬り捨て、受け流し、無力化してゆく。

 

『このインチキブレード使いめ』

『インチキマジシャンの貴女が言えたことかしら』

 

 また、奏の身体がぶれる。

 周りの地面が陥没すると同時に、奏の肩には鋼鉄の巨大な翼のような何かが現れる。

 そして、その翼から大量のミサイルが360°に発射された。

 

『たかが78発のミサイルごときで私を落とせるとでも?』

 

 プリエステスは、奏の砲弾を斬り捨てつつ自身の周囲に氷の弾丸を生成してゆく。

 造られた氷はおよそ140程度、およそミサイルの倍。

 過去の〈プリエステス〉が行った戦闘を考えれば、全てのミサイルを迎撃するのは十分だった。

 

『墜とせるわよ。十分に』

 

 しかし、それはミサイルが普通の物であればの話。

 

 ミサイルが空中で炸裂音を発する。

 それだけで、〈プリエステス〉の周りの氷が全て砕け散った。

 

『Sマインっ!?』

『気付くの遅いわよ!!』

 

 炸裂

 数多のミサイルは、〈プリエステス〉に直撃する。

 

 並の精霊であれば、倒せていてもおかしくない火力。しかし、奏はまるで〈プリエステス〉が生きているかのようにその場所へ向けて砲撃を続けてゆく。

 

 それは正しかったようで、爆炎の中からは弾丸を斬り裂く高音が辺りに響いた。

 

『指向性Sマイン搭載型マルチロックオンミサイルコンテナとか、馬鹿なの貴女』

『〈ハーミット〉と〈イフリート〉と〈ベルセルク〉の天使使ってるあんたが言うな』

 

 爆炎を風で吹き飛ばして現れた〈プリエステス〉の姿は少し変わっていた。

 

 手には剣だけではなく、大きな白銀の大斧を。氷を鎧のように身に纏い、左手に鎖を巻き付かせ、背中に巨大な槍を背負っていた。

 

『面倒なもの使ってくれるわね』

 

 奏の身体がぶれ、地面の陥没が深くなると、今度は脚に小型のミサイルコンテナが出現し、背中の翼が武骨な灰色の厚手の金属板を四つ接続したユニットとなった。

 いや、奏の後ろに翼が落ちていることを考えると、ユニットは翼とは別の何かだろう。

 

『ビットなんて持ち出してくる貴女ほどではないわ』

『戦力的にはそっちが上でしょう!!』

 

 背中の金属板が独りでにユニットから外れ、奏の周りを周回し始める。

 金属板は中央近くまで縦に割れ、段々と変形してゆき大型のガトリングのような見た目に変形した。

 

『ガトリングビット、斬り払いされるのはもうごめんよ』

『豆鉄砲如き、斬る価値もないわよ』

 

 次の瞬間、ビットから多数の魔力弾が射出された。

 しかし、それらは〈プリエステス〉の周りで放射状にそれてゆく。

 

『っ!?シールド、ならっ!!』

 

 右手の巨大なレイザーブレイドを振りかぶり、加速。バリアごと〈プリエステス〉を斬り裂くために駆け寄る。

 

『二度目はないわ』

 

 しかし、振り被った剣に会わせるように多数の氷の弾丸が飛来し、奏の手からレイザーブレイドを弾き飛ばした。

 

『あんたの中ではね!!』

 

 奏が加速し、バリアへと拳を叩きつける。

 堅牢にして剛健なバリア、だがそれは一瞬で破壊された。

 

『嘘でしょう!?』

『あんたのバリアは、とうの昔に解析済みなのよ!!』

 

 バリアを破壊した瞬間、奏は脚のミサイルや周囲に浮かぶガトリング、左手の大砲を一斉に解き放つ。

 それらの弾丸を〈プリエステス〉は、ミサイルを炎の弾丸と氷の弾丸で撃ち落とし、ガトリングの弾丸を氷と風の盾で吹き飛ばし、大砲を剣で受け流し叩き斬ってゆく。

 

『まだまだ行くわよ!!』

 

 奏の身体がぶれ、奏の右手に巨大なドリルの様な槍が出現する。槍には、銃口のような穴が多数空いており、銃としての機能を持つことを伺わせた。

 

 奏はそれを随意領域を利用して、弾丸のように射出した。

 ドリルは高速で回転しつつ、銃口から魔力弾を乱射しながら突き進んでゆく。

 

『ちっ!!<刻々帝(ザフキエル)>、【二の弾】(ベート)っ!!』

 

 そこで〈プリエステス〉は新しい天使を呼び出した。

 

 呼び出された天使は巨大な時計盤と二丁の銃。〈プリエステス〉は白銀の斧を投げ棄てると現れた銃のうちの片方、短銃の方を手にし、それを槍へと向け引き金を引いた。

 短銃で撃ち抜かれた槍は、その場で動きを止める。

 

『慣性操作?いや、時間操作の天使か!!』

『ご名答、ご褒美にプレゼントね』

 

 〈プリエステス〉が、手に持った剣でドリルを斬り裂く。

 その瞬間、気がつけばドリルはその穂先を奏の方に向けていた。

 

『………うっそでしょう』

『自分の一撃で沈むといいわ』

 

 槍は、放ったとき以上の速度で奏の方に飛来した。

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 日下部さんは、ここでDVDを止めた。

 

「公式には、ここで映像が途切れたことになっているわ」

 

 一旦休憩にしましょう、そう言った日下部さんはいったい何時いれたのか、俺のコップを回収して新しい紅茶をいれてきてくれた。

 

 お礼を言い、一口紅茶に口を付けてから考える。

 

 素人でしかない俺だが、あの戦いが物凄いことはよくわかった。

 

 奏は、あの戦いでは攻め一辺倒だった。おそらく、そうでもしないと勝てないのだろう。それくらい〈プリエステス〉は強力な精霊だ。

 いくつもの天使を操り、強力すぎる戦闘能力を持つアイツは、まさしく災害そのものだろう。折紙からは、〈プリエステス〉と奏は相打ちになったって聞いてるけれど、正直言えば信じられない。

 

 ………そういえば、時を操る天使、たしか名前は<刻々帝>だったか。おそらく、先週のやつはコレのせいだろう。【十二の弾】とか言ってたし、ほぼ間違いない。

 そして、先週俺を撃ったのもおそらく〈プリエステス〉だ。時を操る精霊に面識はないから、これも間違いないと言っていい。

 

 考えることが多くて、頭が痛くなってきた。一旦整理しよう。

 

 まず、奏のことだ。

 今まで考えないようにしていたが、奏は〈プリエステス〉について何か詳しそうな様子だった。

 

『別に嘘なんてついてないわよ。

 ()()()()()()()()()()()?』

 

という発言から見て、これは間違いない。

 いったい、奏は〈プリエステス〉の何を知ったんだ?

 いや違う、奏は何処でどうやって知ったんだ?

 

 さらに言えば、奏は何もない空間から武器を出現させていた。これはどういうことなのか?

 

 そして、最後。俺の心の中にいると奏は言っていた。

 どうやって、心の中に現れたんだ?

 

 

 〈プリエステス〉についてもいくつか疑問がある。

 アイツは、奏が自分のことを知っていることには驚いていたが、どうやって知ったのかには触れなかった。つまり、どうやって知ったかは解っていたということになる。何でだ?

 

 先週俺を撃った理由も気になるし、今になったから解るが、先週俺達と戦ったときに手を抜いていた理由も謎だ。

 

 

 わからないことが多すぎる。いったいどうなっているんだ。

 

 

「混乱するのも無理ないでしょうね」

 

 頭を悩ませる俺に、微笑みながら日下部さんが声をかけてきた。

 

「いくら凄腕魔術師と言われていても、まさかここまで奏が凄いとは思わなかったでしょう」

「………はい。精霊と真っ向勝負できるとは思ってなかったです」

 

 

 そう、それも驚きだった。

 俺は、〈ラタトスク〉の一員としての立場を使って、ここ一週間色々と魔術師について調べてきた。

 その記録から考えれば、奏は魔術師と言う名が役不足であるほどの強さだった。

 

「まあ、奏は世界最強をも噂される存在だから、一般的な凄腕魔術師の中にくくっては駄目よ。世間に隠されている私達魔術師がこんな表現をさるのも変な話だけれど、世間一般の凄腕魔術師としての認識で奏を見たら、他の魔術師が可哀想よ」

 

 日下部さんは、テーブルに置いてあった羊羹を口にすると、言葉を続けた。

 

「奏の何よりも反則的なことは、その対応力の高さよ」

「対応力、ですか? 火力とかスピードではなくて」

「ええ、対応力よ」

 

 日下部さんはDVDプレイヤーのリモコンを手に取ると、巻き戻しをかけた。

 DVDの映像は巻き戻り、丁度奏が巨大な翼状のミサイルコンテナを背中に出現させる直前で止まる。

 

「魔術師の最大の欠点、というよりも人類側の欠点なんだけれど、装備が貧弱なのよ。

 DEMから販売されてASTに配備されている武装は、大きく分ければ剣、銃、ミサイルユニット、飛行ユニットの四種類だけ。私たち魔術師は、その四つだけであらゆる状況に対応しなければならない。

 ……できると思う?」

「……難しいと思います。〈プリエステス〉みたいな規格外が相手だと特に」

「そう、それが現実。限られた武装では常に限界があるのよ。

 その点、奏にはそれがない」

 

 日下部さんが、DVDプレイヤーの再生ボタンを押す。

 テレビには、奏が巨大な翼のようなミサイルユニットをどこからともなく出現させている姿が映し出された。

 

「奏が、日本国内の魔術師たちから最強と噂される表向きの理由がこれよ。

 奏はね、その場で新しい武装を生み出しているのよ」

「新しい武装を生み出す……そんなことが可能なんですか?」

「机上の空論と言っていいレベルの話だけれどね。随意領域下においては、コンピュータで演算できる事象は全て現実に引き起こすことが可能な事象だから、物質変換や造形操作などを駆使すれば可能よ。可能なだけで誰もしないし、誰もできないけれど。

 まあ造形操作はともかく、物質変換って陽子や電子、中性子の操作による核分裂と核融合の意図的な操作よ? 普通の魔術師だとそもそもそれらの観測すらできないし、観測できても演算能力が足りないから核分裂すらできないわよ。

 放射能汚染を考えれば、もし失敗すれば危険じゃすまないしね」

「それは………」

 

 物質の変換、つまり何かを造り出すたびに奏の足元が抉れるのはそれが原因だったのか。

 

「さて、続きを見ましょうか。

 これから映るのは、奏が最強の魔術師と言われる本当の理由。そして、奏の最期よ」




 テスト終わったので夏休みです。
 ………ただし、更新は速くなりません。
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