五河士道には、チートな彼女が"いた" (旧題:デート・ア・マニアックス)   作:エター

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 ちこく、ちこく~(食パンを咥えて走りながら)

 はい、すみません。冗談です。
 更新遅れてすみませんでした。

 今回の話は、何時にも増して難産でした。色々と難しい場面は多かったですが、特に今回は士道君に暴言を吐かせるのに苦労しました。
 何というか、いい人なのも考え物ですね。

 そして、一つとんでもないミスに気が付きました。
 私は、散々カマエルの天使について、白銀の斧だなんだと書いてきましたが、よく見なくてもカマエルは黒い斧ですよね。ファンとしては大失態です。時間ができ次第修正します。


10/4 11:54 追記
 何故か日間ランキング43位に出現、いったい何が…


四章 襲来

「―――士道っ!!」

 

 凄い勢いで、リビングの扉が開かれる。

 そこから現れるのは、白い髪の見慣れた少女。

 

「……おり、がみ?」

 

 家に入ってきたのは折紙だった。

 ただ、俺は折紙が家に入ってきたことではなく、彼女の装いの方に驚かされた。

 

 着ている服は、ワイヤリングスーツ。精霊と対峙するためのその装いを、()()()()()()()()のにその装いをしていることにも少ししてから驚かされたが、最初に驚いたのはそこではない。

 

 

 ―――彼女は、明らかに大怪我をしていたからである。

 

 

 頭部には幾重にも包帯が巻かれ、目には白いガーゼを眼帯のように当てられている。

 顔にはいくつもの小さなガーゼが当てられ、首には動きを抑制し固定するための器具が取り付けられていた。

 右手は無事であるものの、左手の肩から先はミイラのように包帯が厳重に巻かれ、添え木のようなものが取り付けられている。

 脚は、怪我をしているにもかかわらず走ってきたからだろう。そこに巻かれていた包帯は、真っ赤に血に染まっていた。

 

「ひっ!?」

 

 背後で女の子の悲鳴が聞こえる。

 それも仕方がないだろう。折紙の姿は、小さい子供であれば泣き出してしまいそうなほど、無残な姿だったのだから。

 

 家に入ってきた折紙は、俺の顔を見て僅かに顔を綻ばせ、俺の後ろにいる女の子の姿を見て、今度は顔を硬くした。

 

 

 

 

 

 さて、今の俺の状況を折紙の視点で考えてみよう。

 

 何かしらの理由があって、怪我をしているにもかかわらず大急ぎで俺の家に駆けつけてくれた折紙。

 しかし、俺はロリコンの変質者の如く女の子を連れ込んでいた。

 

 ―――もしかしなくても、アウトである。

 

 

 

 

 

 折紙が、無言でレイザーブレイドを取り出し、構える。

 

「どいて士道。そいつを殺せない」

「お、折紙。これは、その、違うんだ」

 

 俺は、レイザーブレイドを女の子に向ける折紙の前に立ち、彼女の刃を遮った。

 俺はロリコンじゃない。こういった子は好きであることは事実だが、それはlikeであってloveじゃない。俺がこの子に抱いているのは可愛い動物を好きになるのと似たような心境であって、決して愛情を抱いているわけじゃない。

 

 しかし、それは言葉にしなければ伝わらず、言葉にしても得てして信じてもらえない物である。

 前に、洗濯物が引っかかって鞄に入ってしまったのか、奏の家に遊びに行ったとき琴里の下着が俺の鞄から出てきて大騒ぎになったことがある。その時は、誤解を解くのに二週間かかった。

 

 大抵、こう言う誤解は中々解けないと相場が決まっているものだ。

 

 さて、どうやって誤解を解こうか。

 

 無表情でレイザーブレイドを構える折紙を、どう説得したものだろうかと考えていたその時、

 

 

 

「うふふ。楽しそうで何よりね」

 

 

 

 ―――突然、聞き覚えのある声がした。

 

 

 全身に寒気が走る。

 俺は、後ろの女の子をかばうようにしつつ、声の聞こえてきた方を向いた。

 

 そこにいたのは、白いローブに不気味な笑顔を浮かべた仮面を被った女性、

 

 

 ―――〈プリエステス〉だった。

 

 

 反射的に身体が動き、側にあったオムライスがのっていた皿を投げつける。

 そのまま、後ろにいた女の子を抱えてリビングのドアへ疾走する。投げつけた皿が当たったかなんて確認しない。しているだけの時間が無駄だからだ。

 

 折紙が、後ろに振り返ることなく〈プリエステス〉に目線を向けたまま、右手に持った魔力の弾丸を放つ銃で背後のリビングのドアを粉砕する。

 

 折紙は、このまま銃で〈プリエステス〉を牽制しつつ、ASTの人達が来るまで時間を稼ぐつもりのようだ。

 

 以心伝心と言うべきか、この時の俺は不思議と彼女の考えを読み取ることができた。

 

「無駄よ」

 

 しかし、それらを実行することは叶わなかった。

 

 全身が何かに覆われるような不快感が身体を走り、急に身体が動かなくなる。

 

「こ、れは」

 

 この不快感、この感覚。俺には身に覚えがあるものだった。

 

「……随意領域による拘束」

 

 傍らで、折紙がそう呟くのが聞こえる。

 そう、これはあの『一度目の』四月二十日に感じたそれに間違いなかった。

 

「せっいかーい。まあ、現役の魔術師ならわかって当然よね。

 まったく、人の顔を見るなりお皿を投げつけてくるなんて常識に欠けるんじゃないかしら」

 

 そういって、〈プリエステス〉はテーブルを二度叩く。

 すると、俺の身体は外側から無理やり力を加えられ、強制的に〈プリエステス〉の方を見るように動かされた。

 

「しかも、女の子の顔を見て逃げ出すなんて、デリカシーに欠けると思うわ」

 

 ぷんぷん とでも効果音がつきそうな語り口、その様子に虫唾が走った。

 

「それは、お前が逃げ出させるだけの事をしてきたからだろ。顔を仮面で隠している奴が、そんなこと言うな」

 

 思わず、思っていたことが口からこぼれる。

 俺はあまり怒ることはないとよく言われるが、どうしてもこいつにだけは怒りを抑えることだけができなかった。

 

「……アハハハハ、そうね、ええそうね、その通りだわ。顔を見せてもいないのに、顔を見て逃げ出すなんてできないものね。すっかり忘れていたわ」

 

 その言葉を〈プリエステス〉はあざげる様に笑い、仮面を抑えて含むように言葉を続けた。

 

 

 

「さて、どうでもいい話は終わりにして、本題を話しましょうか」

 

 〈プリエステス〉が、ローブの内側からうさぎのぬいぐるみ、いや、うさぎのパペットを取り出す。

 

 左眼に黒い眼帯を付け、なんとなくお調子者の様な雰囲気を放つそれ。

 

 それを取り出したとき、俺が抱えていた女の子が、震えるように僅かに動いた。

 

「よ、よしのん!!」

 

 女の子は、ウサギのパペットへとそう叫んだ。

 

 ……よし、のん?

 

 よしのんって言えば、確かこの子が探していた人間のはずだ。一体どういうことだ?

 

 

 俺が考え込んでいると、〈プリエステス〉は女の子に向けてパペットを投げ渡していた。

 

「よしのん!!」

 

 パペットを手にした女の子は、それを大急ぎで左手にはめ、話しかけ始めた。

 

 しかし、

 

「よしのん、よし、のん?

 ……へ、返事をして、よしのん、よしのん!!」

 

 当然、返事は帰ってこない。

 

 ……いや、本来は返事が返ってくるのか?

 

 たしか、イマジナリーフレンドだったか。

 あまり、この手の話は詳しくないけれど、この子みたいな年齢の子にはあることだと聞く。

 

 もし、仮に『よしのん』がそうなのだとすれば、おかしいことではないのかもしれない。

 

「うんうん。こうやってかわいい子がおどおどしているのを見ると、見てて和むなぁ。人格封印なんて面倒くさい事をした甲斐があったよ」

 

 そんな彼女の様子を肘をついて見ながら、〈プリエステス〉はそう呟いた。

 

「お前っ!!」

 

 思わず怒りが零れる。

 

 彼女が口にした、人格封印という言葉。

 その口ぶりからして、『よしのん』とあの子が会話できないようにしたのは、おそらくは〈プリエステス〉なのだろう。

 

 あの子と『よしのん』の関係は知らないが、あの子が『よしのん』を大切に思っていることはわかる。

 

 そんなあの子から、〈プリエステス〉は『よしのん』を奪い、それを見てへらへら笑っているわけだ。いい加減頭にくる。

 

「あー、はいはい。他人のために怒ってますアピールとか、そういうのいいから。

 あれでしょ、こんな小さな子を泣かせて許せねぇとかそういうのでしょ、知ってる知ってる。よくあるロリコン気味のラノベ主人公がやってるやつよね」

 

 そうして憤る俺に、〈プリエステス〉は冷めたような声色をぶつけてきた。

 

 その言葉に言い返そうとするが、言葉がかき消されたかのように出ない。

 俺にできるのは、〈プリエステス〉を睨み付けることだけだった。

 

「私って、そういうの嫌いなんだよ。

 いつどんな時でも、誰かを助けるのは当たり前みたいな、無自覚な自己犠牲的思考って言うのかな。そういうの。私は本当に大嫌いなんだよ」

 

 そう言うと、〈プリエステス〉はどこからか紅茶を取り出し、一息に飲み干した。

 

「ああ、別に誰かを助けるという行為を否定するわけではないよ。それは別に悪くないことだと思う。

 ただ、その、何というかなぁ。他人のために自分を消費できるのが大嫌いなんだよ。虫唾が走る」

 

 もう一度、〈プリエステス〉は手に持った紅茶を口に含むと、空になったカップを置き、何か思いついたかのように手をついた。

 

「―――あ、そうだ。

 五河士道君、君を矯正する良い方法を思いついたよ」

 

 余計なお世話だ!!

 口から悪態が零れるが、声ではない掠れた音となって辺りに消えた。

 

「鬼ごっこをしようか。鬼は私で逃げる人間はそこの四糸乃ちゃんね」

 

 〈プリエステス〉が、指先でテーブルを叩く。

 すると、テーブルの上に天宮市一帯の地図が現れた。

 

「と言っても、普通にやったら私が楽勝過ぎるから、ハンデを付けようか。

 そうだなぁ……私は天宮タワーの頂上から動かない、くらいにしようか。うん、それで良いね」

 

 〈プリエステス〉は、勝手に話を進めてゆく。

 

「期限は、私があきたらでいいかな。どうせすぐに決着着くだろうし。範囲は、天宮市内全域でいいや。はい決定。

 

 じゃあ、これでいいかな。

 ルールは簡単、しばらくの間その娘を天宮タワーにいる私に引き渡されないようにすること。簡単でしょ?

 もし、あなたたちが勝てたら、私が答えられる質問に一つだけ答えてあげる。なんでもいいわよ」

 

 

 ―――例えば、五河士道君の妹さんのこととか、

    五年前のあの火災で何があったのか、とかね。

 

 

 鳥肌が立った。

 何を知っているのか気になったこともあるが、それだけではない。何を知りたいかを知られていることに、鳥肌が立ったのだ。

 

「お二人さんとも、不思議そうな顔をしているね。なんで知っているのかって。

 まあ、すぐにわかるわ。

 それじゃあ、精々逃げ切る事ね」

 

 そうの言葉とともに、〈プリエステス〉の姿がかき消える。

 それと同時に、俺の身体を包む随意領域が消え、身体が自由になった。恐らく、随意領域の発生源である〈プリエステス〉がいなくなったからだろう。

 

 

 

 〈プリエステス〉がいなくなったリビングは、しばらくの間静まりかえっていた。

 

 聞こえるのは、力なく泣きそうな声でパペットを呼びかける女の子―――〈プリエステス〉曰く、四糸乃の声だけ。

 この突然の接触に、あの折紙ですら言葉をなくしていた。

 

 泣いている四糸乃を見つめる。

 

 

 

 ―――ふざけるなよ。

 

 ごくごく普通の女の子である四糸乃。

 〈プリエステス〉は、なんの関係もない一般人の、それも年端もいかないこんな子を巻き込んだんだ。許せることじゃない。

 

 

 俺は、強く拳を握り締めた。




 感想、できれば酷評を募集中です。ある程度読んだ皆様方ならわかると思いますが、なにぶん筆者はあまり書き物が上手くないので、悪い点、改善点などを示していただけると助かります。
 勿論、酷評以外でも嬉しいですよ(`・ω・´)!!

 また、ただ今『デート・ア・マニアックス』に代わる題名を考えています。
 と、言うのも、この題名を見て読みたいと思う人が少ないことにようやく気が付いたからです。馬鹿ですよね。気が付くの遅すぎですよね。
 こんな題名はどうかな? ともし思いついてくださるような方がいれば、感想に書いてくださるとありがたいです。
 ただ、それをそのまま題名にするのは問題の元になるかもしれないので多分無いと思います。ですが、今の私の頭は空っぽなので、参考にさせていただくことはあるかもしれません。

 長々とあとがき失礼しました。
 それでは、読んでくださりありがとうございました。
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