超.黒の剣士   作:しもつかれ

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前回からほぼ一ヶ月ぶりですね、お待たせしました。今回はリズベットがメインの話です。
原作と流れは似た感じですが、所々の違いに目をつけながら読んでいただけると嬉しいです。
ではどうぞ↓


@11 左手

2024年 6月23日 22層 キリト宅

 

現在の最前線は60層、俺たちは今日の攻略を終え、家に帰ってきた。

 

「そういえば、アスナが贔屓にしてる鍛冶屋って何処にあるんだ?」

 

アスナの新しい武器≪ランベントライト≫に目を向けながら、俺は前から気になっていた質問をした。

 

「どうしたの突然?」

 

「あぁ、新しく剣が欲しくてさ」

 

「キリトくん...それは贅沢しすぎじゃない?」

 

アスナは俺の背の≪エリュシデータ≫をジト目で見ながら言った。可愛い。

この剣は50層ボスのLAボーナスで、なんと強化値が最大+50までつくという超ハイスペックな剣だ。流石『クォーター・ポイント』のLA装備である。

 

「あぁ、ほら≪二刀流≫の時にもう一本、同じくらい重いのが欲しいんだよ。それでランベントライト(その剣)鍛えた程の鍛冶師なら...と思ってさ」

 

俺の説明にアスナはなるほどといった具合に頷く。

 

「だったら教えてあげる。ただし!私の親友に変なことしないこと!」

 

「いや何もしないよ!俺の信用はそのレベル!?」

 

「だって...最近キリトくん女の子の友達多いし...」

 

サチやシリカ始め、最近攻略組内外問わず女性プレイヤーから声を掛けられ、フレンド登録することが増えたのは事実だ。

何故かその度にクラインが絡んでくるのだが、今は置いておくことにする。

 

「まぁそうだけど...俺はアスナの旦那なんだから、他の子にいったりしないよ」

 

「キリトくん///...そうだよね、私信じるよ」

 

「よし、話も終わったし飯にしようぜ。今朝湖で釣った魚まだ残ってたよな?」

 

「うん、だから今日はお刺身にしよっか」

 

「お、料理長特製醤油の出番だな」

 

色こそ緑色だがアスナブレンドの醤油でいただく刺身はやはり美味しかった。

 

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翌日 第48層 リズベット武具店前

 

「ここか...良い雰囲気の店だな」

 

朝、サチと出かけるというアスナを見送り、それから俺は件の武具店にやってきた。

外からは工房と店に分かれているのが見え、工房の方には水車が付いている。恐らくアレを動力源として炉を使うのだろう。

 

(にしてもアスナの剣を鍛えた程だ、多分熟練度はカンストしてるだろう。...やっぱあのエルフみたいにゴツいのかな)

 

第3層の黒エルフ野営地にあった鍛治屋のテントで、アスナがゴツい黒エルフのNPCに鍛えてもらった≪シバルリック・レイピア≫を思い出す。

アレは当時では破格の攻撃力を誇り、第8層までアスナと共に戦った素晴らしい剣だった。

 

そんな事を思い出しながら扉を開け中に入ると、元気の良い声と共に店主が現れた。

 

 

「いらっしゃいませ!リズベット武具店にようこそ!」

 

(リズ視点)

 

(子供じゃない...お財布大丈夫かしら)

 

入ってきたのは全身黒尽くめの少年だ。

 

「えーっと、オーダーメイド頼みたいんだけど」

 

(お金無さそうだし、気の毒だけど帰ってもらった方が良いわね)

 

「今金属の相場が上がってまして、代金の方が割高になってしまうんですが...」

 

敢えて買う気を無くさせる発言をした。多分この少年はここがそれなりに名の通った武具店である事を知らないのだ。

 

でも、それは違った。

 

「お金は気にしなくて良いから、君が作れる最高の剣を頼みたいんだ」

 

黒尽くめの少年はまっすぐあたしの目を見て言った。まるであたしの考えが、鍛治師としてのレベルがわかってるみたいに。

 

少年の『剣士としての強さ』を読み違えたのが少し悔しかった事もあり、依頼を受ける事にした。

 

「わかったわ。具体的な要求値とかは?」

 

「そうだな...これと同等かそれ以上の、ってことで」

 

少年が背中の黒い片手直剣を鞘ごと外して渡してきたので、両手で受け取った...

 

「重っ!!」ガンッ

 

「あぁごめん、言うの忘れてた!大丈夫か!?」

 

「もっと早く言いなさいよ...」

 

 

「≪エリュシデータ≫ね...これはどこで?」

 

「50層のボスドロップ。んで、同等のは出来そう?」

 

「んー...これはどうかしら、あたしの最高傑作よ」

 

カウンター奥の壁に掛けてあった片手直剣≪スヴェート・ソード≫を手に取り、少年に手渡す。

 

すると少年は鞘から剣を抜き、軽く振ってみせた。2、3度振って急に動きが止まったので何かと思って声をかけようとしたところ...

 

「やだ」

 

「へっ?」

 

少年は「いらん」とばかりに剣を返してきた。

 

「この重量にしては攻撃力高い方だけど、重さもこいつと釣り合うくらいがいいんだ。あと強度が物足りない」

 

なんか、ちょっとムカつく...!

 

「...そこまで言われて黙ってるあたしじゃないわ!!あたしにも鍛治師としてのプライドってもんがあるのよ!!わかったわ!だったらコレであんたの剣なんてポキポキ折ってやるわよ!!」

 

「お、おお落ち着け!」

 

「落ち着いてるわよ!!」

 

「剣下ろしてから言え!剣のタイプの問題だよ!スペックの差じゃないって!」

 

「スペックの差がなんですってぇぇぇ!?」

 

「助けてアスナァァァァ!!」

 

 

(キリト視点)

 

「はぁ、はぁ...落ち着いたか」

 

「えぇ、取り乱して悪かったわね...」

 

店主の子が俺の剣に斬りかかろうとしたのを食い止め、ようやく落ち着きを取り戻してくれた。

 

「んで、やっぱり筋力要求値の高い重くて頑丈なのが欲しいんだ」

 

「それなら55層に良いクエストがあるわよ。竜の住む氷山に超レアな鉱石があるっていうの」

 

店主は真剣な顔で情報をくれた。

 

「そうか...でもその手のクエって基本鍛冶スキル持ったメンバーとパーティ組んで無いとフラグ立たないんだよな...行けるか?」

 

「あたし、こう見えてメイススキルカンストしてるのよ。戦闘でも邪魔にはなるつもりは無いわ」

 

俺の勧誘に店主は自信満々、といった表情で返した。

 

「決まりだな。俺はキリト、宜しく」

 

「リズベットよ。リズで良いわ、宜しくキリト」

 

こうして剣士と鍛冶屋の臨時コンビが結成した。

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55層 氷山ダンジョン入り口

 

「や、やっと着いたわね...」

 

「ここか...ん、どうしたリズ?」

 

リズの店を出て55層へ転移。暫く歩き、俺たちは氷山ダンジョンのふもとに到着した。

そこでリズの様子が少し変だと気付いた。

 

「な、なんでも無いわ。早く行きましょ」

 

(...寒いのか)

 

SAOでは低温のエリアに長時間滞在していると徐々に体力が減っていく≪低温状態≫というバッドステータスがある。これは保温効果が付いている装備品を身につけていれば無効化でき、寒さも感じない。もちろん俺の装備にも付いているが、リズのには付いていないようだ。

 

そこで、右手でウィンドゥを操作し、ストレージから保温効果のある黒マントをオブジェクト化してリズに投げる。

 

「わっ!?...貸してくれるの?」

 

「見せびらかしてるとでも?」

 

「そう...ありがと」

 

吹雪が少し強くなった、ほんの少しの間に。

 

「...暖かい」

 

「...?」

 

リズが何か言ったように聞こえた。

 

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山頂

 

山を登る事数十分、俺たちは山頂に辿り着いた。辺りには破壊不可オブジェクトの水晶が設置されており、鮮やかな景色を生み出している。

 

「キリトー!クエストフラグあったわよ!」

 

「ってことは、ここで戦闘か...よしリズ、作戦会議だ」

 

水晶が無く少し広い場所があったのでそこに集まり、作戦会議をすることにした。

 

「取り敢えず出現前に分かってることが3つある。

1つ、相手は竜型のmob

2つ、フィールドの形状から、恐らく滞空する

3つ、ブレスによる攻撃をしてくる

この辺は確実だ。それにあたって、リズは戦闘が始まったら俺が敵を落とすまで水晶の陰で待機しててほしい」

 

俺の注意喚起に、リズは少し納得いかないようだった。

 

「なんで?二人で戦った方がいいんじゃない?」

 

多分リズは竜型と戦った事がないのだろう。だから攻略組では鉄板となる竜型の対処法を教えておく事にする。

 

「いや、竜型のブレス攻撃は直撃で大ダメージ+状態異常の蓄積ダメージで御陀仏...なんてのも珍しくないんだ。だから、基本は(タンク)の奴がタゲ取って耐えて、後ろから長モノとか軽装の奴がスイッチして連打...って戦法がベストなんだ。壁は俺が引き受けるから、リズは俺が1度合図したら出てきて攻撃、2度目に合図したら戻ってくれ。」

 

「なるほど...でも、あんた大丈夫なの?見るからにダメージディーラーでしょ」

 

「心配すんな。俺、そこそこ強いし。...あぁ、もう一つ。クエストの内容よく読んだか?」

 

「どういうこと?」

 

「このクエ、目的はあくまで鉱石入手だ。だから運良く鉱石が手に入ったら敵は無視して転移して逃げるぞ」

 

「わかったけど...クエストボスなんだし倒せればアイテムとか経験値が沢山入るじゃない。それでもいいの?」

 

勿体無い...といった様子で言うリズに、俺も言葉を返す。

 

「何言ってんだ、リズの命が最優先だろ」

 

「そ、そう...」

 

リズの顔が若干赤くなった。

 

 

 

同時に、上空から降下してくる巨大な反応を≪索敵≫で感知した。

 

「...来るぞ!リズ、隠れろ!」

 

「了解!」

 

現れたのは白銀の飛竜。頭上には四段のHPバーと、≪zerfan≫という名が表示される。

 

「グラァァァァァァァ!!!」

 

(リズ視点)

 

白竜は咆哮をあげると、開いた口から広範囲ブレスを放ってきた。

 

でも、それに対してキリトは動こうとしない。

 

「何してんのよ!早く躱さなきゃ...」

 

「はぁっ!」

 

キリトが剣を振るうと、青白い光を纏った剣はブレスを弾いて消散させた。

 

「...うっそ」

 

後でキリトに何のスキルか聞いたところ、『タイミング合わせてソードスキル撃つだけ、練習すれば誰にでも出来る』と言っていた。無茶苦茶な話だ。

 

「行くぞっ!!」

 

キリトは高く跳び上がって剣を構え、竜の腹部に重い一撃を浴びせた。重攻撃単発技≪ヴォーパル・ストライク≫だ。

 

「らあっ!」

 

更に、竜の翼を掴んで背に乗ったキリトは下位単発技≪バーチカル≫を放ち、その巨体を地面に叩きつけた。

 

「グギャァァァァ!!」

 

「リズ今だ!」

 

「了解っ!」

 

合図に合わせて私は片手棍3連撃技≪ブルータル・ストライク≫を白竜に浴びせた。

 

「スイッチ!!」

 

戻ってきたキリトの片手剣4連撃技≪バーチカル・スクエア≫による斬撃が四方から白竜を切り裂く。

数回のソードスキル攻撃で、敵のHPは1段目の3割強も減少した。多分殆どはキリトの出したダメージだと思う。それだけ彼は強いという事が、一連の行動でわかった。

 

「よし、戻って待機!」

 

「了解!」

 

敵のHPを半分ほど減らしたところで、竜の滞空高度が低くなった。羽ばたきの感覚も長くなっている。

 

「キリト!あいつ様子が変よ!?」

 

竜が一瞬体を丸め、開くと...

 

「グォァァァァァァァッ!!」

 

同時に物凄い暴風が吹き荒れた。

 

「きゃっ!」

 

「っ!?リズ!!」

 

私はこの暴風に逆らえず、飛ばされてしまった。真下に見えるのは、巨大な穴。底は...見えない程深い。

 

「いやぁぁぁっ!死ぬ!死んじゃう!!」

 

 

 

 

「リズ!手伸ばせ!!」

 

「キリト!?」

 

目の前に現れたキリトは、左手を伸ばしてあたしの手を掴んで抱き寄せた。

 

「うゎぁぁぁぁぁ!!」

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

「いったた...」

 

先程の落下感覚から、ここが穴の底であることを理解した。地面は少し柔らかい雪のようになっていたが、それにしては何だか体が暖かい...

 

「生きてたか...」

 

あたしの下、雪の中からキリトの声がする。どうやらあたしの下敷きになって庇ってくれたみたいだ。やっぱり、キリトは優しい。

 

「取り敢えず退いてくれ、重い」

 

「わっ!?ごめん...って重いとか失礼!」

 

...デリカシーは足りない。

 

「悪い悪い。んで、わかってると思うけど、ここはさっき落ちた穴の中だ」

 

「でしょうね...転移は?」

 

キリトは首を横に振って答えた。

 

「ダメだった、≪結晶無効化エリア≫みたいだ。...メールも送受信できなかったから外からの助けも呼べないし、今の所お手上げだな」

 

はぁ、と溜息を吐きながら、キリトは雪の上に寝そべった。

 

「そう...で、これからどうするの?」

 

「何かフラグがあっても、こう暗いと見つけづらいしな...今日のところは寝て、明日脱出方法を考えるか」

 

(キリト視点)

 

ストレージに入れておいたサンドイッチ(勿論アスナ制)を食べ、俺達は寝袋の中に入った。敷かれた雪の温度だけを遮り、フワッとした感触は残っているので意外と寝心地が良い。

寝転がっているので、正面を向くだけで穴の外の夜空が見える。月の光が差す、悪く無い景色だ。

 

「なんか変な気分。初めて会った人と一緒に、初めて来る場所で、死にかけて、ご飯食べて、隣で寝るなんて」

 

不意にリズが話しかけてきた。

 

「...あぁ、そうだな。現実じゃ考えられない」

 

『現実』という言葉に思うところがあったのか、少しの沈黙が続いく。

 

「ねぇ、どうして助けに来てくれたの?」

 

「なんだよ、要らなかったとか言う気か?」

 

「本当にアンタ捻くれてるわよね。...その、ありがと。助けてくれて」

 

「どういたしまして」

 

「こうやって話してる事も、あたしもキリトも、全部システムが作り出す偽物なのよね」

 

「...!」

 

少し、驚いた。全く同じ事を俺も考えた事があるからだ。恐らく後に続くのは「それなら生きてる意味なんか無い」などといった話だろう。

 

数秒考えて、俺は口を開く。

 

「確かに、今俺たちが見聞きしてる物事はデータ上の物で、夢と変わらないかもしれない。でもな」

 

俺はリズの手を握った。

 

「ど、どうしたのよ急に...」

 

リズの顔色はランプの明りの所為でよく見えない。

 

「『俺が君の手を握った』っていう『事実』は、俺たち2人の間にいつまでも残る。データ同士の行動でも、それが記憶になれば現実の俺たちが覚えてるだろ?それは一概に偽物とは言えないと、俺は思ってる」

 

「じゃあ、私たちが今ここに居るのは...」

 

「無駄なんかじゃない。俺たちは今、ここで生きてる」

 

俺の手は強く握り返された。

 

「...そうよね。ちょっと元気出たわ、ありがと」

 

リズは迷いが無くなったような、いい表情になった。

 

「そろそろ寝ようぜ、明日は脱出できるといいな」

 

「そうね、おやすみ」

 

こうして俺たちは眠r......

 

「あのー、手は...」

 

「う、煩いわね!繋いできたのあんたでしょ!」

 

「ハ、ハイスイマセン...」

 

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翌日

(リズ視点)

 

「ん...」

 

ガサゴソと、何かの音が聴こえる。目を開くと、キリトが何やら積もった雪を掘っているのが見えた。何を探しているんだろう、気になって彼の手元に視点を変える。

 

(な...何してんのよ昨日のあたしは!!思い出したら恥ずか死じゃない!!)

 

「おっ、起きたか。ちょっとこっち来てみろよ」

 

昨夜のことを思い出し赤くなっているであろう顔をなるべく見られないよう、起き上がる。

 

「お、おはよ。どうかしたの?」

 

手招きするキリトに近寄ると、「ほい」と深い黒色の鉱石を渡してきた。アイテム名は≪ダークライト・インゴット≫。重さ、光沢、硬度などの持った感覚から、相当のレアアイテムだとわかる。

 

「これ、目的の鉱石だろ?」

 

「...いえ、確か情報屋から買ったのは『アイテム名≪クリスタライト・インゴット≫、ライトブルーの鉱石』の筈よ。でも、この鉱石も相当なレア物だと思うわ」

 

あたしの情報にキリトは神妙な顔になり...と思ったら急に目を見開いた。

 

「...二つ、考えられる理由がある。でも今説明するにはちょっと時間がない...」

 

「時間?何のよ」

 

「ヒント:ドラゴンは夜行性、現在午前六時」

 

「それほぼアンサーじゃない...」

 

あたしが答えを出したのと同時に、上空から差す光を大きな影が遮った。

 

「グルォォォォォォォォ!!」

 

影の正体は、やはり昨日の白竜だ。どうやらこの穴はコイツの寝床だったらしい。

 

「だと思ったわよ!!」

 

「寝起きに悪いけど、振り落とされるなよ?」

 

「ちょ、えっ、何!?」

 

キリトはあたしを左手で抱き抱えて、壁に向かってジャンプ。そこで壁を蹴り、竜の背中に右手で持っていた剣を突き刺した。

 

「ギャァァァッ!!」

 

竜は刺された事に反応して声を上げ、戦闘態勢をとるためか穴の外に向かって飛び上がった。勿論私たちを背に乗せて(というかくっ付けて)。

 

「おお、ジェットコースターみたいだな」

 

「落ち着きすぎよ!って、は、速っ...!」

 

そんなやりとりの間に、穴の外へ出た。合わせてキリトが口を開く。

 

「合図したら飛ぶぞ!...3、2、1、今!」

 

竜の背中から離れ、あたしとキリトは空を飛んだ。正確には落ちてるだけだけど。

 

「きゃぁぁぁっ!落ちる!落ちるってば!」

 

でもキリトがあたしの左手を握ってくれているので、少し安心できる。

 

「大丈夫!下が雪だから問題ない!...それよりリズ、左見てみろよ」

 

「左?」

 

言われた通りにその方向に目をやると...

 

「わっ...!」

 

朝日が溶け始めた雪を照らし、55層全体が光り輝いていた。『時々この仮想世界が見せる景色は、現実のどんな景色よりも綺麗だから困る』と親友が言っていたのを思い出す。この時、その言葉に少し共感できた。

そんな事を考えていると、不意にキリトが口を開いた。

 

「たまーに、さ。この世界の景色って現実より綺麗に映るんだよな」

 

「えっ...?」

 

「あぁ、何でもない。そろそろ着地だ。手、離さないように」

 

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リズベット武具店

 

「で、二つの理由っていうのは?」

 

「あぁ...一つ目は、『その鉱石がバグやシステムの不具合で偶然あの場に出現した』ってこと。でもこれはこのゲームのサーバーの仕組みから言ってありえない...と思う」

 

何故サーバーの仕組みを知っているのか気になったが、後にしようと思って聞かなかった。最も、ずっと後になってキリトは自分から理由を教えてくれるけど。

 

「二つ目、『元々のリワードは青い鉱石だが、低確率で黒が出現する』...だ。鉱石じゃないけど、確率で報酬が変わるクエは幾つか知ってるから、多分これが確定的な理由だ」

 

「...まぁ、どっちにしたって性能は保障されてるのよね?ていうかこっちの黒の方がレアなら良かったじゃない。気にすることないわよ」

 

あたしの言葉に、キリトの固かった表情が元の緩いそれに戻る。

 

「そうだな...ありがとう。んじゃ、早速頼むぜ」

 

こくっと頷き一度深呼吸。いつも剣を打つ前にする願掛けみたいなものだ。

 

「...いくわよ」

 

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(キリト視点)

 

カン、カンとハンマーがインゴットを叩く音が何度も聞こえる。かれこれ30分ほど経過し、叩いた回数は500を超えた。散る火花のエフェクトと炉の熱が、部屋の温度を更に上げていく。

イレギュラーな鉱石は正直予想外だったが、性能が良いに越したことはない...

 

などと考えていると、カァン!と一際高い音が部屋中に鳴り響いた。

 

リズの手元に視線を動かすと、打たれていた鉱石が形を変えていくのが見える。赤いライトエフェクトが消えると、漆黒の片手直剣が姿を現した。

 

「出来たわ」

 

リズはウィンドウを可視化して俺に見せた。

 

アイテム名は≪ダークスナッチャー≫。未強化状態のエリュシデータを軽々上回るスペックに、特殊効果付き。その効果は...

 

「≪与ダメージの10%分HP回復≫...!?」

 

この剣の用途に最高に合った効果だった。運が良い...いや、鍛治師(リズ)の思いという隠しパラメータがこの剣にさらなる力を与えたのかもしれない。

 

「間違いなく、あたしの最高傑作よ。試してみて」

 

リズの方へ向き頷くと、俺は新しい剣を構え≪スラント≫を放つ。

 

「...はっ!」

 

手に馴染む柄、俺の要求をバッチリ満たす重さ、そして空を切った時の感覚。

 

「...凄いなんてもんじゃない、完璧だよ。刃先まで自分の体みたいだ」

 

「良かった!」

 

安心したようにリズが笑う。

 

「よし...これで依頼完了だな。お代、幾ら?」

 

「いらないわ」

 

「えっ...?」

 

いやいや、それは駄目だろ...と言おうとしたが、リズの発言に制された。

 

「二つ条件があるわ。一つ目、その剣を使って、このゲームをキリトがクリアして。現実に戻れたらその時に料金を徴収するわ」

 

「はは...責任重大だな、努力するよ」

 

ゲームクリア...そして現実。近づいているんだ、と改めて実感した。

 

「そして二つ目、あんたが最前線で戦う理由を教えて」

 

「...大切な人を現実に帰す為だ」

 

意外な条件と質問の内容に少々戸惑ったが、本心を述べた。

 

「...わかった。はい、大事にしなさいよ!」

 

リズはトレード窓を開いて≪ダークスナッチャー≫を送ってくれた。

 

「あぁ、サンキューな」

 

俺がストレージに剣をしまうのを確認すると、リズは俺の体をぐるっと半回転させ、背中を押してきた。

 

「ほら、さっさと行きなさい。アスナが待ってるわよ!」

 

「あっ...ヤ、ヤバい!!連絡忘れてたんだった!! じゃあな!」

 

恐らく、いや確実に待ち受けている説教を少しでも軽減する為、俺はメッセージを打ちながら駆け足で店を出た。

.

.

.

店を出て、転移門に到達したところで立ち止まり、ふと思った。

 

(俺、リズにアスナの話したっけ...?)

 

(リズ視点)

 

雪山からここへ戻る途中、昨日の夜にアスナからメールが送られていることに気付いた。本文は、『全身黒色で軽装の片手剣持った男の子がリズの店に行っているはずで、連絡がつかないの。何か知らない?』というものだ。

 

因みに『キリトは今そっちに向かったわよ。ダンジョンでトラップにかかって、脱出のフラグが来るのが朝だったから今までメール届かなかったみたい、心配かけてごめん』と、キリトが帰ってすぐに返事をしておいた。

 

そしてキリトから聞いた「大切な人を現実に帰す」という戦う理由。

 

つまり、あの二人はそういう仲だということだ。

 

これに気づかなければ、剣を渡した後に気持ちを告白するつもりだった。でも...

 

「親友の彼氏を好きになるとか、我ながら呆れるわ...」

 

----------------------------------------------------------

「おかえり、キリト君」

 

「た、只今戻りました...」

 

「キリト君!」

 

「ハイッ!!」(怒ってるアスナ怒ってるよヤバいよ怖いヤバい)

 

「...心配したのよ、すごく。何かあったらどうしようって」

 

「...心配かけて悪かった。もう何処にも行かないよ」

 

「キリト君...」

 

「アスナ...」

 

(あ、これこのまま許してもらえるパターn「で、リズと手繋いで寝た感想は?」

 

「...済みませんでしたァァ!!」

 

「自分から手握って『俺が側にいてやる、安心しろ(キリッ』とか言ったそうじゃない...」

 

「言ってない!捏造も甚だしいわ!」

 

「...離れないように、壁に縫い付けたらいいのかしら?」キィィィィン

 

「待て!ソードスキルはヤバいって!!」

 

「成敗!」

 

ギャァァァァァ...




ありがとうございました。リズベットは本当に良い子でした。
作り上げたのがダークリパルサーではなかった理由は後々お分かり頂けると思います。あとサブタイトルは繋いだ手、剣を持つ手、抱き寄せた手が左手...とかそんな理由からつけました。
年内には難しそうですが1月の上旬には次話を投稿できれば...と思っております。
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