超.黒の剣士   作:しもつかれ

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お久しぶりでございます。前回から丸々一月あけての投下となります。待っていて下さる方々(居るのか...?)にはとてもご迷惑おかけしました。

今回は、丸々オリジナル展開ですので、いつもの駄文に磨きがかかっておりますが、生暖かい目で見てやってください。では!


@6 二振りの剣

2023年 4月11日 第25層

 

デスゲームが始まり五ヶ月が過ぎた頃、24層のボスは撃破され、アインクラッドの最前線は25層に到達した。

 

「やっと四分の一だな...このペースで行けばあと一年半くらいか」

 

Lv45片手剣使いの俺キリトと、相棒であるLv42細剣使いアスナは、二十五層の転移門のアクティベート作業に向かうところだ。

 

何故俺達なのかというと、フロアボス戦ではドロップしたアイテムをダイスロールで分配するルールになっているのだが、俺とアスナが毎度LAボーナスを取りまくるので、前に参加したとき「お前まだ何かもっていく気か」的な視線を浴びて以来、自重してさっさと次層に行くようにしているからだ。

俺かアスナに必要ないLAボーナスは全部ダイスロールに預けてから行くのだが、それでも他の連中からすれば、いらないアイテムだけくれてやってるように見えて、いい気がするものではないだろう。一ケタ層辺りの攻略戦はそういうの無かったのになぁ.....

 

「うん...キリト君、このフィールド、何か今までと違う感じがしない?」

 

「いや、違う感じも何もここは....」

 

「火山...よね」

 

そう、階段を上がってきた二十五層は、いたるところにマグマが溢れ、遠くには今まさに噴火している火山すらあった。

 

「なんか階段が暑いと思ったらこういうことか....ん?」

 

視界右側の小高い岩山をじっと見つめると、頂上辺りで何かが動いているのが見えた。

 

「どうしたのキリト君?あそこに何かいるの?...あっ!」

 

そうだ。RPGの火山といえば、定番の.....

 

「アスナ、戦闘用意!」

 

指示を出しつつ背中に吊るされた片手剣≪クィーンズ・ナイトソード≫を抜き、空を切り払って下段に構える。

 

「グォォォ!」

 

咆哮を上げた竜型mob≪サラマンダー≫は、背中の翼を広げて頂上から一気に滑空してきた。それに合わせて俺は≪ホリゾンタル≫を発動させ、タイミングよく竜の翼に剣を打つと、竜がノックバックした。

 

「スイッチ!」

 

二十四層で新調したばかりの細剣≪ホーネット・スティンガー≫を構えたアスナが、気合十分の細剣3連撃技≪ペネトレイト≫を発動させ、3撃目を決めようとしたその時。

 

「グォォォォォ!」

 

「きゃぁっ!」

 

大きく口を開いた火竜が、その口から燃え盛る炎を放ったのだ。そしてその炎がアスナを直撃する。視界左端の小さめのHPバーが2割程減り、更にその横に炎のマークが表示される。アレは『炎症』のマーク、バッドステータスの一種だ。

効果としては、水に浸すか高価な治癒アイテムを使うしかない毒のようなものだったはずだ。

 

「っ!下がれアスナ!」

 

前方のアスナを抜き去り、突進技≪レイジスパイク≫の、更に上位の突進3連撃技≪ヴォーパル・ストライク≫を走りながら発動させる。先程のアスナの2撃と合わせ、敵HPが6割ほど減少した。

 

敵はまだ行動不能状態のままのようだ。強力なブレス攻撃の分その辺りは脆いか。

早くアスナの『炎症』を治さなければならず、尚更戦闘を長引かせるわけにはいかないので、”連続して更に”ソードスキルを放つ。

 

「トドメだ!」

 

先の二十四層ボス攻略戦で熟練度が500に上がり習得したばかりの3連重攻撃技≪デルタ・スライサー≫で飛竜の頭を斬り裂き、その赤い体は青いポリゴンエフェクトになって消散した。

 

「ふぅ...アスナ、体力気をつけろな」

 

「うん、平気よ」

 

この二十五層までで、ブレス攻撃を使う雑魚mobはコイツが初めてだ。そのおかげか中々の難敵だった。

 

「.....そうだ、コレ使っとけな」

 

瞬時に全ての状態異常を治すレアアイテム≪浄化結晶≫を、相変わらず黒いコートのポケットから取り出し、ポイッとアスナに投げ渡した。

 

「...治ったみたい。ありがとうキリト君」

 

「よし、じゃあアスナが全快したら主街区に向かおう」

 

アスナが回復するまでの間、今戦った竜型mobの情報と戦う時の注意点、そして状態異常についての情報をアルゴにメールで送信しておく。これで後から来るプレイヤーは多少安全に攻略できるだろう。

こういう新しい層のマップや敵、クエストの情報提供も俺とアスナの役割になっている。もっとも、知ってる奴なんてそういないが。

 

「それでキリト君。さっきの、何?」

 

「えっ?な、何のことだ?」

 

....気付かれた?

 

「私の目が確かなら、硬直無しで二回スキルを使ったように見えたんだけど?」

 

「さ、さぁな!さっきの状態異常に視覚阻害でも着いてたんじゃないか!」

 

「...そういうことにしておきましょうか。詮索はマナー違反...だったものね」

 

よし。とりあえずここは、さっさと話を変えなければ。

 

「そういえばアスナ、さっきのブレス危なかったな!直撃とはいえ2割ちょい持ってかれたろ?」

 

「うん...下級モンスターであの威力、しかも私安全マージンは層+17あるのに...」

 

「こりゃこの層のボス戦は苦労しそうだな...」

 

アインクラッドのフロアボスは、そのフロアの特徴や数が多い敵などに関係したタイプや強さであることが多い。例えば、第10層のテーマは『和』で、フロアボスは≪オロチ・ザ・グランドサーペント≫という、所謂ヤマタノオロチだった...という具合にだ。

 

しかし、このとき俺たちはまだ知らなかった。

 

この二十五層のフロアボスは『苦労』なんかじゃ済まない強さであることを。

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二十五層主街区 グレンの街

 

あの後二度ほど戦闘を繰り返し、俺たちは主街区『グレン』に辿り着いた。入り口から少し進むと転移門が見えたので、小走りで駆け寄って転移門の石板に触れると、アクティベート完了のポップアップが出現した。

 

「これでよし...んじゃ、取り敢えずクエスト受けに行くか」

 

俺たち(といっても攻略組ならほぼ全員だろうが)は、新しい街に着いたらまず最初にクエストNPCを探し、いいアイテム報酬があったり、クリアボーナスの経験値が多いクエストをピックアップしておくことにしている。

偶にキークエストがある層もあるので、この作業は割と重要なのだ。

 

「にしても、街は割と普通なんだな。もっとメラメラしてるのかと思ってたよ」

 

「うん、ちょっと意外だね」

 

「あぁ。.......ん?アスナ、何か変な声聞こえないか?」

 

『....ーぃ...とぉー!』

 

「え?....あっ、本当だ。何だろうね?」

 

「イトウ...?プレイヤーネームだったら、実名なのか?きっと抜けてるとこがあるんだろうな、そのイトウ氏は」

 

俺のどうでもいい発言に、何故かアスナがビクッと肩を揺らす。この理由についてはずっと後になって知ることになるので、ここでは割愛する。

 

そうこうしているうちに、件の声がハッキリと聞こえ、何処かで見た顔がこちらに走ってくるのが見える。

 

「おーい!キリトー!」

 

声の主は、頭に趣味の悪い赤バンダナを巻き、和風の鎧装備、そして腰に刀を差した如何にも『侍』の格好をした男....クラインだった。後ろに見えるのは、彼のギルドメンバーだろうか。

 

「クライン....暫くだな。この層から攻略組に入るのか?」

 

「おうよ!お前に序盤のコツ教えて貰ったお陰だぜ!本当に、ありがとうな。あ、コイツらがギルドメンバーだぜ」

 

クラインが一人一人紹介している時、俺は考えていた。

 

クラインとはフレンド登録しており、レベル上げの進行度も知っていたため、そろそろ来る頃だろうと思っていたところだ。

クラインが無事にここまで来れて、本当に良かったと思う。

 

しかし、俺はあの日、クラインを見捨てて次の村へ向かったのだ。残って彼とそのパーティメンバーを強化しつつ進むやり方もあったのに。

 

そんな俺の心中を察したのか、クラインが続けて話した。

 

「キリト、なんていうかその、俺は置いて行かれただなんて思ってねぇからな。お前に何も教わってなかったら、俺たちは今ここにいなかったんだからな。

だから、もう気にすんなよな。俺たちは皆、お前に感謝しても仕切れねぇんだからよ」

 

このとき、この世界に囚われて半年、ずっと背負ってきた何かを下ろせた気がした。

 

実は、クラインのことが気に掛かって何度か様子を見に行こうとしたことはあるが、会わせる顔が無くて、何度も思い留まってしまったのだ。だが、彼は自分でここまで来てくれた。

 

「...ありがとな、クライン」

 

「あぁ!....ところでキリト、こちらのお嬢さんは...?」

 

「初めまして、アスナです。今はこの人とコンビ組んでます。よろしくお願いしますね」

 

最後に『にこっ』って擬音が付きそうな笑顔でアスナが言うと、急にクラインが畏まって言い出した。

 

「はっ、初めまして!クライン、24歳独身、恋人募集tyグハッ!!」

 

俺が咄嗟に出した右腕が、クラインの腹にクリーンヒットした。

 

「...ついさっきまでの感動を返せ」

 

「いっ!!....たくないんだったな」

 

「なんていうか、うーん....一言で言えば俺の大事な人だ」

 

「!?なぁキリト、お前まさかアスナさんと...」

 

「...お前の考えてるような関係じゃn「全然!全然違いますから!」

 

俺の発言は何故か割って入ってきたアスナが代弁してくれた。

 

「んまぁそうなんだけど....アスナ?顔赤くないか?まさかさっきの状態異常がまだ.....」

 

「大丈夫!何でもないからこっち見ないで!」

 

「なぁ、何で怒ってんだ?アスナー?」

 

俺達のやりとりにクラインは長く溜め息を吐いて、やれやれといった感じで手を挙げる素振りを見せた。

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2023年 4月15日 第25層迷宮区 ボス部屋前

 

25層に上がって今日で5日目。昨日、ディアベル達『アインクラッド解放軍』のパーティがボス部屋発見したため、俺たちはその偵察戦に駆り出された。いつもは俺とアスナ、『解放軍』と『聖竜連合』から一パーティずつの計14人なのだが、今回は新しく攻略組入りする『風林火山』も含めた計20人で偵察戦を行う。彼らはまだボス戦経験がないため、少しでも場数を踏んでおこうという考えだろう。

 

「今回...っていうかいつもだけど、調査隊のリーダーを務めるキリトだ。今回は新メンバーがいるから、一応確認しておくぞ。

偵察戦で知りたいのは、ボスの名前、形状、総HP、攻撃パターンとその回避・防御方法、取り巻きの有無だ。アスナ、頼む」

 

アスナはこくっと頷き、説明を始めた。

 

「誰かが死ぬ、状態異常で動けなくなる、レイド平均HPゲージが半分を切る、中級以上の取り巻きが二体以上いる。

以上のどれか一つでも当てはまったら、即撤退してください。少数精鋭の偵察戦では、パニックや過信がさらなる犠牲を生む可能性が高いです。その他危険を感じたときも、すぐに離脱してください」

 

俺とアスナの言葉に、多少浮かれ気分も混ざっていたクライン達の顔がキッと引き締まった。

 

「準備はいいな...行くぞ!」

 

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部屋の中は、黒い巨大な岩を円形に削って作られたような形になっていた。周りは外と同じ火口のようで、所々マグマの噴き出すサウンドが聞こえる。

 

「...ボスは何処にいんだ?」

 

「わからない...油断するなよ、クライン」

 

その時。

 

「グォォォォォォォ!!」

 

「...上よ!距離を取って!」

 

咆哮と共に落ちてきた...いや、降りてきたのは、赤い体に鋭い眼光、如何にも攻撃力が高そうな爪と長い尻尾、そして、巨大な翼を持った.....

 

「あれって...ドラゴン!?」

 

「やっぱりな...来ると思ったぜ。全員、戦闘用意!」

 

二十五層フロアボス、≪イフリート・ザ・フレアドラゴン≫

。取り巻きはいないようだ。HPゲージは...

 

「...5段!?」

 

今までのフロアボスは、全てHPゲージが4段だった。コイツは5段...格が違うと言うべきか。

 

他のRPGではドラゴンは割と強敵の部類に入るが、ここ何日かの戦闘で、VRMMOであるSAOでは、ブレス攻撃と飛行時の動きにさえ注意すれば、それほど手強い敵ではないことがわかった。しっかり対処すれば平気だ...

 

「っ!?広...ぐっ!」

 

火竜が最初に放ったのは、部屋の半分は範囲に入るんじゃないかというくらいの広範囲ブレスだった。

思いきり右に飛んだがそれでも避けきれず、右半身に炎を受けた。『ブレスダメージ軽減』の特殊効果をもつ防具を装備した俺ですらHPが2割強ほど減少する。

つまり直撃すれば5割、レベルや装備のグレードが低い奴は更に......このボス、やはり一筋縄ではいかないようだ。

 

「全員!敵の前に留まるな!常に動き回って、回避・防御優先!攻撃は隙を突くんだ!」

 

俺の声が全員に伝わったようで、メンバーは敵の横や後ろに回り込む。偵察戦が少数で行われるのには、指示を円滑に回すという理由もある。

 

何にせよ、先ずは攻撃していかないことには始まらない。

 

敵の攻撃で厄介なのはブレスと、腕や尻尾による薙ぎ払いということがわかったので、前後の足の間に見える腹部に近づきつつ4連撃技≪ホリゾンタル・スクエア≫を叩き込む。手応えはあったが、敵のHPはまだ1本目の1割も削れていなかった。

 

「くっ、これじゃダメか...何か無いのか?」

 

辺りを見渡してみると、部屋の端っこに大きな岩石があるのに気づいた。しかもその岩石、斜めに尖っており、その先端は部屋中央を指しているように見える。.....

 

「...そうか!」

 

その岩に駆け寄って飛び乗ると、すかさず方向転換して、竜へ向かって思い切りジャンプ。飛距離を伸ばすため突進技≪ソニック・リープ≫を放ち、竜の翼に一撃見舞う。

更に俺は竜の背中を駆け上がり、≪バーチカル・アーク≫で後頭部を切り裂く。

 

「グキャォォォ!」

 

今の俺の連撃によって、敵の1本目のHPゲージは残り8割程まで減少していた。

 

後頭部への攻撃でスタンを取れることを確認し、首から飛び降りる。敵の技と弱点が判明したので十分な収穫.....ここらが潮時か。

 

「よし、全員撤退!扉まで走れ!」

 

「おーいキリトー!このドア開かねぇぞー!?」

 

「え?クラインお前何言って....なっ!?」

 

扉に近づいてみて気づいた。”閉まっている”のだ。今までのボス部屋はこんなこと無かったのに...

 

「まさか...出れないってのかよ!?」

 

テレポート的移動手段は、≪転移結晶≫というアイテムがあれば可能だ。

しかし、それはこの層の時点では超が付くレアアイテムで、フロントランナーである俺とアスナはドロップなどで入手した物を合わせて確か6個持っているが、一つ買えば所持金がほばスッカラカンになる程のお値段なので、余分に持っているプレイヤーはいないだろう。おそらく、偵察隊常連メンバーは別にして、クライン達が結晶を持っている確率はかなり低い。

加えて、ダンジョン内からは外部のプレイヤーとメッセージのやり取りができないため、再び扉を開けるのは不可能。つまり、偵察隊20人のうち2人はここにから出られない計算になる。

 

クソっ!どうする!?

 

ボス部屋に入った時、最後尾にいたのはクライン達風林火山だった。彼らはこれが初めてのボス戦なので、扉が閉まることに疑問を持たなかったのだろう。

 

そうこう考えてる内に、偵察隊メンバーは恐怖でうろたえ始め、ディレイから回復した火竜はこちらに歩み寄ってくる。こうなったら.....

 

「転移結晶を持っている奴は今すぐ使って逃げろ!」

 

恐怖を俺の声に押されたのか、今かと用意していた転移結晶で偵察隊メンバーは次々離脱していく。残ったのは俺とアスナ、クラインを含んだ風林火山メンバーの、計8人だった。

 

「グルァァァァァァァ!!」

 

寄ってきた火竜の噛み付き攻撃を剣で受け止め、押さえつけながらポケットに3つある転移結晶を後ろに放り投げると、それをクラインが上手くキャッチした。

 

「はぁっ!」

 

押さえていた牙を≪ホリゾンタル≫で弾き返すと、火竜がディレイした。その隙に、アスナ達に向き合って話す。

 

アスナも、クラインも、死なせない。

 

覚悟を、決めろ。

「...アスナのと合わせて転移結晶は6つある。クライン達はこれで逃げろ。アスナは俺が戦ってる間、ハイドレート上げて隠蔽で岩陰に隠れててくれ。アスナの熟練度なら気付かれない。クライン達は街に戻ったら急いでここまで戻ってきて、扉を開けてアスナを...」

 

ぱちん!

 

「っ!」

 

突然のビンタをくらい目を開くと、半泣きのアスナと、覚悟を決めた顔のクラインがいた。因みにHPゲージが少し減った。

 

「キリト、俺ぁお前に何の恩返しもしてねぇ。なのに逃げろってお前...それでも男か!俺達ゃ死ぬ覚悟でここに来てんだぞ!!」

 

「バカにしないで!私だって戦えるわよ!私達コンビでしょ!?キリト君いつもそうじゃない、危ない時はいつも一人で頑張って.....もっと頼ってよ!」

 

目が覚めた。思い返せば一層のボス戦から、俺はヤバい時はいつもどうするか自分で考えて、他の皆を死なせない事しか考えてなかった。

 

 

「悪かった。...皆、今から見た物全部、誰にも口外しないって約束してくれ」

 

 

「グァァァァァ!!」

 

「キリト、お前何か作戦あるんなら、俺たちで時間稼ぐから早く準備しろ!」

 

だから俺は、「誰も死なせない」んじゃなくて、「皆を守りたい」。

 

「....頼む!」

 

風林火山メンバーとアスナが、横から回り込んで竜に向かう。その隙に、俺は装備変更ウインドウを開き、空になっている左手部分に触れ、片手剣≪シャドウエッジ≫を選択。オブジェクト化した黒い剣が、俺の左手に収まる。

 

「よし、良いぞ!」

 

床を蹴り、火竜の後ろにある先程攻撃に使った岩で大きくジャンプ。そして同じく火竜の背中に≪ソニック・リープ≫で切り込み、更に”連続して左の剣で”≪ホリゾンタル・アーク≫を放つ。

 

「....まだだ!」

 

更に右の剣で≪シャープネイル≫、左の剣で≪バーチカル・スクエア≫と、スキルを切らさずに次々と発動させていく。

 

「くらえぇぇっ!」

 

最後に右の4連重攻撃技≪シグマ・スラッシュ≫を放ち、敵の後頭部を思いっきり切り裂く。今のソードスキル連撃で、敵の1段目のHPゲージが残り半分を切り、4割程にまで減少した。

 

「キリト君、それ...」

 

「キリト、今のは一体...」

 

「生きてたら教えてやる!アスナは俺に続いて追撃、クライン達は攻撃防いでくれ!」

 

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「はぁぁぁっ!」

 

「せぁぁぁっ!」

 

15分は経っただろうか。俺とアスナの攻撃によって火竜のHPゲージは5本のうち2本と半分が削られ、残りの半分に差し掛かった。

今のところ死者は出ていないが、俺もアスナもHPゲージは黄色、クライン達の平均HPゲージもなんとか黄色で持ちこたえている。

 

「はぁっ!アスナ、一旦下がって回復!」

 

敵の爪を2本の剣で押し返して叫ぶ。

 

しかし、それもいつまでもつか.....回復してる余裕が無いから、このままじゃジリ貧だ。引く事も出来ない。

 

「...っ!ぐぁっ!」

 

思考が判断を鈍らせ、回避しきれなかった爪が俺の胴を捉え、後方に吹っ飛ばす。ちょうど後ろにいたアスナを巻き込み、壁に衝突する。そのダメージにより、俺のHPは残り1割を切った。

 

やっべ、これ死んだな。流石に今回は楽しくなかったぜ。

 

「ギャォォォォォ!」

 

火竜が大きく口を開き、俺の目の前に迫る。ブレス攻撃の前動作だ。俺の防具にはブレスダメージ軽減の効果が付いているため、覆いかぶさればHPが残り4割強あるアスナだけは何とか耐えられるかもしれない。

 

「駄目よ!やめて!こんなの嫌!」

 

「ごめんな、アスナ。君だけは....」

 

不思議と笑顔が出てきたので、アスナに微笑みかけた。彼女は、この先きっとトップクラスのプレイヤーになれる。そう、俺が付いていなくても。俺が、ここで死んでも。

 

でも、出来ればこの先も一緒に......

 

 

 

「ぬん!」

 

聞きなれた男の低い声が響き、巨大な盾で炎を防いだのは、その時だった。

 

「私の知っているキリト君ならば、この状況からでも形勢逆転をしそうなものだがね」

 

振り向くと、赤い鎧を纏い、巨大な盾を持った騎士ヒースクリフがそこにはいた。

 

「ヒースクリフ....!?」

 

「早く回復したまえ。次が来るぞ」

 

「でも、一人でアイツを止めるのは...」

 

「誰が一人だって?俺達を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 

黒い肌が目を引く、両手斧を担いだ巨漢エギルとその仲間の斧使い達が俺の前に躍り出た。

 

「俺達が盾になってやる。あのバケモンを倒すには、お前の力が要るんだろ?」

 

エギルは俺の二本の剣を一瞥し、竜に向き直った。

 

「あぁ、頼むぜ」

 

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「これで...終わりだ!」

 

右の≪レイジスパイク≫、左の≪ホリゾンタル≫、右の≪スラント≫、左の≪ホリゾンタル・スクエア≫、そして右の≪ヴォーパル・ストライク≫の最後の一撃が敵の首元に突き刺さる。

 

「グァァァァァ...」

 

火竜は、最期に大きな咆哮を上げ、ポリゴン片と化した。同時に、congraturation!のメッセージとお決まりファンファーレ、そしてラストアタック獲得のウインドウが表示される。

いつもなら歓声が上がるところだが、この人数であの強敵を仕留めただけあって、今回ばかりはほぼ全員座り込んでいた。その中のクライン達は例外で、抱き合って喜んでいる。

 

....ギルドか。なんか、良いもんだな。

 

「キリト君!」

 

そんな光景を眺めていると、急にアスナが飛び付いてきた。

 

「うわっ!....アスナか、びっくりした」

 

「私、わたし、キリト君がしんじゃうと思って...」

 

「心配かけたな、ごめん」

 

わんわん泣くアスナの頭を撫でてやっていると、周りからの視線に気付く。

 

「ヒースクリフ、エギル、それに皆...どうしてここに?」

 

「俺達は街をぶらついてたら、偵察に行った解放軍の奴らを見かけてな、話を聞いたんだ。急だったもんで、大した人数は集められなかったが、まぁ結果オーライだろ」

 

「...そうか。助かったよ」

 

「さて、キリト君。積もる話はあるが、先程の剣技は一体何なのかね?」

 

「そうだキリト!何だよあのブッ壊れスキルはよぉ!」

 

.....やっぱり突っ込まれるよなぁ。

 

「簡単に説明すると、ソードスキルの後にはほんの一瞬だけ硬直までの間に隙があるんだ。その間に反対の手の武器で続けてソードスキルを発動させる...って風に繰り返してたんだよ。

片手剣のソードスキルを両手で交互に使ってたわけだから、システム的に存在するスキルじゃない。俺はコレを『スキルコネクト』って呼んでるけど」

 

俺の解説にヒースクリフは面白そうに笑みを浮かべ、クラインはポカンと口を開けていた。

 

実は、この技術はソードスキルのテスト時から可能なことは知っていた。

しかし、習得にかなり難がある上、実戦で失敗した時のリスクが高く、しかもSAOはデスゲーム化したので完全に習得してから使おうと思って、隠れて特訓していたのだ。

 

「...私、今日はキリト君と一緒にいる」

 

「へ?」

 

「だって、放っておいたらキリト君、どこかに行っちゃいそうで私、怖い」

 

「...俺はずっとアスナの側に居るよ」

 

チラッとみんなのいる方を見ると、クラインはなんとも悔しそうな顔をし、ヒースクリフは何故持っていたのか、ブラックコーヒーを啜っていた。

 

「あー、悪いな。俺たちみんな疲れちまったからよ、アクティベートは任せたぜ」

 

いかにもわざとらしくエギルが言うと、アスナはこくっと頷いた。

 

「行こ、キリト君」

 

「え?お、おう」

 

アスナは俺の手を取って、俺達は26層への階段を登り始めた。

 

----------------------------------------

(アスナ視点)

 

「じゃあアスナ、おやすみ」

 

26層の宿屋の一室で、彼は私に言った。

 

「.....ねえ、キリト君。その、今日は、こっちで寝たら?疲れてるでしょ?」

 

彼は優しい。いつも自分は真っ先にソファーで寝て、私に気を使う。だから今日は、ベッドを譲ってあげることにした。

 

「あぁいや、アスナだって疲れてるだろ?俺はこっちで良いよ」

 

「...一緒に使えば良いじゃない」

 

「.....え?」

 

.................................

 

自分でも驚いている。以前の自分なら、男の子と同じ部屋、ましてや同じベッドでこんな....

 

「ねぇキリト君。私に何か言う事ない?」

 

「.....やっぱり、言わないとダメ...だよな。」

 

「.....うん。聞かせて」

 

 

「あの時の言葉は、紛れも無い本心だよ。だからアスナ」

 

嬉しくて、涙がぼろぼろ溢れるのが自分でもわかる。きっとひどい顔をしているだろう。でも、嬉しくてたまらない。

 

「俺と、結婚してください」

 

「.....はい!」




ソードスキル開発のベースであるキリト君ならではの技術として『スキルコネクト』使わせて頂きました。クォーターポイントのボスをこんな少数で倒して良いのか?良いんです。キリト君が凄いんです。

そしてやっぱり嫁はアスナさん一択でした。...の部分はご想像にお任せ。何かあったかもしれないし、何も無かったかもしれません。

次回からは月二回の投下を目指します。いつになるかはわかりませんが、完結までどうぞお付き合いを。
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