東方青狼伝   作:白黒狼

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 久しぶりに桜花の絵を描いてみたら別人になった。誰だこれは(汗)



古代編
出会い


 

 私がこの世界に来て随分と時間が過ぎた。

 正確には数えてないけど、たぶん五百年くらい過ぎたんじゃないかな。やることもなくて毎日池を眺めながら  ボーッとしてたから数えてない日があってだいぶズレてるとは思うけど……まぁ、どうでもいいかな。

 妖怪の私にとって時間の流れなんてあっという間で、時間を気にして生活してた昔に比べたらだいぶ日和った生活をしていると思ってる。

 

 この月日の中で様々なことがあった。

 やたらと動物を見かける様になったけど、私が知るものと比べて原始的というか、見た目が少しおかしい気がする。

 また、この付近に住む人間に会ったんだけど、ぶっちゃけ原始人だった。洞穴に住んでて石でできた武器を使って狩をしていたし、私がいるのは随分と昔の時代なんだなぁ、なんて思ったり。

 一番驚いたのは私が住処にしてる池が大地震の影響で湖くらいの広さまで広まったことかな。同時に近くの地面が隆起して山みたいになっちゃったし、川もできた。寝てるときに地震があったから本当に驚いたよ。空に避難してなかったら危なかったかもしれない。

 

 私自身に関しては、能力を操りながら実験を繰り返している。私の力は〝拒絶〟であり、私が認識した事象を任意で無かったことにしたり、誘導したりできるようだ。水に濡れたくないと思えば濡れないし、暑いのが嫌だと思えば暑さを感じなくなる。日常生活に非常に役立つ力だと思う。

 そういえば、私以外の妖怪にも出会った。話をしようとしたら全力で逃げられたし、能力を使って捕まえたら凄い勢いで命乞いしてきた。どうやら私は他の妖怪から見て凄く強く、恐ろしいらしい。

 あと、私は妖獣だから動物にもなれるんだけど、私は最初から人の姿をしていた。これってたしかそれなりに長生きして強い妖獣ができるようになる人化の術なんだよね。改めて思うけど、私って何者なんだろう?

 

 そんなことを考えながら湖を眺めていると、霧が濃くなってきた。この湖、地形の変化が原因なのか、よく霧がかかるようになった。今じゃ霧が出ない日の方が少ないくらいで、私の視界は真っ白な景色でいっぱいになる。

 

「……私、ここから眺める景色好きだったのに」

 

 ぽつりと声が漏れた。無意識に漏れた言葉だけど、誰も聞いてないし、いいか。

 そう、思っていたいたんだけど、どうやらこの湖には私以外の人がいるらしい。

 

「へぇ〜、それは残念ね」

 

「……え?」

 

 振り返った私の視線の先にいたのは霧の中から私を見ている小柄な少女だった。

 歩いてこちらに近付いて来ているようで、少しずつ姿が鮮明になる。綺麗な水色の髪と大きなリボン。ギザギザな模様が描かれたワンピースに背中にある結晶の様な羽。

 その姿を見た瞬間、何かが頭の中に浮かんだ気がした。

 

 

 

―――ありがとう、チルノ————…―…

――…――…………――……―……―――――

――――………ねぇ…チルノ————……………

――――……――…―……………………―……

――――チルノ…………――……ごめん――――…

 

 

 

「……チルノ?」

 

「うん?……たしかにあたいはチルノだけど、あんたと会ったことあったかな?」

 

 出会ったことはない。でも、私は知っている。彼女はチルノ。氷の妖精だ。

 彼女は私が前の世界でプレイしてたゲームに登場したキャラクターだ。『東方project』というゲームシリーズの一つ『東方紅魔郷』に彼女は登場する。

 自然界に存在する妖精の中でも特に強い力を持っている妖精であり、人気も高く東方は知らないけれどチルノなら知っている、という人もいるくらいだ。

 

「……あ、いや、他の妖精が話してたから貴女がそうなのかと思って」

 

「ふぅん、そっか」

 

 たいして疑うこともせず、彼女は私の隣に腰を下ろす。暫く私と一緒に湖にかかる霧を眺めていたが、やがて飽きたのかチルノがその場にごろりと寝転んだ。

 

「あんたさぁ、毎日ここにいるよね。同じ景色ばかりで飽きないの?」

 

 足をバタバタさせながらそう言うチルノに私は首を傾げる。ここの景色は好きだし、別に何かやりたいこともないし、飽きたこともない。そう伝えたらチルノは顔を顰め、暫く考え始めた。

 また暫くして、チルノは何かを決めたのか立ち上がって私の前に立つ。

 

「よし、あんた、これからあたいと一緒に遊びにいくわよ!!」

 

「……へ?」

 

「だから、遊びに行こうって言ってるの!!こんなとこで毎日座って景色眺めるだけなんてつまらないじゃない。だから、あたいがここ以外の場所を案内してあげる!!」

 

 手を掴まれて立たされると、彼女は腕を組んで笑顔になる。その笑顔がとても綺麗に見えて、私は思わず見惚れてしまう。思えば、私はこの世界……たぶん東方の世界?……にきてから笑ったことがないことに気がついた。

 いや、それ以前から……。私が最後に笑ったのはいつだったか。

 

「あ、そうだ……あんた、名前は?」

 

「私の、名前?」

 

「そう、まだ聞いてなかったと思って」

 

「私の、名前……」

 

 私の名前って、なんだろう。昔の名前は何故か思い出せないし、今まで名前が必要な場面がなかったから気にしてなかった。名前がないことをチルノに話すと、彼女は「じゃあ、あたいが考えてあげるよ」と言って悩み始めた。私を上から下まで色んな角度から眺め、髪を結ぶ髪飾りに目を向ける。

 

「桜……花びら……よし、決めた!!」

 

 どうやら名前ができたらしく、チルノは胸を張って私に告げた。

 

「桜花、それが今日からあんたの名前よ!!」

 

「おうか……桜花……私の、名前……」

 

「そう、桜花だよ!!」

 

「嬉しい……ありがとう、チルノ」

 

 チルノにお礼を言うと、一瞬だけ呆然とした後、笑顔で頷いた。改めて差し出されたチルノの手をとり、二人とも笑顔で駆け出した。

 

 この日、私に名前と、素晴らしい友達ができた。

 

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