毛利元就の奮闘記[凍結]   作:北極星

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グダグダです


百万一心を受け継ぐ者

元就の前にこの乱の元凶がいる。彼女たちはこの乱の真相を語った。元就は哀れに思えた。何故このようなくだらないことで乱が起きるのか、たった一言でこの乱が起きた。元就でさえ呆れる。もういい、このまま終わらせる。元就の心に普段の優しさは無い、これほど人の心は変わるものなのか、ああ、百万一心の理想とはやはりこの乱世では・・・そう思いながら彼女たちに矢手甲を構える。その時、

「元就さん、駄目だ!」

 

 

時を遡る。元就は昨晩受けた報告を主だった者全員に伝えた。

「間違いない無く彼女たちなのね?」

「ああ、広宗にかなりの軍勢が集まっている報告もある、ほぼ間違いない」

「それにしても巷の人相とは全然違うな」

「まぁ、あれは人間ではないよ」

上から、華琳、元就、春蘭、一刀の順番である。

「でも、広宗にいる軍勢は私たちの数だけでは心許がないわね、元就、何か策は?」

「とりあえず、私たちの目的は張三姉妹を捕らえること、露払いは他に任せてもいいんじゃないかな?」

「フフッ、そうね、なら、今近くに皇甫嵩の軍勢がいるわ、あの軍と合流しましょう」

その後、兵数や兵糧の調整を行い軍議は解散した。

 

 

「一刀、ちょっといいかな?」

軍議を終え、元就さんに廊下で声を掛けられた。

「いや、別に大したことではないよ、君は黄巾党の首領たちをどう思うか聞きたくてね」

「うーん、そうですね、聞いてみたのと、実際顔は随分違って、それからあまり悪い感じでは無い気が、でも人は見かけによらないともいいますし・・・」

率直な感想をいった。正直、巷の人相は有り得ないと思ったが、それでも、悪人のような雰囲気をしていると思ったが実際の人相は普通の女の子だ。

「そうか、そうだね、ありがとう」

そう言うと元就さんは足早に去っていった。なんだかいつもと違う感じがした。気になったが、沙和に呼ばれたのでそっちに向かった。

 

 

 

「それは真か?曹操?」

「はい間違いないございません、我々には優秀な部下がおります故」

ふむ、と妙齢な女性が頷く。

 皇甫崇、朝廷に仕え、黄巾の乱の際、左中郎将に任じられ、同じく右中郎将に任じられた朱儁や盧植と共に、この乱の鎮圧に貢献した人物の一人である。

「ならば、広宗に攻めいるには西と南からの経路がある、曹操、そなたは西から向かえ、私は南から向かおう」

「承知いたしました」

 

 

「・・・と、いうわけで私たちは西から向かうことになったけど、何か意見は?」

「明らかに私たちは露払いをしてくれ、と言っているようなものですね、南の道の方が平坦で広くそちらの方が敵の主力も集まります」

「そこを討つことで手柄を自分たちに多く入るように、か、なかなか強かな方のようだな皇甫崇将軍は」

桂花の言葉に秋蘭が続く。

「だから、十常侍がいてもここまで権威を維持出来ているんでしょう」

華琳の言うことは最もである。皇甫崇は朝廷からこの乱の鎮圧を命じられた立場にある。張角を討つ大功を諸侯に取られては宮中の笑い物にされかねない。皇甫崇としてはこの戦にて何としても張角を討ちたいのであろう。

「まぁ、でも華琳はその手柄を譲る気はないんだろう?」

「そうよ、一刀もわかってきたじゃない」

「元就さんのおかげだよ」

ふっと元就は笑う。

まるで、かつての息子のようだな。年は孫よりも下であるが、成長を見るのは楽しいのである。それはいつまでも変わらない元就の楽しみである。

 

 

「かかれ!」

戦闘は南から始まった。最初は一進一退の攻防を繰り返していたが、元々数もあり、兵の質の差が出始め、徐々に官軍に有利になり、じりじりと黄巾側が後退を始め、一刻一刻毎に最早勝敗は明らかとなってきた。

 

 

「もうダメだ。天和ちゃん、地和ちゃんと人和ちゃんと一緒に逃げてくれ!」

「ダメだよー、波才さん、みんなを残して逃げるなんてできないよー」

「いや、ここで天和ちゃんたちが死んだら俺達がここまでした意味が無いよ、幸い天和ちゃんたちの顔は知られてないみたいだし」

「・・・」

「頼む、南は駄目だけど、西からの道には隙があるからここは俺に任せて、趙弘と裴元昭と一緒に逃げてくれ」

二人の妹は何も言わない、姉に着いていこう、そう決めているのである。

「わかった、波才さん頼んだわよー」

 

 

 

「急げ!三人を守りながら駆けろ!」

三人を託された趙弘と裴元昭は西から北へと行き幽州

方面に逃れるように動くつもりであった。西の曹操の軍はまだ一部の隊しかまとめて動く準備が出来てない。これなら行ける、大丈夫だ守れる、そう思った矢先趙弘と裴元昭の頭には矢が刺さった。なにが起きたかわからない、という表情の三人に真横からやってきたのは逃亡を終わらせる蹄の音である。

 

 

「かかれ!張角達を捕らえろ!」

「あんたらにようはない、張角を出さんかい!」

伏兵を率いるは春蘭と真桜、そして、元就である。元々、華琳が相手に隙を与えるようなことをするわけが無い。ここに華琳率いる本隊と囮としてわざと敵の突破を許した。秋蘭の隊が合流し、三方面を囲まれた黄巾党はどんどん数を減らす。そして遂に、

「お前が張角だな、大人しく首をはねられろ!」

「私達の顔も知ってるみたいだし、もうここまでかなー」

「姉さん!何言ってるの姉さんだけでも逃げて!」

「人和ちゃん、私は長女よー、おいていこうなんてことできないわよー」

「でも!・・・」

「さて、大人しく捕まってもらおうか」

三人が振り返ると元就が立っていた。

「大丈夫だよ、ちょっと質問に答えてくれないか?もう逃げようとは思わないほうがいいよ、周りをみてみな」

周りには黄巾党の象徴である黄色の頭巾をかぶった屍がそこかしこに転がっている。もう生存者は指で数えられる程度しかいない。

「聞きたいことって?」

眼鏡をかけた少女、張梁だ、元就は内心そう思いながら口を開いた。

「君たちのやり取りを見ると、とても野心あって起こした反乱だとは思えない。何故このようなことになったのか、教えてくれないか?」

「・・・わかったわ、まず・・・」

 

 

元就は天を仰いだ。たかが一言されど一言、張三姉妹が言った今までの経緯に元就は哀れなことだとしか思えなかった。太平妖術の書を手に入れ、一躍有名になったのはいい、だが、その一言で、勘違いによっていったい何万人という人物が運命を狂わされたのか、大陸一になろうとした。その旨を客の一部が勘違いをして、反乱を起こした。彼女たちが気付いた時には最早、どうしようもない状況下になってしまっていた。民が酷い暮らしをしているのは理想していた。華琳の下で少しでも民を救えば、百万一心の天下を見れるのではないか、そう思い自らの第二の人生を始めた。だが、何だったのだろう、民はこれではただ乱世を助長する道具として扱われてしまっているも当然である。人の心惑わされやすい、それは元就もよく知っている。心を惑わし相手を翻弄する離間の計を始めとして、様々な人を利用する策など当たり前のようにやってきた。だが、民を利用するほど元就は鬼畜なことはしたことはない、民の心はとても惑わされやすい、だからこそ、民は養い心を掴むべきである。だが、ここまで、民とは心を揺られる者であるとは、しかも力もない元はしがない旅芸人であった三人にである。元就も馬鹿ではない、人の心を掴むにはそれなりの力が必要であることは知っていた。やはり、百万一心の天下は無理があるのか、そう考えた。元々、元就のやり方では天下を確立するのは難しい、元就自身も理解していた。だから、天下を狙うようなことをしなかったのである。だが、華琳という信長と違う英傑の下でなら百万一心の世を目指せると感じた。だからこそ彼女の為に策を立て戦いを続けた。実際上手く行っていた。華琳の下で民の心を掴むことが出来ている感触はあった。だが、本当に民はずっと付いて来るのだろうか。

『もういい、終わらせよう、彼女たちは踏み台だ、華琳の天下の為に犠牲になる第一の英傑だ』

考えた。元就はどうしても百万一心の世の限界しか見えてこない。やはり、無理か、そう思った時には三人に矢手甲を向けていた。

 

 

元就さんの様子が変だったのは昨日からだ。あの時話しかけてきたときから少しおかしかったけど、明らかに昨日から一人で考え込むことが多くなった。元就さんらしくない、そう思ったけど、きっと策を考えているんだろうと考えていた。戦いが始まると俺は華琳の護衛として、季衣と共に華琳のそばにいた。そのまま戦いは桂花が考えた策通り進んだ。後は張三姉妹を捕まえるだけ、そう思った。でも、何だか胸騒ぎがした。気になって季衣に華琳を任せて前線に進んだ。華琳に止められたけどどうしても気になった。必死に頼み込んだら、無理はしないよう言われ、行く事許可してもらった。そこで見たのは、元就さんが三人の女性に話をしていた。何を話したのかはわからない。でも、元就さんの顔には普段の穏やかな表情はない。もうなんか、絶望しているような顔だ。初めて見た顔だった。後ろでは春蘭と秋蘭が見守っている。だけど、元就さんは二人が居るようなことは気付いていないようだ。そして、天を仰いで、

「限界か・・・」

そう言った気がした。そして、元就さんは自分の武器を三人に向けた。後ろの二人は慌てて止めようとしている。けど、元就さんは聞こえていない様子だ。元就さんの目を見た時、驚いた、明らかに目に何もなかった。俺でも解るくらい『無』の目だ。止められない。そう思った。けど、言わずにはいれなかった。

「元就さん、駄目だ!」

その時、元就さんは動きを止め、俺のほうを見た。驚いた顔をしている。

「一刀!?何故貴様がここにいる!?」

「華琳には許可を得ているよ」

そう言うと春蘭は華琳様が言うなら・・・と納得してくれた。そして、元就さんに近づいた。

「どうして、こんなことを・・・」

「いや、何でもないよ、ちょっと・・・ね」

苦笑いを浮かべているけどやっぱり違った。元就さんじゃない。

「元就さん、何があったんです?」

「だから、何でもないと・・・」

「元就さん!!」

話して欲しい、どうして元就さんをここまでにしたのか、目で訴えた。すると、元就さんは、はぁ、と溜め息を吐きこういった。

「私の理想はやはり、不可能ではないか、そう思ったんだ」

「理想って言うのは?」

よくわからず聞き返す。

「百万一心の世、だよ」

驚いた、愕然とした。まさかあの元就さんが長年の自分の理想に疑問を持つなんて、

「秋蘭、百万一心とは何だ?」

「いや、私もよくわからない」

はっ、と元就さんは二人を見る先ほどよりも落ち着いたのか二人の存在にようやく気付いたようだ。

「百万一心とは、簡単に言うと皆で心を一つにして力を合わせれば、何事も成し遂げることが出来る、という意味だよ」

「何だ、それでは今の我々のようではないか」

春蘭はそんなことかとすぐに返す。だが、秋蘭は少し考え、

「まさか、元就殿・・・」

「気付いたかい?私はこの戦には元々疑問があった。民達の蜂起には別に疑問はない、でも、これほどの多くの民を動かすものは何なのか、気になっていたんだ。まさか、この三人の歌声に魅了された者達の勘違いとはね・・・」

どういうことか秋蘭に聞く、その答えには驚いた。そんな理由で民は動いたのか。確かに頭を抱えてたくなるような理由だ。でも、

「元就さん、それも百万一心と繋がるところがあるんじゃないですか?」

えっ、元就さんと秋蘭はこちらを見る。春蘭はまったく話に付いて来てない。

「元就さんが言うように確かにこの乱の理由は呆れても仕方がありません。でも、それだけ人々は追い詰められていたんでしょう。だから、心のより所が欲しかったんじゃないですか?だから、ここまで黄巾党は大きな集団になったんでしょう、それに彼女たちを殺したら、彼女たちを慕う人たちが俺たちをどう思いますか?」

元就さんの目がだんだん戻ってきているもう少しだ。

「百万一心の世の中は決して妄想ではない、やってみないとわかりません。でも、その夢の達成の為に元就さんが一人になったら意味がないです」

何を言われてもいい、元就さんはこのままでは壊れる。そう思うと止められなかった。元就さんが近づいてくる。殺されるのか、そう思うと自然と目を瞑った。だが、元就さんは俺の頭に手を置き、ははっ、と笑い始めた。

「確かにそうだね、何事もやってみないとわからない、どうやら私はそんなことも忘れていたようだ。ありがとう、一刀」

さて、と元就さんは怯える三人に目を向ける。

「すまない、どうやら頭に血が上っていたようだ。君たちのことは華琳に任せるとしよう。一緒にきてくれるかい?」

元就さんが彼女たちに今まで通りの穏やかな雰囲気で話す。良かった、戻ったみたいだ。俺も元就さんと共に彼女たちに来てくれるように説得する。すると彼女たちは頷いて歩き出した。

 

 

「事情は聞いたわ、確かに馬鹿馬鹿しい理由ね」

元就たちが帰り、何故か少々不機嫌な華琳に今までのことを説明する。

「元就、あなたの今回のことは未遂とはいえ、主君である私の判断を仰がないで生かして捕らえるよう命じていた者を殺そうしたのには聞き捨てならないわ。しばらく謹慎してなさい」

すまない、と元就は謝ると華琳は張三姉妹を見た。

「あなたたちの言葉で多くの人が犠牲になった。よくよく、反省することね」

うなだれる三人、もはや死を覚悟している。

「予定通り、彼女たちの身代わりを立てた?」

「はっ、すでに死刑囚の中からそれらしい人を斬り、皇甫嵩に送りました」

「・・・どういう・・・こと・・です?」

この発言には三人以外の将も驚いた。

「秋蘭と桂花に話をして彼女たちが昔、私たちの街にもよく来ていた歌手だってことがわかって、秋蘭が言うにはあんな気前のいい娘たちがこんなことするはずがないってね、まぁ、彼女たちの歌声で私たちの民が癒せるのなら別に生かしておいても構わないと思ってね」

「・・・いいの?私たちまた、歌えるの?」

「ええ、構わないわ、でも、名前は伏せてもらうけど」

そこまで聞くと三人は頭を地面にこすつけ泣き始めた。ずっと、ごめんなさい、とつぶやきながら、

 

 

「さて、どうして私にはあの三人のことを言ってくれなかったんだい?」

張三姉妹を沙和たちに任せて別の天幕に行かせた後、元就は華琳に聞いてきた。

「あなたの様子が変だとみんな思っていたわ」

華琳たちも元就の異変に気付いていたのである。

「黙っていたのは何故?」

「そうね・・・あなたが本当はどんな人か気になってね、あなたはいつも飄々としているけどあんなに汚れ仕事をこなしても平気でいられるのが気になってね、秋蘭と一刀から聞いたわ、その百万一心とやらがあなたを支えていたのね」

「そうだね、その考えは昔から私が掲げていたものでね・・・不可能だと思うかい?」

「フフッ、あなたらしくないわね、やってもない事を出来ないと言うなんて」

「一刀にも言われたよ、どうやら見失ってはいけないものを見失っていたようだね」

元就は自分が決して踏み入れてはならない領域に入ろうとしていたことに気付いたようだ。

「百万一心、悪い考えではないわね・・・でも、覇道と繋がるところがあるのかしら?」

そう、そこなのだ。力による覇道と人の繋がりを重んじる百万一心、一見相反するものである。だが、

「少なくとも君のやり方は覇道であっても百万一心の考えに繋がるところがあると私は思っている。そうでなかったら、今頃ここにはいないよ」

「そう、ならやってみなさい楽しみしているわ、覇道と百万一心の世を」

新たな謀神の挑戦が始まる。

 

 

「一刀、百万一心の世の為には君の協力が必要だ」

「・・・えっ?・・・」

元就は城に帰還後一刀を呼び突然そう言った。

「張三姉妹を私が討とうとした時、夏侯姉妹の止める声は聞こえてこなかった。でも、君の声は聞こえていた。おそらく、君がいなかったら今頃私は壊れたかもしれない、私を止められた君なら、出来ると思うんだ」

いいかな?元就は一刀に聞く。

「どうして俺なんです?俺なんかより・・・」

「他の人では駄目なんだ。みんな華琳に取りつかれている。君のように第三者の視点から見れるような人こそ、覇と百万一心の世を実現させるのには重要になんだ。やってくれるね?」

一刀は悩んだ、自分のような何の能力もない人が元就のような大きな存在にここまで評価されているとは思わなかった、

「わかりました、俺やります」

一刀は気付いたら頷いていた。元就はいつもの穏やかな笑顔を見せる。やろう、元就さんと一緒に、新たな決意を胸に一刀はこの乱世を駆ける。

 

 

元就は安堵した。一刀が頷かないと自分が歴史に殺される後、百万一心を受け継ぐ者が現れることはないだろうと考えていた。

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