毛利元就の奮闘記[凍結]   作:北極星

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一刀の生きる道、悪人董卓

朝、一刀は城内を歩いていた。なんてことはない。ただの散策をしているだけだ。

 どうも、元就から百万一心の世を天下に示すことに協力するように言われたその日から何もないのに早起きになってしまった。

 この世界に飛ばされ、華琳たちの下で乱世を生きることになってからしばらく、自分のような人間が生きていけるのか、ただただ疑問だった。しかし、元就が来てからそれが変わった気がしていた。共に異世界より来たもの同士、その人柄があまりにも穏やかで本当にかの毛利元就なのか、と思うこともあった。だが、話す端々からその才覚が滲み出ているのを一刀は感じた。

 そして、元就に教えを請い自らの知識を合わせ、華琳の為に働いている。

 一刀は元就を尊敬し、元就や桂花にかなわないことは自覚しつつも警備隊の仕事に励みながら己の研鑽を続けて来た。

 そして、最も一刀にこの世界で生きる意味を与えてくれた。元就からの言葉、

 『百万一心の世を創る為に協力をしてくれ、君しかいないんだ』

衝撃を受けた。 

 理由を聞いて愕然とした。みんなは華琳の魅力に取りつかれている。

 わかってはいた。だが、自分しか頼れる人がいない、それほど元就は孤立していた。

 それに気付いている者はどれくらいいるだろう。おそらく、一人もいない、秋蘭は薄々感図いているかもしれないが、はっきりとはわかっていないだろう。

 ならば、俺がやるべきである。そのためには元就から真に心から任せられる人にならなければならない。

 そう考えると何故だかやるべきだことがないのに早起きしてしまう。

 否、やるべきことは山ほどあるのである。そう思うと、書庫に足を運んで読むべき書物を見つけてはそれを拾い部屋で読む。

 

 

 変わった。

 それが華琳たちの一刀への評判になった。

 どうやら、黄巾党の反乱以降、以前とは空気が変わった。

 生き生きとしているように見える。吹っ切れた顔をするようになった。

 元就曰く、生きる道を見つけた。なるほど、そう考えると納得がいく。

 だが、華琳は不機嫌であった。

 何故、自分は覇王となる人だ。主君である自分の道に彼も歩ませるべきである。

 なのに、自分ではなく、元就によって道を見出すことが出来たのであろう。元就がやったというのは勘である。

 確かに元就は自分とは異なる人物であるが、一刀が彼によって生きる意味を見出したことに静かに不快感を感じた。

 要は妬いているのである。そして、元就を恐れた。

 もし、自分とは違う所にいれば必ず脅威となっただろう。

 いずれにせよ、一刀は自分が得たのである。自分が扱うべきであって元就が扱うべきではない。

 かつて、主君である元就なら、わかるはずなのに、よくわからない。

 いずれはもしかしたら、元就と対決する日が来るかもしれない。

 そうなった恐ろしいことになる。知略は華琳たちの上を行く、そうならないよう元就の真意を正さなければ、華琳は一人、そう決心した。

 

 

 

 この頃、朝廷では大きな動きが起きた。

 政治を思うがままにしていた十常侍が大将軍何進との対立を深めていた。何進は自身の血縁である劉弁を霊帝の死後、擁立したため自分達の権威が落ちるのを恐れた十常侍は何進の失脚を企み始めたが、何進は先手を取って、諸侯を洛陽に呼び寄せようとするも十常侍が彼を殺害、上洛をしていた袁紹がそれに怒り、十常侍を殺害したものの、皇帝と陳留王は洛陽から脱出し、董卓に保護された。

 

 

 これを聞いた元就はすかさず、華琳に進言し洛陽に間者を放ち詳細を調べた。

 どうやら、現皇帝は自ら帝の地位を辞任し自らより優秀な劉協を皇帝として、立てるように命じ、さらにその後は董卓を丞相とし、劉協の補佐をすることになった。その後も善政を洛陽に敷き民心を集め、汚職を徹底的に摘発して、政治から不正をなくしている。

 

 

「・・・そう聞いていたんだけど、まるで逆だね」

「たぶん、麗羽(袁紹)の逆恨みね、こんな文、麗羽が書いたとは思えないけど」

 

 曰く、逆賊董卓は皇帝をないがしろにし、朝臣を弾圧している。

 曰く、逆賊董卓は民から容赦ない徴税を行い、民を疲弊させている。

 

 など、間者の報告とはまるで違うのである。

 袁紹は十常侍を殺害し腐敗の元凶といえる宦官を粛清したものの、帝を保護出来なかった為、董卓に保護された劉弁らに追い出される形で冀州に帰っていた。

 それを欲深い袁紹はなんとしても帝を奪還し、自ら洛陽に返り咲く腹積もりなのだろう。

「華琳様、我々は動きは?」

「もちろん参加よ」

桂花の問いに華琳はすぐさま答える。

「参加しないと我々が逆賊扱いされかねない」

ここまで来ると董卓がどうであれ、逆賊である。もはや、どうしようもない状況である。

「異論はある?」

誰もいないのを確認すると各々の準備を始めるよう命じ、散会となった。

 

 

「時代が動き出すね」

「はい・・・」

元就と一刀は歩いている。

 いよいよ、来るべき大きな大乱が始まるのだ。

 元就は楽しみにしていた。史書に名高き英傑たちが一様に集まるのだ。今から楽しみでしょうがない。

 一方、一刀は少し暗い顔をしていた。

「元就さん、百万一心の世にも犠牲は付き物なんですか?」

それを聞いて元就の表情は厳しいものになり、

「一刀、それは愚問だ。この乱世に犠牲は付き物だ。君が言いたいのは董卓のような人物がどうして悪人のごとく扱われいるのか。かな?」

一刀が頷くと元就は説明を続ける。

「真実を知るのは董卓本人とその周りだけだ。だけど、我々はそれを知っているとはいえ、董卓には味方出来ない、わかるね?」

一刀もわかってはいた。

 先の華琳の言葉通りいかねばこちらが董卓の仲間と見なされ逆賊となる。さらに、数でも明らかに反董卓連合が上になるだろう。

 もはや賽は投げられた。

 「動くしかないのか・・・」

 「諦めてくれ、私でもどうしようもないよ。やはり、董卓は歴史上悪人となる運命なのさ」

 まだだ、まだ、大局に抗う時ではない。元就とて董卓を救い百万一心の世の支柱になってもらいたい。だが、もう遅い動いてしまってはどうしようもないのだ。

 乱世はやらねば自分がやられる。

 元就は無常とは思わない。生きるべきものが生き、死ぬべきものは死ぬ。

 董卓は死ぬべきものなのか。

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