毛利元就の奮闘記[凍結]   作:北極星

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警戒する相手

 いよいよ動く時が来た。

 華琳率いる曹操軍は主だった者全員を連れ、反董卓連合の本拠酸棗へと到着し、陣を張っていた。

 華琳はその間に軍議があるため、秋蘭と桂花を連れて軍議が行われる天幕へと向かった。

 

「いやぁー、壮大だね、これほどの英傑たちが一同に集まるなんて歴史上ないことだよ」

 

「元就さん、もしかして楽しんでる?」

 

 元就は進軍中からずっと、英傑たちとの面会出来る機会はこのときしかないと、楽しみにしていたのだ。

しかも、このことを記しておかない手はないと、筆と紙、竹筒まで持っていこうとしたのだ。さすがに、それは華琳に見つかり、止められた。

 だが、それで諦める元就ではない。胸元だの、荷駄の中だのに隠して持って来ている。無論それも見つかり、華琳にほどほどにするよう、言われ、どうにか許してもらった。

 

「しかし、元就殿の史書に対する執念はすごいですね」

 

「ちょっと尊敬しちゃうのー」

 

「この戦が終わって、ほとぼりが冷めたら見せてあげてもいいよ」

 

 元就の許可が出たため一刀や凪が楽しみにしていると言い、期待を膨らませる。

 今後、期待の山が雪崩のごとく崩れるのを知らずに。

 

 

 しばらく、談笑していると華琳が戻ってきた。しかし、どこか浮かない。どうかしたのか一刀が訪ねると、

 

「今の軍議で決まったのは総大将が麗羽になるということだけで、他のことは後から追々通達するってことだけよ」

 

 確かに呆れる報告だ。

「軍議ってかれこれ半刻(一時間)以上は立っているけど」

 元就が聞くと、どうやら誰が大将になるかで互いが互いを牽制しあい結局、劉備が一番兵を連れてきているという理由でどうにか袁紹が総大将に落ち着いた。

 

「ただでさえ面倒ことなのにさらに面倒なことになりそうなんだけど」

 

「よせ、一刀今は一致団結しなければならない時だ。

やむをえんだろう」

 

 秋蘭が諫める。こうなった以上はやるしかないのだ。

 

 

 酸棗から洛陽へ向かうには汜水関、虎牢関を突破することが絶対条件である。だが、

 

「これじゃあ、突破出来るものも突破出来ないわね」

 

 華琳の呟きに皆が頷く。あろうことか、袁紹は劉備に先鋒を命じたのだ。

 兵法では城に籠もる敵を討つには三倍以上の兵が必要となってくる。だが、劉備は城の兵よりも少ない兵を率いている。この采配は考えられない物である。

 

「我々はどう動くんだい?」

 

 元就は訪ねる。今の問題はそこだ。

 

「とりあえず、劉備の後詰に行くことになっている。

袁術配下の孫策も来るらしいから援護は当然になってくると考えておいて」

 

 これからが本番だ。 

 

 

 

 

「曹操さんですね、私は劉備玄徳です。今回はよろしくお願いします」

 

 曹操の前に桃色の髪をした少女が挨拶をした。

 さらに、後ろに控えている劉備の配下の関羽雲長、諸葛亮孔明が続けて挨拶した。

 この顔ぶれに違和感を抱いたのは、

 

「ねぇ、元就さん諸葛孔明って劉備に仕えるのもっとあとじゃなかったっけ?」

 

「私もそう思った所だ」

 

 一刀と元就である。

 二人で孔明を見て、うーんと唸っていると、孔明は関羽の後ろに隠れてしまった。

 非礼を詫び、話を元に戻す。

 

 とりあえず、後から来る孫策とも話をするが、今のところは汜水関に籠もる華雄を挑発して誘き出し、一騎打ちに持ち込み華雄を斬った後に怯んだ敵を華琳、孫策とともに汜水関になだれ込むことになった。

 

 「はてさて、上手くいくのか」

 

 「そういうことなら、私に任せてちょうだい」

 

 元就の呟きに反応し、邪魔するわ、と入って来たのは褐色の肌をした露出度の高い服装をした女性である。

 

 「こら、雪蓮、勝手に天幕に上がり込むものではないだろう!」

 

 「いいじゃない、今は仲間同士なんだし」

 

 後ろからやってきた知的そうな眼鏡をかけた女性が諫めるがそんなことお構い無しにずかずかと入り込んできて、

 

 「私は孫策、字を伯符、よろしくね」

 

 

 

 「ふぅん、なら、その挑発の役目、私たちに任せてくれない?華雄とは因縁があるのよ」

 

 孫策は華琳、劉備から策の内容を聞き、かつて、孫策らは華雄と戦い勝利したことがあるらしく自らその役目を買って出た。

 その案はそのまま採用され、その策でいくここになった。

 

 「先ほどはすまなかったね」

 

 「いえ、別に気にすることはありません」

 

 元就は孔明と会っていた、先ほどの詫びを改めてすると共に高名な人物が実際どのような人か見ておきたい狙いがあった。

 

 「ところで君はどうして玄徳殿のところにいるんだい?」

 

 「まず、桃香様の理想とする世と私の理想とする世が一緒だということです」

 

 「彼女の理想とする世って?」

 

 「この大陸の人全員が幸せで笑顔で暮らせる世です」 

 

 「誰もが?」

 

 はい、と孔明は頷く、

 この時、元就の目に何かが浮かんだ。

 

 「どうやら、君達とはいずれ相容れない仲、

というのになりそうだ。今から君と競い合うのが楽しみだよ」

 

 「はわわ、もう宣戦布告でしゅか?」

 

 「はは、冗談だよ。私だって、あまり戦いは好まない性格でね、でも君のような高名な人と策を競い合うのも楽しいかも知れないね」

 

 「うぅー、でも負けないでしゅ。こっちには雛里ちゃんもいましゅし」

 

 噛みながら反論してくる孔明に和みながら

一つ気になることを聞いた。

 

 「ねぇ、玄徳殿には君に以外にも軍師が

いるのかい?」

 

 「はい、雛・・いえ、鳳統士元ちゃんです。

私と一緒に学んだ仲です」

 

 愕然とした、元就としてはこの二人がいる以前に劉備は倒しておきたいと考えていた。だが、もう二人は揃っている。

 はてさてどうしたものか。元就は思案した。

 

 

 

 私は今、桃香様が帰った後にまだ、残っている。

というのも、毛利元就さんと言う方が私とお話をしたいと言ったのだ。

 でも決して下心があると思えない。先ほどのことを謝ってくれたし、穏やかに話してくれていた。でも、桃香様の理想を聞くと急に真剣な表情に変わった。

 そして、いきなりの宣戦布告とも取れる発言をしたので、慌ててしまい、噛んでしまった。

 しかも、元就さんも少し笑っているし・・うぅー

 それから、雛里ちゃんのことを話すと元就さんは考え込んでしまった。 

 その顔は策士その物だ。この人は本物だ。そう思った。

 でも、元就さんは策士とはいえ、穏やかそうで人を惹きつけるようなところがある。桃香様とは少し違うけど、徳のある人なのだろう。

 そこで私は気付いてしまった。

 元就さんは非情さと穏やかさを合わせ持っている。軍師としても上に立つ人としても完璧な人なのかもしれない。

 桃香様とも曹操さんとも違う。もしかしたら自分が当主としてもやっていける人かもしれない。でも、元就さんは今の立場が気に入っているみたいだ。

 今後、桃香様の世を実現するには曹操さんは絶対に倒さなければならない。

 その時この人を超えないといけないと思うとかなり苦労することになるだろう。 

 この人は私や雛里ちゃんより上を行く人なのかもしれない。

 負けたくない。心からそう思った。

 

 

 

 

 劉備、孫策が自陣に戻った後、華琳はも元就と桂花を呼んだ。

 

「あなた達から見て、あの二人はどう思った?」

 

「やはり、孫策は危険ですね、今は袁術の配下ですがいずれは大きくなるでしょう。劉備は夢見がちなところがあります。現実から目を背け、自分が正しいと思っているみたいです」

 

「元就はどう思う?」

 

「桂花とほぼ、同じだけど、劉備の下にはいい人材が揃っている。確かに劉備は理想主義だけど、その理想に惹かれてついていこうとする人が集うのだろう。

少なくとも、君とはいずれ対立するよ」

 

「そうね、いずれは戦うことになるでしょう。

ふふっ、今から楽しみだわ」

 

「君は乱世を楽しんでいるのかい?」

 

華琳の発言に元就は呆れる。

 

「そうね、そうかもしれない。でも、今は戦わなければいずれ潰される、違う?」

 

「いや、正しいよ。でも、ほどほどにね」

 

「わかっているわ。あなたの理想とする世の為にも、ね」

 

 ふっ、と元就は笑った。

 やはり、この曹操こそ乱世を治める大器である。このものに出会えたことを感謝しなければならない。

 

 最初こそ元就は劉備のような人こそ自分の理想を導いてくれる人だと考えていたが、今日違うとはっきりわかった。 

 彼女の理想はあくまでも治世の下で実現するものであり、この乱世では不可能に近いもの。

 ところが彼女の仁徳は侮れないものであり、故に関羽や張飛、諸葛亮、鳳統という英傑が集まるのだ。

 これは華琳にはない。

 やはり、今の内から手を打っておいたほうがいいかもしれない。

 放っておけば、劉備は大きくなり、大乱を招きかねない。元就は決して好ましくない状況となる。

 だが、それには二人の軍師が邪魔になる。だが、あの二人を下手に始末すれば、劉備は華琳を敵視しかねない。

 敗れても敗れても食い下がってくるに違いない。

 やはり、孫策より劉備だろう。 

 

 元就はそう考えて華琳に伝える。 

 華琳も元就の真剣な表情に何かを感じ取り、善処することを伝えた。

 

 

 

 さぁ、いつ私は歴史に殺されるのだろう。

 元就は華琳とは違う楽しみを持ってしまった。

 

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