毛利元就の奮闘記[凍結]   作:北極星

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元就の思惑

「華雄!まさか、敗戦を喫した時の敵の

子を見て怖じ気づいたんじゃないでしょうね!!」

先ほどから反董卓連合側からの口による攻撃が続いている。

 目標となっている華雄は未だに出て来ない。業を煮やした劉備は頼んでおいたように孫策に挑発の役目を任せている。

「かなり頭に血が上る内容だけど、出て来る気配が無いね。どうやら、止められることが出来る程の人物がいるみたいだ」

華雄の性格は孫策配下の周喩から聞いた。かなりの武辺者らしく、これだけのことを言われれば必ず来るだろう、と元就も考えていた。

 だが、なかなか姿を現さない、おそらく、止めているものがいるのだろう。

 例えるなら、龍造寺隆信と鍋島直茂のようなものか、そう考えながら元就は汜水関にいる将を思い出すと張遼文遠がいることを思った。

 あの御仁なら止められるだろう。

 

「確か汜水関には張文遠がいるらしいわね?華雄を止めているのもそうなのかしら?」

 

元就と同じことを考えていた華琳が元就の隣に並ぶ。

たぶん、と答えた元就は城門が開くのを見ていよいよ始まる大戦に頭脳を働かせた。

 

 

 汜水関では今、張遼が虎牢関に撤退する準備を進めていた。

 

 「華雄!あんたが出たらこの関は終わりやで!あんな安い挑発に乗ってどうすんねん!」

 

「黙れ!貴様こそ月様ことを侮辱されて悔しくないのか!?」

先程から挑発は華雄本人だけでなく月、もとい董卓を侮辱する内容に変わっている。

 

「そら腹立つけど、詠っちから言われたこと忘れたんちゃうやろな?」

詠、もとい賈クには決して出て戦うことがないように言われた。だが、

 

「ここまで言われたらどうでもいい!これは、私の意地だ!」

 

ここまで言われて止めること張遼はしなかった。

彼女も武人だからである。

 

「・・わかった。せやけど、死ぬんやないで」

 

「・・・ああ・・」

 

 武人は武人である。

 その先にある悲劇を考えることなどない。

 

 

 

 

「貴様の相手は私がする」

 

「貴様に用はない。孫策を出せ!」

 

「それはどうかな?臆病者に伯符殿討てない」

 

「その言葉、言ったことを後悔するな!」

 

華雄の得物金剛爆斧が空気を切り裂いて関羽の首に向かってくる。なまじの者ではたとえかわせてもすぐに討たれる。

 華雄自身、関羽など劉備という何処とも知れない輩の配下にしか過ぎない。

 確かに雰囲気はただ者ではないが、自分にはかなわない。

 そう片づけた。そうしてしまった。

 関羽はかわすことなく得物の偃月青龍刀でその一撃を止め、逆に力任せに見えて無駄な動きなく華雄の得物を払いその勢いのままに無防備になった華雄の首に得物を向ける。

 華雄は慌ててその一撃をかわすことに成功した。

 だが、隙だらけになった華雄を関羽は見逃すはずはなく、そのまま最後の攻撃を行おうとした。が、

 

「そこまで、でいいんじゃない?」

 

 なんともこの一騎打ちには合わない穏やかな声が二人に聞こえた。

 

 

 

 

「どういうことですの?元就さん・・でしたわね。

どうして華雄さんを討つ絶好の機会に水をさすような真似をして、あまつさえ華雄さんを見逃すなんて聞き捨てなりませんわ」

 

 結論からいうと元就は華雄を見逃した。

 無論そんな事を許す程麗羽はお目出たい訳無い。帰ってくるなり即刻元就と華琳を呼び出して今尋問をしている。

 諸侯は固唾を飲んで見守っている。

 このような事態を招いた以上元就はもちろん、主君である華琳にまで類は及ぶ。

 元就ももちろんそんな事解っている。解ってない愚か者を能力主義の華琳は採用しない。

 どうこの場を凌ぐのか、

 

「確かに私は華雄を逃がしました。しかし、それは反董卓連合を思って行ったことです」

 

 周りがざわめき始める。

 

「まず、この戦の目的は汜水関の陥落です。

はっきり申し上げれば、華雄は二の次の存在、実際、関は落ちました」

 

 元就は正論をぶつける。汜水関の董卓軍は撤退の準備をしていた為、華雄が戻ってきた直後に華琳らの奇襲を受けて対応が出来ずに壊走に近い撤退をした。

 

「仮に華雄を討ったとしましょう。華雄は性格は直情ですがそれ故に配下から慕われています。それを見た兵たちはどう思うでしょう。今後の戦で華雄の弔いだと我々に死に物狂いで立ち向かうでしょう。死兵ほど面倒なものはありません」

 

「しかし、彼女も逆賊の部下でしょう、それならどのみち討たなければならないのでは」

麗羽は最もな意見を述べる。だが、元就は余裕の表情を崩さない。

 

「ですから、『今は』討たないのです」

元就は今とういうのを強調してさらに自分の意見を続ける。

 

「所詮は逆賊、討たなければならない。ですが洛陽までのこちらの兵の犠牲も考えなくてはなりません、先程も申したように彼女を討てば兵たちは仇を討とうと死兵になる。ならば、今は生かしておいて後々に洛陽を落とした際に董卓と共にまとめて処断すれば良いのです。無論、袁紹殿が」

最後の言葉に欲深い麗羽が喰い付くように彼女を誘うかのような声、案の定彼女は目の色を変えた。

 そして、

 

「いいですわ。今回のことは不問にしましょう。

その代わり、董卓は私が討ち取るということでよろしいですね?」

 

「ええ、もちろん、この大役は袁紹殿以外おりません」

 

「オーホッホッホッ、そうですね、私が討たずして誰が董卓を討つことができましょうか」

 

元就は穏やかな笑みを浮かべていたが、

 

『袁紹殿は簡単な人だ』

 

内心黒い笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 軍議が解散して元就は華琳らと天幕で話し合っている。内容は董卓にいる将をどう曹操軍に取り込んで行くかだ。

 どのみち董卓は敗れる。ならば、その配下の将をできるだけ殺さずにここで降伏させたいという華琳の能力主義を汲み取った元就が出陣前に立てた策である。

 無論、華琳はその策に乗り、現在に至る。

 故に華雄は逃がした。降伏を勧告しようとしたが、それは止めた。

 今そうすれば、元就も華琳たちも賊に荷担したと捉えられかねない。

 故に次の虎牢関か洛陽にて服属させることにした。

 

「それにしても、よく華雄と関羽を説得出来たわね、どうやったの?」

 

面白そうに華琳が聞いてくる。

他の者も元就に視線が釘付けだ。

 

「何、大したことではないよ。関羽殿にはさっき、袁紹殿に言ったことを劉備殿に被害が出るのではと言ったら承服してくれたし、華雄はあなたが死んだら主君がどうなるか、と言ったら案外あっさり納得したくれたよ」

 

 なるほど、と華琳は頷くと次の段階に軍議を進めた。

 次は虎牢関、そこには撤退した華雄や張遼、そして、

 

「呂布か、あれを捕らえるのには苦労しそうね」

 

 呂奉先、史書ではまさに一騎当千の言葉がふさわしい。人物であるのに間違いない。

 この世界でも人外のその強さは変わらない。

 

「そもそも、呂布を捕らえることが出来るの?」

 

 一刀は呂布を捕らえることは不可能であると考えている。

 見ていないが春蘭よりもその武は上であると思っている。そうであれば、呂布は討つしかない。

 一刀はそう考えていた。しかし、元就は、

 

「捕らえることが出来ないなら、降伏させればいい」

 

 あっさりと言い放った。すかさず、今度は桂花が立ち上がり、そんな事が可能なのか聞いてくる。

 

 元就は平然とただ、真剣に、

 

「彼女たち頼るものをこちらに調略することが出来れば容易いことだ」

 

と言った。

 

 華琳や桂花、秋蘭は察したのかはっとした顔になり、一刀と春蘭はよくわからないらしく説明をしてもらう、それを聞くと二人は息を呑んで元就を見る。

 その視線を受けて元就は恥ずかしそうに頭を掻いた。

 

 

 

 

 

 軍議が終わり、各々が雑談をしながら出て行く。

 華琳は元就を呼び止めてこういった。

 

 「関羽をこちら入れることは出来ないか?」

 

 どうやら、華琳は関羽の戦いぶりを見て気に入ったらしい。

 元就も普段の華琳の性格から華琳の目的は大体察したので苦笑いを浮かべるも無理だと言った。

 関羽の劉備への思いは相当なもので、華琳に対する春蘭や桂花のようなものだ。

 華琳にそう言うが諦めていないことは明らかである。

 懲りないなぁ、元就はそう呟きながら天幕を出て行った。

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