元就は華琳に仕官した後、直ちに仕事を始めた。
この時代、紙は高級品で基本的には
竹巻を用いていること以外には特に問題はなかった。
元々、歴史家になりたかった元就は史書を読みあさっていたので、漢文の文章にもあっさりと馴染めたのである。
主な仕事として文官と武官を兼任する秋蘭の代わり
として文官の責任者という立場として誰もが認める
存在となっていった。
「まったく、私がいなくても元就殿がいるのなら
私は必要ないようですね」
「やれやれ、春蘭はともかく、君まで私に仕事を押し付けないでくれないか、年長者にもう少し楽をさせてくれ」
「そういわずに、若返ったのだから構わないではありませんか」
ハァ、と溜め息がでる。
元就が一回死んでこの世界に若返ってきた、
という話は案外すんなりと華琳達は受け入れた。
一刀の例もあるからであろう。
とはいえ、元就が一番年上であることに変わりない
ので華琳と春蘭以外は元就に
敬意を持って接している。
一刀にいたっては軍略を教えて欲しいと頼まれ、
師弟関係のような関係になっている。
「元就が年長者というのはともかく、仕事を押しつけるのには感心できないわね、秋蘭、ちゃんと仕事を
しないならしばらく閨には呼ばないわよ」
華琳が秋蘭をからかうような口調で入ってきた。
「ウッ・・・、わかってますけど、
元就殿は仕事が早く、間違いをまったくしないので
つい・・・」
「頼りっきりではだめよ、元就みたいな人が
集まればそれだけ、仕事がはかどるでしょ、
違う?」
「いや、まったくもってその通りだよ」
目線を向けられ元就は答える。
「ま、そんな時がきたら、楽隠居して、君の天下
までの道を記す方にいくけどね」
「あら、それはそれで困るわ、あなたには最後の最後
まで働いてもらうわよ」
ニヤリと笑う華琳に元就は頭をかく
「ま、それは置いといて、いまあなた、枯れ葉とかを集めて近くの農民達に協力してもらってなにか作っているみたいだけど」
「ああ、肥料のことかい?まだ、準備段階だから言ってなかったけど、肥料とは農民の作る食料の生産を良くするもので、使い過ぎは良くないけど、今後、必ず必要になる、今のうちに試しておかないとね、
ごめん、君に言うのを忘れてた」
「まあいいわ、あなたが役に立つというのなら
間違いないでしょ、そのかわり、必ず成功させなさい」
ああ、と返事をして、華琳に献策書を提出した。
「とりあえず、町を見ての改善案だ」
早速、華琳は目を通す。しばらく読んでいるうちに
華琳は唸った。
「なるほど・・・あなたから見るとここまで、変える
余地があるのね」
実際はただ、元就がいた時代のもののなかでここでも
使えそうなものを引っ張ってきただけである。
だが、華琳達から見るとほとんどのものが斬新な
ものばかりであった。
「どうだい、使えそうかい?」
「ええ、もちろん、特に・・・」
華琳が目をつけたのは元就の時代でいう(座)といわれるものだ。
「同業者の団体をつくり一定の税を納めさせる・・・
か確かに税収は安定しそうね」
「うん、税収が安定しないと国は安定しないからね」
「でも、この関所を撤廃する、楽市はまだ、無理ね」
「まあ、それはもっと国の領土大きくしないとね」
「ふむ、確かに治安がよろしくないですからね、
まだ時期尚早でしょう」
その後も、三人で日暮れまで、今後のことを話し合った。
その夜
華琳、春蘭、秋蘭は三人で集まっていた。
「元就は二人からしてどう思う?」
「はっ!最初は剣もまともに触れない奴が
兵士たちを率いることができるのかと思っていたの
ですが、兵を率いる能力にはかなり長けていると
私は思います」
「私も姉者と同意見です。文官としての仕事について
はもういうまでもないでしょう。それだけでなく、
兵士たちともうまくやっているようです。さらに、兵士たちから聞いた話によると元就殿は酒好きな兵士には、私もそうだ、と酒を兵士たちに奢り、下戸な兵士には、私も下戸だ、と水を一緒に飲むなど気配りをかかさないようです」
「確かに、人の心を掴むのは得意そうね、そうでなくは一刀の言っていたような事はできないわ」
「と、いうと?」
よくわからないというように、春蘭が首を傾げる。
「一刀の言うとおりなら、元就は一代で家をかなり大きくした、それまで、弱小だった勢力が力をつけるにはうまく世の中を渡らないと、そのためには、強者に
なびいていかないといけないわ。おそらく、一刀の言うとおり、様々な手段を用いたのよ」
秋蘭はなるほど、と頷いた。相変わらず春蘭の顔には
?だらけであったが、それに構わず、華琳は続ける。
「それに、あの目は一見穏やかそうだけど、内側は
計り知れないほどの策略を行ってきた目をしてるわ。
いざとなれば、汚れるようなこともしてきたんでしょう。他人はごまかせても、私はごまかせないわ。」
英雄は英雄を知るというのは
このことなのであろうか、
それを聞いた夏候姉妹は偉大なる主君に頭を下げた。
その頃元就は城壁の上にいた。そして、
「なぜ、天は隆元でなく私を選んだのだろう?」
星空にむけ呟いた。それに答えるものはおらず
ただ、流星が一つ流れるだけであった。
どんどん下手になっている気がする