あったとされる逸話です。
「しかし、君は初めての戦だろ。
本当に大丈夫なのかい?」
「たぶん、大丈夫です。ただ、生で死体を見るの、
初めてになるんですよ」
元就と一刀は元就の部屋で話し合っていた。
二人は異世界から来たもの同士で、
互いの性格も良かったのが幸いし、
こうした、私的な時でもよく一緒にいた。
「元就、入るわよ」
華琳の声が聞こえたので入室を許可する、
「あら、一刀もいたの」
「ああ、元就さんと世間話をしていたんだ、
外そうか?」
華琳は構わないというと、元就に書簡は渡した。
「これは?」
「新しく入った兵糧監督官が提出した、献策書よ」
許可を得て、中を改める。
「なるほど・・・要するに今度の賊の討伐に
出す兵糧は半分で充分ということか」
「え、どうして?」
理解できていない一刀に元就は説明する。
「簡単にいうと今後のことを考えて、
今はこんなにも多くの兵糧を持っていく
必要はない、つまり、これを提出した者は
この兵糧が尽きる前に戦を終わらせる
自信があるということか、この献策書を
提出した者の名前は?」
「荀彧というものよ」
その名を聞くと一刀は目を見開いた。
一方の元就はもう一度、献策書に目を通す。
「確かに、悪い策ではないが、
私は承服できないね」
「あら、私は良い策だと思うけど?」
「別に悪いとは言ってはいないよ。
ただ、良い策ではないね」
「あなたがそういうのなら、荀彧を玉座に呼びましょう、それでこの策の真意を正すわ」
しばらくして、猫耳の被り物をした少女が
入ってきた。
「曹操様、お呼びでしょうか?」
「あなたが荀彧ね?あなたが立てた策について、
聞きたいことがあるの」
「はっ、なんなりと」
そう答えると控えていた元就が口を開く。
「まず、君は戦場に出たことは?」
「あるわよ」
男嫌いの荀彧は元就に話し掛けられ、
一気に不機嫌になった。
構わず元就は続ける。
「兵糧を減らせば行軍速度は速くなる。
それは私にもわかる。でも、戦場に立てば
いつになったら戦が終わるかわからない。
それを君は戦場に出たことがあるのなら
知っているはずだ」
「もちろん、そのための私の策よ」
「どんな策かな?聞かせてもらいたい」
「なんで男のあんたなんかに!?」
「私も聞いてるの、教えてくれる?」
「・・・わかりました。まず、・・・」
荀彧は華琳に促され策を説明する。
それは端から見れば素晴らしい策であった。
「なるほど、悪くないわね・・・
異論あるものは?いないようね・・・
荀彧、あなたの真名は?」
「桂花といいます。」
「私は華琳よ、あなたをこの場で
我が軍の軍師に任ずる」
「はっ!華琳様のため、粉骨砕身の
働きをいたします。」
「じゃあ、今日は解散、明日の出陣に備え、
各々、英気を養うように」
それぞれが部屋から出ていく中、
元就は一刀と一緒に部屋を出て誰もいない
のを確認すると
「おそらく、彼女の立てた策はもしかしたら
失敗するかもしれない」
「えっ?」
しれっと元就の発した言葉に
一刀は驚く。
「どうして?じゃあ、なんであの時
言わなかったんですか?」
「彼女は軍師としての才能は確かにある。
だけど、少し欠けているところがある」
「それはどういう?」
「ま、気にしないでいいよ、
戦場でわかるさ」
翌日戦場に向かう間、明らかに一刀は浮かない顔を
していた。原因は元就の昨日の言葉である。
『昨日、荀彧が立てた策はどうみても良かった。
なのに、どうして、元就さんはあんなことを・・・』
そして、それは元就の言うとおり戦場でわかった。
「報告、敵が我々に気がついた模様、
その数、約500」
「なっ!?どういうこと?前の報告では
確か300って」
「確か、ここを治めていた刺史は賊が出たとき
何もせずに逃げたんだよね?だとしたら、
このあたりの民の一部が彼らに加わった
と見ていいだろう」
「そうなると、桂花の包囲策は不十分になるわね
・・・次善の策はもちろんあるんでしょう?」
「はい・・・」
桂花が言いかけたところに別の偵察兵が来た。
「申し上げます。敵の一部に異変が起きた模様」
「確かに、敵の左翼の動きが乱れている、
どうやら、誰か戦っているみたいだな」
「春蘭、元就、あなたたちで向かいなさい。
直ちに戦っている者を保護するのよ」
「はっ!」
「わかった」
「秋蘭はいつ敵がきてもいいように
備えておきなさい」
「承知!」
元就達が向かうと・・・
「うりゃあぁぁ!!」
「ぎゃあぁぁ!!」
一人の少女が賊達をなぎ倒していた。
「凄いね・・・一人で大の大人をこんなにも・・・」
「感心してる場合か!早くあの娘を助けるぞ!」
見惚れていた元就を珍しく春蘭が諭した。
「ああ、そうだね、行こう」
「うおぉぉぉりゃぁぁ!!」
「ひぎぃぃ!」
「だめだ、強すぎる、逃げろー!」
「待て!逃がすか!」
「落ち着いて、春蘭、華琳から追撃しろとは
言われてはいないぞ」
「えっ?あ、ああ、そう、だった、な」
「忘れてたね?」
「う、うるさい!」
「ま、それはいいとして」
恥ずかしさの余り顔を赤くした春蘭を放って
元就は少女に顔を移す、
「大丈夫かい?よく君一人でここまで
やったね」
「あ、たすけていただき、ありがとうございます!」
「さ、私たちと共に来てくれ我々の上司である、
刺史が君を保護すると言っているんだ。」
「え、刺史?」
「左翼の敵は撤退したようね」
「はい、ですが、これからが本当の戦です」
「なぁ、ところで、元就さんと春蘭、
遅くないか?」
「そういえば、そうね」
「姉者のことだ。敵を追撃しているのではないか?
まぁ、元就殿がいるのだから、心配ないだろう」
「そうね・・・」
その頃・・・
「でりゃあぁぁ!」
「クッ、元就!
どうして助けたのに襲ってくるんだ!」
「私に聞かないでくれ、襲ってきたのは、
この娘なんだ」
「何が、刺史だ!何が役人だ!散々ボクたちから
税をとれるだけとっておいて、賊が来ても何も
してくれなかったじゃないか!」
「やれやれ、完全に頭に血が上っているね・・・
仕方ない」
元就は矢手甲から矢を一本放った。
その矢は鍔迫り合いになっている
少女と春蘭の間をふっと通る。
至近距離を矢が通り過ぎたため、
二人は反射的に距離をとった。
その間に元就が入り、少女に向け
「ごめんね」
と頭を下げた。
突然の元就の行動に少女も春蘭も
呆気にとられた。
「君の言う刺史はこのあたりを
治めていた刺史だろう?
私たちは山の向こうの陳留の刺史だ」
「えっ?陳留の?それなら本当に
助けに来たんですね?」
ああ、と元就が頷くと
「陳留の刺史なら知っています。
とても民想いの方だと、えっと、ごめんなさい。
そんな人たちに襲いかかって・・・」
「あはは、気にしなくていいよ、
ここの刺史がいけないんだ、
君が悪い訳じゃない、ところで君は
どうして、ここで一人で戦っていたんだい?」
「このあたりにボクたちの村があるんです。
賊が来たのに、ここの刺史が逃げたって
聞いて、なら、くる前に倒しておこうって」
「だからって、一人で来る奴があるか!」
「で、でも・・・・・」
元就がまぁまぁと春蘭を
なだめると、
「君の村は無事、何だよね?」
「はい」
「なら、その村に私を案内してくれないか、
君を武勇、なかなかのものだったし、
賊討伐に協力してくれないか?」
「えっ?いいんですか?」
「うん、君ならきっと、華琳も認めてくれるよ、
そのために、村の方に事情を説明しないとね」
「わかりました、なら、ボクが案内します!」
頼むよ、と言うと春蘭に
「と、言う訳だ。君も異論はないだろう?
私は一旦、別行動をとる。君から華琳に
伝えておいてくれ」
「いや、いいのか?勝手に華琳様の
許可も得ず」
「大丈夫だよ。怒られるのは私さ、じゃあ、
案内を頼む」
「はい!」
少女を馬に乗せると元就はすぐに馬を走らせた。
「・・・そういえば、あの娘の名前を
聞いてないな・・・」
「そういえば、君の名前を聞いてなかったね、
なんて言うんだい?」
「あ、ボクは名を許墸、字を仲康といいます、
よろしくお願いします」
「私は毛利元就というんだ。よろしくね」
表向き冷静な元就だったが、
『この娘が許墸!?確かに春蘭と
不意打ちとはいえ、互角に戦っていた
から、ものすごい素質を持っていると
思ったけど、まさか・・・』
信じがたいことにはなれていたはずだが、
こうも想像と違うと困惑せざるを得なかった。
「・・・と、いうわけでして」
「事情はわかったわ、元就の行動も
当然の措置、今回は不問としましょう」
「しかし、まさか名前を聞き忘れるとは・・・」
「し、仕方ないだろう!私も元就も
その娘を止めるのに精一杯だったんだから!」
「まったく、これだから、馬鹿と男は・・・」
「なんだと、貴様!!」
「落ち着きなさい、二人とも、春蘭、
今回はあなたが悪いわ」
「か、華琳様~」
「・・・それで、戦況は?」
「はっ!左翼の壊滅により敵は一旦、
砦に撤退した模様です」
「となると、こちらの方が兵が多いとはいえ、
無理押しは危険ね、とりあえず、今日は
ここで、野営をして、明日敵を殲滅するわ」
「「「承知」」」
戦極姫6、買いたい。
ストーリーが戦極姫はいいです。