見つかったら大目玉喰うの
わかりきっているから勇気持って
買えない今日この頃
賊討伐から幾日か経ち、陳留には一時の
平穏が戻った。が、
「どうして、年寄りをこうも動かすのかなぁ」
「元就殿、つべこべ言わず、
ついて来てください!視察だって、
大事な仕事です!」
昔は城下町の視察は元就もすることはあったが
年を取ってからは臣下達に任せていた。
別に仕事はとっくに大半は終えていたので
行けないことはないのだが、元就曰く、
「史書が読めない」
そんな理由通じる訳無く、あっさりと秋蘭に
拘束され、無理やり連れさせられたのである。
「まったく、いつまでも君主気取っているん
じゃないの、今の君主は私なんだから」
「いや、どうも長いこと君主をしていたから
なかなか、直せなくてね」
とはいえ、やる時はちゃんとやっているので
別に皆から嫌われていることはない。
むしろ、その穏やかな雰囲気で
皆からは父親のような感じで慕われている。
季衣からは親しみをこめて
おじちゃん、と呼ばれている。
だが、これには元就も地味にへこんだ。
若返っている為、そんなに年を取っているように
見えないだろうと思っていたのである。
一刀に自分がそんなに老けて見えるか、
と聞くと、
「外見は大丈夫ですけど、雰囲気が老けている
感じです」
と、普段は優しい一刀にとどめを刺され、
しばらく沈んでいたのは余談である。
視察には華琳、春蘭、秋蘭、一刀、元就が
参加した、話し合いにより
三手に分かれ、華琳と一刀、秋蘭と元就、
春蘭は一人で回ることになった。
「それにしても、さっきの春蘭はなんだっただろう?」
元就が言っているのは分かれて行動を開始する前
春蘭が落ち着きがなく、
一刀を睨み付けていたことだ。
「大方、一刀が華琳様によからぬことをする
とでも考えていたんでしょう」
察しのいい元就はその意味を理解し、
苦笑いを浮かべる、
「そこまで彼も馬鹿ではないよ」
まったくだ、と秋蘭が返すと
しばらく春蘭が話題の中心となった。
ふと、元就が
「君も姉を慕っているんだね」
と言うと、秋蘭は少し驚いた顔をし、
「そんなに顔に出てましたか?」
その問いに元就はいや、と答える。
「君が姉のことを話す時どこか嬉しそうでね、
軍師たる者、人の言動で人が何を思うか判断
しないと」
「ふふっ、かないませんね・・・私はああやって、
いつまでも単純でいられる姉者が羨ましいんです」
「確かに、この乱世、誰が裏切るかわからない
時代、誰もが疑心暗鬼になり、嫌でも人は人を
疑う、その中で彼女のような存在は珍しい」
元就は春蘭をとても珍しい存在だと思っていた。
「君たち姉妹は華琳を随分と慕っているよね?
同様に、華琳も君たちを信頼している」
「ええ、それが何か?」
ふっ、と元就は笑い、
「この三本の矢は強力だ・・・」
華琳にしろ、春蘭にしろ、秋蘭にしろ、
三人とも、それぞれの特技がある。
そして、それはかつての息子たちよりも強い。
これは他のどの勢力にもないような存在だろう。
あるとすれば、劉備、関羽、張飛の三人ぐらいだ。
この三人が欠けることが元就はまったく想像
出来なかった。が、
『遠い先それもなくなっていく、か』
元就は知っている、この秋蘭に起こる悲劇を、
『乱世といえど、味方、しかも、これから
死ぬまで必要となる存在を失うわけには
いかない』
かつて、高松城の清水宗治を救おうと
した時のように、あわよくば救ってやりたい、
そう考えていた。
「難しい顔をして何を考えているんです?」
「ん?あ、いや、なんでもないよ」
ところで、、と元就が話題を変えようと
した時、
「ところで、元就殿、さっきの三本の矢とは
どういう意味ですか?」
「あれ?一刀はあの時言ってなかったかい?」
初対面の時、一刀は戦歴ばかりを
言っていたのである。
「後で、華琳と春蘭と合流した時に教えるよ」
「わかりました・・・っと、すみません、元就殿、
少し買い物をしても?」
「構わないよ、待っているから」
そう言うと、秋蘭はありがとうございます、
と言うと、露店に向かう、
どうやら買いたい者は竹かごらしい、
その造りは見事なもので、関心を持った秋蘭が
聞くと、自分たちの村の自信作だそうな。
秋蘭が竹かごを買っている間、元就は
竹かごを売っている女性に目がいった、
商人にしては顔などに傷がついているし、
明らかに身にまとう雰囲気が商人ではない、
間者だろうか?と元就は疑ったが
秋蘭との話を聞いていると、
どうやら、近くの村から来ているらしく、
友人も来ているなど、とても間者にしては
口が軽い感じがしたので、違うと考えた。
今日、私が見回りの途中で、一緒に回っていた
元就殿が突然私が姉者のことを慕っている。
ということを言い出すから少し驚いた、
まぁ、実際そうではあるので、
私が姉者を慕う理由を説明した、
それについて元就殿も納得してくれた。
しかし、そこで元就殿はふと、
「この三本の矢は・・・」
と呟いた、最後の方は聞こえなかったが、
どうも、急に元就殿が口から出したからなのか
どうかわからないが、その言葉が気になった、
その後、私が買い物をしている時、
竹かごを売っていた者と話している時も
その言葉は離れなかった、
そして、見回り後
華琳様達と合流した時、
元就殿は後で、皆と合流した時教えてあげる、
と言っていたので、聞いてみることにした。
その時、元就殿はそのことについて、
教えることを渋るような素振りを見せたが、
華琳様達も興味を持ったし、仕方ないという感じ
で口を開いた。
「私には前にいた世界では三人の息子がいてね、
三人はそれぞれ別の能力に特化していたんだ。
だけど、時代は乱世、誰が裏切るかわからない、
実際、私も独自の勢力を築く前は家を守る為
主君を変えたこともあった。他の勢力では父親が
長子をこえて次子を主君にしようとしたら
長子が父親と次子を殺して主君になるような
事すらあったからね」
正直後半の話の内容は私たちにとって
考えられないことだ。儒学では親を敬う
ことは絶対であるからである。
姉者はその者に対する怒りで顔が赤い、
華琳様が先を促すと、元就殿は再び話を始めた。
「そこで、私は三人の息子達を集めて
話をしたんだ、今後のことについてね、
彼らを矢で例え、簡単に言うとこういったんだ
一本の矢は簡単に折れるが
三本の矢は中々折れない、
とね」
なるほど、と華琳様が頷く。
そのとなりで姉者が首を傾げている。
あぁ、なんだか可愛いな姉者は
「どういうことだ、元就殿?」
姉者が元就殿に聞くと、元就殿はあれ?
と頭をかく。
どうやら、伝わったと思ったのだろう。
華琳様が姉者にわかりやすいように説明すると
姉者もああ、と納得の表情を浮かべる、
「つまり、元就殿は華琳様と姉者と私、
我々三人が元就殿の御子息達のような
三本の矢のよう、と言いたいのですか?」
先程の呟きから察するとそうであろう。
元就殿も肯定するように頷く。
「でも、君たちは私の息子たちと違って
かなり強力だと、私は思うよ、君たちは
天下を狙っているだろう?そんなこと、
私も息子達も考えたこともなかったからね」
元就殿がここまで言うと華琳様が溜め息を吐いた。
「惜しいことしたのね、元就、あなた程の
人なら天下を統一する事も出来たんじゃないの?」
この問いには元就殿も苦笑いをしている。
考えたこともないらしい、
「話がそれてしまったね、ま、君たちが
結束すれば、天下も容易いということだ」
「ふふっ、言ってくれるわね、
なら、そのためにあなたも力を
貸してくれるんでしょ?」
もちろん、と元就殿は返した。
内心、私はほっとした。
元就殿のような頭を持つ人は
世の中にめったにいない。
元就殿が華琳様の為に働いているのは
知っている、だが、その手際の良さは
むしろ、恐ろしい、自分で勢力を
築けるかもしれない。
実際、一刀と本人が先程言っていた話では
元就殿はどこかに頼らないといけない
ようなところから始めている。
もし、我々ではない他のところに
行っていたら・・・
何故、仲間であるはずの元就殿にこのような考え
を抱くのかは、私でもわからなかった。
帰城の途中で一人の老人が華琳様に
話かけてきた。そして、華琳様を
乱世の奸雄と評した、
私は怒って老人を斬りつけようとしたが
華琳様に止められた。
そして、老人は元就殿と一刀を見て
この世界の人ではないと言い、
驚いている二人に
「大局の示すまま、流れに従え、さもなくば
待ち受けるのは身の破滅」
と言い、去って行った。
元就殿と一刀はその言葉について、
随分考えているようだった。
元就はその夜ずっと考えていた、
歴史を変えることはやはり
歴史が変わることを嫌って
自分を殺すのではないか、
それがいつになるかはわからない、
赤壁か定軍山か、はたまた別のところか、
いずれにせよ、覚悟が必要らしい、
だが、そのような覚悟はとうにしていた。
元就は策謀家であり、歴史家である。
歴史を変える恐ろしさは歴史を学んできた
彼自身が一番よくわかっていた。
「一刀のような若者に、歴史を変えること
による苦しみを自らが知るようなことを
させたくない。となると、やはり、私・・・か」
一度は死んだ身である。
どこで死ぬのかわからない乱世であった時代に
あそこまで生き、天寿を全う出来た元就は
もう一度死ぬことに恐れることはなかった、
時代を動かすであろう、華琳達と
自分同様異世界から来た青年、一刀
若い彼と彼女達に早すぎる死、早すぎる別れを
味あわせたくは無い。
彼は新たな覚悟を胸に秘めた。
はじめてキャラ視線で書いてみました
元就の話に出てくる父親と弟を殺した
とういうはなしは二階崩れの変のことです