Selector Neptuned WIXOSS   作:-Y-

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4.その占術は疑念

「……裏のある、ゲーム?」

 

 ワダツミのアナウンスに従い、部屋から出て、ホールへと集まる少女達。

 そんな中、流れから逸れて階段に立ちつくす少女が二人――。

 

「ええ、私の占いによれば――これは道楽を目的としてものではありません」

 

 セレクターの水嶋清衣と金髪のルリグ、リメンバ。とある因縁から仲違いをしていたが、今回は共通の目的を持つため、協力関係を結ぶことになったのだ。

 

「何を根拠にそんな……」

 

 清衣は疑念の視線をリメンバに向ける。かつて清衣を言いくるめ、どのような形であろうとも、一度は騙し裏切ったリメンバ。

 この戦いには裏がある、と言われてもそれを「はいそうですか」と受け入れるほど水嶋清衣という少女は抜けていない。

 

「そう、それです清衣ちゃん。私を疑うのと同じように、"あの人"も疑う必要があるのでは? 口ではどうだって言えます。それは私だって、あのワダツミという人だって」

 

 リメンバの言葉に、清衣ははっと我に返る。

 確かに清衣にはリメンバへの疑念がある。だが、それならば何故こんな場所に半ば監禁のように少女達を閉じ込めた、それも初対面のモニター越しにしか話さない人物を信じることができるのだろう?

 

「……あなたを信用するわけじゃない。……けれど、警戒はする。今はとても判断がつかない」

 

 それだけ言って、清衣はその場を立ち去った。清衣も決めあぐねているのだ。幼少の頃から、信じていたものに裏切られる経験をしてきた清衣。

 何が真実で、何が信用で、何が信頼なのか。清衣の心は保留のまま、動かない――。

 

 

***

 

 

「どうやら皆さん、デッキは構築し終えたようですね」

 

 セレクターの少女達がホールに集合すると、巨大なモニターに人影が映し出される。

 謎の人物、ワダツミとルリグのトヨタマヒメだ。

 

「それでは、第一回戦の組み合わせを発表します――」

 

 ワダツミの声がホール内に響く。そんな中るう子が辺りを見渡すと、大勢になったセレクター、ルリグの中にとある人影を発見した。

 

「(あれは……ユキ!?)」

 

 タマと同様、セレクターバトルを終えてから再会を望んでいた少女。それが今、すぐ近くにいる。

 今すぐ駆け寄って、声をかけたかった。しかしワダツミが説明中である以上、今はそちらに耳を傾けなくては――。

 

「一回戦目は、ふたせ文緒とちよりペアVS浦添イオナと水嶋清衣ペア……ということにしましょう」ワダツミが淡々と言った。

 

「文緒さんに……ちより、か。それに伊緒奈さんともう一人――」

 

 遊月がホール内を見渡し、対戦者を確認する。

 ふたせ文緒の隣には、ルリグのアン。一度会ったことのある少女。ちよりとは一度バトルしたことがある。そのころの天真爛漫な表情とは打って変わって、今はおどおどとしているが。ルリグのエルドラもいるが、記憶を失ったちよりとは、特に会話をしていないようだった。

 一方、伊緒奈の隣にはルリグのユキ――思えば、関わる時間が長くなればなるほど、印象の変わった少女だったと遊月は半月前の事件を思い出す。

 タマを追い出し、無理やりるう子のルリグになり、悪魔のような囁きでセレクターバトルに引き込もうとする。しかしその実、芽生えた仲間意識……それを守り通そうとする意志が、確かに感じられた。

 元がルリグであるため、事件後出会うことがなかったが、まさかこんな形で再会することになるとは――と、ふとるう子の様子が気になった遊月は彼女を見やる。

 その表情はただただ虚ろ。ユキとてるう子の姿を視認しているはずなのに、お互い声を掛け合うこともない。特にユキの表情は、どこか諦めにも似たような、覇気のない表情が見て取れた。

 

 そしてその伊緒奈のペア……水嶋清衣という少女の姿が見えないことに遊月は気づく。

 

「あれ……もう一人がいないみたいだけど……」

 

 と、遊月が発言したその瞬間。ホールと階段を結ぶ扉が開かれる。

 

「ご、ごめんなさいぃぃぃ……。清衣ちゃんが急にお手洗いに行きだなんて言うものですから~……」

 

 ルリグ、リメンバが頭を下げながら階段を下る。

 

「余計なこと言わないで、リメンバ。突き落とすわよ」

 

 その後ろに続くのはセレクター、清衣。衆人の前でも馴れ合うということは一切しないようだ。

 

「……では、メンバーも揃ったようですので……早速開始していただきましょうか。各ペア、どちらが先に戦うか、相談して決めてください」

 

 やはりどこかからホールの様子を観察しているのか、清衣の到着を確認してから指示を出すワダツミ。

 

「ちより君、どうする? 緊張しているようだが……」

 

「は、はい……その、私はカード強くないですし……それに……」

 

 文緒達は円陣を組み、相談をはじめる。案の定というべきか、ちよりにはあまり交戦意欲はないようだった。

 

「すみません……ウチの子、今はちょっと消極的で……。バトルを見たら少しは奮い立ってくれると思うんですけどー……」ルリグのエルドラがフォローするように言った。

 

「いや、構わないさ。チームで勝つにはお互い支えあうことが必要だ。……よし、分かった。初戦は僕が行く。それでいいかい? アン?」

 

 チームの混乱を招かないように、淡々と、冷静に話を進める文緒。チーム一同の中に反論する者はいなかった。

 

 

 

「私達はどうしようか? ねえ、水嶋さん」

 

 遅れてやってきたことに特に言及することなく、伊緒奈が清衣に話しかける。

 

「……私が先に出る。行くよリメンバ」

 

 伊緒奈に歩み寄ったのかと思いきや、通りすがりながらそれだけ言うと、清衣はそのまま去っていってしまった。

 

「ごめんなさいごめんなさいっ。清衣ちゃんは根暗というか、コミュ症というかですね。人とお話しするのは苦手なんです。そういうわけなので、清衣ちゃんのこと嫌いになったりしないでくださいね」

 

 リメンバは伊緒奈にそう言うと、清衣の後を追うようにしてその場を去る。

 

「……無愛想な子」

 

「ルリグ、それはあなたも似たようなものじゃないかしら」

 

 清衣の様子を見たユキは、ぽつりと呟いた。伊緒奈は頬を書きながらユキに横槍を入れる。

 図星なのか、無視しているのか。ユキが返事することはなかった。

 

 

「対戦する者が決定したら、両者オープンの宣言をしてください。ふふ……楽しみにしていますよ」とワダツミはモニターからくすりと笑う。

 

「では……いくよ。オープン!」

 

「――オープン」

 

 文緒と清衣。二人の宣言と同時に空間に歪みが生じる。ぐにゃりと視界がぶれ、ガラスの割れるような音と共に景色が一変。

 屋敷のホールからバトルフィールドへ、世界が変わる。

 ただし、バトルは今までのようにテーブルに座って行うのではない。ルリグが等身大……セレクターと同じ大きさであるため、戦いは立ったまま行われる。

 それに準じて、カードの大きさも少女達の身長ほどもあった。これはいつものセレクターバトル同様、自身の意志で動かすことができるため、どんな大きさであろうと問題はない。

 

 ゴゴゴゴ、という音と共に頭上のルーレットが回る。緑と青のマスが交互に並んでいる簡素なルーレット。これらの色はそれぞれルリグの色を表しており、矢印に止まった色のルリグから先行ということになる。

 矢印が指したのは緑。アンの先行だ。

 

「さあ、お手合わせ、願いましょうか」

 

「ふふ……悪い相が、見えていますよ」

 

 互いのルリグがにらみ合う。かつて少女達を巻き込み破滅へと導いたセレクターバトルが、ついに始まった――。

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