幻想索想録   作:Telecaster

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この小説もついに10話になりました。まだまだ至らない所もありますがこんな小説を読んでくれている人が居ると思うと感無量です。


ep10 訳ありな村と勘違い

目を開けるとそこには青白い光を放つ画面があった。なぜそんなモノが目の前にあるのかは体の節々の痛みが物語っていた。ぼんやりとした目で画面を見るとそこには様々な人の愚痴やら何やらが垂れ流しになっていた。

時間を見ると今日は火曜日だったが特に気にもせず俺は布団に移動し眠ることにした。

 

 

 

 

 

眩しい光と鳥の鳴き声で目が覚めた。さっきまで変な夢を見ていた気がするがいまいち思い出せないので思い出すのはやめる事にした。

「んん〜、なんかいつもより早く起きちまったな…」

精一杯伸びをした所で太腿にかかる重みに気づく。

「あ〜、そういや昨日…うーん…」

このまま起こしてしまうと桜花がかってにキレだして暴れかねないのでそっと頭を太腿から下ろして寝かせる。

「さて、どうせ起きないだろうからちょっくら筋トレでもしてみっかな」

まずは腕立てから始めることにした。

 

 

 

 

「おい、もう出発だぞ、起きなさい」

「う〜」

自分で考えた筋トレメニューをこなした後、桜花を起にかかったが、全く起きる気配が無い。

「うらー!起きやがれー!」

無理やり毛布替わりの布を剥がしにかかる。

「う、ぬわ〜!!」

ヘンな声を出しゴロゴロと地面を転がる。

「ほれ、起きた起きた」

「…あんたには慈悲の心ってモノはないの?」

「そんなものとうの昔に盗まれた」

「できれば早く取り戻して欲しいよ」

俺たちはそんなやりとりをしばらく続けていた。

 

 

 

「んで?今日はどっちに向かうの?」

「まずは森を出ることが先決だな」

出発の用意を済ませ、俺たちはこれからどこに向かうかを相談していた。

「そりゃそうだけどさ…一体どっちに向かえばいいのやら」

「うむ…そうだ!桜花、お前の能力でここらの近くにある大きな水源を探してくれ」

「いいけど…なんで?」

「いやぁ、水が多いところに人が沢山いるだろうっていう安易な考えだよ」

「ふーん…よし、こっちだよ、ついて来て!」

桜花を見失わないように気をつけながらついて行った。

 

 

 

それからしばらくして、俺たちは山間のそこそこ大きな村に居た。というのも森を出てからどこに行くのか決まっていなかったのでその『大きな水源』のある場所まで行こうということになったからだ。

「村には着いたけど…」

「なんか変だね…」

この大きさと家の数なら賑わっていてもおかしくない筈なのだが、村はひっそりと、おどろおどろしい雰囲気に包まれていた。

「夕霧…どうする?」

「どうするって言われてもなぁ…」

できれば宿を探してさっさと休みたいというのが本音だった。だが桜花の様子を見るにあまり乗り気ではないようだ。

「見るだけみてまわろうぜ?ここまで来たんだし」

「うぅ…」

「さあ、いくぞ」

縮こまっている桜花を無視して村の門に近づく。

「おっと、そこで止まりな、兄ちゃん」

不意に俺達の行く手を阻むように一人の男が立ちふさがった。

「えっと、門番の方ですかね?」

「うーん、まあ、そんなとこだ。」

そう言って男は伸びきった髪を掻きながら俺達を睨んだ。

「なあ兄ちゃん、悪い事は言わないからさぁ、潔く帰っちゃあくれんかねぇ」

「なぜです?」

「なぜって、そりゃこの雰囲気で察してくれると助かる」

そう言って門番は静まり返った村を指した。

「じゃあ、水くらい貰えませんか?長旅でヘトヘトなんですよ」

「悪いがそれは無理だ」

男の目付きがそれまでと打って変わって鋭くなった。

「ここの村はちょっと『訳あり』でねぇ、兄ちゃん達みたいな素性も知れないよそ者にどうこうしちゃいかんのよ」

「じゃあどうしたら村に入れるんですか?」

「そりゃ簡単だ」

すると男は俺を指さした。

「あんたらが自分が何者か、それを話せばいい」

自分が何者か、それは意外と難しいように思えた。なぜなら俺の覚えていることと言ったら大半が洩矢での出来事で出生なんて聞かれたら返す言葉もない。

「…わかりました、まずは俺から話しましょう」

一歩前に歩み出る。

「俺は夕霧っていいます。洩矢の国から旅をしてここに来ました。目的は修行です。」

「わ、わたしは…!」

横を見ると桜花が俺の横にくっつき声を張り上げていた。まあその声は緊張からか恐怖からか、とても上ずっていたが。

「池谷 桜花っていいます。夕霧とは洩矢の国から一緒に旅をしてます。目的は、様々な文化に触れることです!」

言い終えた時には桜花は小刻みに震えて涙目だった。よくがんばったと思う。

「なるほどねぇ…兄ちゃん、1つ大きな隠し事してない?」

「隠し事なんて…」

「いや、してるね、なかなか大きなものだ」

そう言って男は俺に近づいた。

「それを言えば、入るのを許すよ」

そう笑顔で告げた。

「わかりました…言いますよ」

まだ確証のない事だが、俺が他人と比べて訳ありだと思うところは一つしかなかった。

「俺、年老いたりしなくて、寿命でも死なないんですよ、はい」

「…こいつは驚いた…とっても訳ありだったんだな、兄ちゃん」

そう言うと男は俺に向かって右手を差し出した。

「よし、俺達はそんな訳ありな君を歓迎するよ」

「そりゃどうも」

これでやっと終わりかと二人で溜息を吐いて村に入ろうとした時だった。

「おっとお嬢ちゃんはまだだめだ」

男は今度は桜花の前に立ちふさがった。

「1つ隠し事してるでしょ?」

「か、隠し事なんてっ…」

「嘘はいけないよ〜」

男は笑顔を崩さずいった。一方で桜花は俺に助けを求めるようにこちらを見てきた。

「…はぁ、桜花、言っていいぞもう」

桜花に近づきそれだけ言ってやると桜花は遠慮がちに男を見ていった。

「実は私、妖怪、です…具体的には河童です」

「ふーん、嘘じゃないみたいだけど、不思議だね?河童が川から離れるなんてさ」

男は妖怪ということを気にもとめないといった感じで言い放った。

「つまり…不老の青年は国を、河童のお嬢ちゃんは川を捨ててまで一緒に旅をしている…つまり!!」

男は目を見開き俺達にむかって指をさした

「駆け落ち!!許させざる愛か!!」

「「んなわけあるかぁ!!」」

二人揃っておんなじ事を叫んでいた。

「なんだい、違うのかい?俺はてっきり…」

「言っとくがな、俺がこいつと駆け落ちなんてことは億が一にも起こらねぇんだよ!大体どうしてこんなガキみたいな奴と駆け落ちなんて…」

「あ、あたしだってこんな変人となんて駆け落ちするわけ無いじゃない!」

お互い口々に思いつく限りの言葉で否定し合っていた。それもそうだ、俺からしたら桜花なんて言っちゃあ悪いがストライクゾーンから離れ過ぎてるわけで。

「わ、わかったよ、そこまで言うのであればただの旅人って事にしておくさ」

そう言って男はヤレヤレといった顔をした。

「ここは訳ありな連中が集まった村、これ以上は俺も詮索はしないさ」

「…わかってくれればいいですよ…」

桜花はというと釈然としてないような顔で睨んでいた。そんなにこの人が嫌なのか。

「それじゃ、お二人さんにここでの掟を教えておくよ」

「掟、ですか」

「そう、どれだけ滞在するにしても守ってもらわなきゃあいけない事があるんだ」

男が人差し指を立てて『掟』を説明し始めた。

「まずは一つ目、昼間でも夜中でも騒がない事。ここの人は神経質な人達が多いからね、どうなってもいいっていうなら騒いでもいいよ」

男はニコニコと笑顔のまま言った。すごく怖いです、はい。

「二つ目は、ほかの人達に干渉しないこと。例えその人がどんなに苦労していようが手を貸さないであげてくれ」

これだけ言うと男は目付きがを変えた。

「そして最後なんだけどね…夜はどんな事が起ころうとも極力であるかない様に、もし出歩くのならそこで見たことは忘れる事」

「何か…あるんですよねぇ…」

「そりゃ、みんな『訳あり』だからね」

それだけ言うと男はケラケラと笑って村の中を指さした。

「井戸は村の中心にあって皆で共用だから、それで君たちの家はあそこ」

指をさされたとこを見るとそこにはこの時代では一般的であろう一軒家があった。

「あの家、丸ごと借りれるんですか?」

「ええ、壊さなければご自由に。それと家財道具一式は揃っているはずだから」

「本当に何にも起きないんだろうね?」

これまでダンマリを決め込んでいた桜花が突如口を開いた。

「おやおや〜、お嬢ちゃん、案外怖がりなんだねぇ〜」

男がわざわざ桜花の目線までしゃがんで明らかにおちょくるような口ぶりで言った。

「…っ!この…!」

「お、落ち着け桜花、お前じゃこの人には勝てない」

そう言って桜花の肩を掴む。

「うう〜…」

「ハッハッハ!そう言う事だお嬢ちゃん、まあそんなに怖いならその兄ちゃんに守ってもらいな」

そう言われた桜花はプルプルと震えていた。

「そ、そんな事より、あなたの事ははなんて呼べばいいですか?」

このままではまずいと思い話を変える。

「ん?俺の事は…門番とでも呼んでくれ」

そう言うと男…門番は突如笑顔になり俺達に言ったら。

「困った事があれば俺にそうだんしてくれ!それじゃ、お幸せにな、お二人さん」

…とにかく予定は次の春かな…

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