「さあ来いよ、諏訪子!」
「言われなくても行くさ」
周りの人達は…みんな逃げたな。
さて、どうするか…
「なにをボーっとしてる?」
どこから取り出したか諏訪子は大きな鉄製であろう輪っかをもっていた。かなり鋭そうだな。
「それ!」
鉄の輪が正面から殺到する。それをすかさず剣で受ける。
「っ!?」
剣が勢いよくはじき飛ばされた。それと同時にもう一つの鉄の輪が殺到する。
「っくそ、これで!」
鉄の輪に向かって勢いよくスライディングしこれを回避、そして右手指5本を全て諏訪子に向けた。が、突然背中に激痛が走りそれと同時に宙に浮く。
「おぐぅっ!」
地面が…隆起した?しかも部分的に?
「戦いは最後まで気を抜いちゃいけないんだよ」
そして体を地面に叩きつける。
…だめだ、身体中が痛い…
「もうおしまいかい?それじゃあ…」
「そんな訳、ないだろ…」
立てたはいいが、一体どうする、くそ…もう、どうにでもなれ!
「な!馬鹿かお前は!」
突っ込んだ、真正面から。そして
「くそっ!」
諏訪子が構えるのが少し遅れた。
…距離は5メートル弱…投げられたらおしまいだ…だから…
「狙い撃つぜぇぇぇ!!!」
精神を限界まで集中させてガンドを2発放った。そしてそれは
「くぅっ!」
見事に諏訪子の両肩に直撃し、倒れた。ここからできる限り速く走らなければ!
「くそ、間に合え…!」
「どうだ、諏訪子、俺の勝ちだぞ…」
諏訪子の頭に右手の指を5本揃えて突きつける。
あの後なんとか諏訪子のマウントを取れた。そして左手で押さえつけいまの状況に至る。
「さあ、負けを認め」
「最後まで気を抜いちゃいけないんだって」
直後、左腕に激痛が走った。原因は…岩?
「うがぁぁ!」
頭の中が痛みというものだけで染まっていく。
「残念だったね、私は他の祟神を使役してこんなこともできるんだ。止めを刺していれば良かったのに」
「うぅう…ぁああ」
左腕が変な方向に曲がっている。だめだ、痛みでろくなことが考えられない。
「さてと」
「どこに…行くんだ…諏訪子」
「これからあの生贄を殺しに行く」
生贄…ああ、あの子か…
「諏訪子は、彼女を殺すことを何とも思わないのか?」
「思わ無い訳、ないよ」
聞こえてきたのは想像していたものと真逆の事だった。
「あの子だって私の国の民、つまり私の家族のようなものなんだよ、それを殺すことを何とも思はない訳ないよ」
「じゃあ、やめればいいこんな事」
「そう簡単に止められるものじゃないんだよ、この信仰の仕方は私のあり方そのものだから」
「いったいどういう事だ…?」
「言ったでしょ。私は祟神の頂点、この信仰は、祟神のあり方そのものなんだよ」
つまりは恐怖政治と言ったところか。
「諏訪子が変えられないならさ、俺がかえてあげるよ」
「…え?」
「神様が自分で変えられないなら、その神様の友達が、ってこと」
自分が変えられないなら他人に変えてもらへばいい、そう思った。ただそれだけの話だった。
「でも、そんな事って」
「できる、ていうかやる」
ボロボロの身体に鞭を打ち無理やり立たせる。この話は立って話さなきゃいけない。そんな気がした。
「だからさ、少し時間を頂戴。必ず変えてみせるから」
「…わかったよ、君に任せてみる。ただもし無理だったら…」
「大丈夫」
そう一言言って、諏訪子の頭に右手をおいたところで、意識が途切れた。
目が覚めた。外は鳥が鳴いてる。晴れのようだ。
「いつつ…ん?」
右手の違和感に気づく。右手をみる。諏訪子が寝ていた。
「体イテーしはらへったー」
違う、そうじゃない。
「何してんだコイツは…」
起こそうかと思ったところで大切な事に気づいた。
「コイツが治療してくれたのか…」
まあ、不格好ではいるが一応治療になってるし、いっかな…
「おい諏訪子、そんなところで寝るなよ」
「ん〜」
「ほれ、布団に入れ」
「んん…」
よし、諏訪子も布団に潜ったし、外に出るかな。
「うーん、朝日がきもちいい」
本日は快晴だ。散歩でもしよう。
散歩を始めてから数分、何だか大変な事になった。
「い、いえ、もう結構ですので…」
「いいんだよ!兄ちゃん!これも持ってけって!」
「これもぜひお持ちになってください」
「ぜひ私の家で食事でも…」
なんなんだ、この国。いったいこの過剰な持て成しはなんなんだよ…
「な、なんなんですかいったい!おれが何をしたって…」
「決まってるじゃないですか、皆貴方があの祟神を退治してくれたことを喜んでいるんですよ」
えっとこの子はたしか…俺が助けた子かな?
「えっと君は確か」
「はい、あの時助けていただいたものです」
「えっと、その祟神のことなんですけどね…」
俺は事の顛末を話した。
「つ、つまり祟神は生きてるってことかい?」
「はい」
「な、なんてこった…これじゃあ今までと変わらねぇじゃねえかよ!」
「うそ、そんな…」
まあそうなるわな
「ですが、この国のルール…約束事は私が返させていただく、つまり生贄は無くなります」
「だけどよ兄ちゃん、祟神がいるなんて、おちおち飯も食えねぇよ…」
やっぱりわかってもらえないか…なら…
「あの祟神はこの国の民のことを家族、と言っていました。」
「ん?」
「祟神は自分の立場上、人の命をとり、恐怖で信仰を集めるということをやめれませんでした。ですが彼女は、本当は民の事を誰よりも思っていたのです」
「急にそんな事を信じろって言われても…なあ?」
「段々と分かってくれればいいんです。どうか、この通り…」
少しでも伝われば、そうおもった。
「…わかった、おれは兄ちゃんをしんじるよ」
「!!」
「ただし兄ちゃんをだ!わかったな?」
「ありがとうございます…!」
あの町中(?)での演説のあと、俺は社の前にできる限り人を集めてもらった。なぜなら…
「ほら諏訪子、早く来なよ」
「無理だよ…皆が信じてるのは夕霧であって私じゃないんだから…」
これから信用されるってのに、こいつは…
「それ!」
「な、なんで抱き抱えるんだ!」
「いつまでもうじうじしてるからだ。さあ、いくぞ!」
「行くって、ちょ、まーーー」
「いやあ、集まってる集まってる。ほら見ろよ、お前の家族だぞ」
「後で殺す」
「人にしがみついたまま不吉な事をゆーなっての」
ここまでは計画通り、本番はここからだ…
「えー、みなさん!ご覧の通り我らが諏訪子様は実はとっても恥ずかしがり屋なので、代わりに俺から伝えます!」
周囲からは小さく笑いがこぼれた。よし、いくぞ!
「えー、簡潔に言いますと、今までの生贄制度を無くします!」
周囲は小さくどよめいた。
「ただし、これからはそれぞれの家が作っている物を少しづつ納めてもらいます!」
どよめきが大きくなった。
「そしてこれが重要です!これを考えたのはなんと!恥ずかしがり屋の我らが諏訪子様なのです!」
周囲からは「嘘だろ?!」などの驚愕の声が聞こえてくる。
「それと、俺を呼ぶときは様を付けないように、以上!解散!!」
早足で社に逃げる。
「いやぁ、大成功!」
満面の笑みで親指を立てる。
「何が大成功、だ全く…面目丸つぶれじゃないか…」
「ははは、いいんだよこれで。これなら皆の前でも正直に成れるだろ?」
「全くお前は…」
いやあ、大声出してスッキリしたなー!
「…ありがとう」
諏訪子に右手を握ってきた。やばい、童貞にこのシチュはちょっとマズイ…心拍数が…
「私じゃ、きっとできなかった…ありがとう」
「お、おう…どういたしまして」
俺はできるだけ右手の温もりを意識しないようにする為に今後の事を考えていた。
本格的な戦闘ということでいろいろと悩むところがありましたが書き上げることができました。ちなみに諏訪子は全然本気を出してません。