幻想索想録   作:Telecaster

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今回は少しだけ諏訪子が登場します。本当に少しですが。


ep5 霞んだ記憶と神様の今

「…ん…」

鳥の鳴き声で目が覚めた。にしても随分スッキリした目覚めだな、あれか、夢を見なかったからか…

「さて、今日はどっちに向かうかな…」

「んん…」

なんて考え事をしていたら彼女も丁度起きたようだった。

「おはようさん」

取り敢えずは挨拶。

「おはよう~…ってあんた誰?!変態!?」

とんでもない誤解を受けてしまった。

「…一晩寝ただけで忘れんのか」

彼女は2、3秒俺の顔を見てハッとしたような顔をした。

「あ〜、思い出した!そう言えば泊めてあげたんだっけ」

「そうだよ、全く…」

「いやあゴメンゴメン!」

…コイツ絶対に反省しとらんな…まあそれはいいとして…

「あのさ、突然で悪いんだけどさ」

「どーした?改まって」

「もし良かったらでいいんだけどさ…」

 

 

「俺と一緒に旅をしないか?」

昨日からの考え事の結論を口にしてみた。

しかし…

 

「はぁ?」

帰って来たのは素っ頓狂な声だった。そりゃそうだ、きっと俺だってそうなる。だからなぜ俺がそう言い出したかの理由を言うことにした。

「いやあのさ、一晩寝てみて改めてお前の凄さが理解できたって言うかさ」

「…それで?」

「それで俺は思ったんだよ、これだけの能力を持ちながら評価されないなんて可笑しいってさ」

「…」

「だから俺と旅をしないか?きっと色んなことろを回ればわかってくれる人はいるし、いろんな文化に触れるのも悪くないだろ?」

「………」

「だから、どうかな?」

 

 

 

 

 

 

 

暫くの沈黙の後、彼女が口を開いた。

「その誘いは嬉しいんだけどさ…なんていうか、この家は離れたくないんだ…」

やはり、というかなんというか、想像どうりの言葉が帰ってきた。

「この家は、私の夢だったんだ。そしてそれが叶った今、みすみす捨てたくない…」

彼女の言い分はわかる、だけど、このままでは彼女はこれ以上変わることはないだろう。だから、許せなかった。

「そう、じゃあお前にはもう目標は愚か夢すらないんだ」

 

何故か許せなかった。才能のある物がその才能を腐らせて行く事が。

「正直言って失望した。お前は常に前へ進んでいくもんだとばかり思ってたよ…」

少なくとも昨日の彼女からはそう感じた。その当の彼女はと言うと俯いたままだった。

「まあこの家が大切だって言うことはわかってたから最初から望み薄だったからさ、悪かったな、変なこと言って」

「……じゃあ…」

「あん?」

彼女が口を開いた。

「あんたについて行けば、変わるとでも言うの…この、後ろ指を差される、生活が…」

彼女は怒りというより懇願に近い声で聞き返してきた。当然言うことは一つ。

「変わる。て言うか、変える」

そう、周りが変わる事を望んでちゃ駄目だ。自分から変えていかなきゃ。

「変える…?」

「ああ、お前がな。だから俺は、それを手伝う。」

彼女は意を決したようにこっちを見た。

「わかった、貴方についていくよ。そして変えてみせる」

…よかった。何がよかったかはいまいちわからなかったが、安心した。

「よし、じゃあこれからよろしくな」

「うん、こちらこそよろしくね」

 

そう言えば今になって思い出したことがある。旅をしていく中でとても重要な事だ。それは…

「なあ、お前ってなんて名前?」

「…あ…」

「…」

「…」

二人揃って忘れていた。

 

「えっと、俺は夕霧って言う。うん」

「えー、私は池谷、池谷 桜花」

……えっと、どうしようこの空気…あれだけカッコつけた後にこれはきつい…

「と、とにかく準備しよう、出発は早い方がいいから」

「そ、それもそうだねぇ…」

「じゃあ外で待ってるから」

「うん…」

 

ひとまず外に出る。そして特にする事もないのでボーっとしていた。

その時、頭の中にふと思い浮かんでくる物があった。

 

そこは夕日の射す体育館の様な武道場の様な所だった。そして目の前には女性らしき人の後ろ姿があった。それは誰だかわからなかったが、この人が自分にとって大切な人であるという事だけはわかった。どう自分に大切かはわからなかったが。

 

 

 

「お待たせ~」

そんなことを思い出していると桜花が大きなリュック(?)を背負って出てきた。

「…それ、重くない?」

「別に重くはないよ、このくらい」

「貸してみ」

「ほい」

桜花からリュックを受け取る。その途端、手に掛かる重さにより身体が派手に傾く。

「うおっ…とっと……」

「だ、大丈夫?」

桜花は急いで俺からリュックを取り上げた。

「わ、悪い。少し油断しただけだ…」

「全く、わたしの道具に傷つけたら本当に怒るから」

俺より道具ですか、はい。

「じゃ、そろそろ行くか」

「そうだねー、少し名残惜しいけど」

そう言って桜花はどこから取り出したか家に鍵をかけた。そして

「行ってきます」

そう、家に向かって声を上げた。

 

 

 

 

「はぁ…」

「どうかなさりましたか?諏訪子様」

若気な女性が尋ねる。

「いや、ちょっとね…」

そう言うと諏訪子はまた大きなため息をついた。

「ひょっとして、夕霧さんの事ですか?」

「んー、まあそんなとこ」

(あいつはそう簡単には死にそうにないけど…死んだら死んだで後味悪いしな…)

「大丈夫ですよ、諏訪子様。きっとあの方はすぐ帰ってきますから」

「そうかねぇ…」

(あいつはここが自分の居場所って前に言ってたはずだから、帰ってくるよな…にしても)

諏訪子が気にしている事、それはもう一つあった。

(大和、か…)

そう、近年数々の国々を統合している大和国であった。

 

(私が守らなきゃな)

 

 

 

所変わって森の中、焚き火を中心に二人の若者が座っていた。

「なあ池谷、このキノコ食えるとおもう?」

「いや、どう考えてもダメでしょその色」

男の手には見事なまでに攻撃色をしたキノコがひとつ。

「いや、確か自然では固定観念を捨てなきゃいけないって誰かが言ってた気がする」

「誰かって…」

「まあ焼けば食えるだろ」

 

 

「ほら、美味そうにやけたぞ!それじゃあ早速…」

「ホントに食べるんだ…」

「うん、意外といけオボロシャァァァァ」

「うわぁぁぁ、何吐いてんの!!」

「みず、水を…」

 

そんな昼下がりだった。

 

 

 

 

昼飯を終え、現在は山を降りている所だ。桜花が言うにはこの先に小さな人里があるらしいから今晩はそこで宿をとることにした。

「うぅ~…頭が痛い…」

「あんなヘンなもの食べるからでしょ、全く」

ヘンなものというのは、昼食の時に俺が見つけたキノコの事だ。

「いやぁでもさぁ、一口目は美味かったんだぜ」

「はぁ…」

「二口目から、何と言うか吐き気が…うっ…」

「…休憩しよう」

「……うん」

 

夕日が辺りを染め始めた頃、ようやく目的の人里に辿り着く事ができた。

「ふぅ~やっと着いた…もう歩けん」

「ほらほら、こんなところで立ち止ってないで泊まる所探さないと」

そうだ、まだ宿を決めてない事をすっかり忘れていた。

「気前のいい人がいてくれればいいんだけどな~」

かくして、宿探しがはしまったのである。

 

 

 

「それではお二人とも、ごゆっくり」

そう言い残して婆さんは障子をしめた。

「…案外あっさりと泊まれたな」

「そうだね、不気味なくらいあっさり」

結論から言うと宿探しは一軒目で終了した。そして今は晩御飯もご馳走してもらい後は寝るだけ、と言った感じだ。

「ねぇ、今日は魔術の特訓はやらないのかい?」

「ああ、婆さん達が寝静まったら外でやるよ」

「夜なんだから妖怪には気をつけなよね~」

「おう、わかってるよ」

こう見えても洩矢では妖怪退治などもやっていたので妖怪の怖さはよく知っている。前に1度死にかけた事もあったし。

 

「池谷はそろそろ寝たら?明日も早いぞ」

「そう思うなら早く灯りを消してよ」

「おっ、そうだな」

行灯の明かりを一息で吹き消し、俺も婆さん達が寝静まるまで布団に横になる事にした。

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