艦これ 反改   作:RS

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きっと、そんなことを望んでいるわけではない。

ただひたむきに笑って、
生きてさえいれば。

彼女は今もどこか雲の彼方で、
微笑んでくれるだろう。

睦月にはそんなことが、
痛いほど理解できていても、
承服しかねていた。


第4-2話

 

 

駆逐艦だけで解決すべき問題。

 

長門が出した答えは、

駆逐艦娘4人のみの編成のもと行う、

近海の哨戒任務であった。

 

 

旗艦:吹雪,睦月,夕立,島風

 

 

各人に与えられる簡易式電探。

 

睦月は、積極的に敵深海棲艦を沈める任務ではないため、

不服そうな顔をするが、それを長門が見抜いて注意する。

 

「簡単な任務と侮るな。

 油断すれば鎮守府が燃える可能性だってある」

 

索敵を怠った結果どうなるかは、

歴史が証明している。

 

気を引き締めた4人は、哨戒任務に向かう。

 

 

 

 

鎮守府近海。

日はまだ高く、見通しもいい。

単縦陣で進む駆逐艦娘一行。

 

 

「睦月ちゃん速いね。

 燃料切れ起こさない?」

 

旗艦を差し置いて先行する島風は、

自分のことを棚に上げて、睦月を心配した。

 

「大丈夫だと思う」

 

それに答えた吹雪の表情は硬い。

殿を務める夕立は、

吹雪の声色だけで察した。

 

「睦月ちゃん。帰ったら甘いもの食べよう。

 間宮さんの新作かき氷、私も食べたいっぽい」

 

「う、うん。そうだね」

 

睦月はといえば、

心の奥底を見せない、

微妙なハニカミ顔をみせた。

 

初めて出会った時の笑顔と随分違う。

 

振り返った吹雪は心配になった。

 

 

「電探に異常はないよー。

 でもこの電探、役に立つのかな―?

 連装砲ちゃんの方が良さげだけど」

 

「折角の装備だからハズレってことはないよ」

 

「島風ちゃん結果を求めるの速いっぽい」

 

 

電探によれば、敵はまだ近くにいない。

目視でも敵影は見えない。

音は波と、艤装の排水音だけ。

 

 

そもそも、哨戒任務は戦闘があったとしても、

散発的なものが多い。

敵も馬鹿ではなく、鎮守府近海は危険だと知っている。

 

偵察に来た深海棲艦を撃沈したという報告は聞くが、

いずれも小型の駆逐艦で、

隊を組んでいることも殆どない。

 

 

大丈夫。この任務は何もない。

睦月が危険に晒されることなどない。

 

そう強く思う吹雪だが、

先ほどからジリジリと心がざわめいている。

その原因が何なのかわからない上に、

時化も敵もいない今、不安だけが膨らんでいく。

 

 

「吹雪ちゃんかんがえごと?」

 

 

呑気に夕立が訊ねたが、

吹雪は微妙な笑顔で曖昧な返事を返した。

 

 

何事もないまま、20分が過ぎた。

周囲を見れば、陸と、小さく鎮守府が見える。

 

 

 

  電探に反応あり。

 

 

 

「敵、一時と四時の方角に、

 それぞれ一隻ずつ確認!」

 

電探の情報は全員共有しているが、

吹雪は声に出して伝えた。

戦闘開始を皆に強く印象付けるためだ。

 

「どうするっぽい?」

 

「速く指示出してよ吹雪ちゃん!」

 

「……」

 

 

殺意が感じられる瞳を宿した睦月。

吹雪は旗艦として指示を出した。

 

 

「一時の方角に睦月ちゃん。

 四時の方角に島風ちゃんと夕立ちゃん。

 私はここで待機します」

 

 

指示を聞いた全員が驚くが、

睦月は頷いて、誰よりも速く出撃した。

 

「睦月ちゃん1人にしてだいじょうぶっぽい?」

 

「大丈夫じゃないよ。

 だから2人はなるべく早く倒して、

 睦月ちゃんのサポートへ」

 

 

敵の目的が散発的な偵察か、

それとも何か別の目的があるのか。

囮2隻に意識を逸らしている間に、

本隊が来るかもしれない。

 

 

せめて一隻であればよかったものを。

 

 

吹雪は歯噛みする。

 

 

 

「いってきまーす!」

「連装砲ちゃんもね!」

 

 

 

残った吹雪は電探と通信に意識を集中した。

通信で鎮守府へ伝達。

念入りに敵のいないことを確認し、

吹雪は睦月の元へと向かった。

 

 

 

 

 

睦月は視野が狭くなっている。

 

仇討ちのこと。

自分がもっと強くならなければならないこと。

そしてその気持以前に、

このところ睡眠をとっていなかった。

 

視界に現れたのは、

海に浮かぶ深海棲艦の駆逐艦。

単眼のようなレンズが睦月を捉えている。

 

その駆逐艦は、これまで見たこともない、

赤い、オーラのようなものをまとっていた。

それがなんなのかなど、

睦月には関係なかった。

 

よしんばここで戦艦と会敵しても、

彼女は勇猛果敢に挑んだことだろう。

自分の身など顧みずに。

 

 

「敵艦捕捉、戦闘に突入!」

 

 

吹雪に無線で伝えてからすぐさま距離を取りつつ砲撃。

敵駆逐艦も負けじと砲撃をする。

敵の砲門は口内の一門のみ。

回りこむことも、弾着地点予測も容易で、

魚雷にさえ気をつければ負けることはない。

 

 

「えぇい!!」

 

気合をこめても威力は変わらないが、

睦月は叫ばずにはいられなかった。

片時も敵から目を離さず、

しつこく砲撃を繰り出す。

 

命中率は悪くない。

撃ち込んだ量は、駆逐艦を撃沈しうるダメージ量だ。

ところが赤いオーラの駆逐艦は、

それだけのダメージを受けてもまだ航行している。

 

弾着目立つ側面がいきなり正面に回頭する。

 

睦月は向けられた砲門の軌道から逃れるため、

慌てて右へ回避した。

 

相手は撃たず、

睦月の回避方向に全速力で突撃する。

 

 

「ぐっ、……ぅ!」

 

衝撃が体全体に伝わるほどの体当たり。

人間であれば即死だが、

艦娘である睦月は中破で堪える。

 

 

グパァ…と開かれた口から、

睦月の腹に砲弾が直撃した。

 

「あがっ!?」

 

大破。

装甲も兼ねる服がボロボロになり、

体そのものへのダメージを通してしまう。

息苦しさと、すすだらけの腹。

 

 

0距離だ。

 

 

「ぅあああああ!!」

 

魚雷を発射する。

自滅覚悟の一撃を相手は察知し、口を閉ざして反転。

一気に距離を取る。

 

魚雷は相手の機動を捉えきれずにあさっての方向に進んでいった。

 

「はぁ……は…ひゅーっ……ひゅーっ」

 

 

 

沈む。

 

 

 

睦月はそう思った。

 

如月の仇を取ることもなく、

正体不明の駆逐艦に負けて、

誰にも気付かれることなく……。

沈んでしまう。

 

 

途方も無い恐怖が睦月に襲いかかるが、

それを振り払って、血走った目を敵に向けた。

 

 

 

許せない敵だ。

 

決して許してはいけない。

 

自分の大切な人を沈めた敵を。

 

海の底に沈めなければいけない。

 

 

怒りと憎しみが、自分の恐怖を怖気づかせる。

負けることはない。

 

 

 

「そうだ……如月ちゃん……を……」

 

魚雷は数少ない。

撃っても回避されるだろう。

 

この駆逐艦は、

今まで見たどれよりも、抜きん出て強い。

 

 

「如月ちゃんを……」

 

きっと仲間と連携しなければ勝てないだろう。

 

 

「返してえええええええええええええ!!!!」

 

 

睦月は1人で突撃した。

 

敵の砲門は開いている。

ギリギリで躱す算段だ。

 

発射する直前を勘で察知し、

一撃は避けた。

続く2射も、体当たりに警戒しつつ大きく回りこんで、

敵の側面に砲門を向ける。

 

 

「うううう!!」

 

獣の唸り声のような、

悲痛な叫び声を上げながら砲撃。

砲撃、砲撃、砲撃!

 

手応えはある。

黒煙が舞い上がりすぎて視界が取れない。

 

もしも生きているのであれば、

沈むであろう。

睦月は砲門を構える。

 

 

 

 

 

煙の奥から笑い声が聞こえた。

 

 

 

 

けたたましい、

金属の鳴り響くような、

こすりあわせたかのような、

悪寒が走るほどの金切り声。

 

何故それを笑い声と捉えたのか、

睦月にもわからない。

不気味で不愉快な雑音。

 

押さえつけていた恐怖が、

その声で一気に身を引き縛る。

 

 

「ひっ…」

 

逃げようとした。

しかし、航行が出来なかった。

大破していたのに無茶をしたのが祟ったのだ。

 

 

「う、動いて……」

 

黒煙が晴れようとしている。

赤いオーラは消えていた。

 

 

 

代わりに、黄色く光っている。

それが何を意味するのかなど知らなかったが、

 

とにかく敵はまだ生きていることだけは、

睦月にもわかっていた。

 

 

 

「あ…」

 

 

砲門が、こちらをむいている。

 

 

 

無慈悲な一撃が叩き込まれる……前に、

 

 

 

 

「睦月ちゃん!!!」

 

駆けつけた吹雪が放っていた魚雷が、

敵駆逐艦側面に叩きこまれた。

悲鳴にも似たつんざく金属音をあげる。

 

 

「沈めぇえ!」

 

 

追い打ちの魚雷、

行動範囲を制限する砲撃。

冷静に吹雪は対処して、

敵を睦月から引き剥がした。

 

 

 

「お待たせっポーイ!」

 

「遅くてごめーん!!」

 

 

逃げてばかりの駆逐艦をようやく撃破した、

夕立と島風が合流。

駆逐艦は吹雪を恨めしげに見たような素振りを見せて、

直ぐ様転身、海域を離脱していった。

 

「何あれ?! はっやーい! 待てー!」

 

「島風ちゃんストップ! 追い討ちは厳禁!」

 

 

完全勝利ではないが、

敵の目的がなんであれ、

鎮守府防衛は出来た。

 

 

睦月を起こして担ぎ、

夕立と一緒に連れて行く吹雪。

 

睦月は気絶していた。

 

 

 

 





長らくおまたせいたしました。

私の思い描く4話、
もう一話だけ続きます。
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